研究概要

マーケティング論を研究しています。中でも、流通システムとマーケティング戦略が専門です。

現在の研究関心

主に流通システムを研究しており、その副次的研究成果としてマーケティング戦略も扱っています。

こうしたテーマへの研究アプローチとして、新制度派経済学の研究も行っています。

    • 流通システム
    • 主要な研究テーマです。多種多様な形態や需給調整様式をとる流通チャネルについて、取引関係やチャネル編成などを説明しうる理論モデルの構築と実証を目指しています。
      • 継続的流通取引
      • 同一の相手と長期に渡って取引を継続する現象は、様々な産業で幅広く観察されるものです。こうした取引形態は、毎回その都度最適な相手と取引する市場取引と、取引を単一の所有権の下に統合する組織との中間形態の1つです。
      • ごく近年の研究では、法や権威者などの第三者による交換の執行ではなく、関係それ自体が自己拘束的性質を持つとする関係的契約の枠組が注目されるようになっています。現在このテーマについて、継続的取引に資産特殊性を組み入れたモデル構築と実証に取り組んでいます。
      • 延期型流通システム
      • 販売数量をあらかじめ予想して「見込み」で生産・配送を行う投機型マーケティングから、販売時点の「実需」に合わせて俊敏に生産・配送を調整する延期型マーケティングへの転換が、あらゆる領域で生じています。
      • 数量調整に着目した場合、延期型のマーケティングは、数量を迅速に調整するものであり、投機型マーケティングは数量をあらかじめ在庫として固定した上で、実需に対して値下げ(価格調整)や返品(取引慣行)によって調整する仕組みと言えます。
      • 延期型流通システムには、製品差別化をいつ行うかいう意思決定も含まれます。製品差別化の投機とは、標準製品の大量生産に対応しており、このシステムの下では、顧客ニーズを知るより早い時点で大規模生産が行われ、規模の経済による低コスト化が追求されます。一方で、製品差別化延期とは、顧客の注文が確定して初めて製品を完成させる仕組みです。このままでは、顧客に待ち時間コストや、完成品を見ないままで発注するという不便さが生じるため、受注から完成までのリードタイムを短くする工夫が行われます。例えば、製品形態を確定しないで半製品を在庫するのは古くから知られた解です。ここ2年ほどは、製品差別化延期の現代的な形態である受注型多品種少量生産、すなわちマス・カスタマイゼーションの研究を進めています。
      • オープン型マーケティング
      • 特定のメーカーや小売業者が流通を囲い込むクローズ型マーケティングから、共通のプラットフォームを利用するマーケティングへの変質が一部で起こっています。
      • 製造部品に関しては早くから「モジュール化」という形で生じてきたオープン化ですが、流通では、自律的な第三者が自由にモジュールを組み合わせるようなオープンなアーキテクチャは多くはありません(消費者が、メーカー・配送・クレジット会社などを指定できるネット販売は、数少ない例外でしょう)。
      • この点で、流通研究では生産管理とは異なった理論モデルが必要とされていると考えています。企業間で組織能力をやりとりする際に生じる動的取引費用を手がかりにして、垂直的取引について、理論・実証面から研究を行っています。
      • 日米小売企業の企業境界比較
      • 記憶に新しいカルフールの華々しい日本進出と撤退の原因の1つは、メーカー直取引を志向するあまり、豊かな品揃えを達成できなかったことにあります。
      • スーパーマーケットをはじめとする日本の組織小売業者は、戦後の成長期に、既に大変に発達していた卸売ネットワークを利用することで、限られた資金を商品調達ではなく店舗投資に集中することが可能となり、それによって成長してきました。
      • 私の関心は、商品供給業務の内部化比率が、日米のSMで異なっていることにあります。こうした企業境界の違いを、個別企業の組織能力や、組織能力の組み合わせに際して生じる動的取引費用の観点から考えています。
    • マーケティング戦略
    • 大学院以来、流通チャネル研究に取り組んできました。その中で、組織能力や動的取引費用に関する研究をフォローしていくうちに、自然な拡張としてマーケティング戦略論にも関心を持つようになりました。
      • マーケティング戦略と組織能力
      • 慶應義塾大学大学院経済学研究科と商学研究科が合同で行っているCOEに参加させて頂いたことで、年に1回、日本の製造業に大規模なアンケート調査を行っています。
      • 組織能力と言われているものにも色々あって、マーケティングの場合、特定の機能をうまく遂行する組織能力(広告や製品開発が上手い)と、市場変化にうまく対応していく組織能力の2タイプが識別されると仮説をたてました。さらに、産業の競争度によって、利潤に対して異なる効果を持つという仮説をたて、2004年度の調査でそれらを指示する結果を得ました。
      • とはいえ、事実は発見できたものの、説明の理論的な厳密性にまだ余地が残っています。現在は、この積み残しを埋める仕事をしています。
    • 新制度派経済学アプローチの応用と開発
    • 取引費用、組織能力、繰り返しゲームなど、表現力豊かな研究アプローチであり、マーケティング研究に重要な貢献をなしうるものと感じています。学説的吟味、方法論的基礎付け、数理モデル開発、計量手法の開発などに取り組んでいます。
      • 取引費用モデルの計量手法の開発
      • 欧米のマーケティング研究では盛んに行われている取引費用モデルですが、日本では学説研究は非常に多いものの、理論モデル開発や実証研究は盛んではありません。マーケティング学者は構成概念の開発を通じて、ある意味では、経済学者よりも取引費用の計量分析に貢献してきました。
      • 仲介による取引費用の削減
      • マーケティング論や流通論の入門的テキストでは、生産と消費の人格的分離が、生産を高め、交換を困難なものにしたがゆえに、商業者が登場した、としばしば主張されています。こうした論理は、Williamson流の取引費用モデルと比べると論理が逆です。
      • 生産者と消費者の間に高い取引費用があるならば、消費者が自ら生産をする(生産を内部化する)というのが、純粋な取引費用的解釈でしょう。明かに、生産者と消費者の間に、取引費用が高い故に商業者が介在するという流通論の論理とは異なっています。
      • Williamson (1985) も卸売業者について論じていますが、それは、製造業者と卸売業者の間に高い取引費用が生じたため、製造業者が卸売業者を内部化して自社の営業所にした、という史実(シンガー社)の解釈にとどまっています。
      • この点で期待されるのが、Spulberによる仲介者理論 (theory of intermediary) です。
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