Worlds of Fun

カンザスシティーの週末

遊園地 ワールドオブファン

2008年7月13日

カンザスシティーの週末

Isoko Durbin のブログ集

アメリカ人夫の一言

アメリカ生活録

アメリカで出会ったおいしい料理

 

 

 「お家より高いジェットコースターに、最低でも1回は乗らなきゃだめよ。」

青い目をくりくりさせながら、無邪気に言う夫の姪を思い出しながら、私はベッドから起き上がった。昨日の映画とレストラン同行で、嫁としての責任は果たしたと思うが、子供達に今日の遊園地行きを約束した以上、どんなに疲れていても行かないわけにはならない。大体、あんなかわいい子供達におねだりされて、疲れているから行きたくないとは言えないのが、叔母としての心情だ。寝坊をして約束の時間に間に合わないのは分かっていたが、とにかくシャワーを浴び、遊園地に行く準備をした。

 今回は、仕事に行かなければならない夫抜きで、夫の母、姉、そして彼女の3人の子供達と遊園地ツアーだ。迎えに来た姉の車に乗り、カンザスシティーにある「ワールドオブファン」まで出発する。昨日とは打って変わって、快晴でありながらも、風が気持ちよかった。駐車場で日焼け止めクリームを塗り、遊園地の入り口に行く。入り口を入ってすぐに、アメリカの遊園地には必ずある「フランネルケーキ」と「プレッツエル」を売っている売店があったので、母が「食事から始めましょう」と売店に向かった。私は朝食を食べていたので、お腹が空いていなかったが、テーブルに運ばれた揚げたてのフランネルケーキを、端から少しずつ千切って食べた。アメリカのお菓子には、こうして油で揚げた物が多い。カロリーが高いのはいただけないが、私はこうした素朴なアメリカのお菓子が好きだ。なんとなく、アメリカの開拓時代を思い浮かべさせるからかもしれない。

 このワールドオブファンは、「スヌーピー」がイメージキャラクターで、遊園地内にはスヌーピーの登場人物たちが、あちこちにいる。その中の一人と一緒に家族一同、記念撮影をした。私がシャッターを切ったのだが、夏の良い思いでになる一枚だと思う。2年前に夫と一緒にワールドオブファンに来て以来、少々ジェットコースター恐怖症になった私は、カメラを持参したこともあって、今回カメラマンに徹し、後で気付けば自分の写真は一枚も撮っていなかった。しかし、日本人の叔母と一緒に遊園地に行ったことが、彼らの良い思い出になってくれれば、それでいいのである。

 最初に乗ったのは、椅子に座ると中心の棒がくるくる回り、私たちが座っていた椅子を振り回すという、小さな子供向けの乗り物だった。これくらいなら大丈夫だと思い乗ってみたが、結構めまいがした。「めまいがする」と私が言うと、横に乗っていた姪の一人がくすくす笑った。その後、いくつかのジェットコースターを子供達と彼らの母親が乗ったが、私は子供達の祖母と一緒に、大抵の時間は見ているだけになった。今思うと、もう少し挑戦してみても良かったかもしれない。しかし、2年前に夫に無理矢理ジェットコースターに乗せられた恐怖感から、あまり冒険はしなかった。下からジェットコースターを見上げ、写真を撮り、出てきた子供達に「楽しかった?」と声をかけ、これではすっかり保護者気分である。

 しかし、こんな私も挑戦した少し上級者向け(私としては)の乗り物がある。垂直に100メートルほど一気に上昇し、一瞬、無重力状態を体験した後、また一気に下りる乗り物である。私がこれに乗れるのは、ジェットコースターのように回転しないからである。どうも私は、逆さまになるのが好きではない。両端に甥と姪を乗せ、椅子のカバーをし、シートベルトを締める。ティーンエージャーの彼らは、どうやら日本人の叔母である私を大層、気に入っているようで、私の隣に座りたがった。「私、超叫ぶからね」と、最初に彼らに予告し、深呼吸を何度もする。「大丈夫、大丈夫」と自分に言い聞かせている私を、彼らは面白がっていた。この乗り物は、私でも十分楽しめて、高い見晴らしの良い場所に登れて、気持ちが良かった。

 この遊園地のほぼ中央には、ロープで身体を固定し、クレーンで100メートルほど上に吊り上げられた後、バンジージャンプのように振り落とされる乗り物がある。これに我がティーンエージャー達が乗りたがった。もちろん彼らの母親は大反対で、たとえ息子が「お小遣いで払うから、やらせて」と懇願しても、決して許さなかった。「バンジージャンプなんてさせられないわ。」母親の言葉に、長女はひどく不機嫌になる。しかし、私が母親であっても、決して許可しなかったであろう。ロープで縛られ、絶叫しながら宙を舞うなど、私には到底できることではない。クレーンから落とされた後は、半径100メートルほどを2、3回往復し、自然に止まるまでロープに吊り下げられたままなのである。前回夫と一緒に来た時は、大きな身体をした男性が、遊園地中に響き渡るような叫び声で、ぶるんぶるんと揺れていた。これに興味のある方は、カンザスシティーのワールドオブファンで、30ドル払って挑戦してほしい。

 輪の中に座りぐるぐる回される乗り物に、夫の母が珍しく「これに乗ってみるわ」と言ったので、乗船拒否をした姉と私は、乗り物がある建物の外で、彼らを待つことにした。木陰の下に座りながらおしゃべりをしていると、どこからか現れたプロカメラマン風の女性が、私たちの写真を撮り始めた。彼女は地元の新聞「スター」の名が入ったストラップを首から提げている。遊園地で収入を上げているアルバイトカメラマンではないのは明らかだったので、私は彼女に笑顔を向けた。しかし、パパラチのように写真を取り捲るカメラマンに、少々戸惑いも覚えた。いったいこの人は、なぜ私の写真を撮りたいのだろう。しばらくすると、彼女は私に一枚の名刺サイズの紙を渡した。「このホームページに今撮った写真が載るから、チェックしてみて。」やはり、商売のようである。後にホームページにアクセスしてみたが、写真が欲しかったら、インターネットを通して購入できるというものだ。

 アメリカの遊園地には、とてもシンプルなゲームがある。的にボールを当てたら、ぬいぐるみが貰えるとか、年齢や体重を係員が言い当てられなかったら、これもぬいぐるみが貰えるといったものである。3投で5ドルくらいなのだが、フランネルケーキ同様、これもなんだか昔ながらのアメリカのお祭を思い起こさせるので、私はこれを見るのが好きだ。アメリカには歴史が無く、どこに言っても一様に同じで面白くないといったコメントを聞くことがあるが、こうして、そこかしこにアメリカならではの風習や文化が残っている。私はそういったものを発見する瞬間に、古代から受け継がれてきた悠久なアメリカの大地を感じるのだ。アメリカを訪れたら、人と人との間にある、一つの国だけでは収まりきらない、地球規模の歴史を感じてほしい、と切に願う。

 ほとんどのジェットコースターに乗り、そろそろ休憩が欲しいという時間になった頃、園内にあるダイナーレストランに入ることにした。最初のフランネルケーキをあまり食べなかった私は、実を言うとお腹が空いていたのだが、他のメンバーはミルクシェーキなど、軽い物を注文するという。私一人が食事をするのも気が引けたので、皆で分けられるフライドポテトとボトルウォーターを注文した。これだけで6ドル以上する。やはり遊園地内は、食べ物が高い。水などはこっそり鞄の中に忍ばせて持っていったほうが良いと思った。遊園地を出るときに気付いたのだが、スタンプを押してもらえば、園内に再入場できる。駐車場にはピクニックテーブルがあり、そこで家から持ってきたお弁当を食べれば安上がりだ。ダイナーレストランで、値段が高くまずい食事をするよりも、ずっといいはずである。このダイナーレストランでしばらく休憩をし、もう一つ子供用の乗り物に乗った後、オクラホマにその日のうちに帰らなければならない姉は、家に向かうことを提案した。夏空の下、火照った肌は熱く、歩き回った足は痛い。彼女の言葉に反対する者はいなかった。

 我が家に着き、姉が運転する車が去り、鞄の中から鍵を探そうとするが、見つからない。そういえば、朝出発する前に、姉の末娘が玄関のベルを鳴らしたのだが、そのベルの音に犬のボジョが激しく鳴いていたので、鍵を握り締めることなく、あわてて家を出たのだ。玄関のドアは、しっかり鍵がかかっていた。裏庭に行き、全てのドアを開けてみようとするが、やはり鍵がかかっている。さて、どうしようかと考えた。このまま夫が帰ってくるのを待っていれば、夜中を過ぎてもまだ家の中に入れない。翌日は仕事に行かなければならないので、そんな悠長に待っているわけにもいかない。それで、隣の奥さんに電話を借り、夫に電話をした。幸い電話にすぐ出てくれた夫は、「じゃあ、今すぐ家に帰る」と言って、本当に仕事を抜け出し、家まで帰ってきてくれた。夫の思いやりと優しさに感謝する出来事だった。遊園地で撮った写真を夫に見せ、いい家族がいる夫と結婚できて良かったと、しみじみ思う日であった。