田角先生のお話を聞く会 質疑応答筆記録

Q1 : 呼吸について

「楽しく食べたい」時に、呼吸状態が整っていないとダメだという話がありました。 この「呼吸」というのは、肺の機能がしっかりしていないといけないという話、もしくは鼻づまりや気管支炎などの時は食べにくいよねという話、どちらのレベルの話なのでしょうか。


A : 田角(たつの)先生

両方です。呼吸と食べることは非常に密接です。では、100%呼吸が良い状態になるかというと、なかなか100%はいかないという場合もあり、少しゼコゼコしている子どもたちも多いと思います。食事への影響ということで、どこかで線を引くことは、難しいことです。ただ、その中でも、やはり食べられる程度の子、そして呼吸を改善できるところまで改善する必要があります。

調子の悪い時に食べる練習をしても、今日はちょっと体調が悪くてゼコゼコしているというようなときに、食べさせると、その子にとっては嫌な思い出になってしまいます。これを体調のいい時にやると、それは同じような条件、同じような物を食べさせても、楽しくなります。ですから、そこを見て判断してあげることが、大切です。


A : 弘中先生

呼吸は本当に大切だと思います。食べるのは栄養で、摂食の話を聞くと、なんかこう口から食べなければいけないなあと思いますが、それより、まずは息をしないと駄目、食べられたけれど息をしてないのは最悪な状況だと思いますので。そういう意味でも、まず呼吸は大事だと思います。呼吸につながるところで、酸素を使っている子どもさんの場合は、やはり味覚だけに頼らないといけないところがあります。本来は香りをかいだりしているわけですけれど、そこに少しブレーキがかかってしまっていて、離乳食のような薄味のものだったりすると、全く味を感じないようになってしまいます。そうなるとなかなか興味を持ちづらい、というのはあるかもしれないですね。

皆さんの子どもさんだけではなくて全体的に、五感を使って楽しく、ちゃんと耳で聞いたり、匂いを嗅いだり、田角先生のお話にもあった触覚ですよね。触ってみたり、いろいろな音を聞いてみたり、五感を総動員して食べるということが「楽しく」ということになると思います。やっぱりどうしても楽しくないと、「楽しい」の「楽」に茨の冠をかぶせると「薬」になっちゃうという形になりますのでね。歯科の方ではよく講演会で使うのですが、「食べる」というのは「人+良くする」と書いて「食」になります。子どもさんたちの食べたいという「意欲」と我々の食べてほしいという「願い」の方向性が、特に食が少ない子どもさんだと、どうしてもオーバーになってしまう。すると、子どもさんの方が委縮して「もういらない」と拒否するという形になります。

現状にもよるのですが、チューブが入っている子どもさんだと、なかなかフードコートに食べに行くのは少し気が引けると思って、なかなか集団で食べるという機会がないんですね。本来、子どもさんというのは、親御さんが「ほら、おいしそうでしょ、食べちゃうよー、お母さんが食べちゃうよー」というやり方で、うまくなった人はほとんどいないと思います。だから、例えば保育園にぽーんと入ったときに、他の子が口からバクバク食べているのをみて、後ずさりして衝撃を受けるというのも結構あるんです。それに慣れてくると、自分でも何口か食べてみようかな、となるのが結構多い。

やはり社会全体でそういう子どもさんたちをいろいろサポートして、そこの中からうまく子どもさん同士の刺激で、田角先生の話にあった自発性が出てくると、もうゴールは近いのかな、と思っています。

田角先生と僕と、そして石崎先生がまとめてくれたのですがこのようなお子さんは、やはり疾患がある子どもさんが多くて、当然ですけど生まれてから早めに対処する方がチューブは抜きやすいし、逆に時間がかかると、ダメだった経験も重ねてしまうので、なかなか外れるのも難しいということで、これもちょうど田角先生と同じことだと思いますので、環境ときっかけをうまく見ていくことが大切です。

最近、量が増えてうまく食べられるようになってきた、でも風邪をひいたので、またバタンと駄目になる、というようなこともよくあると思います。逆に風邪をひいたあと、しばらく食べるのをやめる、例えばお腹の調子が悪くて食べるのをやめていたら、その後急に食べるようになってきたとか、そういうきっかけもあります。子どもさんも本当は何かきっかけが欲しいのかもしれないので、そういった点を気を付けるようにしてあげてください。

あとは、これだけは言えるのですけど、歯はパーツです。(与える食材は)あくまでも硬くても溶けやすいものじゃないと危険です。例えばビーフジャーキーとかそのままごろんとあげても、一歳の場合、当然咀嚼するためのパーツ(歯)がないですから、そのまま丸飲みして窒息しちゃうなんてことにもなりますので、それだけは気をつけていただきたいです。全ての歯が生えそろうのは平均でだいたい3歳ですから、ここがもう一つの大きなポイントにはなるのかなというふうに思います。以上です。




Q2-1 : 小児科医の立場から

チューブを入れていて何歳まで抜けなかったというようなお子さんがこんなにたくさんいらっしゃるんだということに結構ショックを受けていますが、やはり小児科医はあんまり知らないような気がするんです。(こういうお子さんのことを)特殊だと思って、ついつい「こうすれば食べるんじゃないの?」ということを言うのですが、「そのことは知っている」と皆さん思われていると思うんですよね。

でも今日、田角先生が話されたことと、私が健診で言っていることと重なる部分があって、例えば「楽しく食べる」とか「自分で食べるようにする」とか「環境を変えてみる」とか、「離乳食の後期なら味はもう気にせずに、大人のものと同じ味を味あわせてあげるといい」とか、そういうことを一生懸命言っていますが、やっぱりどうしてもうまくいかなくて、そうするとどうしても「楽しく」というところからどんどん遠ざかっていってしまうんですよね。私自身も上の子が食べない子だったので、「これだけは食べさせたい」とか「人の子はあんなに食べたがるのに」とか思うと、追いかけてでも食べさせたいという心理になってしまって、後になって思うと、それはやっぱり良くなかったと自分では思うんだけど、やっぱり母親としてのなんとか成長させたいという気持ちと、医療的にいわれる「こうやったら食べる」というアドバイスがどうもうまくいかなくて、どうしたらお母さんの気持ちがちょっと…「まぁ大丈夫だろう」という気持ちに持っていけるんだろうか、というのがすごく知りたいところです。追い詰めないで、うまくやっていく方法。小児科医として良かれと思って言っていることで、逆にお母さんを追い詰めてしまっているのかもしれないな、と自分で反省があるので…


A : 田角先生

基本的にはもともとなにか病気がある場合が多いんですね。だから、その病気を良くするために、栄養がちゃんと入るというのが重要なことである、というのがベースにあるわけです。小児科医も当然そうだと思うんです。

健康な子どもたちというのは、元気で楽しく過ごしていればいいということになりますけど、「健康を維持するためには栄養を」ということになって、その影響がずーっと引きずられるということだと思います。例えば小さく生まれた早産児だと、どうしても栄養はものすごく大切なことになります。心疾患においても水分のコントロール、その他の呼吸障害にしても、嚥下障害にしても、その感覚がずーっとあるので、栄養が少し減ることに対する不安感は、おそらく医療側もそうでしょうし、親の側も非常に強いと思います。


Q2-2  

例えば心疾患だと、手術をしたら急に発達が伸びるとか、発育があがるということが多くあるので、体が無理だったんだな、ということはすごくよくわかるのですが…


A : 田角先生

心疾患の子では、そのように術後に伸びることが9割以上です。そのなかで20人に1人くらい、もしくはもう少し少ないかもしれないですけど、術後に経口摂取へうまく切り替わっていかないという子どもたちがいます。術前は心不全などで水分の調整をすることなどで、医療側もすごく苦労するということもしばしばあります。どうように食べたらよいのかわからず、そこから抜け出せなくなるということです。


Q2-3  

ではその原疾患がない子であるならば、いずれは、1歳を過ぎて体が動くようになってくればまあ食べるだろうと思っていてもいいのでしょうか。

A : 田角先生

そうでない子は、まれにいます。その理由としては、実際の経験をあげると、7ヶ月くらいまでは順調にいっていたのですが、その子は食物アレルギーがあって食事制限が多く、母乳栄養から離乳食に全然進まず、まさに栄養失調の状態で入院しました。それでしばらく経管栄養をして、最初は全く食べませんでしたが、しばらく対応するうちに抜けました。でも入院中の対応には、すごく工夫が要りましたね。

他にも印象的だった子としては、普通の子ですが2歳前くらいに下痢である病院に入院して、点滴してそのあとから全く食べなくなくなり相談を受けました。その子の他院での入院の経過は、下痢のあと食べなくて栄養が入らないので、点滴でずっと静脈栄養をやるよりは、経管栄養の方が安全だろうということで、経管栄養をしました。それは別の病院だったので、入院中そして退院してから来てもらいましたが、「早く退院させ、家の環境で普通にやって下さい」、「普通になにも気にしないでやって下さい」、「少しずつ飲める分を自由にやって下さい」とアドバイスしたら、その子は一週間くらいで、ちょっとしたきっかけからすぐに脱出しました。全体経過も1ヶ月しかありません。でも、そのような状況でも、食べなくなる子もいます。だから、嫌な経験がそこに集約されてしまったと考えました。入院のストレスから離れ、家に帰ってリラックスできたことがよかったと思います。入院中に相談を受けたので「早めに退院してください、その方がうまくいくでしょうから」と言いました。そうしたら、一週間くらいで「食べる量が増えました」という報告があり「では抜いてください」と言ってそれで終わったのですが。

乳幼児期でも、気持ちの問題で食べられないことがおこり得ると考えていった方がいいと思います。ただ、多くの子がそうなるかといったら、ほとんどの子はそのようになりません。本当にちょっとしたことの重なりが、きっかけになると思います。




Q3-1 : マグマグ・ストローの使用/飲ませるものの味について

さきほど、「自発的に」という話の中で飲みモノが飲めるようにということで、ストローやマグマグを勧められていましたが、うちの子はわりとむせやすくて、とはいっても誤嚥して肺炎になったことはないのですが、それでもマグマグを持つようにする、置いておくというのがいいのでしょうか。

A : 田角先生

はい。そういうことも、最初の「楽しく」飲む、食べる、ということに尽きます。それを多少むせても、本人が楽しく思える状態ならそれほど心配はありません。これが肺炎になるとかいうことになると、そのときは楽しくても結果的には、肺炎になり入院して楽しくないというように考えます。だからこういうことを含めて、少しむせてゴホゴホとなっても楽しく食べられるということになれば、それをやることによって練習されていくというふうに考えます。そうすると、だんだん上手になっていくと考えています。

むせが多い場合には、楽しいということに、すごくマイナスになります。むせることは、苦痛になり楽しさからは離れます。ただ、それでも自分で飲もうとすることは、楽しさが勝っている一つの目安になるかもしれません。食べさせている場合、むせても食べさせるというのは、かなりの率で楽しくはないが強制になり、苦痛を増やしているということになります。マグマグに手を伸ばして自分で飲もうとするが、ゴホゴホとむせるというのは、それ以上に飲むことが楽しかったり、味が楽しかったりするだろうなと理解したうえで、誤嚥なく安全に飲めるように、そこを広げていってあげるという作戦を考えていくのが良いと思います。

ウィダーインゼリーのような物の方が、よりスムーズに飲めるのだったら、そのようなものを使うこともいいです。そのような容器やゼリーが、むせが少ないとか持ちやすいと思われ、状況を判断したうえでお勧めすることもあります。あのような容器は、ちょっと押すとすぐ出ますし、それで自分で押した感覚と出るタイミングもつかみやすいと思われます。他人に食べさせてもらうのは、食物が口に入ってくるタイミングをどんなに合わせても、やはりつかみにくいです。自分で飲むことが、そのタイミングを最もつかみやすいといえます。マグマグは、吸うという動作になりますけど、押して入ってくるという方がスムーズに飲めるなら、そのような容器が考えられます。どちらを優先するということではなくて、むせにくい方、そして本人が楽しめる方を優先するとよいです。


Q3-2  

まだ座位がとれなくて、基本的にゴロンとしてるんですけど、床の上におもちゃと一緒にマグマグを置いておくというふうにした方がいいのか、それとも座っているときに机の上に置いておくのがいいのか。


A : 田角先生

どっちの方が飲みやすいかですね。寝かせてのほうが飲みやすいのか、座ったほうが飲みやすいのかによって決まってくると思いますが、実際に様子を見てみないとわからない部分はあります。

あとは哺乳瓶を嫌う人も中にはいますが、そのような状態で寝て哺乳瓶やスパウトで少し水分が出てくるものであっても、それで上手に飲めれば勧めます。というのは経管栄養が外れるということが、非常に重要なことです。外れるとゼロゼロする(喘鳴)ことが、少なくなります。これはいくらでも経験することですから、なるべく早く外してしまいたいということが一つ。もう一つは、自分で飲めるということが、非常に大切であって、哺乳瓶のようなものが使えて、それで十分練習したならば、次はストローへ行け、そして次のステップへというように。だから、自分で飲めるということが、楽しく飲めるのと同じくらい重要なことで、次のステップに進みやすいということです。


Q3-3:

基礎疾患の症状で嗅覚があまりないだろうと言われているのですが、そういう場合やはり中にもう少し味の濃いものを入れてあげるというのがいいのでしょうか?


A : 田角先生

好きなものを入れてあげる。これを好んでいると思ったらそれでよいと思います。濃いものを好んでいるのなら、それでよいと思います。味を感じるということで言うならば、味覚とか嗅覚、触覚なんかも大事ですけど、もう一つは視覚です。味を感じるに視覚も重要と言われていて、見た目でけっこう味を判断してしまうということが、実際にはかなりあり、それがかなりの比率を占めています。だから、あんまり嗅覚がどうのこうのだからということは考えなくてもいいと思います。

少し話がずれますけど、大学生で脳の問題で嗅覚が全くない人がおり、その人に「味はどうですか」と聞くと「自分はこんなもんだと思っているから。確かに匂いは全く感じないから、同じかといわれるとよくわからないです。匂いがどうのこうのといわれると今一つぴんときませんけど」と。でもカレーはカレーで、ハンバーグはハンバーグで、「日常生活で困ることはあまりありません」と言っていました。だからあまり気にせずに、子どもとのコミュニケーションから何を好むかを、感じ取ってあげることです。




Q4: 胃瘻(いろう)について

摂食障碍児をたくさん診てこられた先生方からみて、摂食を進めるために胃瘻を造る、という考え方は有効だと思いますか?また、そもそも何故、日本の小児医療では、経管栄養が長期に渡っても胃瘻を勧めないDr.が多いのでしょうか?

うちの娘は鼻の穴が狭く、これまでマーゲンチューブ(注:鼻チューブ、栄養チューブなどとも呼ばれる。鼻から胃に栄養を送るチューブ)の挿入にかなり苦労してきました。入らず鼻血が噴出するばかりで、病院に駆け込むことも数しれず。その度に娘に辛い思いをさせてきて、マーゲン交換が母子共にすごくストレスです。主治医もそれは重々承知なのですが、胃瘻の話は一度も出ず、こちらから持ちかけた際も難色を示されました。
吐きやすいので胃食道逆流症の検査もしましたが、結果、逆流無しだった、というのも胃瘻を勧められない理由です。マーゲン交換のストレスを無くしたい、また摂食を少しでも進めたい、という理由だけで胃瘻にするというのは、医療上やりすぎなんでしょうか?


A : 田角先生

一つは、今後の見通しだと思います。実際に、胃瘻をしようかという微妙な段階で相談を受けたことは二人ほどいて、「胃瘻にしようか主治医と相談しているのですが、どうしたらいいでしょうかね」という相談ですね。半年くらいのうちに経管栄養が抜けると思ったら、わざわざお腹に穴を開けなくてもいいでしょうと感じます。「たぶん大丈夫でしょう」と思えば、そういうような判断をしますが、それが駄目だと思った時は胃瘻を勧めます。

ただ、機能障害があまりない場合は、来院してくれる多くの場合に、半年間くらいで経管栄養を抜きましょう、抜けるところまで持って行きましょうと言います。基本的にそのあたりを目標にしています。だから、経管栄養の状態で来た人に、自分で胃瘻を勧めたことはありません。胃瘻の状態で来た人は、何人もいます。胃瘻のいい点ももちろんあります。経口摂取できない状況が、長期に続くのなら、基本的にはいつの時点でも胃瘻にしたらいいと思います。

一番のポイントというのは、経管栄養がどのくらいで外れるかという見通しを、どんな感じで持つか、ということになります。




Q5  脱経管栄養までの見通し/主治医や親との見解の相違

それに関して、ちょっと聞きづらいことなのですが、その見通しがあるかないかというのを、今見てもらっている主治医に判断ができるのか、というのが患者から見て全くわからないというのが実情なんじゃないかと思います。そういうのはどうなんでしょうか。


A : 田角先生

そうですね。そういうのは、診ないで判断するのはなかなか難しいところです。唾液をのめるとか、歩くことができているとか、自分で座ることができるとか、おもちゃをなめることができるとか、そういうことができる子どもたちは、基本的にはそんなに延々とかからずに抜けると基本的に思っています。例外的には、そうでない子もいることにはいますが。

胃瘻にしなければならない子どもの多くは、重症心身障害児であるような場合が多いです。こういった場合は、むしろ積極的に胃瘻にします。やはり誤嚥が多いと経口摂取を楽しめません。そういうような場合は、無理をしないで、食事以外のところに楽しみを求めたほうがいいと考えています。食事は、栄養が取れることでなく、楽しくなければ食べる価値がありません。それがどうしても楽しめない場合、だからこその経管栄養や胃瘻を活用することです。もし経管栄養の入れ替えのために、苦痛を伴い、難しいのであれば胃瘻を考えたらいいと思います。

ただ、その判断というのは、やはり最終的には見てみないとわかりません。見ても意見が分かれることもあります。主治医とこちらとの意見が分かれてしまう場合は、悩ましいです。一つは、抜けるまでの見通し、もう一つは、よくあるのは栄養状態です。

少し食事を楽しむ段階ならいいのですが、実際に栄養カテーテルを抜こうとするときは、栄養の量を落しますから、そうすると栄養が不良傾向になり、主治医と意見が合わなかったこともあります。そのときは「うーん、困りましたね」と相談しながら、うまくやることになるわけです。やはり小児病院とか大きな大学病院などに、主治医がいる場合が多いです。当院を来院した人たちが抜けると考え、実際に比較的短期間で抜けていますから、そうなると主治医も「ああこうなのか」と思ってくれると考えています。

抜けるまでの見通しで、およそ6ヶ月以内というのは、本人が少量でもいいから楽しめるようになってから6ヶ月以内ということです。問題が大きいと、楽しめるようになるまでに、1年かかる場合もあります。そのためにも食べている量ではなく、早く楽しめるための対応に切り替えることが必要です。早く少しでも楽しめている場合は、だいたい6ヶ月くらいで抜きましょうと計画し、多くの場合は実際にそれで抜けています。ただ、嫌で嫌でしょうがないという場合、嫌だという気持ちが抜けるまでの時間は、それぞれの子どもで異なります。2~3ヶ月の子もいれば半年かかる場合もあります。そのためには、どうやったらいいかというのが、今日話した内容で、それを周囲が一緒になって考えないとならないということです。

こういう話をしてもお母さんによっては、この方針になかなか納得してくれない場合も多いです。「今まで訓練してきましたから」とか、「こういう訓練はしなくてもいいのですか」とか、「栄養のことが心配です」とか理由があります。そこに我々が「訓練はやらなくてもいいです」「ペーストではなく固形物は食べさせてください」とか、急に今までと違うことを言うわけですから、そこが気持ちの納得できない人がいます。病院に来た時には、頑張って量を増やさなくてもよいこと納得したようにみえても、家では頑張って食べさせているという人たちもいると思います。そうすると、楽しく食べる事の達成ができません。そして、楽しく食べるまでの時間がかかってしまうこともあります。




Q6-1 : チューブ・チューブ交換に伴う苦痛について

2ヶ月くらいからミルクを飲まなくなって、チューブを入れることになり、「お母さんどうぞ」と言われて泣きながらやっていたんですね。チューブを入れるときに、母親の気持ちじゃとても入れられなくて、自分はこの子の専属看護師なんだと自分に言い聞かせてやっていたんです。それはチューブの交換にはよかったんですけど、楽しい食事につながらない。どうしてもかわいいわが子にごはんをあげるというよりは、この子を何とかしなければ、チューブを入れなければ、という義務感の方にどんどん傾いてきてしまったんです。どこかで見たのですが、父親が交換すると、母親との関係が壊れなくていいよ、という話があって、チューブを交換する人は本当は母親がいいのか、医療機関がいいのか、そういうのはあるのでしょうか。


A : 田角先生

どちらが良いということは、ないと思います。それぞれの事情に合わせてということになります。医療機関にわざわざ行くのも、実際にはなかなか大変かなと思うので、お父さんであってもお母さんであってもいいということです。もちろんチューブの交換にはかなりの苦痛を伴うと思いますから、それは最小限にということは言えますが、苦痛を伴わないことはないと思います。

ただ、その交換が苦痛だからということだけで、食べられないということはないと思います。交換は2週間に一度という人が多いと思うのですが、むしろこれが嫌だから口から食べたいということにつながってくれればと思います。もちろん、わざわざ何回もチューブ交換しましょうということではありません。チューブ交換の苦痛は、プラスの部分とマイナスの部分が両方ありますが、やはり苦痛の方が大きく避けてあげたいです。


Q6-2  

チューブが入っていると食べづらいということはあるのでしょうか。


A : 田角先生

チューブが入っていると、少し食べづらいということはあると思います。一番は、やはり分泌物による咽頭部のゼロゼロ(喘鳴)だと思います。チューブという異物が入っているので、鼻水や痰が絡むことが多くなります。経管栄養のチューブの一番の大きな問題点は、ゼロゼロにあると思います。チューブを入れている状況で、ゼロゼロを全くなくすことは難しいと思います。結果的にチューブが抜けた子どもたちを見ていると、1週間から2週間でゼロゼロが完全になくなる人たちもいますし、少なくとも7割程度は減る人が圧倒的に多いと思います。飲みこみもよくなります。


A : 弘中先生

喉のところでチューブが盛んに動くと、中でこすれるわけですね。だから刺激が来るので、歯磨きをすると口の中で起こることと同じで、喉でも当然分泌物が多く出て、それが全部経路で行く。それと内視鏡で見てみると、ペーストの食品はチューブに結構付着していて、それをあとで飲みこんだ後にまたゼロゼロに原因になったりもします。

チューブに関してもう一つ、本当に小さい時からチューブを使っている子どもさんに結構多いのですが、「ごはんですよ」と注入の時に言っていて、ある日口から食べさせる時も「ごはんですよ」と言うことになって、そういう錯誤が多いんです。なので、なるべく、低年齢でみているときには、注入の時はサラッと注入しておいて、口から刺激してあげるものに関しては「ごはんですよ」と使うようにしていますね。「ごはん」をあげている安心感があると思うんですけど、「ごはんだよ」と言われて今までチューブから入って来ていたものを、いきなり口に持っていっても、子どもは「あれ?チューブじゃないの?」という戸惑いがあるんじゃないかな、と思います。
田角先生も診ていますけど、本当に依存している子どもさんだと、「お腹空いたからちょっとちょうだい」といってチューブを指して「ちょうだい、ちょうだい」というサインを出す子もいます。




Q7  経鼻(けいび)エアウェイ

うちの子は後鼻腔の狭窄による呼吸困難があるため、経鼻エアウェイ(コーケン社製)を喉元まで挿入しています。経鼻エアウェイが摂食の妨げになっているという可能性はありますか?もしくは、経鼻エアウェイを入れていても食べられるようになるものでしょうか?本人を診察しないと分からないかも知れませんが、経鼻エアウェイは就学前に手術することによって離脱予定ですが、これが原因なら早く離脱して、もっと早くからでも食べられるようになりたいのです。


A : 田角先生

いわゆる経鼻エアウェイや挿管チューブを咽頭まで入れているという状態ですが、食事を食べるには非常に妨げになると思います。ただそれは呼吸のために必要な状況であれば、もちろん抜くことはできないと思います。ただ、後鼻腔の狭窄を外科的手術でよくすることが可能であるならば、そしてその手術をして良くなったあとに食事を考えるのがよいと思います。原疾患に対する治療を優先するということですね。特に近々手術をするということなら、それがいいと思います。それまでの間、食事の楽しさを養うことを行えたらより良いと思います。


A : 弘中先生

食べてエアウェイが詰まってしまうということもあるので、結構危ないんですよね。


弘中先生より

話す機能というのは、口の使い方からみると、食べるという機能の上にあるんですね。摂食機能というのはプレスピーチとも言われていて、いっぱいしゃべるというのは、逆に言うと、食べる機能をあげているということにもなります。あとは、きっかけとか興味というところになってくるので、口の機能がどんどん落ちていくのでは?ということはなくて、たくさんお話しすることで、いろんな食べる機能も育てているということで考えてもらえるといいと思います。




Q8-1  給食について/学校や幼稚園とのつき合い方

うちは食べない状態が続いて、3歳半くらいまで2語くらいしかおしゃべりができなかったんです。今は5歳なんですけど、やっと話せるようになって来て、食べるものも限られていたのが、だんだん増えてきたところです。でも保育園の給食はほとんど食べられない、食べられるものが出ないんです。なので、保育園の給食の時間が苦痛になっていて、楽しさとはかけ離れている。3歳4歳の頃は給食が嫌だから行きたくないという登園拒否にもなりました。今はやっと自分は食べないが、まわりのお友達とおしゃべりできる状況にまでなってきました。でもこれは、本当に楽しんでいるのか、結局はそこにいなければいけないという苦痛な状況に耐えている状態なのではないのかと思っています。これが小学校に入っても給食の時間が苦痛だというふうに続いていってしまうんじゃないかと思っているのですが、園や学校の先生に理解を求めても、やっぱり摂食障害の子は少ないので、なかなか理解を得ることができなくて悩んでいます。その給食の時間はどのように対処していくのがいいのでしょうか。アドバイスがあればお願いします。


A : 田角先生

やはり保育園に理解してもらうしかないでしょう。そのために我々もいろいろ考えていかなくてはいけないと思っています。食べることは大切なことですし、給食が苦痛で保育園に行けなくなってしまっては本末転倒です。なんとかそこは理解してもらって、そうすれば食事にとってもプラスになるはずです。

ただ、そこをどうやっていくかはなかなか難しいところですよね。学校に理解してもらうが大変で苦労している人たちも多いと思います。


A : 弘中先生

頼まれて、保育園向けに簡単な経過を書いて差し上げることもあります。「こういうお子さんなので、この辺を配慮いただければ」なんていうところからですね。医師の意見書はやはり一番どんと来るのでね…


Q8-2  

お医者様の後ろ盾をいただいて…

A : 弘中先生

医療関係者が理解していると思うので、そのあたりちょっと酌んでもらうと、一筆いただけると、こういうお子さんがはじめての保育園の方も不安があるでしょうけど、できることをやらせてあげると本人も少し自信になるし、それで「楽しい」というところから、「これに挑戦してみたい」という方へ行けば非常にいいと思いますね。

僕の診ているお子さんが、学校の給食を20分の一くらいを食べれる状態だったんですけど、今2分の一まで来ていて、調子に乗っていますよね(笑い)。でもここまでに1年、2年かかっていて、でも本人は最初は本当に嫌だったんですが、今は楽しんでいる。そういう例もありますね。


司会 : 

うちの子は自閉症児で、食べることは特に苦労しなかったのですが、周辺にはいろいろな子がいて、自閉症ではないが食べることにこだわりがあって、ロールケーキしか食べないというお子さんがいましたが、保育園のお弁当にロールケーキを持ってきていました。どうやって先生と話をしたのかはよくわからないんですが、理解してもらうとうまくいくのかな、と思います。先生たちに理屈で言ってもなかなか通じないところもあると思うので、先生にも実際に「こうしたら、この子はこんなに元気に学校や保育園に行けるんですよ」というのを目で見てもらうといいと思います。


田角先生より

学校との付き合い方は、あんまり戦わないことです。最初からこれやってほしい、あれやってほしいって戦う姿勢で行くと、学校も構えますから。一緒に考えてくださいという方が、受け入れてもらいやすいです。




Q9  楽しく食べるということについて

給食はあるが、先生方は給食が出ないので、自分でお弁当を持ってきている。しかし、食材が一緒ではないので、子どもたちと一緒に食べない、という方針のところがあります。食べるものが違ってもみんなでわいわい食べてほしいなというのが私の気持ちなんですが、子どもとしては食べていない大人に見守られて、やはり食べない傾向にあるんじゃないかなと思うんですけど、食材が違っても大勢の中で食べる方が子どもは楽しめるんじゃないかなと思うんですが、どう思われますか?


A : 弘中先生

当然ですが、学校給食というのは法律で決まっているので、違うものというのは、逆に他の子の教育の中の逆影響という面があって、そのハードルは確かに厳しいんですよね。ただ、うまくやれると、例えば保健室で違う食材のものを食べられたり、先生がだいたい理解してくれると、だんだん「こういうのなら持ってきてもいいんじゃない?」なんていってやってくれている先生もいますね。

やはりファイティングポーズで行くと、完全に打ちのめされてしまうので。やはりそこには法律の壁があるのでね。それはダメだと思うんですけど、「これくらいならいいんじゃない?」という、たとえが悪いですけど19歳11ヶ月でビール飲んじゃ駄目かな、というような(笑い)ぎりぎりぐらいのところで、見逃してくれるところもあると思うので。

いろんな人に見守ってもらう、助けてもらうだけじゃなくて、理解してもらう、というのもあるわけで。軽度のお子さんだけどチューブ入ってる、なんで入ってるんだろう、というのは逆に言うと理解がすごく少ないところもあるので、深刻に構えずにちゃんと説明していくと、やはり協力は得やすいんじゃないかと思います。


A : 田角先生

食事に関しては、学校で食物アレルギーのアナフィラキシーショックで亡くなったお子さんがいました。このようなこともあり、学校は過剰に警戒されている時期になって面もあります。だから、完璧な安全性を学校に求めると、どうしても制限が多くなってくる。報道では先生が悪者みたいに、なっているようにも聞けますが、食事に関してたくさん気を遣う必要があり、学校としては大変だと思います。

アレルギーで亡くなるのは、無いようにしなければならないですが、あまりに細かくみることを要求すると、世の中がギスギスした神経質な環境になるというのも問題が大きいです。食事の環境においても、少しは目をつぶらざるを得ないところがあると思います。

たまにあるアナフィラキシーショックでも、報道での書き方では、後の制限が強くなります。そうすると、もう少し緩めてもいいようなところまで厳しくなっていってしまいますから、悩ましいところです。





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