【東京地裁2015年6月29日】 ▼植村さんと、弁護団の小林節、中山武敏氏(東京地裁前で) 以下、「植村応援隊ブログ」2015.7.1より転載します。 植村隆さん名誉棄損裁判の東京訴訟第2回口頭弁論が6月29日(月)午後3時から東京地裁103号法廷で開かれた。 廷内の傍聴席から見て左側の原告・弁護団席。開廷の15分前には、最前列に植村さんはじめ、中山武敏、穂積剛、小林節、神原元の各弁護士が着席し、後ろの列にも黒岩哲彦弁護士、角田由紀子弁護士らが陣取った。宇都宮健児弁護士らも続々駆けつけ、この日顔を見せた弁護団は18人となった。 対する右側の被告・弁護団席には、喜田村洋一弁護士ら2人の代理人が席に着いた。喜田村弁護士は、ぽっちゃりした体格。やや伸びた白いあごひげをなでて悠然と構える。98の傍聴席は、第一回に続きこの日も満席となった。 ■小林節弁護士の意見陳述 午後3時、裁判官3人が入廷した。「それでは手続きを始めます」と裁判長。まず準備書面や書証の提出を確認した。 すぐに原告弁護団の小林節弁護士(慶応大名誉教授・憲法)が立ちあがり、「本件訴訟の意義」を、口頭で要旨次のように述べた。じゅんじゅんと説く静かな口調だった。 「私が植村さんの弁護団に加わり会見にも出たところ、旧知の右翼団体幹部から電話があって『植村という売国奴といつから友達になった』と言われた。そこで彼ら数人に会い、この裁判の書面を渡して『ともかく10分間読んでほしい。そのあとディスカッションしよう』と読んでもらった。半分は知的に納得してくれた。半分は『お前が言うなら信じる』ということで終わった」 「私たちは歴史的問題としての慰安婦について論争する意図はありません。私どもがここにいるのは、植村隆さんへの名誉毀損、それにご家族に対する人格侵害のことに関心があるからです。論点は、事実認識の問題として、植村さんは捏造記者であるか否かの一点です。つまり、ありもしない事実を作り上げて報道したのか否かだけです。私が資料を読む限り、植村さんが記事を執筆した当時、韓国において『挺身隊』と『慰安婦』は混用されていた。植村さんも混用したが、我が国の他の複数のマスコミも混用していた。それが後に峻別されるようになって、立証もせず「捏造だった」と決めつける。イデオロギー論争で勝手に相手を決めつけるのは、むなしい論争だ。そういう決めつけがなされていたと確認した。決めつけた側に悪意があり、植村さんの名誉が傷ついた典型的な名誉棄損です」 「『植村記者は捏造記者呼ばわりにも反論しなかったじゃないか』」という主張もあるが、私どもは他者から突然いわれなき批判を受けたとき、いちいち反論する義務はない。反論しないから『捏造』などと決めつけられるいわれもない」 「植村さんが『捏造記者』と言いつのられた結果、匿名の陰湿で危険な攻撃が、植村さんの家族や、息子の同姓の同級生にまで行われる。『捏造記者の娘だから』として、10代の女の子までが『自殺させる』などという攻撃をされた。私は、それを見過ごせません」 「したがって、今は何よりも、植村さんに『捏造記者』とレッテルを張った原点を糺さなければならない。そうしてレッテルを取り除いた後にこそ、公平な歴史論争ができる。でなければ、歴史論争ではなくただの集団いじめになってしまう。被告には、植村さんが捏造記者だというなら証明していただき、証明ができないなら責任をとっていただく。そういう意図で弁護団に入りました。以上です」 ■穂積剛弁護士からの求釈明陳述 続いて原告側の穂積弁護士が立ち上がり、被告側が提出した準備書面について、3点の釈明を求めた。 第1点として、被告側の準備書面に被告の記述は「推論である」という表現がいくつもある点を指摘し、「推論とは、事実摘示か論評か」とただした。つまり、植村さんの記事を「捏造」などと記した西岡氏が、それを事実として書いたのならそれが真実であることなどを立証しなければならない。そうではなく、西岡被告は単なる論評、意見として書いたということにしようとするのか。そのどちらなのか、という点の確かめである。 被告側の喜田村弁護士は、「私は原告側の求釈明の書面をけさ見たばかり。必要があれば改めて書面で回答したい」と、座ったままで答えた。これに対し穂積弁護士は、「平成10年の最高裁判決を喜田村弁護士はよくご存じのはず。ここで答えられるのでは」とたたみかけた。 平成10年1月30日に最高裁第二小法廷は、三浦和義氏の朝日新聞社に対する名誉棄損訴訟で、「読書歴等から犯行動機を推論した記事は、推論結果を事実として摘示したものというべきだ」と判断している。この時の三浦氏の代理人が喜田村洋一弁護士である。(判決、http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=63041) しかし喜田村弁護士は「平成9年と10年に最高裁判断が出ている。ここで話しても生産的ではないので、書面でやりたい」と即答を避けた。裁判長も「(即答は)無理だと思いますよ」と述べ、後日書面で答えることになった。 求釈明の第2点として、穂積弁護士は西岡論文の他のいくつかの部分を挙げ、これらについては「捏造したのは事実である」と主張するということか、と質問。これについても喜田村弁護は「検討したい」と、座ったままかわした。 求釈明の第3点として、穂積弁護士は「被告は、真実性の抗弁あるいは真実相当性の抗弁を主張しないのか」と問うた。西岡氏が「捏造」と書いたことがもし「事実の摘示」であるのなら、西岡氏が責任を免れるためには、そのことが真実であったか、真実と信じるに足りる相当性があったことを立証しなければならない。そういう主張をするのか否か、と迫ったのである。 喜田村弁護士は、「その部分については、もちろん対応いたします。ただ時間はかかります」と答えた。裁判長が「次回期日までは4カ月あるが、書面はいつになるか」と聞き、喜田村弁護士は「きょうはどういう順番で進むのか分からなかった。8月末くらいには(釈明等の)書面を出したい」と述べた。裁判長の「次回は10月26日午後3時から、この法廷で行います」との確認で、午後3時15分に閉廷した。 この日は司法クラブでの記者会見はなかった。 終了後、午後4時から参議院議員会館の講堂で報告集会が持たれた。ここにも100人を超える人が参加、報告集会だけに駆けつけた学生もいた。 ■神原元弁護士からの報告 神原元弁護士が裁判の現在の段階を報告した。 この日の第2回口頭弁論での主な手続きは、被告側の準備書面が出て来た事、それにより被告側の主張が見えて来たことだ、とする。その上で、簡明に法的な解説をした。 何かを書いて人の社会的評価を低下させたという名誉棄損訴訟でポイントとなるのは、被告が書いたことが事実なのか論評なのかだということだ。「誰誰はこういう嘘をついた」と書けば、それは事実。「誰誰は悪いやつだ」と書けば論評(評論)しただけ、つまり事実の摘示ではなく意見を述べたにすぎないこととなる。今回、被告が主に主張してきたのは、「『捏造』と書いたのは事実でなく論評だ」という主張だった。 一般的には「意見」を言うことは名誉棄損になりにくい。いま入口で、まさにそこが問題となっていると、神原弁護士は言った。 しかし続けて神原弁護士は、「被告側は『論評だ』と言うが、西岡氏は『植村さんは義理のお母さんを有利にする目的で、意図的な嘘を書いた』と書いている。『嘘つきだ』でなく、『嘘を書いた』とまで書いているのだ。その記述について被告側は「西岡氏は推論を書いたのだ」と抗弁して来ているため、きょうの法廷で「推論とは事実か論評か」などの求釈明をしたのだ、とした。 求釈明の最後に「そもそも被告側は、真実性の主張をするのかしないのか、次回までに回答せよ」と迫り、次回の書面で回答しますという答えだったことも紹介した。仮に西岡氏が書いたものが「事実の摘示」だったとするのなら、西岡氏は「植村さんが捏造した」ということが真実であり、あるいは真実だと西岡氏が信じる相当の理由があったことを証明しなければならない。さらに書いたことが公共の利害にかかわり、公益が目的だったとして、違法性阻却を主張することになる、という。 神原弁護士は、「きょうのやり取りは、いわば前哨戦。次回10月26日に双方の主張が出そろい、証拠調べについてもどこまで出て来るかがわかるだろう。次回の第3回口頭弁論が注目だ」とまとめた。 <報告集会の詳報は、サブページ「第2回公判 報告集会」にあります> |
東京第2回 2015.6.
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