札幌激励集会2016

「植村隆さんを激励する札幌集会」は、2016年2月27日午後、かでる2・7大会議室で開かれた。植村さんが岩波書店から刊行した「真実~私は捏造記者ではない」は前日に発売になったばかり。植村さんの韓国カトリック大学への赴任の日も5日後に迫っていた。そして、札幌での裁判日程が確定し、いよいよ裁判モードにギアが入り始めてもいた。その3つのタイミングに合わせた集会となり、定員216人の会場はほぼ満員の盛況。闘いの決意と激励の言葉が熱く語られ、元気あふれる集会となった。

集会は午後1時半に開会。まず、実行委員会代表の林秀起さん(支え励ますOBの会)があいさつし、「札幌の裁判がいよいよ始まる。植村さんは韓国の大学で教えることになったが、あくまでも現場は札幌であり、これからも札幌での闘いが主戦場になる。この集会を契機に、植村さんを孤立させない、という私たちのこれまでの思いをあらためてひとつにして、サポートしていきたい」と参加者に呼びかけた。つづいて、植村さんと北星学園が受けたバッシングと提訴の経過について今川かおるさん(植村応援隊)が報告し、「植村さんはなんと不当な闘いを強いられてきたことか。このような理不尽なことが行われていいはずはないんです。これからも皆さん、いっしょに応援していきましょう」と訴えた。

■植村さんの講演

この後、植村さんが約40分間、講演をした。演題は「日韓の架け橋を目指して~小さな大学の大きな勇気を忘れない」。この2年間、植村さんはバッシングと闘い、名誉棄損裁判を起こす一方で、米国と韓国へ旅をし、産経・読売と対決をするなど言論の戦いも精力的に行った。それらの場面の写真や記事がスクリーンに映し出され、植村問題のすべてが凝縮される講演となった。植村さんは最後に、北星の教え子たちとの思い出を語った後、北星学園の平和宣言にある聖書の言葉「平和を創り出す人たちは幸いである」を引き、「これから私は、私の心の中の北星を守りつづけ、若い世代と共に平和を創り出す行動をして行きたい。それは、私がバッシングの中で、しなければならないと思ったことなのだから」と決意を述べた。

■弁護団の説明

続いて、弁護団事務局長の小野寺信勝弁護士から、4月に始まる札幌訴訟の意義、内容と争点、被告側の主張、移送問題の経緯、傍聴の意味などについて詳しい説明があった。以下は、その一部要旨。

▽裁判はこれから始まるが、これまでの到達点、提訴後に私たちが獲得したものがいくつかある。まず植村さんをめぐる情勢の変化。一時期たいへんな脅迫等を受けていたが、現状において、あのような攻撃は収まっている。また、韓国の大学に赴任が決まったということ、これも訴訟と訴訟に関連した市民や大学の動きが関係している。そして、植村さんの記事を捏造だと決めつけ批判する雑誌や言論が、かなりなくなった。また、北星学園大への攻撃によって植村さんの仕事を奪おうという画策もあったが、北星学園大が毅然とした態度によって植村さんの雇用を守ってくれた。これも彼らをあきらめさせたひとつの要因ではないか。

▽移送をめぐるやり取りの中で、被告側の象徴的な主張があったので紹介したい。Willを出版しているワックが、移送に関する意見書の中で植村批判をしているが、彼らの主張は、「慰安婦の強制連行という歴史的事実は存在しなかった」という基本認識だ。「吉田証言という加害者側の証言が出てきた、しかし被害者側の証言がなかった、それが植村さんの記事によって被害者の証言が出てきて、虚偽証言の裏付けをした、吉田証言と植村さんの記事によって強制連行が捏造された」。これがワックの主張だ。かなり論理が飛躍した、陰謀めいた主張をしている。植村さんを批判している人たちの思考回路がよくわかる。

▽移送をめぐっては、北星学園のOBを中心にわずか2週間で2000人の署名が集まり、これが大きな力になった。地裁でも高裁でも私たちの主張で大きく変わった点はない。唯一、地裁と高裁で事情が違うのは、この署名の存在だ。札幌高裁はこの署名の後押しによって判断を覆した、と私たちは思っている。

▽裁判所がどのようなスタンスでこの事件に臨んでいるのかはわからないが、不安を抱えている、または判断するのがこわいと思っているのではないか。それは、移送の問題で、署名によって判断を変えたことからもいえる。私たちから皆さんにお願いしたいことは、裁判の場にぜひ足を運んでいただきたい、ということだ。裁判官が不安を抱えている中で、皆さんに参加していただいて、植村さんの言っていることはおかしいことではない、植村さんを勝たせる判断をしてもなんらおかしいことではない、と裁判所を後押しする行動として、ぜひ傍聴していただきたい。

最後に6人の方からの激励スピーチがあった。うち3人の一部要旨を収録(発言順)。

▼神沼公三郎さん(負けるな!北星の会呼びかけ人、北大名誉教授)

「10年以上も前に国立大学の法人化に反対する運動をしていたころ、櫻井よしこという人も同じように反対のキャンペーンをしていた。私たちの集まりに呼ぼうかと思ったことがあったが、ギャラが高いとかいう理由でやめた。いま思うと、やめてよかった(会場拍手)。北星の問題で植村さんとつきあってきて、植村さんは土佐のイゴッソウだ、ほんとに強い人だと思う。いま北海道の私立大学では教員の身分をめぐる紛争が数件あり、私は裁判や労働委員会の支援にかかわっているが、残念ながら連戦連敗だ。ただ、情報がきちんと発信され、卒業生や学生たちが応援、支援してくれるケースでは希望が持てる展開をしている。北星の場合は、毅然とした対応があり、それが卒業生、市民、学者、弁護士に広がった。これからも、北星はその努力を続けてほしい」

▼上田文雄さん(弁護士、前札幌市長)

「植村さんとは札幌市役所の週2回の記者会見で議論し合った仲であり、記者として尊敬してきた。植村さんがいまここに元気な姿でいられるのは、ここにおいでになられた皆さんの力だと思う。いま、植村さんは立ち上がり、果敢に闘いの先頭に立っている。そして、植村さんを支える札幌市民がいる。これは歴史的な大事件だと思う。このことを私たちは大事に、大事にし、私たちの財産として、繰り返し、繰り返し伝えていきたいと思う。いま、表現の自由を抑え込み、内心の自由をあからさまに制限しようという動きが進んでいる。植村事件を契機として、危機というものがこういう形で来るのだということを伝える文化を作っていくことに私は努めていく。皆さんのお力をいただけたらと思う」

▼田村信一さん(北星学園大学学長)

「大学がさまざまな対立に巻き込まれたり、騒然となることはこれまでにもあり、団塊の世代の私も経験はしているが、今回の北星学園大への攻撃の中、メールや電話、街宣車から国賊とか売国奴という言葉が躍っていたことには慄然とした。戦前、言論が弾圧され戦争に向かっていた時代がこうではなかったのか、と思った。また、一部のマスコミの記者が、大学の制止を振り切って学内に入り込み、植村はどこだと探しまわることもあった。異様なできごとだった。大きなショックを受けたことを、いま思い出している。植村さんが行かれる韓国のカトリック大学は、文科省の海外提携格付けランキングではトップ100に入る大学と聞いている。植村さんが招聘教授としてキャリアを積まれ、新しい視野を広げられるよう、大いに期待している」

集会は3時30分に終了。その後、会場を移して交流会が開かれ、45人の参加者が植村さんを囲んでにぎやかに歓談した。


■実行委員会 激励集会実行委員会の構成団体は次の通り。50音順。 カッコ内の氏名は集会で発言または激励スピーチをされた方 植村応援隊(今川かおるさん)、植村隆さんを支え励ますOBの会(林秀起さん)、カトリック札幌地区正義と平和協議会(西千津さん)、グリーン九条の会、大学の自治と学問の自由を考える北星有志の会、日本ジャーナリスト会議北海道支部(山田寿彦さん)、日本軍「慰安婦」問題の解決をめざす北海道の会(金時江さん)、北海道宗教者平和協議会(相馬述之さん)、北海道民主医療機関連合会有志


text by H.N  ,  photo by K.I