utsuo diary 2008

2008年1月2日(水)初参り

暮れからの体調の不安定を引きずったまま年越し。2daysライブのビデオ編集がなかなか進まず、PCと戦っているうちにいつのまにか2008年になっていた。

今年、除夜の鐘を初めて聞かずに過ごした。さびしい。個人的には大切な友人を亡くして気持ちは喪中。友達の分も私は元気でいなければならない。暮れのライブの打上げでも、お互い身体に気をつけてと語り合い終わった。急ぐのは性分ではないが、もうそんなにのんびりもしていられないのかなと思った。

年越し蕎麦を夕食に食べて、お腹が苦しいまま見た初夢はやっぱりパスカルズの夢だった。内容はあまりない。どこかのリハーサルだったろうか。

翌日は父の眠る寺に初参り。よく晴れて暖かい。父に感謝。その後、車で数分の温泉に行って混み合うも、ようやく正月らしいぼんやりした気分になる。

今年はまた、忙しくなる。元気でいなければ。

2008年1月18日(金)吉祥寺

1/18、今年初ライブは吉祥寺で渡さん生誕会。出演者50名+観客300名。会場内は異様な熱気で、ステージも楽屋もサウナ状態だった。

昼すぎに会場入りしてサウンドチェック。渡さんと親交深い大御所ミュージシャンばかりが集っている。

10代の頃、私は地元の音楽サークルに参加していた。ライブハウスというものが無かったので、公会堂や会議室のようなスペースを借りてコンサートを開いていた。出演以外にスタッフ仕事もひと通りこなしていた、あの頃と同じ風景が広がっているので、何だか懐かしくて、仕出しの手作りおにぎりをいただきながら畳の部屋で過ごす長い待ち時間もとても和やかだった。

サウンドチェックのあと、外でゆっくりお茶してから戻り、その後も長い長い待ち時間があって、会場の閉館時間、22時少し前にやっとパスカルズの出番。

少々アップテンポに演奏しつつ、本日のトリ、友部さん登場で「チルチル・・」「あの頃」など一緒に演奏。本当はアンコールで中川五郎さんを交えて渡さんの歌を歌いながらみんなで終わる予定だったが、楽しくリハーサルもしたのに、本番は時間切れで出来なかったのが残念だった。

この一日だけで、これだけ沢山の人々が渡さんのことを思い集う。来れなかった人たちも何処かでこの生誕会を思い、渡さんのことを思う。そしてスタッフの皆さんの活気あふれる姿をただ感動しながら見つめて過ごした。

熱い時代の雄姿を見たと思った。私よりもはるかに活気があり、熱く、軽やかで、暖かい。そして、迫力のステージ。久し振りに「本物」を見たという感じだった。そんな人たちと同じ空間を過ごせた奇跡。渡さんに感謝。

2008年1月25日(金)風になる夜

20歳の頃よく見ていた夢がある。空を飛んで遠い異国に行き、静かな夜の町を飛びまわる夢。その町並みはいつも決まって見たこともない中世ヨーロッパ風の建物が広がっていて、それはそれは美しい夜だった。

どうしてこんな夢ばかり見るんだろうと思っていた。乗り物が苦手で飛行機も嫌いだったし、外国にも何の興味も持っていなかった。まさか将来そんな風景の街へ行くことになるとは全く想像もしていなかった。

数年前の冬のパリ、バスチーユ広場前にあるカフェで過ごした静かな夜を思う。先日、大切なひとを見送った、私の大切なひとのこと。そして一緒に見送った、大切な友人たちのこと。みんな心静かに安らかに眠れますようにと祈る。

こんな時に何にもできない私。夢の中で風になって飛んでいくしかない私。

2008年2月4日(月)横浜 THUMBS UP

今年初めてのパスカルズライブは横浜。ほんのり海のにおいのする街。いつものクレープ屋で、のんびりお茶してから会場へ向かう。

今回は何だかとてもボンヤリした気分になっていて、昨夜もぎりぎりまで着て行く服が定まらず、着せ替えしすぎて疲れてしまった。

今年の予定も半年先くらいまで色々見えてきたので心の準備だけはしておかなくてはと思う。身体のことも。

その前に、今だ。今が大事なんだけど。足元が霞んでいる。楽屋に飲み物や食べ物がないとダメな性質に(たぶん)なってしまったメンバー達。知久くんが、御土産といって巨大な「おはぎ」を持ってきた。マツさんちからも美味しそうなお菓子が。で、びっくりしたり笑ったり美味しくて感動したりで写真撮ったりもして、ようやく今の自分に魂が戻ってくる。

沈んでいた気分は、幕間に楽屋に入ってきた友部さんたちの満面の笑顔を受けて一気に解消。後半はいつもの気分で楽しく演奏できた。

アンコールに友部さんが登場して「壊れてしまった一日」を歌ってくれて、ラストを暖かく終えることができて本当に嬉しかった。この曲を聴くたびに思い出す、2003年ツアー先、フランスのポワティエで、アンコールに歌ってくれた友部さんの雄姿。今年も旅先で、こんなふうに現れてくれたらいいのに。

2008年2月17日(日)寒

このところ2〜3日おきに寒くなったり暖かくなったり繰り返している。とりあえず、もうすぐそこまでやって来ていると思われる花粉対策でマスクが欠かせない日々。

寒い日はとにかくもの凄く寒い。2月ってこんなに寒かったかなと思う。もうずっと異常気象で、本当はどんな気候だったかあまり憶えていない。憶えていないけれど、どうして、まだまだこんなに美しい冬の夕焼けはある。

日常に追われて地球の命の鼓動に気づけなくなっているだけなのかも知れない、と思いたいところだが。

2008年2月26日(火)舞台「どん底」の音楽

4/6より、Bunkamuraシアターコクーンにて上演される「どん底」(原作:マクシム・ゴーリキー、上演台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)の音楽にパスカルズが参加することになった。

舞台の音楽といえば高校時代、演劇部の友人に頼まれて、学園ものの群像劇の音楽をやったことがある。私ひとりで全てをやることになった。まず、素材をいくつかスタジオで録音した。

本番はステージ脇にスタンバイ。譜面台に台本を置き、ギターにマイクをあて、舞台進行や台詞のタイミンクに合わせて生演奏。素材に重ねて演奏もした。タイムが合わないと、そのあとアドリブ演奏して繋げたり、結構苦労したが、とても楽しかった。

劇伴だけでなく、音全般を受け持ったので、舞台で使う小道具の音、たとえば、急に目覚まし時計が鳴り出すシーンでは、役者さんの手の動きに合わせて私が手元の目覚まし時計をマイクに向かってジリジリ・・・と鳴らしたりもした。

ラストは役者さんがギターを持ってみんなで合唱する設定だったので、テーマソングを作り、最後は大合唱しながら終幕。懐かしい思い出。

「どん底」は、パスカルズは音楽参加なので、出演はしないため、行かないとその様子を観ることはできないが、チケットを取るのが難しいのではという噂も。ケラさんとはナゴム時代に「たま」でお世話になって以来だ。会いたいな。会えるかな。

2008年3月10日(月)歯車とスモークドサーモン

最近の朝食はシリアル。ずっと以前にハマって毎日食べていたら背負い(もう一生分食べてしまったような感覚)になり、それ以来、食べていなかったが、このごろ急にまたシンプルな朝を過ごしたい気分になっている。

待望の、友部さんnewアルバム「歯車とスモークドサーモン」が届いた。パスカルズ全体で演奏に参加した2曲は私も参加しているので、レコーディングの緊張や空気の方に気をとられてまだ冷静に聴けないとして、それ以外にも、パスカルズのメンバー数人で演奏している3曲で私は動揺してしまった。あまりにも凄すぎるのである。沸々と胸が熱くなり、これは反則だ!と思わず心で叫んでしまった。

私が、友部さんに嫉妬するとは。このアルバムはジャケット写真を見てのとおり、多彩で美味しく、噛めば噛むほど深みのある作品ばかりで、しばらく私の一番のお気に入りとなるだろう。

中でも「サン・テグジュペリはもういない」は素晴らしい。今年 1/18 武蔵野公会堂「高田渡生誕会59」で友部さんがこの歌を歌っているとき、ステージ脇にいたみんなが、このワルツに乗って幸せそうに踊っていたのを友部さんは知っているだろうか。ギターを抱えたまま嬉しそうに舞う、中川五郎さんの幸せそうな笑顔。忘れられない。

どうして友部さんは、こんなにも友部さんなんだろうかと。やっぱり、妖精なのではないだろうかと思えてしまう。

2008年3月13日(木)舞台「どん底」音楽REC

都内某所にてレコーディング。 4/6より、シアターコクーンで上演される舞台「どん底」の劇中音楽素材REC。1日で仕上げてしまおうというマツさんの無謀な計画のもと、パスカルズメンバーがこぢんまりしたスタジオにぎゅっと集う。

だんだん増えていくメンバー、楽器も演奏も多種多様で、ベテランPAさんもかなり気合はいっている様子。夜も更けて、ようやく石川さんの録りが始まり、PA「音くださーい」石川「バフッ!!」(クラクションを鳴らす音)で、身体の重荷がすっかり飛び、PA席で爆笑してラストスパートに。

さっきから、すっかり興味津々になってしまったPAの人が「これらの音がいっぺんに出ているところを見てみたい」と言うと、マツさんが「これでもまだ、坂本さんが登場していないからねぇ」と嬉しそうに答えていた。

坂本さんは、後日、ダビングの予定になっている。どうなるかはまだ未定。これだけメンバー気合の十分入った小品集、これでひとつ、番外編のアルバムになりそうだ。

2008年3月25日(火)花のように

玄関脇で小さな水仙が咲いていた。とても可憐で美しく、静かだった。花はなぜ美しいかという話。無償の愛を万民に与えているからだという説。着飾ったり、何かを要求したりしない。謙虚にそこにいて、ただ「水仙」として咲いている、まっすぐな美しさ。

何度かヨーロッパで演奏してて思ったこと。ステージで演奏がひとつになり、観客と一緒にそれを確認し、感動しあったと実感できた瞬間があったこと。

感動は、与えるものでも与えてもらうものでもなく、共有するもの。共有して初めて感じるもの。それを体験できただけでも欧州ツアーは私にとって大きな成果だった。

ツアー先でのエピソードがある。フェスで共演したフランスの映像作家が、「のはら」演奏中のバックステージに野原の風景を映した。曲からイメージしたのだという。彼は日本語はもちろん曲名も意味も知らなかったが。これは本当にびっくりした。そして嬉しかった。

主張でなく、ただ全力で「のはら」を観客に語りかける。これが、パスカルズ。

自身も花のようになれたら良かったのだけれど。

2008年3月29日(土)桜

一年前の今頃は、まだ肌寒い中を散歩してたように思う。

少し車を走らせて神社へ花見に行くと、ものすごい勢いで咲く桜と、それに負けないくらいたくさんの花見客。まるで正月のような賑わいになっていて、境内にある出店のおじさん達も「今年はすごいなー」と話していた。

何でまた、こんなに早く満開になってしまったんだろう。来月はじめには桜満開であろう大好きな公園をフワフワ散歩する予定で楽しみにしていたけれど、みんな春の嵐に吹き飛ばされて、良くて桜吹雪か散ったあとの新緑のなかを散歩することになりそうだ。

季節を感じると、この頃に出会ったり別れたりした大切な人たちを思い出す。今いちばん気がかりなのは、以前、Nancyから日本に遊びに来ていたJeanさん達のこと。元気にしているかしら。また会えるかなぁ。会いたいなぁ。

2008年4月8日(火)吉祥寺 SPC

吉祥寺STAR PINE'S CAFEにてパスカルズライブ。嵐で電車が止まっていたため予定変更して別の電車で吉祥寺へ急ぎ向かう。

いつも、リハーサルの合間に写真を何枚か撮る。自分が撮るので当然ながら写真の中に私はいない。私のいないパスカルズは何だか涼しい風が吹いている。

遠い記憶。幼少時代、社宅の2軒長屋に住んでいた頃、薄明るい畳の部屋から破れた障子紙が風にヒラヒラ揺れる先に、庭の木々や小鳥の声や風の音をボンヤリ見つめていた自分をふと思い出し胸が熱くなる。

自分のいない、少し遠めに見る涼しい寂しい風景を、こんなに懐かしく思うのは何だろう。

この日、ライブで久し振りに歌ったので、大変センチメンタルな気分になってしまい、切なくてやりきれないまま帰る。自分に「ごめんなさい」と言いながら。

2008年4月19日(土)ツアー祈願

来月から始まる約3週間のツアーの前に、父の墓前へ。頑張って元気で行ってきますと報告。本堂にあがり、みんな、ケガや病気などせず、無事ツアーを廻って帰って来られますようにと祈る。

濃い緑がくんくん匂う山の奥から、もうずいぶん上手に鳴けるようになったウグイスの歌声が清らかに響いていた。小さな体で遠くまで美しく大きく響かせる声を持つ鳥たちに感心しながら、その声の行方を捜してみたが、警戒心の強いウグイスは決して私の前に姿を見せないで、ただ美しい声をお寺じゅうにこだまさせていた。

2008年4月26日(土)世田谷美術館 横尾忠則展

世田谷美術館にて開催されている横尾忠則展の企画で、オープニング・イヴェントとして、パスカルズのライブ。

晴れますようにと祈り、外でプチ宴会も出来るかもと準備してきたメンバーの願いも届かず、セッティング&サウンドチェック、リハーサルが終わって、屋内の控え室に入り食事を終えたくらいから小雨が本降りとなり、美術館の方とも相談して、やむなく演奏会場を講堂に移すことに。

大所帯+超細密セッティングのパスカルズは、セットをバラすだけでもひと苦労。これを全部、講堂内に移動して、また一からセッティングし直す大変な作業を、カンバセーション、美術館のスタッフの方にも手伝ってもらってバタバタしながら。

早々にあきらめて講堂に移せばよかったものを、何とかどうにかして屋外で演奏したかった私たちの思いが判断を遅らせてしまい、結局、一時間以上も開演が遅れてしまう結果となり、待っていてくれたお客さんたちに感謝。

ステージが小さかったため(演奏者が多いんだけど)パスカルズメンバーのほとんどがステージからはみ出した状態で演奏することに。ひとりでも多くの人たちに見てもらえればと、桟敷席も用意して、かなり詰めて座ってもらったので窮屈な会場になってしまったが、こういうハプニングがあれば、俄然張り切ってしまう人格が揃っているため、ライブは大変盛り上がったように思う。

できれば横尾忠則さんにもぜひ参加して欲しかった。どちらにいらっしゃったのだろうか。私たちの演奏は聴こえていただろうか。

自分としては来月からのパスカルズ欧州ツアーのこれが1公演目と思っていたので、ハプニングはあったけれど気持ち良いスタートとなり嬉しかった。この勢いを欧州へこのまま持って行けたら。

Pascals Europe Tour 2008(5/6〜5/28) → 2008 tour

2008年5月31日(土)藤沢 遊行寺にて

5/28、パスカルズ欧州ツアーより帰国。約3週間の旅公演は、期間は前回の半分だったが、スケジュール的には史上最強の過酷さを極めた。成田到着後、空港内で少し休んでいるうちにエネルギー切れとなり、その後、東京駅で全く動けなくなってしまう。

心身とも疲れているうえに、7時間の時差を潜り抜けてくると、さすがに魂は幽体離脱してしまい、夢の中では、まだフランスの何処かの街にいて、深夜のホテルで眠気や疲れと戦いながらモウロウ状態で翌日の準備をしている。

私のなかでは、今日がツアー最終公演日と思い気力をなんとか保ちながら遊行寺へ。

日本の究極の癒しが身体を溶かし、気がつくと暖房の効いた畳の楽屋でフワーっと横になっていた。帰国後はじめて、安らかなうたた寝だった。とはいえ、この写真のように、まだまだ私のピントは狂ったまま。次の本番までには完全帰国したいと思う。

2008年6月6日(金)激痛

遊行寺イベントの翌日あたりから激しい頭痛と筋肉痛。特に上半身がカチコチに固まっている感じの痛み。いつもツアーから帰ってくると1週間後にお腹をこわしたり筋肉痛になるけれど、今回は梅雨のだるさも重なってしまったようだ。

ツアー中、激しいスケジュールとはいえ、一日の大半をバス移動で過ごしたので、狭い座席でほとんど動いていない・・・とすれば、これはもしかしたら、エコノミー症候群だろうか。

それにしても、体中が痛くて激しい頭痛なので横になりたいと思うけれど、横になれば、今度は、体重圧で床に当たっている部分がまた激痛になるので仕方なく起き上がるという繰り返し。

とりあえず頭痛だけでも何とかしたいと思い、ネットで調べて、近くのオーガニックショップでハーブティを買って飲む。これが、劇的に効いて、今までの痛みがうそのように翌朝すっきりと目覚め、その後、再発もない。助かった。

筋肉痛の方は相変わらず。寝ると背中が痛くて肺が苦しいため、大きなクッションをあてて何とか眠れるようになった。7/3までに治るだろうか。

2008年6月17日(火)散歩

少しずつ筋肉痛が治まってくると痛かった場所が点で残り、痛みのもとは演奏時にチカラが入りすぎていたために起こった首や肩の神経痛だったことが自覚できるようになった。

あとは足。やっぱり動いていなかったからだろうか。それならば今日は歩こうと思った。どこまでも歩きたい気分。遠出をして隣町にある動植物園まで頑張って歩いてみた。

平日の園内は人もまばらで静かでいい。両手のひらに乗ってしまうくらいの小さなサルと遊んだりして静かな午後を過ごす。

もともとは水源池、今は枯渇池のほとりにあるベンチで、長い時間ぼーっとしたり、丹精込めて手入れされた庭園の森を彷徨い歩いてみたりしながら閉園まで。

2008年7月3日(木)吉祥寺SPCにて

その後、友人から送ってもらった魔法の緑の粉末で、残っていた首の痛みもほぼ治り、少し練習も出来てよかった。

パスカルズ、久し振りのフルメンバー。家族親戚一同が集まったみたいな気分。いつもの美しい照明に見とれながら、14人全員揃った今日こそが、本当のツアー最終公演だ、と思い、いっそう気合が入る。

なにがあっても大丈夫、な安心感も。

2008年7月4日(金)神楽坂の午後

スタパで燃焼した翌日、ツアーでの身体と精神の疲労ギャップからようやく癒えて、空も雨の予報から一転、猛暑になった。

友人と待ち合わせて神楽坂にあるクレープ屋さんでランチ。アーティチョークのガレットを注文する。初めて入ったこの店は、平日のランチ時間も過ぎた頃というのに店内は満席。壁にカンペール焼の絵皿が飾られていた。

実は5月、パスカルズツアー初演はこのカンペール、旧市街のはずれにあるコルヌアーユ座という劇場だった。ホテルにチェックイン後、集合までの短い自由時間で街を散策できたものの、カンペール焼も買えず、本場とあってクレープ屋さんがたくさんあったけれど食べられなかったのでリベンジな気分に。

その後、近くのおまんじゅうカフェ、麦まる2でまったりする。旧家で冷房がないが、その古い二階の部屋で全開の窓から微かに入ってくる風を感じながら、ゆったりと過ごす。

猫の看板に誘われて路地裏の呉服やさんを訪ねたり、開店前のフランス料理店をガラス越しにジッと観察したりしながら、夕暮れのころ、もう一度場所を変えて、川沿いのカフェで止まっている電車を眺めながら静かな時間。

このままずっと、この街で暮らしたいと思った。恋しくて涙が出そうだった。

2008年7月10日(木)あの頃

帰宅すると、注文していたCDが届いていた。原マスミさんの「シングルズ&コレクションズ」。とても懐かしい曲や知らない曲も入っている、ジャケットのイラストも濃い、これはまさに名盤。

28日のライブを見に行って会場で直接購入したかったが、体調不良で行けなかった。とてもとても会いたいと思う。けれどもこんなになってしまった、もう半分くらい自分じゃない私を見られるのは恥ずかしい。

こうしているうちに時が流れ流れてもう本当に二度と会えないのでは、という不安もあって初めて通販で原さんのCDを買った自分と、CDに入っている懐かしい曲と、あの頃の自分が上手く向き合えないで背中合わせで立っている姿ばかり想像してしまうのは、思い込み過ぎだろうか。

2008年8月18日(月)欧州ツアービデオ

今年5/6に出国、フランス、スペインを廻って、5/28帰国までの道中+本番演奏ビデオ。史上最強の過密スケジュールだったこともあり、ビデオをまわす時間や体力や気力のない日が多く、滞在期間のわりには道中テープは2本だけ。何を撮ったかもあまり覚えていない。

初日から電車→飛行機→ツアーバス、と乗り継いで24時間。フランスのル・マンのホテルに深夜到着して、翌日からはいつもの本番と移動の繰り返しで過ぎた今回のツアー。

メンバーの入れ替えなどで不安と、移動先でのトラブルもあり、気力消耗が激しかったため、そんな様子が垣間見られるかと思うと帰国してもなかなかビデオを再生する勇気がなくて、そのまま2ヶ月以上も過ぎてしまった。

道中ビデオには一体何が入っているんだろう。何を撮ったかさえも記憶にない。時間や移動や身支度などに追われる日々だったように思う。以前、友人からもらった御土産のかわいいノートを日記帳に持って行ったが、途中で終わっている。ちょうど力尽きたあたりで。

2008年8月21日(木)Pets-de-nonne

残暑厳しい日。涼しい空間に避難すべく、ペ・ド・ノンヌでお茶。ものすごく迷って、果物のたくさん入ったミルクレープを注文する。


ツアービデオ編集、とりあえず初日の、カンペール公演の本番ビデオを観て、思ったより良かったのでひと安心。

週末のイベント出演に向けて、夏バテ少しでも解消できれば。それにしても寒い。冷房効きすぎ。

2008年8月23日(土)川崎、西生田中学校にて

時折こまかい雨がちらつくなか、川崎へと向かう。つい2~3日前まで猛暑だったのに、この週末、急に本格的な雨の予報。てるてる坊主つくって寝たが、効果なかったようだ。しかも寒い。20℃くらいか。

午後、小学校に到着。家庭科室に案内されて共演の三味線のかた達の気迫たっぷり練習を背中に、教室の戸棚に入っている計量器や御碗や皿を眺めながら、メンバーの帰省土産のわらび餅ほおばる。その後、体育館に移動してリハーサル。体育館が工事中で電気がないため、携帯式の照明をお借りして、薄暗い中で譜面とにらめっこしながら今日の演目を練習するが、なにせ暗いのでめちゃくちゃな演奏になってしまい、大丈夫?と心配される。サウンドチェック後は、家庭味の懐かしいカレーライス漬物つき。

その後、本降りになってしまった雨を心配しながら、校内のトイレで着替えて本番。トラックの荷台をステージにして、屋根付きだったが振り込む雨に打たれながら、雨に濡れて溶けていく譜面にヒヤヒヤしながら、何とか演奏終了。

1月の高田渡さんのイベントといい、今日のイベントといい、ほんとうに、この世代の機動力というか、エネルギーの力強さには感動させられっぱなし。このエネルギーを今の若者にどんどん見せていって欲しいと思った。言うよりも見せる。そうして伝えていく説得力の深さを感じた一日だった。涼しいというよりは、やはり寒かった。見ていたお客さんはもっと寒かったと思う。主催のPTAの皆さんほか、スタッフのみなさん、お世話になりました。来てくれたみなさん、ありがとうございました。

2008年912日(金) 再び川崎、フィリップ夫妻ウェルカムパーティ

いつも欧州ツアーでお世話になっているフランスのRUNプロダクション、ツアーマネージャーのフィリップが、奥さんと来日。2週間ほどのバカンスを日本で満喫の予定。今日は、そのウェルカムパーティだ。手土産をあれこれ思案し、日本茶をベースにしたフレーバーティと地元名産の最中を持参すれば、やはりメンバーみんなの考えることも同じで、似たようなものがテーブルにどっさり並んでいた。フィリップ夫妻からは、フィリップの故郷、南仏名産というマロンディップと、ラベンダーの香り袋。それから、何やら鮮やかに色づけされた花のオブジェ。包装紙やオブジェからは、あのフランス独特の香りがプンプンしていたため、急に懐かしく、フランス恋しい気分になる。2人とも、そろそろ旅の疲れが出ている頃と思いきや、とっても元気。疲れを知らない西洋人の底力を見る。

夜は新宿歌舞伎町界隈のホテルへ。室内はかなり狭いがまだ新築でキレイなのが良かった。部屋が高所だったので絶えず揺れていて自律神経に障ったことと、数分おきにパトカーや救急車が走り抜ける騒音で安眠とは言えなかったが、次は耳栓を持参すれば、急しのぎの宿として今後も使えそうな予感。

翌日は吉祥寺へ。ツアー終了とともに壊れてしまった弓を友人に預ける。

こぢんまりしたステキなカフェで美味しいカレーを食べたあとは、祭りで賑わう人波を縫って散歩したりお茶したり。

2008年9月24日(水) 急に秋がやってきた

フィリップ夫妻が日本の名所旧跡、各地の世界遺産など楽しんで無事帰国した21日、父の12回目の命日を、お寺で初秋の蝉の声を聴きながら墓参りを終えたら、急に季節がとっぷり秋に。

今月から復活した歯医者通いの、道筋に咲く花や小さな鉢植えのクランベリーに心寄せながら歩く。生きている全てを確かめるように、なるべくゆっくり歩いて自分の靴音を聴いたりしながら。

2008年9月30日(火) 吉祥寺にて、斉藤くん&パスカルズ

先月も先々月もパスカルズLIVEがあったのに、何だかとても久し振りのような気がした。元メンバーの斉藤くんのCD発売記念ライブに誘ってくれて共演ライブとなった。斉藤くんの作った新曲をパスカルズ編成で演奏するため、いつもより少し早めに吉祥寺入りしてスタジオで練習する。曲はとても難解で奥が深く、美しい。難解なので演奏は大変なんだけど、斉藤くんがいると何だか不思議とみんなの気分がユルユルになって笑顔があふれる。この夜は名コンビの坂本さんが欠席で残念だった。

坂本さんがいないので、代わりに松井さんが「ファンファーレブーメラン」のジョーズのくだりを演奏した。とてもドキドキした。私は、実は体調があまり良くなかったので、打上げパスして早々に帰宅の予定でいたが、乾杯だけと思い、残っていて大正解。ずっとずっと会いたかったAさんが現れて久し振りにいろいろ話した。元気にしているようで、本当に良かった。嬉しくて心の中でわんわん泣いた。今年いちばん嬉しい夜だった。

2008年10月2日(木) 新米到着

父の実家、新潟県南魚沼より新米が届く。いつも通りテキトーな、フタの閉まりきらないダンボール箱。今年はバナナの箱に入ってきた。最近話題のバナナダイエットか、あるいは飼っている熊の餌だろうか。封を開けると新米の良い香りがした。実家に住んでいる叔父さんは、あと数年で100歳。父も病気さえしなければきっと、すごーく長生きしただろうと思う。そんな暖かくて穏やかな家系なのだ。私にもそういう、のどかな血が流れているんだといいな。

2008年10月25日(土) 大社の秋

隣町にて食後の散歩。ようやく少しだけ秋っぽくなってきた夕方の神社をゆっくり一周する。早めの七五三にやってきた家族や、そろそろ片付けの準備をしている骨董市の屋台を見ながら、灯り始めた提燈の明かりが美しかったので何枚か写真を撮る。今年はいつまでも暖かくて良いけれど、こんなんでちゃんと紅葉はやってくるのかと少し心配になる。

2008年11月7日(金) 食日記

このところ体調が今ひとつなので、今月は食日記をつけてみようと思い、写真を撮り始めてみると、けっこう外食が多いことに気づく。しかも、家ではお粥やお茶漬け、シリアル、トーストなど質素なので、その反動が外食に出てしまっているような濃いメニューばかりだ。けれど「ペ・ド・ノンヌ」のケーキも

「ボルカノ」のスパゲッティも

このラーメンも、それはそれは美味しいので、食欲の秋としては、満喫しなければと思ってしまう。

最終目的である欧州ツアー太り解消への道のりは、まだまだ遠い。

2008年11月12日(水) 晩秋の空

結局いろいろ迷った末に今年も行くことになってしまった季節バイト。ドライブ帰りの車窓から、真っ赤に燃える雨上がりの夕空を眺めながら、頑張らなくちゃと自分に気合を入れてみる。

相変わらず暑くなったり寒くなったり異常気象な日々。この反対側の空にも、同じくらい美しい真っ赤な虹がかかっていて、翌朝の新聞に一面トップで写真が載っていた。

庭先の草花たちもみんな見てたに違いない、何か神がかり的に美しい夕空だった。そこで何かを授かったかどうかは別として。

2008年11月25日(火)横浜THUMBS UPにて

横浜サムズアップにてパスカルズLIVE。今年5月のパスカルズ欧州ツアー3週間で撮りためた映像よりピックアップして、1時間弱の道中編を作る。

今年のこととは思えない、もうずいぶん昔のことのようで見ても思い出せないシーンもあり、写真やHPのリポートを読み返しながら確認しながら作るので、フリーズしたり間違えたりして数日前にやっと完成。

家庭用ソフトを使った素人編集ではこれが限界。関係者なら見ればわかるシーンばかりなので、まあ、老後の楽しみとしてなら充分か。

会場に着くとマツさんが今日の曲目&曲順に苦慮中。

その隣テーブルには、M坊からお土産、秋の木の葉に包まれたクッキーがほんのり優しい香りを周囲に漂わせていた。深まる秋にピッタリ。みんなで美味しくいただき本番への活力に。

サムズで演奏するのは久し振りのような気がする。ひょっとしたら楽器を持つのも久し振りか、などという心配も、太郎さんの譜面台に先ほどの紅葉たちをちりばめて雰囲気をすっかり晩秋にしてしまうと気持ちもまた一つになれたような気がした。

本番は、久し振りに全員参加の迫力満点、少しスピード出しすぎの、玩具のトロッコ列車が線路をはみ出しちゃったみたいに会場中を駆け回って、たぶん、見ていた人達はハラハラドキドキ、楽しかったのでは。

2008年11月26日(水)気づいたらもうクリスマスに

一夜明けると、街中が急にクリスマスのイルミネーションに染まっていた。まだ11月なんだけどな。

そういえば、初めてフランスに行った2001年はちょうど今頃で、滞在最終日のパリは、やっぱり街中でクリスマスの飾りつけをしてたっけ、と思い出す。しかも、そのスケールは、日本とは比べ物にならないくらいデカく派手だった。

そんなことなど懐かしく思い出しながら、昨晩の軽快トロッコ列車(LIVEのこと)から降りたあとの鈍い疲労感を、タリーズで甘いデニッシュと豆乳アイスクリームで癒してみる。やや、また外食だ。

2008年12月2日(火)季節バイト

数日前から季節バイト始まる。家から離れた場所にあり、通勤手段が難しいので、バイト仲間の車に乗せてもらう。昼は食堂で300円食べ放題。地のりうどん+マカロニグラタン+大根サラダ、で私は満腹だが、周りを見ると、この2~3倍は食べている。

元を取らねばという勢いが感じられる食欲?夜は、先日の横浜サムズLIVEビデオ編集。別の意味で、勢いでは勝っている。

2008年12月5日(金)今年最後の吉祥寺

入り時間少し早く会場に到着すると、真っ赤な衣裳に着替えたサンタさんがお出迎え。

じつは昨晩まで(実際には今日の明け方まで)急きょ決まった新曲2曲の確認に追われて大変落ち着かない気分。パスカルズでこういう過激な緊張感は久し振りだ。着々と彩られていく照明に見とれながらも心臓はドキドキ。

以前にも書いたが、パスカルズの楽曲は参加経験のある人ならご承知のとおり、簡単なメロディを奏でていると思いきや、細かい構成+バンマスのフィーリングメッセージで、それぞれの演奏が徐々にひとつにまとまっていくまで実に奥深い仕組みになっている。それは、楽屋での最終打合せメンバーの真剣な様相を見れば一目瞭然。10年以上やってきた今でこそ、皆それぞれの役割を巧みに捉え発揮できる能力も備わった感じだが、それでも新曲は大変だ。

そして本番、幕間に今年5月欧州ツアー道中ビデオ上映で気分もすっかり高揚し楽しく力強いステージに。先日のサムズもそうだけど、どうもフルメンバーだと勢いが頂点を越えてしまう向きが。嬉しい気持ちはわかるんだけど。

2008年12月15日(月)真っ白

急に冬がやってきた。富士山もすっかり雪化粧。先週から、この坂道を富士山に向かって自転車で30分くらい走っている。かなり久し振りの自転車なので、行きはただ息苦しいだけ、帰りは危ない下り坂だが、年末までには、欧州ツアーで膨らんでしまった身体を引き締める良い運動になるのではと期待している。

今のところは、足に筋肉がついてきただけで、特に体重も体脂肪も変化なし。いろんな取り戻しは全て、来年に持ち越しか。