体調を考慮してツアー前日入り。3/8(火)昼前に成田を出発してフランス時間の同日夕方、シャルル・ド・ゴール空港に到着。(飛行時間は約12時間)
なんと、預けていたスーツケースが割れていてショック。3回目の渡仏で今回、初めて旅行保険に入ったらこれだ。入っておいて良かった。勧めてくれた三木さんありがとう。
日本にいる他メンバーに「無事着きました」の一報を入れる。その後、空港を出てタクシー乗り場に向かい、カタコトのフランス語を話しながら渋滞に巻き込まれつつパリ市内のホテルへ。
ホテルに荷物を置いて、バスチーユ広場にあるカフェで長時間飛行の疲れを癒す。今回のツアーはハードスケジュールに加えて、ヴァイオリンメンバーがひとり足りないという演奏上の不安もある。無事着いてホッとしたけれど何だかとても疲れた。まだツアーは始まっていないのに大丈夫だろうか。空腹のはずなのに食欲なし。
肌寒い朝、あちこちに雪の残るパリの町を散歩しながらヴォージュ広場脇のカフェ・ユーゴで朝食。フランスパンとクロワッサン2個、生のオレンジジュースとカフェクレーム。とっても美味。オレンジジュースがやわらかく喉にしみる。やっと落ち着いた気分になれた。
今日は、ドラムス横澤龍太郎さんの誕生日。本人には内緒で今夜、彼がホテルに到着するのを待ってみんなで誕生パーティをしようということになり、前乗り組の私たちがケーキを購入することになった。
パリはスウィーツの宝庫。いろいろ見て歩いたが、ある店の前でピタッと足が止まった。ストロベリーやブルーベリー、ラズベリーなど配色も美しいベリータルトの上に、丸く板状に伸ばしたカラメルを乗せ、さらにその上に色とりどりの砂糖粒がキラキラと宝石のように散りばめられたタルト。ケーキを見てこれほど美しいと感じたのは初めてかも知れない。即これに決めた。こんなに美しいケーキを贈られる龍太郎さんて幸せ者だなぁと羨ましく思う。そして、帰国前に必ずまたここに来てこのタルトを買って食べようとココロに誓った。
夜になってメンバーが揃い、2003年ツアーでもお世話になったフランスRUNのフィリップと、今回のツアーバス運転手のパスカルも到着。みんなでハッピーバースディ♪を歌いケーキ贈呈のあとホテル近くにあるユダヤ人経営の中華料理屋で遅めの夕食会。残りもののテイクアウトをお願いしたらアルミホイルで白鳥の形に包んでくれた。
朝食のあと、昨晩のケーキをみんなで食べる。手のひらほどに小分けしてもなお美しく、涙が出るほど美味しかった。これぞ芸術。
今日は早朝ホテルを出てサンテティエンヌまでの長旅、そして本番だ。パリ市内は路駐厳禁。ツアーバスに手早く荷物を積み込んで乗車、出発。
バス車内に中くらいのバケツ型タッパーが2つあった。フランスのポワティエに住む「パスカルズファン」というパティシエが、私たちのために手作りのマカロンを用意してくれたそうだ。それぞれ味の違う2種類のそれはそれは美味しいマカロンをほおばりながら、車窓の風景はどんどん変わっていく。
いつの間にかとても標高の高い所を走っていた。道路のはるか下に雪まじりの風景が広がり遠くは霧で霞んでいる。外は寒いのだろうか。バス車内は例によって窓が開かないうえにヒーターが強く効いていて暑い。
今回、全行程において私の担当楽器であるヴァイオリンメンバーがひとり足りないことで譜面も変わり、練習ままならぬうちに渡仏、初日を迎えてしまった。不安が過大なストレスとなり胃痛を起こしてダウン。短いリハーサル後の楽屋で神妙な面持ちになっていくメンバーと、それをするどく察知したRUNプロのフィリップの顔色を見て私のストレスは頂点に達してしまった。
会場はもと教会とのこと。楽屋には強烈な磁場があり私はほとんど立っているのもやっとの状態だった。
今日は黒澤映画「デルスウザーラ」の上映後、パスカルズコンサートの設定。初日から約7時間のバス移動で皆グッタリだが休む間もなくすぐセッティング&リハーサル。夕食をとる時間もなく食事は本番終了後となった。
本番を終えた夜11時過ぎ、ホテル近くのレストランで夕食の予定だったが私は動けず。会場スタッフの車でホテルまで送ってもらった。明日はオフで良かった、とベッドに倒れ込む。
朝起きて部屋の窓を開けると外は真っ白。ポツポツ黒い斑点が無数についている。野うさぎの足跡のようだ。けれどホテルに真っ直ぐ向かっているあたり、厨房のスタッフから餌をもらっているのかな。餌付けしているのか。飼っているのか。ペット?食用?色々考えると深い感情が生まれそうなので気を取り直して私も朝食に。
今日は移動の日。かなり標高の高い国道をひた走りボルドーへと向かう。
ボルドーといえばワイン。出発前にチェックしておいた駅前のパティスリーに行って、それからもちろんワインも買って、と楽しみにしていたが到着したのは夜で場所はボルドーの町外れ。夕食はホテルから見えるやはり国道沿いのドライブイン。歩いても行けそうな距離だが「このあたりは大変治安が悪いので」とバスで移動、9時まで夕食&自由時間。
警備の警察官と何度もすれ違いながらドライブイン内のショップをふらふら見て歩く。その後またバスに乗ってホテルに戻り就寝。ここはボルドーじゃない。そうだね。ここは違うね。と確認しあう。
今日は、いよいよスペインへ。朝食のクロワッサンを余分にもらってお持ち帰り。ピレネー越えという過酷な体験に加え、今日からのスペイン4日間は食事もあまり取れそうにない(と勝手に思い込んでいた)ので、フランスにいる間に少しでも食料を調達しておかなければと思う。スペイン語なんてフランス語よりもっとわからないし。
St.Etienne公演会場の楽屋から持ち帰ったお菓子もチェック。これでOK。
バスはいよいよピレネーの岩肌に迫ってきた。標高1200mの標識を見て頭がクラクラしてくる。
途中、何もない山腹で急にバスを止められ、銃を持った人がバス内に入ってきて構えたライフルの銃口を私たちに向けた。私は前から3列目に座っていたので銃口との距離は50cmくらいか。慌ててビデオの電源を切り上着で隠す。そして全員が金縛り状態。
その後、私達が日本人であることを伝えると、なんだ、そうか、という感じですぐ開放された。日本人だと何処でもこんな感じで何も怪しまれず通してくれるそうだ。
そういえば前回ツアーのスイス国境通過の時もそうだった。日本に居ては決して実感できない『日本人で本当に良かった』と深く思った瞬間だった。
きれいに整備された橋を渡ってしばらくすると高級ホテルに到着。ヨーロッパツアー初の4ツ星ホテルだ。今晩はゆっくり休めそう。ホテルに荷物を置いてバスで公演会場へ。
楽屋のパンが馴染めない。何かスペインの食事は独特の風味がある。マズくはないんだけど。こんな時のためにと日本から持ってきたエネルギー飲料を飲んでその場をしのぐ。
リハーサル。あかねは連日とても強い痛み止めを飲んでいてボンヤリしている。
そして本番。曲中の石川さんの語りで、前回と同様『ブルゴス』と描かれたプラカードを掲げ、おおいに盛り上がる。
ラスト曲では石川さんが『Pascals』と書かれた旗を持ってステージ上を猛ダッシュ!あんなに走って大丈夫かしらと心配になる。
本番明けて翌日、晴れて青く澄み渡る空が美しいブルゴスの朝。肌寒いが日差しは強い。
今日は移動距離が短く(といっても3時間)出発が遅いので、それまでの時間を利用して大聖堂へと向かう。
丸い巨大なステンドグラスがとっても美しく、白壁が眩しい素晴らしい教会だった。懺悔のひととき。
昨晩、CD販売でサギに遭いトラブッていて移動できず、夕食がまた遅くなってしまったためホテルに着いたのは深夜で体調も最悪。
コンサートは素晴らしく盛り上がったのに気分はすっかりローになってしまい残念な一日だった。
こんな悲しい出来事が今後二度と起こりませんようにと祈る。
今日の公演地、マドリッドへ。治安やテロの心配もありキャンセルになったと聞いていたが、移動バスの中で渡された行程表を見たらマドリッド公演が復活していた。
また、楽しみにしていたバルセロナ公演がキャンセルとなり、新たにウエスカという街での公演が入っていた。ホテルがちゃんと取れているか少し心配になる。
マドリッド駅前の高級ホテルに到着。また4ツ星ホテルだ。そして周囲の治安はすごく悪そう。バスは何故か正面ロビーではなく裏口あたり少し離れた場所に止まるし、明らかにホテルから出入りする客を物色していると思われる人達がたむろしていて緊迫感が漂っていた。バスの運転手パスカルは、サイドミラーを取り外し車内に片付けた。
そして会場入り。
今夜は本番前に食事、だが昨晩のトラブルで、スペインでは今日からケータリングがない。夕食は会場の2階席に集まって、みんなで宅配ピザをとって食べた。とても美味しかった。
帰りはみんなで深夜の地下鉄に乗ってホテルまで帰る。地下鉄の出入口、改札、ホーム、それぞれ2名ずつ警官が立っていた。貴重な体験。
翌朝。メンバーひとり6ユーロずつもらって各自朝食。私はホテル近くのファーストフード店でテイクアウト。ホテルの部屋でのんびり食べる。気楽でいい。写真では判りづらいが巨大なハートのパイは直径20cm以上ある。つまり左のサンドイッチも大きいということ。これらをあかねと2人で食べて充分満腹になる量である。
移動途中のドライブインで昼食。1950~60年代のウエスタン映画に出てきそうな感じの店。ショーウインドウにサバイバルナイフとか、手作りチーズとか売っている。入口脇にはスロットマシンが1台。お金持ち風の老婆が夢中になっていた。かと思えば体中に宝くじのようなものを貼り付けて店内をウロウロするおじさんあり。写真撮りたかったけど怖くて勇気なし。
食事は、メニューがわからないので他メンバーが注文するのを待って「それ、美味しい?」と聞いて、おそるおそる注文する。食べたことのない肉(ウサギ?)とナスの炒めものとバゲットと生オレンジジュース。生のオレンジを金属で出来た螺旋状の筒のなかに2個入れると途中でサクッと2つに割られ、じゅぅ~と絞られて下で受けているガラスポットに入る仕掛け。ずっと見ていても飽きない。
カウンター(写真)反対側に田舎の食堂風テーブルと椅子が並び、足元は食べかすやホコリやゴミでかなり汚い。見ないふりするしかない。
ちなみに、オレンジジュースに氷は入っていない。砂糖が2袋ついてくる。
カウンター(写真)反対側に田舎の食堂風テーブルと椅子が並び、足元は食べかすやホコリやゴミでかなり汚い。見ないふりするしかない。
食事は、メニューがわからないので他メンバーが注文するのを待って「それ、美味しい?」と聞いて、おそるおそる注文する。食べたことのない肉(ウサギ?)とナスの炒めものとバゲットと生オレンジジュース。生のオレンジを金属で出来た螺旋状の筒のなかに2個入れると途中でサクッと2つに割られ、じゅぅ~と絞られて下で受けているガラスポットに入る仕掛け。ずっと見ていても飽きない。オレンジジュースに氷は入っていない。砂糖が2袋ついてくる。
ホテルに到着後、荷物を置いてすぐ会場へ。
結局今日も時間がない。夕食はライブ終了後となる。楽屋のジュースと水をもらって、朝のパンの残りをバッグから取り出し食べて、リハーサルへ。
本番。スペインでは連日お客さんのノリが大変良く、石川さんは今日も元気にステージを駆け抜けてゆく。
そして演奏が終わると客席はスタンディングオベーションで拍手喝采。
日本より物価安にもかかわらず、CDはもちろん、スタッフ手作りのパスカルズ割り箸も良く売れている。
終演。私は連日の寝不足(約2~3時間)と不規則な食事ですっかり体調を崩していて、深夜1時、これから食事の時間をどうしたら意識を失わず居られるかということなど考えながら搬出の様子をぼんやり見ていた。
ホテルの朝食のパンを包んで持ち帰るのがすっかり習慣づいた。昼はドライブインでサラダとスウィーツのみ買えばいい。
これらをあかねと分けて食べる。少ないようだが、このフルーツタルトもまた、半径15cmはある。コーヒーカップが小さいのではない。サラダも大盛り。たっぷり二人分。
食後、店内を散歩していたら怖い顔のミッキー?に会った。
写メール送るため、石川さんに乗ってもらって写真を撮る。
今日は長旅。覚悟はしていたが出発してから10時間は過ぎただろうか。演奏会場まであと少しだが、途中の小さな街中でバスを止め小休止。思えばパリを出てから初めて商店街を歩いたかも知れない。かわいいパティスリーを発見。お茶しながら、しばしの開放感に浸る。
スペイン最後の公演地、ウエスカの会場に到着。休む間もなくサウンドチェックとリハーサル。その後、楽屋で買ってきた惣菜などを食べる。
それにしてもスペインの惣菜は不可解なものばかり。誰も食べなくて、ほとんど残ってしまった。
エスカルゴの和えもの。
黒いソーセージ(何かの内臓)。
私は疲れと(たぶん)この町の標高の高さでナチュラルハイ状態。本番前に石川さんが間違えて「女部屋」(女性の楽屋のこと。ツアー中、そう呼ばれていた。男性の楽屋は「男部屋」。)に入ってきただけで笑いが止まらなくなる。
そして「まだ今日、5回目(の本番)だよね。」と話す。あと11公演もあるのか。前回ツアーでは、こんな会話は無かったように思う。早くも疲れが出ている。
スペイン最後の朝。各テーブルに朝食用のワインも置いてある高級ホテルにて。食欲はなかったが最後だからと生ハム盛り合わせを食べたら、とても美味しかった。
今日はオフ(移動日)。フランスのポワティエに向かう。荒野の続く風景を見ながら早くフランスに戻りたいと思う。
遠く山の頂上に立っているのは風力発電の風車。
昨夜、ポワティエのホテルに到着後まっすぐ部屋に入り就寝。早く着けば前回ツアーでフィリップから頂いたポワティエのマカロンのお店に取材を兼ねて訪ねる予定だったがもう店は閉まっている。それに身体もくたくたで、とにかく早く横になりたかった。
翌朝、フィリップの家族がホテルにやってきた。手にはあの、初日に食べたマカロンが!実は初日に頂いたマカロンは大量だったにもかかわらず20数名のメンバーによって一瞬のうちに食べつくされてしまっていたのだ。
フィリップがパティシエ(パスカルさん)に連絡してくれたのか、追加を作って持ってきてくれたのだった。
前と違う2種類のマカロン。フタをあけるなり甘い香ばしい香りがして、疲れていた私たちを癒やし幸せな気分にしてくれた。
そして一路、ランスへ。
ポワティエからランスは結構遠かった。夕方、ホテルに到着するが休む時間はなく荷物を置いてすぐロビーに集合。
みんな顔色が悪い。いつも元気な原くんが「疲れた。」とつぶやく。坂本さんも「さすがに疲れたよ。」と一言。ロビーに重たい空気が流れる。
予感は的中してしまった。本番中、坂本さんが意識不明となり転倒、無意識のまま起き上がり演奏を続けてグラインダーで指を削ってしまう。本番終了後の深夜1時過ぎ、救急病院へ向かった。
前回ツアー同様、初日から道中ビデオを撮っているが、極度の疲労と眠気で、移動バス車中で何度もビデオカメラを落としそうになったり、録画のボタンを押したまま眠ってしまったりする。
毎晩2個の充電池の充電とU5さんへの写メール。翌日分のビデオテープのラベル記入などしているうちに気がつけば夜中3時をまわっているという日々が続いていた。連日の寝不足と疲労で意識もうろう状態で手が震え、ラベルに「3/18 Mulhouse」とだけ記入するのに1時間以上かかってしまう。昨夜は坂本さんの怪我の心配もあって眠れず、明け方4時半やっと就寝。
ミュールーズへの道のりは美しい旧市街を行くも険しい山間を蛇行したのですっかりバスに酔ってしまい苦しかった。
しかも到着したホテルに本番録画用テープを忘れてきてしまう。仕方なく3/17~3/18の道中映像を潰して本番を録画する。残念。
久し振りに会った半田さんがマツさんの髪型と坂本さんの怪我とあかねの怪我にびっくり。みんなの疲れた様子にもびっくりしていた。
再び国境を越えて今度は北のベルギーへと向かう。今日が終われば明日はオフと自分に言い聞かせて気合を入れる。ベルギーは初めての国なので気分は明るい。途中、ルクセンブルグを15分位で駆け抜けてベルギー入り。
整頓された町。家々の境界が緑の植栽で美しく飾られ、庭の芝生の手入れもすっかりできている。車もキレイに磨かれていて、町なかにゴミが落ちていないなど、最初の4~5日間を埃っぽいスペインで過ごしてきたので、この美しさに違和感さえ感じてしまう。
古い教会の前の会場で本番。ホテルまでは歩ける距離。一番驚いたのは、ホテルのチェックイン時に全員のパスポートを回収されたこと。
そういえばドライブインのトイレは、ヨーロッパツアー初の有料トイレだった。入口に立っているおばさんにお金を払ってトイレに入る。
レストランがあったので入ろうとしたらドアに鍵がかかっていて入れない。中では沢山の人達が食事を楽しんでいる。予約制なんだろうか。仕方なく隣の売店でサンドイッチとドリンクを買って、建物の外で座って食べていたら、それを見つけた店員がすぐにやってきて「シッ!あっちへ行け!」という具合に追い払われて逃げる。
ヴァイオリンの松井さんは仕事の都合で明朝帰国。本番終了後、夕食の席で「お疲れ様でした!」と乾杯する。入れ替わり明日はクリスチがやってくる。がんばろう。
早朝、帰国する松井さんをホテル前で見送ったあと、今日はツルコワンに移動するオフ日ということもあり、時間もあったので街中をのんびり散歩。開店前のショーウインドウに並べられた洋服や靴などを眺めて歩く。
巨大な自動販売機(写真)があった。缶飲料、お菓子はもちろんワイン、日用品、惣菜、タマゴ、衣服、なんでも右のボタンから商品番号を押せば出てくる仕組みらしい。
それから、この街では若者をほとんど見掛けなかった。ホテル前にハーレーが2、3台やってきてライダーウエアをバシッと着込んだカッコイイ兄ちゃん達がデッキに腰掛けてコーヒーを注文していたが、ヘルメットとサングラスを取ったら、みんな70~80歳くらいのお爺ちゃんだった。
その後、ツルコワン(フランス)に移動して、向かい合う2つの教会に隣接するホテル前の広場でクリスチたちと無事合流。
そして、オフといえば洗濯。カフェでピザを食べながら時計を見つつランドリーとカフェを行ったり来たりする。
合間に美味しそうなビストロもチェックしつつ。
昨日チェックしていた店でメンバーと昼食。その間にも私はツアーの報告メール。
昨晩から宿泊しているツルコワンのホテルだが、私の部屋は普段使用していないと思われるほど一面カビだらけで耐えられず、階下の他メンバーの部屋に避難して一夜を過ごした。昨夜そのカビ部屋にマスクして入り、シャワーを浴びていたらシャンプーを流す時にマスクを濡らしてしまい危うく窒息死するところだった。
ツルコワン、といっても実際にはツルコワンではなく、その郊外にある小さな街だった。
美しい旧市街が広がり、かわいいパティスリーもあるステキな街。
会場入り。
セッティング、サウンドチェック、リハーサルなどしているうちに、ツアー運転手のパスカルが、街のどこかですっかりきれいに散髪を済ませ、シャンパンを用意して待っていた。本番直前の楽屋で「毎晩ステキなステージをありがとう」と乾杯してくれた。
疲れが出ている私たちを気遣い労ってくれたのだ。行動を共にしているパスカルも同じ様に疲れているはずなのに。感動の一夜だった。
そして本番。観客は、メンバーがこんな状態とはつゆ知らず、ツルコワンでのライブは大盛り上がり。他メンバーも何人か体調くずしていたにもかかわらず素晴らしい夜だった。
ツルコワンから再びベルギーのゲントへ。
ゲントは「青い鳥」の作者メーテルリンクの故郷。思ったより早くホテルに到着し、空いた貴重な時間で街を散策。
ゲントに来たら絶対に行こうと決めてリサーチしていた教会は、今日の演奏会場から見える所にあった。
リハーサルまであまり時間がない。冷たい小雨の降るなかを「聖バーフ大聖堂」へ急ぎ向かう。
偶然にも日本人の団体観光客が入ってきて、ガイドさんが日本語で解説を始めたので、その列にこっそり紛れ込んで一緒に見学する。
ヤン・ファン・アイク作の祭壇画「聖なる子羊の礼拝(神秘の子羊)」。これは印刷。本物は地下の美術館にあり、有料。
さっきの「神秘の子羊」の外面。この観音開きの扉を開けると子羊の絵が現れる。こちらも印刷。本物は地下へ。
洗練された美しい旧市街。その間を縫うように、かわいい路面電車が縦横に走り、高級ブティックやアクセサリー、パティスリーが軒を連ねる魅力的な街だった。
ベルギーといえばチョコレート(又は楽屋にもあったゴーフル?ワッフルは無かったな。)専門店がいくつもあってチェックしながら歩いたが結局ここでも買う時間は全く無し。
メンバーから「サウンドチェック始まってるよ!」と電話が鳴り、いよいよ本降りになってきた雨のなかを走って会場に戻る。
ステージの柱に王朝の印が刻まれたゴシック建築(夜になったら建物がライトアップされていた)のホールで、セレブな大人達や学生達の前で演奏し終わる。
再びフランスへ戻る。
昼過ぎ、バスは趣きのあるルーアン旧市街を通り過ぎて郊外へ。区画整理された閑静な住宅街という感じ。フランスでこんな住宅街を見たのは初めてかも知れないくらい、東京郊外にもありそうな風景。
ホテルに着くと玄関前の街路樹がサクラ色の花をつけて満開。貴重な自由時間、久しぶりに晴れて暖かいひとときを外で花見をしながらランチタイム。宿泊客やホテルのスタッフに変な目で見られながら。
夕方、バスで少し市街地に戻った場所に今夜の会場があった。「今夜の会場は小さくてとてもキュートです」とフィリップ。
入口とステージ両側に巨大なスタンド。開場時間になるとちゃんと点灯していてほんとうに可愛かった。
公演前に夕食。開場関係者など多勢で会食パーティ。
食事は大変美味しかったが、昨日ゲントで冷たい雨に打たれてから、とにかく身体がだるい。熱もありそうだ。持ってきた風邪薬を飲んで何とか本番を終える。
翌朝は再び冷たい雨に。今日の公演地パリへと向かう。渋滞を予測して早めに出発したら思ったより早くパリ市内に到着。ホテルにチェックイン出来ず、付近にバスを留めておけないので遠回りして市内観光してくれる。
凱旋門、エッフェル塔、ルーブル、パリ市庁舎などぐるぐる回る。私は体調を崩していたので、早くホテルに行きたい、少しでも横になりたいと思いながら、車窓の風景をぼんやり見つめていた。
本日の演奏会場カルチェ美術館。なぜか演奏場所が広いロビーから急きょ狭い地下室に変更になっていた。機材搬入が遅れているため狭い楽屋で1時間以上待たされる。その間、外出禁止と言われる。エレベータに乗ろうとすると監視のスタッフがついてきた。とても厳しい。
チケットを購入して来たにもかかわらず、演奏会場が狭くなったため入場制限がかかったことで入れなくなったお客さんが、戸外にあふれていると聞く。外は冷たい雨が降っているというのに!
そして演奏に使う楽器もリハに間に合わず、本番中は機材が次々と故障。会場内は、お客さん詰め込み酸欠状態でクラクラし星が飛ぶなかで演奏。早々にホテルに戻り休みたかったが、演奏後の会場でレセプションが始まり帰れない。
フィリップにお願いしてバスの鍵を開けてもらい、会場を抜け出してバス内で横になると、運転手のパスカルがやってきて「お疲れさま」と言ってキャンディをくれた。そうか、私たち今夜は夕食を食べてなかった。
明日はオフ、と自分に言い聞かせ慰める。
雨上がりの朝、同行スタッフ数名がバスを降りる。「お疲れさま、日本で会おうね。」
他メンバーは一路、クレルモンフェランへと向かう。パリを抜けると昨日のストレスから解放された気分になる。フランスはやっぱり郊外がいい。
夕方、素晴らしい旧市街の一角にある広場の前の、かわいらしいホテルに着いた。
ホテルに荷物を置いてホテル前の広場に集合。
夜は近くのドライブインのカフェテリアで食事など自由。明日このクレルモンフェランで本番のため、同ホテルに泊まるので移動がなく気分もゆったりだ。
カフェテリアの隅の方に、フランスで初めて本格インド料理コーナーを見てそそられたが食べる勇気なし。
少しでも旅気分を味わいたくて他メンバーからなるべく離れたカフェに行き、静かなひとときを過ごす。
ホテルに戻るとき、ツアーバス運転手のパスカルがマツさんに巨大な卵の形をしたチョコをプレゼント。
ホテルに戻り、街の観光パンフレットを見ながら明日の貴重な自由時間、市内散策を思う。とても楽しみ。
翌朝、午後の集合までの貴重な自由時間で街を散策。ホテルロビーにあった散策マップ片手に出掛ける。
ホテル前の広場にある噴水は飲める水だ。ここはボルビックの故郷。
道行く猫も奥ゆかしい気品に満ちている。
ステキな旧市街が延々と続いている、その先には真っ黒な教会。遠い昔、火山噴火でできた溶岩を使って作られたので真っ黒なのだとか。そういえば街のレンガも真っ黒。
途中の小さなブラッスリーでランチを食べ出てくると、土地のお爺さんが声をかけてきた。「ボンジュール、どこから来たの?(フランス語)」と聞かれ、その後も聖金曜日のこととか私たちはほとんど言葉が理解できないのに、たくさん話しかけられながらホテルまでの道のりをずーっと一緒に歩いた。
「ドイツ人?」「日本人です。日本から来ました。」「観光?」「私たちミュージシャンです。今日、この街でコンサートするパスカルズです。」そう言って持っていた会場のパンフを見せると「あぁ!パスカルズ、知ってるよ。ル・モンド紙に載っていたね。見たよ。」と答えた。そして、クスクス、ついにはゲラゲラと笑い出した。あの笑いが今でも気になる。
今回ツアー先で唯一、前回と同じアジャンの公演会場『ル・フロリダ』へ向かう。
もう忘れてしまったと思っていたが、会場が見えてきたら遠い記憶が湧き上がるように蘇ってきた。
楽屋に入ると、前回も来て写真を撮ってくれた人がまた、カメラを持って来てくれていた。
楽屋の鏡にベタベタと貼られた出演者のステッカー。パスカルズのはステージへの階段柱に。懐かしい。
そして、楽屋のケータリング。牛ステーキと、なにやら味付けされた半生状態の鴨肉(とても美味しかったらしい)。他にも数種類のチーズ盛りだくさん盛り合わせやサラダ、パンに生ジュース、スウィーツなど、再来を歓迎してくれている雰囲気がとても嬉しかった。
今日は開演時間が早い。いつもは大抵、夜9時か遅い時は10時半からなんて日もあるのに、なんと夕方5時から。当初は開演6時と聞いていたが、昨晩からサマータイムで1時間の時差が生まれたため、5時開演になったとのこと。
会場には小さなお子さんを連れた家族連れのお客さんがいて和やかな雰囲気。石川さんがシャボン玉を吹くと子供たちが一斉に集まり大はしゃぎ。瞳を輝かせた天使たちが、石川さんに向かって両手をいっぱいに伸ばしている姿に見とれ演奏し忘れたりする。
本番終了。毎晩のように深夜ぐったりしてホテルに戻っていたが、今日の街中はまだ明るく私たちの気分も足取りも軽く明るい。
歩いて行ける場所にあるクレープ屋で夕食。フィリップが気をきかせて可愛いお店をキープしてくれたのだが、何しろ現地スタッフ関係者含め30名近くがドッと押し寄せたので、全員の注文を聞くのもひと苦労、料理人はひとりだけ。当然なかなか食事も出てこない。
結局その後、店を出てホテルにたどり着いたのは、いつも通り深夜1時だった。
宿泊ホテルが変更されていた。あかねと私がフランス語教室で覚えたての「サンザサンスー(エレベータがない、という意味)」を日々連呼していた(決して深い意味ではなかった)のをフィリップがひどく気にして、この日、エレベータが無かったホテルを急きょキャンセルし、別のエレベータ付ホテルを予約したのだと後で聞いた。フィリップごめんなさい!
翌朝、寝過ごした私の部屋に太郎さんがノックして起こしに来てくれた。その後、出発の時間になって、さらに寝過ごしている石川さんの部屋を私がノックして起こす。
ドライブインでサラダとドリンクを買って、ホテルの朝食でもらってきたクロワッサンで昼食。寒いけど外のテラス席は気持ち良い。緑の平原を眺めながら心の休息。
今日は海辺の街、サン・ナゼールへ。海がドロンと灰色に濁っているように見えた。
ここは塩の街。昔は海辺に塩田が広がっていたらしいが、今は海岸沿いに塩の工場が立ち並んでいる。
信号機のある跳ね橋を渡って、港の倉庫街の中に今日の会場があった。
RUNプロダクションの社長ヨリックが、メンバーが公演先のあちこちに忘れてきた携帯やズボンや靴下などを回収して届けにきてくれた。
リハーサル後、客席の2階デッキで夕食。パエリアを皆な黙々と、しかし激しく食べまくる。
運転手のパスカルが、本番までの空き時間で海辺を散歩しないかと何度も誘ってくれたが、とても行きたかったけれど寒さと疲れがピークで断念。
今日はパスカルズ出演のあとに、ジプシー楽団の演奏があるらしい。
翌朝。ホテルで静かに朝食をとりながら、今日はいよいよ最終公演だねと話す。感慨深げというよりは、ただ疲れてぼーっとしている。
ここから更にもう少し北西へ行った先、フランス最西端のブレストへ。
国境の町という雰囲気が漂う。道行く人々の顔が他の町で見たフランス人と何か違う。そして寒い。
昨日のサンナゼールも寒かったが同じ海辺の町でもここは数段の寂しさが漂っていた。色んな人種が集っているのか建物や店の感じ、教会の雰囲気まで、まるで異国のようだ。
ホテルから歩いて行ける今日の会場『Le Quartz』の途中にマカロン専門店を見つけ数種類購入。
リハーサル後、会場近くのレストランで夕食、戻ってくると、ちょうど大型バスがとまって中から高校生くらいの団体がぞろぞろ降りて会場に入って行くところだった。私たちのライブを観に来た団体客らしい。そういえば、ここに来る途中のバス内でフィリップが「今日は大入りです!」と嬉しそうに話していた。
本番は最終日も大いに盛り上がり、演奏後はステージ前に学生達が集まってきてマツさん大人気。
終演後、楽屋のロビーでお疲れさまの乾杯をした。
早朝、ブレストを出発。ほんのり寂しい気分。
今日は、本日帰国のメンバーをシャルル・ド・ゴール空港まで送る最後のバス旅。
途中、ランチタイムで寄ったドライブインのカフェテリアで「ドライブインも今日が最後だから」と、フルコースを注文して(大量なので一人前)あかねと分けて食べる。
9時間かかってやっと空港に到着。メンバーの約半数が帰国の途へ。
その後、パリのいつものホテルへ向かう途中のバス車内で携帯が鳴った。先に帰国したはずのスタッフのうち数名が体調不良で飛行機に乗れず、パリ市内のホテルでダウンしているとのこと。不穏な空気が流れる。
ホテルに着くと夜になっていた。私たちのホテルにやっとの思いで辿りつき寝込んでいたスタッフを見舞ったあと、夕食の買出しに。
広場を過ぎて、しばらく歩いた下北沢風の町並みの奥に美味しいスープ屋さんの情報を得て数種類の暖かいスープやパンなど仕入れてホテルで食べる。
私たちも大変疲れていたし、寝ているスタッフのことも心配で出掛けたくなかったけれど、フィリップ、パスカルの強い誘いで夜のクラブへ。
彼らは超元気。私たちはぐったりヨロヨロで、早々にクラブを抜け出しホテルに戻った。
今日は帰国の日。最後のパリを歩きたいと思った。
ホテル最寄り駅から地下鉄に乗ってカルチェラタンに向かう。やっと少し観光気分。
古いけれど整頓された美しい通り。
ちょっとした裏通りの広場も趣のある景観を演出していてウットリしてしまう。
お土産など買ってから、ゆったりランチタイム。
店内は満席で、仕方なく外のテラス席へ。
ダウンジャケットを着込んで震えながらの食事。寒かったけどとても美味しかった。自宅で作れるリゾットセットをお土産に買う。
セーヌ川沿いをのんびり歩いてホテルへ戻る。道に迷っているうちに予約していたタクシーとの待ち合わせに間に合わなくなり、途中からは猛ダッシュで。
夕方、別のホテルに延泊していたメンバーとも空港で無事に合流して夜便に搭乗。とても疲れていたのですぐ眠ってしまうだろうと思っていたが全く眠れず、撮った写真を見たりツアー中の記憶など辿ったりしながら成田までの12~3時間を過ごす。辛かった。
過酷ではあったが、やはりどう考えても日本では絶対体験できない夢のような数週間。帰国すれば現実が待っている。体力は限界をとっくに超えていたけれど、もう少し夢のなかに居たい気持ちが何処かにあって、本当は眠りたくなかったのかも知れない。