札幌第4回 2016.11

【札幌地裁2016年11月4日】

▼入廷する植村さんと小野寺弁護士(左)
被告側、一部表現を「事実の摘示」と認める
第4回口頭弁論は11月4日、札幌地裁で開かれた。7月末以来約3カ月ぶりの裁判。裁判所周辺の街路樹の紅葉は終わりに近づき、冬の訪れが近いことを実感させた。今回も傍聴券交付の行列ができ、抽選となった(定員71席に対し87人行列)。
札幌訴訟では前回まで、櫻井氏が植村さんに浴びせた名誉棄損表現は「事実の摘示」なのか、「意見、論評」なのか、が主たる争点となっていたが、この日の陳述で被告側はこれまでの主張を変更し、初回以来すべて「意見、論評」としていたものの一部が「事実の摘示」であることを認めた。この点について、植村弁護団の小野寺信勝弁護士は、被告らは、従前、各表現を論評であると主張してiいたが、今回提出された書面では、各表現のうち事実摘示であることを認める主張がなされた。被告出版社が、事実摘示性を主張する表現は少なくとも論評か事実摘示かという争点は解消し、一般読者の読み方から理解される摘示事実の内容のみが争いが残されたことになる」と意見を述べた。
このやり取りを踏まえて、小野寺弁護士は裁判後の報告集会で、「これで事実摘示か論評かについて、お互いの見解が明らかになった。(基本的な)第一の争点のやり取りを終えた。裁判は次のステップに進むことになる」と説明した。名誉棄損をした表現者は、その表現が「事実の摘示」であれば、その事実が真実であるか、真実だと信じてもやむを得ないことの証明が必要だ。次回以降は、櫻井氏の表現が「真実である」のか、もしくは「真実と信じるについて相当の理由がある」のか、について双方の主張、立証が行われ、さらに植村さんが受けた「被害・損害」も大きな争点になる。


小野寺弁護士の意見陳述は次の通りです。第2項で、事実摘示・論評について主張しています。

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原告訴訟代理人弁護士 小 野 寺 信 勝

原告代理人として、本件訴訟の進行に関して意見を申し上げます。

 1 被告櫻井よしこ氏への求釈明

前回口頭弁論期日において、原告は、櫻井よしこ氏が雑誌等に掲載した各表現はいずれも事実摘示であると主張しました。これに対して、被告らは、裁判所より、9月末日までに反論書面を提出するよう促されました。

しかしながら、被告出版社からは準備書面が提出されましたが、櫻井よしこ氏から準備書面が提出されておりません。

ところで、櫻井氏は、第1準備書面において、被告櫻井は名誉毀損表現全てについて、「櫻井論稿は「事実摘示」ではなく「意見」ないし「論評」である」(第1準備書面・8~9頁)と主張しています。

しかし、今回、各出版社から提出された準備書面には、櫻井氏の表現を事実摘示と主張するものが含まれ、(例えば、甲7号証「過去、現在、未来にわたって」から「最重要の事柄を書かなかった」まで、甲8号証のうち「氏は韓国の女子挺身隊」から「『太平洋戦争犠牲者遺族会』の幹部である」まで)、被告櫻井氏と被告出版社の主張に矛盾があります。

そこで、櫻井氏は、被告出版社の主張を援用するのか、仮に援用する場合は、原告の第1準備書面に反論する予定はないか釈明を求めます。

 2 事実摘示・論評に関する主張

被告出版社の準備書面によって、当事者双方の各表現の事実摘示・論評の見解が明らかになりました。

被告らは、従前、各表現を論評であると主張しておりましたが、今回提出された書面では、各表現のうち「事実摘示」であることを認める主張がなされました。

被告出版社が、事実摘示性を主張する表現は少なくとも論評か事実摘示かという争点は解消し、一般読者の読み方から理解される摘示事実の内容のみが争いが残されたことになります。

たとえば、新潮社は、週刊新潮2014年4月17日号に掲載された櫻井氏のコラム中の次の表現-「氏は韓国の女子挺身隊と慰安婦を結びつけ、日本が強制連行したことの内容で報じたが、挺身隊は勤労奉仕の若い女性たちのことで慰安婦とは無関係だ」-を事実摘示であると認めましたが、植村氏の「故意」「意図的」といった主観的表現を読み込むことは一般読者の読み方に反すると主張しています。

しかしながら、ある文章を読む際に、一般読者は当該センテンスを切り出して意味を読み取るのではなく、「意図的な虚偽報道」という見出しの情報を得てから本文を読み、その見出しを含めた前後の文脈から表現がいかなる事実を摘示しているのかを理解するはずです。新潮社の主張は表現を細分化し、前後の文脈を無視することで摘示事実を著しく狭く解釈する点で一般読者の読み方に反しております。

原告は、次回期日までに、事実摘示か論評か争点となっている表現については、原告は更に反論し、被告らの摘示事実の誤りについても準備書面を提出します。

 3 12月16日以降の期日

本件訴訟は争点が多岐にわたります。現在、主に各表現の事実摘示性につき主張を闘わせておりますが、今後、真実又は真実相当性に関する主張・立証、損害に関する主張・立証等、が想定されます。

原告は、事実摘示性と平行して、これらの争点についても主張・立証を進める準備を進めております。

特に、本件は、著名な言論人が、雑誌やインターネット上で、原告が慰安婦記事を「捏造」したなどと執拗に攻撃した事案ですが、原告の被害を理解するうえでは、何より家族や勤務先にも脅迫等の大きな被害が生じたことを含めた被害の実態を理解する必要があると考えています。原告は、年度内を目処に、損害に関する主張書面を提出したいと考えています。

次回期日までは進行協議期日で示された審理計画に基づき進めて参りましたが、

12月16日以降の期日は決まっておりません。次回期日終了後に事実摘示以外の争点も含めた今後の審理計画につき進行協議を設けていただくことを希望します。

以上