〈この詳報は、発言等をほぼ逐語的に記録したものですが、完全とは言えないので、引用や転送の際はその旨に十分ご留意ください〉 植村さん裁判報告集会 4月27日午後5時、参院議員会館講堂 ■植村隆氏の話 元朝日記者で北星学園大非常勤講師の植村です。夕方も早い時間にありがとうございました。簡単に報告させていただきます。 きょうは第1回口頭弁論で書面のやりとりで始まるが、原告意見陳述の時間を設けていただき約10分報告しました。全部は朗読できないが,私がどうしても許せないことがあったのでその問題をしゃべりました。そこのところだけ読んでみたいと思います。 ------------------------ (以下朗読) 今回の名誉毀損裁判を提訴してから約20日後の2月初めのことです。私が勤務する札幌の北星学園大学の学長宛に、またしても脅迫状が送られてきました。入学試験の前、私を雇っていることを理由に、入試の際に受験生や教職員に危害を加えると脅していました。脅迫状の中には、私や私の娘の名前が書かれていました。こういう内容の書き出しでした。 <貴殿らは、我々の度重なる警告にも関わらず、国賊である植村隆の雇用継続を決定した。この決定は、国賊である植村隆による悪辣な捏造行為を肯定する>ものだ。 そして最後は、娘の実名をあげて、こんなような殺害予告を繰り返していました。 <必ず殺す。何年かかっても殺す。何処へ逃げても殺す。絶対にコロス> (朗読ここまで) ----------------------- ぼくは悩みました。娘には見せられないと。警備が強化されたが娘に言えなかった。しかし娘に呼びつけられて「何かおかしい。学校の行き帰りにパトカーがついてくる」。 「お前を殺すという脅迫状が来たんだ」。娘は何も言わず黙って聞いていました。 ------------------------ (朗読再開) 娘への脅しは、これが初めてではありません。昨年8月には、インターネットに実名と顔写真がさらされ、誹謗中傷が溢れかえりました。例えば、こんな内容です(甲12)。 <こいつの父親のせいでどれだけの日本人が苦労したことか。自殺するまで追い込むしかない><この子をいじめるのは『愛国無罪』。堂々といじめまくりましょう><国家反逆の売国奴 植村隆 の娘といった看板を背負って一生暮らさなければならない> 私はいま24年前に書いた記事で激しいバッシングを受けています。しかし、そのときには生まれてもいなかった17歳の娘が、なぜこんな目にあわなければならないのでしょうか。私には愚痴をこぼさなかった娘が、地元札幌の弁護士さんに事情を聞かれ、ぽろぽろと涙をこぼすのを見た時、私は胸がはりさける思いでした。 (朗読終わり) --------------------------------- 絶対に許せないと思いました。91年8月に被害体験をしゃべり始めたことを挺対協に取材して書いた。当時韓国人の妻がいて、慰安婦の取材をしていたが、母親の団体遺族会とはまったく別の団体。挺対協のことを書いたということでバッシングが始まる。朝日にいたときはそんなに被害はなかったが、神戸の女子大に転職が決まったときに捏造記事だと書かれて、嫌がらせの攻撃がいって私の就職がフイになった。ついに娘を殺害するとまで言われた。この私を捏造記者と言っている西岡さん、それをまき散らした週刊文春の人たちには司法の場でも反省してほしい。 私は文芸春秋にも世界にも反論を載せている。「あたかも強制連行のように書いている」というが、産経新聞も「強制連行された」と2回も記事を書いている。事実に向かい合ったらどこの記者もそういう記事を書いた。そういう時代を忘れ去ったかのように捏造と書いている。 先ほど記者会見で「なんでそんなにバッシングされているのか」と聞かれた。慰安婦を発掘した記者。売春婦だった老女、裁判を起こした弁護士、問題を国際化した自称NGOは「日本を貶めた反日日本人」だと書いている。なるほどと思った。反日、日本を貶めたという言説をまき散らしている西岡さんに反省していただきたい。 ■有田芳生参院議員の話 選挙関連の会議があるので先に失礼します。 植村さんの裁判は、ヘドロのように汚く広がっているいまの日本社会をきれいにしていく重要な裁判だと考えている。おぞましい脅迫状が来たと植村さんが紹介された。そんなことは絶対許してはならないと、法務委員会で植村さんの娘さんへのとんでもない言説を何とかしなければと質問した。上川法相は「許せない」と語った。語るだけなら何もそれ以上のことはなされない。実質的に食い止めるためには、だれがそんなことを発したか明らかにしなければならない。 神原弁護士からヘイトスピーチ問題で闘う仲間だが、ネット上の脅迫行為をやめさせなければならない。ツイッターも扇動脅迫行為は徹底して削除するという動きがようやく始まっている。それを身のある者にしなければならないと思っている。 もう一点。日本社会がヘドロのようにひどい状況というのは政治の世界でも、集団的自衛権に関する安保法案を「戦争法案」と福島瑞穂議員が言ったところ「削除せよ」と言った。民主党の小西ひろゆき議員が「狂信的官僚集団」と発言したところそれも「削除せよ」と言われている。表現規制、言論規制が続いており、そんなものは絶対許さない立場で取り組んでいくことを合意している。 植村さんの裁判は、いまの社会、政治のもっともひどいところをきれいにしていくための裁判だと思っており、勝利のために尽くしていきたい。がんばっていきましょう。
■神原元弁護士の話 本日は第1回法廷なので、原告団から訴状が陳述された扱いになっている。訴状の内容は説明している通り。週刊文春や西岡の言説によって名誉が毀損されたという訴状。これに対して被告側から答弁書が提出された。法廷に読み上げられた扱いになっている。請求を棄却せよと。 主張がいくつかあるが、理論上、あちらの主張は「捏造は事実の摘示ではない。論評である」と。意見を持ったとか評論したというものであると。そういう反論をしている。 事実関係では、 1、植村さんは、金学順さんが言っていない「挺身隊」という経歴を書いている 2、キーセンにいたという重要な事実について触れていない 3、植村さんは義母が起こした裁判を有利にするため強制連行を捏造する動機があった。 と主張している。 これに対しておおざっぱに反論した。 1、「捏造」とは意図的に事実を改ざんするということ。単なる評論ではない。西岡さんは自分の本で「捏造は紙面を使って意図的なウソを書いた」と主張している。間違いではなく意図的なウソをつくと。これは評論ではなく事実摘示であると主張した。 2、金学順さんが言っていない経歴だというが、これは91年8月の韓国東亜日報。「挺身隊」という字が見える。金さん本人が挺身隊といっていた。当時は慰安婦のことを挺身隊というのは当たり前だった。 3、キーセンに触れていないというが、産経新聞は金学順さんの裁判について触れている。91年8月の読売新聞も触れていない。自分たちだって書いていない。他の人も同じように書いているのになぜ植村さんだけ捏造なのか。読売新聞は植村さんとまったく同じ記事を書いているのに。 4、強制連行を捏造する動機があったという主張。そもそも植村さんが取材を始めたのは記事が出る1年以上前。植村さんが強制連行とは書いていない。産経新聞は「中国・北京で強制連行された」と書いている。なぜ植村さんについてだけ強制連行を捏造する動機があるといえるのか。 大枠で反論したが、被告側はさらに次回の6月29日の法廷で詳細な主張をしてくるので、それに反論する。現時点では全然話にならないというのが現時点の感じかなと思っています。 今日の裁判長は植村さんの話は一生懸命に聞いていたなと。 ■上田絵理弁護士の話 札幌の弁護士です。桜井よしこさんと三社に名誉毀損の訴訟を提起している。2月10日に提訴し、4月17日に第1回期日がある予定だったが事情があって止まっている。札幌の弁護団は総勢106人おり、ほぼ9割以上札幌の弁護士。メンバーも1年目から年配の先生までたくさんの先生とやっている。そこまで弁護団がふくらんだのは、植村さんに対する被害の甚大さもあるが、記事捏造という言説がテロにつながる言動。言論の自由や民主主義を脅かすということが盛り上がっていったところが大きな要因。 昨年夏から弁護団会議をやっている。週1回程度議論して訴訟に向けて準備してきたが、被告4者から「東京への移送」という申し立てがなされた。その大きな理由は、被告4者とも東京に所在し、日程調整も便利がいい。証拠調べや証人を呼ぶのは東京のほうが便がいい。植村さんは東京でも裁判を起こしているので東京でやったほうが統一的な判断ができるのではないかと。 日程調整と言うが原告側はほとんどは札幌。日程調整も前々からやればいい。札幌の訴訟は桜井さんの言説なので東京と一緒にやる必要はない。植村さんが住んでいて、北星学園大がある札幌でやることに意味があると主張。5月あたまに判断が出ると思う。勢いを止めることなく闘いに備えようとしている。植村さんの意見陳述にも感動したので、そういうものも共有していきたい。 【司会】5月の連休明けには判断が下されると言うことですね。ホームページやフェイスブックでお知らせしていきたい。つぎに、慰安婦問題に関する名誉毀損裁判で、吉見義明さんの裁判の団長をしている大森典子弁護士。同じ裁判長が担当している。 ■大森典子弁護士の話 吉見事件は橋下徹大阪市長が「慰安婦制度が必要だったことはだれでもわかる」と発言したのは2012年5月。それに対して橋下氏が弁明すると言うことで5月27日に外国特派員協会で記者会見した。そこに同席した桜内文城衆院議員が発言した。「吉見さんの本、これが捏造であることは明らか」と。この方の本が捏造だと明らかと発言したので、内容証明で取り消せと求め、謝罪も取り消しもしないということで裁判になった。 植村さんのほうで「学者と新聞記者にとって捏造は死刑判決と同じ」と発言された。学者にとって捏造といわれることは学者生命を奪われること。放っておけず裁判を起こした。記者である植村さんも吉見さんも引くに引けない一線。 共通点は、捏造という言葉をめぐっての裁判である。慰安婦問題に関しての発言が問題になっているということ。何より民事33部という同じ裁判体でやりました。たぶん右陪席の方が違うので、ちょっと構成が違うかなと。裁判長と左陪席が一緒なら、先行するこの裁判で植村裁判も占えるということで責任を感じています。吉見裁判で負けてはならない。変な裁判にしたら大変なことになると身の引き締まる思いで植村さんの陳述を聞いていた。 いま日本社会は「ウソも100回言えば本当になる」とでたらめの発言が繰り返し飛び交っている状況。いま日本の社会は言葉の重みが軽んぜられている。捏造だと言いまくったり、ウソでも週刊誌でも馬鹿馬鹿しくなるようなことが出ているが、あほらしいとほっておけない。吉見さんも学者で忙しいところを膨大な時間を取られている。一人ひとりが立ち上がって許してはならないとやっていかなければならない。産経新聞がでたらめな記事を出しているのを抗議したり訂正を申し入れるのはエネルギーがかかるが、やらないといけない。植村さんも大変だと思いますが、徹底的に相手を打ちのめさなければいけない。 ※会場参加者の意見と質疑 【司会】植村さんはご本人、家族まで攻撃を受けている。同じように攻撃を受けている人がいます。徳島県教組業務妨害事件。在特会、会員ら10人に1683万円の損害賠償を求めた。徳島地裁は一部請求を認める判決を出した。四国朝鮮学校への運営資金を出した組合事務所で居座って罵声を浴びせて暴行した事件。 【女性】きょう徳島から来ました。私も同じように在特会によるヘイトスピーチを目の前で受けた被害当事者。法廷での口頭弁論で、植村さんは「捏造記者」との攻撃に対して憤りを感じました。私にも痛切にわかりました。私が2010年に受けた「募金詐欺」?詐欺師」とレッテルを貼られたのと同じ経緯だった。 私は雑誌で植村さんの記事を読んで、手に取るようにわかった。同じ経験をしたからです。標的にレッテルを貼って、事実でないことを一方的に書き込み、事実であるかのようにでっち上げて個人を追い詰めて、口封じをする。その場に居合わせた警察官は、私が目の前で攻撃されているのに制止することも退去させることもしませんでした。ちょうど2010年4月14日で、教組の役員として業務をしていたら、ドアをバーンとあけて「売国奴」「国賊」という怒号とともに9坪の書記局へ男女十数人が乱入してきました。 私の目の前で拡声機で罵倒を繰り返しました。当時は何がなんだかわからず、体の心棒をつぶされたような思いがしました。どうも日教組が取り組んで子ども救援カンパの一環として、四国朝鮮学校に支援カンパをしました。拉致犯罪国家に資金を流していると思い込んで「募金詐欺」と言った。 しかし朝鮮学校の子どもたちは拉致問題と関係ありません。支援団体を結成して刑事告訴、民事提訴をして闘っています。司法の救済亡くしてこの問題の解決はないと考えたからです。表現の自由の悪用、言いたい放題を許してはならない。刑事裁判は8年かけて8人を有罪確定となった。しかし私の名誉毀損は不起訴となった。民事裁判は3月に一審判決でしたが、民族差別という認定がされず、いま控訴した。植村さんの裁判も根っこは一緒だと思います。それは戦後の日本社会があいまいにして置き去りにしてきた歴史認識、差別の問題。植民地支配とどう向き合ってきたのか。 朝鮮学校への差別がその証し。性差別の極みである慰安婦問題もいまの政権が葬り去ろうとしている。植村さんの裁判は従軍慰安婦が歴史の真実だと司法に問う意義のある裁判。闘わなければ、右派の言論が日本を覆い尽くし「美しい」だけの日本になってしまう。私も裁判をたたかっていこうと思っています。植村さんもがんばってください。 【司会】会場からの質問を受けます。 【ジャパンタイムズ川端】ネット上の言論で、裁判に訴えなくても言論で勝負すればいいじゃないかといわれているが、言いたいことは。 【植村】私は去年2月の週刊文春からバッシングが始まった。私はまず捏造なんかしていない。捏造をすればその雇用している朝日新聞が調査すべきだと。朝日としては不問にして放置していた。ところが日本で影響力がある雑誌に出た。捏造じゃない。だから朝日新聞に「私を取り調べて」といって検証してもらった。それが8月5、6日に特集が出た記事の一部。「事実のねじ曲げない」と書かれた。まず出身母体がきちんと検証することが必要だと思った。私が捏造ではないと言っても、あなたの出身母体はどうかと言われるだろうから。 しかし朝日は吉田清治証言の取り消しをした。私もその一味のようになってバッシングを受けた。捏造記事ではないと朝日が書いたその数日後に書き込みが始まった。言論を見ていない人がやっている。私は朝日新聞で捏造ではないと書いてもらい、雑誌や新聞、テレビの取材にも応じて説明した。きちんと説明した会社は捏造とは報じていない。文芸春秋の1月号にも手記を発表して2月の世界にも手記を書いた。かなり詳しく、当時の体験や証拠も書いたが、捏造というふうに西岡さんも桜井さんも言っている。社会的な怒りを惹起しているのは朝日や植村だとあおる発言が出てきている。これは言論対言論ではない。小林節・慶応大名誉教授は「いったん敵としたら言論対言論ではない」といっていた。 彼らが言いふらしていることがネットに出ている。これは司法的な決着をつけなければ、私は私の家族や大学、学生、教職員への攻撃は止まらないと思った。もちろん私は書いていきますが、捏造ではないと証明したいと。両面作戦です。 【神原弁護士】昨年の10月23日の文芸春秋には「朝日新聞よ被害者ぶるのはおやめなさい」と書いている。桜井よしこさんは「社会の怒りをかき立て、暴力的言辞を惹起しているのは朝日新聞や植村氏ではないでしょうか」と。嫌なら頭を下げろとかいている。言葉を失いますが、一般論としては脅迫は反対するとも書いているが、どういう姿勢をとっているのか。彼らが対抗言論という法理をまじめにやるなら、彼らこそ徹底して「犯罪をやめろ」と言わなきゃならない。そうじゃない。この件に関しては言論対言論ではない。 ヘイトスピーチで「朝鮮人をぶっ殺せ」という言論にどういう対抗がありうるのか。売国とか反日とか捏造とか言う主張に論理的な議論が成り立つのか。家族に殺人予告までされていて、司法救済しかあり得ない。 【植村】西岡さんが私を誹謗中傷している「よくわかる慰安婦問題」の本220ページに?実際には言っていない奴隷狩りのような慰安婦狩りを言いつのり、平気で?を書く新聞記者。これらすべてが日本人だ。反日日本人だちだ。彼らは国際社会に膨大なネットワークを築き、美しい日本を貶め続けている。この人たちの反日執念こそ私たちの敵だ」と。西岡さんは私が敵だと思っている。西岡さんとは面識がほとんどない。敵だと思ったことはありません。ただきちんと論破して責任を取ってほしいと思っている。敵とか味方とか言うことでいい世の中ができるわけがない。 小林先生の記者会見メモはパンフレットに出ている。21ページに「植村名誉毀損訴訟に関する私の見解」として「この植村攻撃事件は単なる植村いじめである」「架空の事実を根拠として未成年の子どもにまで攻撃が向けられた」「冷戦時代のイデオロギーと同質で、相手を敵とみなしたら?をついてでも罵倒する手法である」。 西岡さんの?この人たちの反日執念こそ敵」と認定されている。私は敵だと思わない。だから冷静な議論を裁判所でやりましょうと提訴した。これからも記事は書きますし、裁判でもさまざまな証拠を出して、こういうことは許されないと伝えていきたい。 【加藤】高円寺でドキュメンタリーやライブをやっている店を経営している。娘さんへの脅迫は犯罪ですよね。警察はどうしているのか。以前に新聞で読むと、捕まった人もいるようだが、また最近とんでもない脅迫、殺すぞと言う話ですね。 先ほど徳島教組の在特会のヘイトの問題があって警察も現場にいてもただ見ているだけ。慰安婦の問題で、警察は現場に来ても見ているだけという話。公権力の側は、どういうことなのかという疑問がわいてくる。警察は植村さんの新たな脅迫について動いているのか。 【植村】娘が登下校するとき警備をしている。私の北星学園大は厚別警察署の管轄で、脅迫状について調べていたが、5回目の脅迫状が来たときは本格的に捜査しているようだ。本部からも捜査員が来てやっている。しかし脅迫状を書く人は卑劣で証拠を残していないので簡単ではない。脅迫電話をかけてきた人が逮捕されたが、着信記録が残っていたのでたどっていけた。匿名で脅迫状を書いてくる人たちはしっぽがつかめない。警察はやろうとしていると信じている。いずれ捕まるのではないかと。いまはまだそういう情報が出ていない。北星学園の入試への威嚇についても警察が出ていた。 【神原弁護士】たとえば手紙で殺せという脅迫状が来て警察が動くのは当たり前。インターネット上の自殺に追い込むとか,未成年の人の写真を載せて何万回も転載されること自体犯罪だが、放置されている。もうどうしようもない状態。これを抹消するのも手に負えない。 在特会に関して言うと、ぼくも抗議活動をやっているが、警察は「あれはあれで合法的にやっている」という扱いなので、彼らが朝鮮人を殺せと叫んでいても規制は内。抗議している我々が逮捕の危険にさらされている。今の日本の法律自体がおかしい。海外は民族差別を動機とする犯罪はヘイトクライムとして重く罰せられる。ネット上の犯罪が野放しになっているのと排外主義が結びついて、ヘドロ。インターネットは下水道のような汚物が流れている。 若者が調べるときはまずインターネットに行く。「朝鮮人虐殺」と調べようとすると「捏造だ」と出てくる。正しい知識がない状態でいかに民主主義が成り立つのか、恐ろしい状況。 【一市民】平生マスコミでしか聞かないが、報道のギャップがある。全国民が憤激する問題だと思う。いまの話にもあったことがマスコミで報道されていない。1月にはマスコミも来られましたが、良心的なマスコミも存在するが。 こういうニューソースは過激と言うことでオープンにされていないのではないか。マスコミが動かないなら、労組なり大学においても当局が動かないなら組合がある。立ち上がらないと存在意義が問われると思う。 【新崎盛吾】新聞労連委員長です。少なくとも新聞労連は植村さんの件は10月に言論封殺を許さないという姿勢で取り組み、提訴も記者会見に同席した。我々が支援するのは、記者個人だれにでも起きる問題だと思っている。植村さんも二十数年前の記事がこのような形でというのは予想だにされなかった。社会的な風潮を私たちも危惧を持っているということで支援している。 なぜ報道されないのかというのは、報道はある程度されているが、民事訴訟は判決でもないと大きく出ない。マスコミは関心を持っていて、法廷に13席傍聴席がありほぼ埋まっていた。それがどういう形で外に出るかというと、記者の間でも萎縮が広がっている部分があって書きづらい。そう言う風潮を払拭するために新聞労連という組合の立場で力を出していきたい。 【植村】一つには慰安婦問題というのは、朝日が激しいバッシングを受けたのが記憶あると思うが、なきものにしたい人がいる。売春婦だったのを捏造したということをまき散らしている。そして私が激しいバッシングを受けている。しかし全国から呼ばれて講演に行く。似たような体験を受けている人がいる。やっぱりそういうことが広がっている。萎縮しているのは間違いない。記者を萎縮させるためにこんなバッシングが起きている。しかし支えてくれる記者もいる。会社を超えて、なかなか記事にはならなくても取材を続けている。朝日新聞の仲間も応援している。私は屈しない。そして私は一人ではない。 少しずつでも捏造記者でないことが広がっていけばいいと思っている。その手ごたえも感じている。希望はあります。 【女性】札幌で反レイシズムのカウンターをやっている。去年在特会の街宣があって、植村さんの記事が捏造だと街宣している。ご存じかどうかわからないが、「朝日新聞は従軍慰安婦捏造を謝罪せよ街宣」。 「植村隆という男。妻が挺身隊の弁護士をやっていて、名乗ったら私が日本からカネをむしりとってあげますよ。植村隆といのは火のないところに火をつけた放火魔」といっている。この人は名前もわかっていて動画も残っている。もしよければ一緒に扱ってくれたらありがたい。 「そよ風北海道」という支部があり、ここが北星学園にメールをしたと在特会のカレンダーに載っている。主要メンバーの一人が北星学園に電話したというツイートをしたり記録もある。 【神原弁護士】検討しましょう。 【男性】慰安婦問題をやっている団体として言わせてほしい。「挺身隊として」という言葉を右派が攻撃するが、彼らの勘違いではないか。韓国ではずっと使われていた。1933年の満州事変のころ、右翼団体が生まれた中にすでに使われている。挺身隊という右翼団体もあるし、挺身隊ということばは日本社会の戦前の日中戦争とか太平洋戦争で使われている。挺身隊とは身を挺して国に捧げるという意味だが、挺身隊で連れて行かれたというのはまさにそういうこと。 挺身隊勤労令というならウソになるが、挺身隊というだけならウソではない。そう言う言葉がずっと使われていたということはウソでも何でもない。 【植村】桜井さんなんかは「植村が記事で挺身隊と慰安婦を結びつけた」と言っている。ちょっと調べただけで違うはずなのにそういう言説が一人歩きしている。そういう貴重な情報を支援チームにお寄せいただきますように。 【女性】法科大学院で学生をしている。日本においてヘイトスピーチ規制法ができるとしたらどう考えるか。情報法学者やジャーナリストは慎重派という方が多いと思ったが。 【植村】ヘイトスピーチを規制すると言論の事由が侵害されるという論法があるが、私はジャーナリストとして生きてきた、取材してきた体験からは、ソウル特派員、北京特派員も中東特派員をやり、差別されている少数民族を取材した。人類が到達した普遍の原理があると思う。人類は平等だとか殺してはいけないとか。それは言論の自由以前の問題だと思う。朝鮮人を差別して殺せと言うのは言論の事由じゃない。節度ある取り締まりは必要じゃないかと思う。拉致に関係ない子がいじめられたり不寛容の社会はおかしいと思う。 【神原弁護士】おっしゃるとおり表現の自由という関係で問題になる。欧州、英国やドイツ、フランスは古くからヘイトスピーチの規制がある。言論の自由がないかといえばそうではない。ヘイトスピーチを規制すれば言論の事由がなくなるということではない。 米国ではヘイトスピーチ規制はないが、ヘイトクライムは重く処罰される。米国では黒人を馬鹿にしただけで社会的地位を失う。そういう国と日本を横に並べて、米国は規制がないからいいということにならない。米国はヘイトスピーチは規制しないが公民権法としてそれ以外の差別は規制している。日本には民族差別を規制する一般法すらない。公民権法に相当する法律を作るべきではないかと。何か進めて行かないと。 【植村】ヘイトスピーチを規制することも大事だが、過去の記憶を継承しなければ、侵略はなかったとか植民地支配はいいことをしたとかいうのが広がっていき、そういうのはおかしいといったら「朝鮮に帰れ」という。歴史認識とヘイトスピーチは共に考えて深めなければならないと思う。 ※休憩後再開 ■山口二郎・法政大教授の講演 理非曲直。いまの日本は非が理を圧倒し曲が直をけちらかしている。 いまの日本は、『不思議の国のアリス』とかオーウェルの物語世界で実験をやっているようなもの。ときとして日本は人間は集団的にものを考える力を失い物語の世界と同じことをする。70年前の戦争の時もそうだった。米国でも50年代にはマッカーシイズムが横行した。理非曲直を正すは簡単なことではない。 植村さんの件に表れた日本の政治、社会の病理を明らかにするため、オーウェルの「1984年」という小説が役立つ。 オーウェルはスターリンの全体主義支配に反発して書いたディストピア小説。全体主義的支配の要諦を言葉との関係で見抜いていた。「ニュースピーク」(新語法)をすり込む。 戦争は平和である。自由は隷属である。無知は力である。矛盾した命題を押しつける。そこに全体主義的支配の要諦があった。 知性を持っていると矛盾に堪えられない。おちつかなくなり正そうとする。しかしそこら中に矛盾があふれ出て慣れてしまう、鈍感になると、そこに全体主義的支配に対する反発心や抵抗がなくなる。それと二重思考。 それと歴史についても「過去を支配する者は未来まで支配する」。歴史にさかのぼって過去に為政者が何をして何を言ったかを踏まえて考える。過去の歴史を改ざんして権力を正当化して持続する。スターリン主義のソ連でトロツキーを抹殺するところをオーウェルは見ていた。 現在を支配する者は過去も支配する。支配者は過去を支配し歴史を作り替え、そのことによって権力の持続をはかり未来まで支配するという全体主義。 これは冗談ではない。2015年の日本でオーウェルのいう現象が起こっている。 東京新聞のコラムでオーウェルをネタにしている。まさに安全保障関係の法整備で「戦争は平和である」が現実かしている。「国際平和支援法」。存立危機事態とか、いろんな言葉が打ち出されて乱立している。なんとか事態というのを定義できるのか。「重要影響事態」は政府が「影響がある」と言ってしまえば認定できる自由裁量。自衛隊を外に出せるちう安保法制で実現しようとしている。国家権力が法律に基づいて動くという原則も。 自由は隷属であるという事態も目の前で展開している。自民党の情報通信調査会がNHKとテレ朝の幹部を呼んで糾問した。これは不思議な感じがした。放送法の枠組みでは,総務省が免許を与えて放送事業を営む。免許をもらった放送局に問題があれば監督官庁である総務省が何かチェックをするということになるはず。自民党は政党であって、公的行政権限は持っていない。しかし呼びつけて査問した。党が国家の一部として免許事業に関して民間の法人に威圧を加えるということをやっているわけですね。 自民党も表現の自由という建前は否定しないが、彼らの考える放送の自由は常に政権党のチェックの中で、政権党が事実と認定することを報道する自由、ということになりつつある。 経済界が要望する雇用関係もニュースピーク。残業代をゼロにすると言うのが日本のメディアにかかると「成果主義」ということになる。ニュースピークが跳梁跋扈する。 無知は力。これは大学においても明らか。政府が進めようとしているのは知の破壊。文明を破壊する蛮行。一つは権力がもろに知を破壊する。これは教科書検定の結果。あぜんとする話がいっぱいあり、関東大震災の際の朝鮮人虐殺は事実だが、犠牲者の数は「定説がない」ことを強調させる。明治新政府はアイヌに土地を与えたという。そんなことを教科書に書く時代になった。政権が代わって自己正当化的な言説が広がっていって教科書に反映されるということになり、いよいよ現在を支配する者は過去を支配するということが歴史教科書で行われている。 知の破壊のバンダリズムは市場原理によるものもある。大学を営利法人に作り替え、知的作業、知的営為を効率や金儲けから評価する。 広島大学に、教員に対する徹底した評価システムが導入され,論文の本数や獲得資金などを点数で評価して給料に反映させることを始める。広島大は被爆地の大学として平和研究を進めてきた立派な歴史もあるが、そういう民間企業の猿まねみたいな人事評価システムを導入して金集めをさせることがまかり通っている。 ついでに言うと国立大にも日の丸を掲揚せよと。私ども学者もそう言うことをされると「なめんなよ」と明日声明を出す。 知の独立を徹底的に否定する風潮が強まっている。 これはいまの時代にほんとにこういうことが次々実現しているのが映画を観ているようだ。第2次世界大戦中、戦争に反対した知識人が日記を残している。清沢洌の『暗黒日記』があてはまる。 昭和17年12月12日。「右翼やごろつきの時代。赤尾敏のビラでいっぱい」。 昭和18年1月。「知らぬ者を知っている者を排撃する」。まさに無知は力。 昭和18年1月。「文部省の八紘一宇のなんのとおびただし。かかる一群の天下なり」。 清沢が描いた、戦争中の常軌を逸した日本社会が2015年、文明が発達した日本で出現しているということであります。 植村さんをめぐる言論状況は日本版マッカーシイズムと呼びました。チラシの裏面に東洋経済に書いたコラムのコピーがあります。マッカーシイズムは50年代米国でジョセフ・マッカーシー上院議員が始めた。国務省内に共産党員がいるとデマを言った。中国が共産革命を起こす中で、米国では共産主義への恐怖心が高まっていた。マッカーシーの言葉に反応し、急速に赤狩りが行われた。上院の「非米活動調査委員会」で知識人を査問してパージしていった。 米国のマッカーシーイズムはエド・マーローというジャーナリストがインチキを暴いた。日本はどうか。 マッカーシーイズムを特徴付けるポイントは、為政者、権力者はウソをつき放題。メディアも付和雷同して広める。しかし批判的な人たちは苛烈なパージが加えられる。 安倍晋三という人はデマゴーグであり、福島第一原発の「アンダーコントロール」。慰安婦問題でも「日本の名誉が傷つけられて多くの人が苦しんだ」と言っている。欧米での関心の高まりは、2007年、自民党右派政治家と知識人が「日本が悪くない」という意見広告を載せたのがきっかけで米国の人が目を向けた。日本の名誉を損なったのは慰安婦問題において日本の責任を否定しようとした右翼的な連中。 なぜかといえば安倍という人の個人的要因が多い。彼は主観と事実の区別がつかない。事実命題と感情の区別がつかない。日本が美しくあってほしいという彼の主観的願望と、日本が美しいという事実命題は違う。しかし彼は主観的願望を吐露すれば他人にも理解されると思っている。自己中心的であり自己愛に満ちている。この間の歴史教科書における負の部分の抹殺は教育をあげて自己愛を増幅し子どもに押しつけるキャンペーン。 自分が良く思われたいと思っていても、それしかないと馬鹿にされるというのは普通の大人にはわかる。謙遜したり自分の悪いところは反省するという内省、自己省察を持つのが大人なんですね。それは安倍談話の核心にかかわる。あの人が内省という核心をもっているか。 日本版マッカーシイズムが広がり,その根底には安倍という政治家の存在がマッカーシイズムを促進してきた。 言論における魔女狩りという現象が広がっている。「木を見せて森を隠す」という論法。 原発における朝日新聞の「誤報」。吉田調書について、現場の人が命令に反して撤退したという見出しが誤報として大騒ぎになった。見出しが的確かという議論はあるが、吉田調書のスクープには大きな意味がある。東日本壊滅を覚悟したというのが核心だった。そこまで福島第一原発はぎりぎりの紙一重で日本は助かったというのがあの調書のポイントだった。 朝日の記者が見出しをどうつけたかという部分をフレームアップして否定する。歴史教科書、従軍慰安婦に関して強制性を証明するドキュメントがないという論法も同じ。 実証を恣意的に拡大する。証拠はといって、関東大震災の朝鮮人虐殺は何人かという記録があるわけはない。南京事件しかり。戦争に関する事実の報道は、実証が恣意的に特定の問題に当てはめて厳格に求めていく。ここにおいて実証主義は歴史学の手法ではなくプロパガンダになっている。 南京で日本軍が中国人をたくさん殺した。関東大震災で朝鮮人や朝鮮人と誤認した人をたくさん日本人が殺したのは事実。 メディアの劣化。きょう取材に来ているみなさんはそういうメディアの劣化に憤っていると思います。しかしメディアは為政者の虚偽は放任し、批判的な言辞のちょっとした誤りをあげつらう。 メディアの記者に「こういうダブルスタンダードがあるんじゃないか」と尋ねたら、「国民に選ばれた権力者は相当脇を固めないと行けないので慎重にならざるを得ない」と答えた。それにしても脇を固めているうちに何もできなくなる状況でないか。 闘わないメディア。朝日新聞も誤報を認めて撤回し、検証のなかに右派を入れて、社としての主張やポリシーはどこに行ったのか。吉見先生の裁判を担当している弁護士も言ったように、たたかわないといけない。 やはり権利のための闘争が必要である。権利は闘わなければ手に入れられない。丸山真男先生が権利の上に眠ってはいけないと言っていた。自分の権利が侵害されたら,権利を取り戻すことが必要。矛盾を矛盾と言い続けることが必要。 オーウェルの世界では矛盾と思う人が孤立していった。矛盾だと思った人が抵抗を始めるが、まわりの人間が受け入れているなかで矛盾だと言い続けることは難しい。矛盾だよねと言う空間を保持することが必要。きょうのこの場もそういう場だと思います。 良い仕事をするジャーナリストがまだまだたくさんいるし、支援していることもやっている。いい仕事をしたジャーナリストはほめる。メール一通、はがき1枚送るだけで力になる。 世知辛い世の中で、カネがないから元気がないという状態なので、フリーのジャーナリストは本が売れない。よい仕事にカネを払うことも必要。 清沢洌の暗黒日記の「序にかえて」というのは息子への手紙。「理想主義というかもしれないが、それが回り道だったかどうかを見てくれ」と。理非曲直をわきまえない連中には断固として闘う強い決意が必要だし、立場が違っても基本的な原理を共有できる人は敬意を払うことが必要だ。 とんでもない時代だが、そういう時代を変えるのも私たちの力。政治状況は一発逆転という状況ではない。シングルヒットやフォアボールでバントするような取り組みをしていくしかない。植村さんの裁判闘争を支援するのもそういうたたかいであり意味がある。お互いに確認して今後の闘いを続けたい。 ■水岡参院議員の話 立憲フォーラムというグループで表現の自由についてがんばっている。裁判闘争について聞きたいと思っていた。なぜ参加できなかったかというと、民主党の安全保障問題で5時から総会があり、そこで最終的なとりまとめをした。いろんな人間がいるなかで集団的自衛権を許さないという考えでまとめた。専守防衛に徹する観点から、集団的自衛権の行使は容認したい。北沢俊美・元防衛相が政治生命をかけて作った。矛盾は矛盾と言い続けたい。 ■中山武敏弁護士の話 山口先生の「権利のための闘争が必要だ」。感動しました。植村さんが「捏造などしていない」という思いに答えるため弁護を引き受けました。名誉を回復し、不当な人権侵害を許さない。日本の民主主義がゆがめられてはならないと思っています。「不当なバッシングに屈しない。私は一人ではない」。次回大切にしていきたい。 (以上 K記) |
東京第1回 2015.4. >