第2回セミナー

講演者:八杉 公基(基礎生物学研究所)

日時:2017年11月20日(月)16:00–17:30
場所:筑波大学・第3エリアF棟1020セミナー室
アクセス:つくば駅前から「筑波大学循環」もしくは「筑波大学中央」行きのバスに乗って、「第3エリア前」で下車してください。

タイトル:『魚類の左右非対称な行動が個体間の相互作用に与える影響/バーチャルメダカで解明する魚類の他者認知メカニズム』
概要:
 ヒトでは、利き手や利き目など個体によって左右形質の使用頻度に偏りがあることが知られている。このような行動や反応の左右非対称性は、脊椎動物の全ての綱(哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・魚類)および昆虫で確認されているが、それが自然界でどのような役割を果たしているかを議論した研究はほとんどなかった。発表者は大学院で、琵琶湖に生息するオオクチバスとその主な被食者であるヨシノボリを水槽で観察し、彼らの捕食行動や逃避反応には口部形態の左右非対称性と一致する左右の偏りがあり、それが捕食の成功/失敗に影響を及ぼしていることを明らかにした。さらに、野外で採集されたバスとその胃から出てきたヨシノボリ、漁獲されたアンコウとその胃から出てきた被食者10種について口部形態の左右非対称性を調べ、行動実験の結果から予測された捕食-被食関係への影響が野外でも実際に起きていることを示した。
 現所属に移ってからはメダカを材料として、個体の左右差が同種他個体との相互作用に与える影響、特に群れのような統一的な動きをする場合にどのように働くかについて研究を進めている。さらに、所属研究室のテーマである「コンピュータ刺激を用いた魚類の認知メカニズムの解明」にも着手している。現在では個人所有のPCの性能でも高精細な3DCGモデルの作成、提示が可能になったため、ここ数年注目を集めている分野である。実際の生物では、行動を操作したり、ある形質だけを選択的に変更したりすることはほぼ不可能だが、バーチャルな生物ではこれが可能になる。これを用いて、発表者を含めた研究チームは、メダカが色、形だけでなく、水槽内を泳ぎ回る魚の動きから得た運動情報を基に同種他個体を認知していることを明らかにした。バーチャル生物は、個体間相互作用や認知研究の発展に貢献できる強力なツールであると期待している。


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