中尾 彰宏 教授

研究の目的

私の研究目標は、何処にいても誰とでも安心・安全・快適にコミュニケーションを行うことができる環境を構築することです。コミュニケーションのための基盤技術および応用技術(アプリケーション)は、我々の社会生活に非常に大きな影響を与えます。例えば、現在のインターネットは私たちの情報の閲覧・収集・ 抽出の方法を大きく変革した地球規模の通信基盤システムです。近年では、データセンターに設置された膨大な計算・ネットワーク・ストレージ資源を駆使して実装したクラウド型のソーシャルネットワークや動画共有などのコミュニケーションサービスもあります。世界中の人々を繋ぐインスタントメッセージやインターネット電話も世の中を大きく変革しつつあります。

現在、人々を繋ぐ情報通信サービスの多くは、インターネットの上に成り立っています。しかし、現在のインターネットにおける通信の仕組み、および、その上に実装されたコミュニケーションサービスに対し、安心安全性、堅牢性、効率性の観点からは問題が多く指摘されつつあります。そこで、従来のネット ワークの仕組みにとらわれない新しい情報通信基盤やアプリケーションの研究が始まっています。

私の研究室では、情報爆発時代を迎え、あらゆる情報に対するネットワークの利用方法が多岐多様になる中、ネットワークを自由な発想で白紙から創造・ 設計することを可能とし、さらにそれらを複数同時に収容することを目的とする情報通信基盤、および、その上で構築されるコミュニケーションサービスの研究を行っています。

進化するネットワーク仮想化

私たちが普段使っている「ネットワーク」という言葉は、データを伝搬する「リンク」とそのデータを送受する手続き(プロトコル)を解釈し、データを 送るべき次のリンクを選択するプログラムを実行する「ノード」を基本要素として構成される「情報通信基盤」を意味します。例えば、現在のインターネットに おいては、イーサーネットや光ファイバーなどはデータパケットを伝搬する「リンク」であり、ルータやスイッチは、データパケットのヘッダー情報をプロトコルに基づき解釈し、次に移動するべきルータやスイッチあるいはエンド端末へのリンクを選択するプログラムが実行される「ノード」です。ネットワークは、リンク資源だけではなくノード上の計算資源やストレージ資源も含むインフラなのです。私の研究室では、従来のリンク資源だけを仮想化してきたネットワーク仮想化とは異なり、リンク資源、計算資源、ストレージ資源など全体の資源を仮想化する、「進化型ネットワーク仮想化」の研究を進めています。

このような進化型のネットワーク仮想化により、要求の異なる複数のネットワーク・アーキテクチャやサービスを同時収容する基盤が実現できます。情報 爆発時代における多種多様のネットワークの仕組みやサービスを複数同時に収容するためには、従来のような画一的(one-size-fits-all)な 通信基盤ではなく、独立した資源の集合を構成し、自由にプログラム可能な仮想ネットワークを構築することが必要なのです。

オープンイノベーション

これまでのインターネットは、ネットワークの端点(エッジ)をオープン化し、様々なコミュニケーションサービスを可能にしてきました。多種多様な情報通信を実現するためには、ネットワーク内部も“プログラマブル”にするオープン化が必要だと考えています。例えば、私の研究室では、イン・ネットワー ク・データキャッシュでは、あらゆるルータやスイッチに冗長データをキャッシュする能力を持たせ、冗長トラフィック量を削減する研究を行っています。また、無線アクセスポイントを仮想化して仮想ネットワーク毎にプログラムを導入することを可能にし、キャッシュ機能や広告の埋め込み機能などの実証実験を進めています。このようなネットワーク内部のプログラム性がオープンになると、従来のインターネットでは実現できなかった革新的なコミュニケーションサービ スを実現することが可能になるかも知れません。

最後に

現在、私の研究室で進める研究プロジェクトは数多くあります。Software Defined Network(「SDN)、Deeply Programmable Network(DPN))、有線・無線統合ネットワーク仮想化テストベッド、端末・アクセスポイント仮想化、網内パケット処理、オーバーレイ(P2P)ネットワーク、ネットワークセ キュリティ、クラウドネットワーク、ソーシャルネットワーク、等々。これ以外でも世の中のコミュニケーションのあり方を大きく変革する可能性のある技術に は精力的に貪欲に取り組んでいきます。また、大学だけではなく企業の研究機関での経験、および、海外での研究経験を生かし、社会との繋がりを常に念頭に置いて、世界的に競争力のある研究を遂行します。