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カンザスシティーの週末

メジャーリーグ・ベースボール

ロイヤルズ vs ホワイトソックス

2008年8月1日

カンザスシティーの週末

Isoko Durbinのブログ集

アメリカ人夫の一言

アメリカ生活録

アメリカで出会ったおいしい料理

 

 地元メジャーリーグ野球球団「ロイヤルズ」のゲームチケットが欲しい人は、このリストに名前を書いてくださいとの張り紙を、会社の掲示板に見つけた。そのリストには、既にたくさんの名前が書いてある。私の番まで回ってくるのだろうかと思ったが、とにかく登録だけはしておくことにした。ある日、秘書の一人が私のオフィスにやってきて、私の机の上に、何かをドサっと放り投げる。「8月1日だからね。」それは、ブルーの背景に野球選手の写真がついた、ロイヤルズ対ホワイトソックス戦のチケットだった。

 当日の金曜日、仕事を早く終わらせ、夫と共に車に飛び乗り、高速道路を猛スピードでKaffman Stadium まで走る。前回ヤンキース戦を見に行ったときは時間に間に合わず、最初の国歌斉唱を見逃してしまったので、今回は必ず時間前に行きたいと思っていたのだが、案の定、遅れそうである。高速道路を走っていると、「Sports Complex」というサインが見えてくる。Kaffman Stadiumには、野球場の他にフットボールのスタジオも隣にあるから、「スポーツコンプレックス」というのだろうか。サインを目印に高速道路から降りると、すぐに野球場が見えてくる。これを見て興奮しない人はいないだろう。球場に実際に試合を見に行くことは、クーラーが効いた自宅でテレビ中継を見ているのと、全く違う。一団となってチームを応援する観客の情熱は、テレビ中継では伝わらないだろう。

 会社から貰ったチケットには、駐車券も含まれていたので、お金を払わずにゲートをくぐる。スタジアムの近くに車を止めると、球場内の巨大スクリーンに歌手の姿が既に映し出されていた。今回もまた国歌斉唱を見逃してしまい、つくづく残念である。一度でいいから(といっても二度以上あるなら、それに越したことはないが)、アメリカ国歌が歌われるときに、群集の一部になりたいものである。(アメリカ人の夫は、その辺の外国人(ミーハー)感覚が、なかなか理解できない。)

 セキュリティーチェックを受け、球場内に入ると、長いエスカレーターに乗って、球場の上部に行く。私の会社は、どうやらシーズンチケットなるものを社員のために購入したようで、一枚7ドルの私達の席は、観客席でも上の方の、選手達からは遥か彼方に離れた場所に位置した。席に着く前に、お目当てのホットドックを二つと、夫用にビール、そして私用にボトル水をスタンドで買った。前回食べた目の前で調理してくれるアツアツの本格派ホットドックを期待していたのだが、安い席の客にそんなものは無用と球場のオーナーが思っているのか、そこのスタンドには、予め銀色の袋に詰められた、ポーリッシュホットドックしかなかった。赤ピーマンと牛肉が入ったのが食べたかったなーと思ったが、そんな贅沢は言ってられない。なにしろ、試合は既に始まっているのである。袋を開けて、ケチャップやマスタードをかけている夫を急かし、席まで走る。階段を降り、やっと席についた頃には、既に2回戦になっていた。席についてホットドックの袋を開け、特別に貰ったキャベツの酢漬けを載せようとしたが、テーブルの無い席では、どうも難しい。やはり夫がしたように、席に着く前にやっておいた方が良かった。この辺はさすが、ホットドックを食べ慣れているアメリカ人の方が、要領をよく心得ており、これからは夫の意見をもっと尊重するべきだと反省した。

 前日まで湿った空気が重苦しい、ムシムシした天候であったのだが、この日は意外に、そよそよと涼しい風が気持ち良かった。仕事が終わった金曜日の夕暮れ前、ホットドックを食べながら、安チケットの席で野球を見る。この感覚がとても良いと思った。週末の始まり、夏の夕暮れ、平凡であるが、穏やかで平和な時間。野球が庶民の娯楽となった時代から、きっと幾万という家族が、労働者達が、子供達が、こうして夏の日の締めくくりを迎えたことだろう。緑の芝生が美しい球場を見下ろしながら、そんな思いを抱いた。それはある意味、夏の遊園地でフェンネルケーキを食べたり、景品のぬいぐるみ目当てで輪投げに挑戦する感覚と似ている。私がアメリカを感じる瞬間である。

 観客席は思った以上に埋まっていて、当然ながら地元ロイヤルズのファンが多い。中にはロイヤルズのユニフォームを着ている人たちもいる。前回見たときは対戦相手が松井選手がいるヤンキースだったため、周りの視線も気にせずヤンキースを応援したのだが、今回は夫と、そして周りのほとんどの客と一緒にロイヤルズを応援することにした。私は、学生時代ネブラスカ州オマハ市に住んでいて、カンザスシティーに移ったのは、夫と一緒に住むためだったので、まだそれほど熱狂的なロイヤルズファンと言うわけではない。ただ、Kaffman Stadiumで二度もロイヤルズ戦を見たのだから、メジャーリーグ観戦の楽しさを教えてくれた恩返しに、もっとロイヤルズを応援していこうという気になった。そして、周りの人達と一緒に地元チームを応援するのは良いもんだと思った。まず、球場内にある巨大スクリーンに「もっと応援して!」とか、「音を出して!」などの合図で声を張り上げるのは、大変気持ちの良い物である。前回気付かなかったロイヤルズの応援の仕方も覚えた。”Let's Go Royals!" と言った後に、手拍子で「チャッ、チャッ、チャチャチャッ」とやるのである。これはなかなか一体感があって良い。

 テレビでコマーシャルが流される守備交代の時間帯に、球場では色々なエンターテーメントがある。Kaffman Stadium では、司会者が一人いて、彼が観客をインタビューしたり、クイズに答えてもらったりする。クイズに正解すると、回答者がTシャツを貰ったり、地元の店で「今日のチケットを提示すれば15%OFF!」になったりする。巨大スクリーンには、選手の写真のほかに観客も映るので、常にスクリーンに目を配っていないといけない。しかし、観客で映るのは、大抵ロイヤルズのユニフォームを着ている人たちなので、私はまだ一度も映ったことがない。座る位置にもよると思うが。あと、「キスカム」というのがある。これはハートの中に観客の中のカップルが映し出され、そこに映ったカップルはキスをしなければならないのだ。前回ヤンキース戦を見たときは、松井選手のファンなのか、日本人風のカップルが巨大スクリーンに映し出された。女の子が、「えー私できない!」というしぐさで、くびを横に振っていたが、最終的にはキスをして、観客から拍手を貰っていた。今回はホワイトソックスの選手2名がスクリーンに映り、一人はあわてて逃げ出し、残った方は一人で口を尖らせていた。

 ホットドックを、若いスタッフが観客に投げるサービスもある。この時は、皆立ち上がって大声を上げ、視線を向けさせるのに躍起だ。私もずいぶん頑張ったが、夫の斜め後ろの男性が1個キャッチしたのに留まった。この時夫も立ち上がっていれば、背の高い彼はきっと取れただろうに、このとき彼は、なぜか座っていたのである!「なんでもっと一生懸命じゃないの!」と妻は思った。こんなに私は頑張っているのに。(実際、私は他の誰よりも声を張り上げていた。)なんにでも、真剣な日本人である。

 6回目は面白い展開になった。先攻のホワイトソックスは、その前に1点、そして6回で2点を追加したのだが、後攻のロイヤルズも、なんと2点取得したのだ!この時は、皆大喜びである。私は立ち上がって拍手をしたのだが、立ち上がっているのは、私一人だけだった。

 夫はトイレ休憩(+タバコ休憩)のため、席を立ったが、帰って来たときに「ナチョス」というメキシコのスナックを持ってきた。メキシコのスナックといっても、アメリカでは一般に広く好まれている。とうもろこし粉版ポテトチップスである。これにスパイシーで液状のチーズをつけて食べる。なかなか美味である。アメリカでは、テレビでフットボール観戦をするときによく食べられる。

  Kaffamn Stadium には噴水がある。暗くなるとピンクや紫などにライトアップされ、大変きれいなのだが、私が使っているカメラごときでは、暗くなるとよく写らない。なのでライトアップされる前の噴水を取った。私の噴水写真コレクションがまた増えた。

 アメリカの野球場では7回目で「体操」が入る。私はまだ歌えないのだが、このストレッチ体操用の歌もあるのだ。確か「7回戦の体操」とかいう題名だったと思う。日本の球場でもこんなことをするのだろうか。

 この日は、大体の予想通り、ホワイトソックスが勝利したが、ゲーム終了後、金曜日だけの特別だという地元スーパーの提供で、花火が打ち上げられた。これはなかなか素晴らしい花火だった。地元の遊園地「ワールドオブファン」の花火など、足元にも及ばない。今まで見たことがない形の花火が次々に打ち上げられた。打ち上げる音が球場内を跳ね返り、花火が嫌いな愛犬ボジョなら、心臓麻痺を起こしていたであろう。それ程すごい花火だった。

 帰りはもちろん渋滞である。警察官総動員で交通整理をしていた。しかし、楽しい思いをいっぱいした後だったので、これもゲームの余韻の一つだと思った。