2017Kadai

科目の目的・到達目標

この課題演習は、「コンセプト」を軸として、マーケティング戦略の審美眼を養うことを目的としています。顧客価値に基づいてマーケティング戦略を解釈するための「ものの見方」を身につけることを目標とします。

授業の概要

〔テーマ〕

コンセプトで考えるマーケティング戦略

コンセプトとは、企業が顧客に提供する本質的な顧客価値の定義のことです。

企業はいったい何を売っているのか?一見、当たり前な問いのようですが多くの人が頻繁に間違える問いであり、だからこそコンセプトを考え抜くことは企業に根本的な差別化をもたらします。マーケティングの世界は、コンセプトをめぐる成功や失敗の事例に事欠きません。いくつか挙げてみましょう。

任天堂のゲーム機Wiiは、きわめてよく考えられたコンセプトを持っています。携帯ゲーム機が普及し、据え置き型ゲーム機の需要が頭打ちになる中で、Wiiは「家庭内でのユーザーを増やす」ことを目的として、家族の誰からも敵視されず、従来のゲーム・ソフトにとらわれないインタラクティブ・エンターテイメントとして開発されました。その動画処理などの性能はソニーのPS3に比べると大きく劣るものだったにもかかわらず、据え置き型ゲーム機として成功した背景にはその卓越したコンセプトがあるのです。

コンセプトはビジネスの進化にも影響します。携帯電話のコンセプトを文字通り「持って歩ける電話」とするのであれば、現在のように通話以外の機能の方がより多く使われるようなデバイスとしては進化しなかったはずです。「人が肌身離さず持ち歩くデバイス」と定義することによって、機能の拡張が進んだのです。

一方、腕時計で文字通り世界を制覇したセイコーは、時計の価値は「高い精度」にあると考えて技術革新に励んだ結果、80年代半ばまでは世界一の腕時計メーカーとして君臨しましたが、今では見る影もありません。「宝飾品としての時計」という新たなコンセプトの登場を見逃してしまったためです。

サービス業の好例はスターバックスです。彼らがそのコンセプトを「美味しいコーヒーを売ること」としていたならば、他のコーヒーチェーンの倍近い設備投資の店舗を作って回転率の悪いカフェを運営することはなかったでしょう。スターバックスは「第3の場所」というコンセプトに基づいて、カフェでの滞在経験を売っているのです。このことは他のコーヒーチェーンとの明確な差別化の源泉となりました。

これらの例で明らかなように、企業が自社の製品・サービスのコンセプトをどのように定義するかは、マーケターの思考パターンを決めてしまい、マーケティングの成否に大きく影響します。

・誰に、何を、どうやって売るのか?

・提供物をどのようなものと見なすのか?

・個々の企業をどんな市場もしくは業界に属していると見なすのか?

なんだか抽象的で哲学的ですが、考える価値のある興味深い問いばかりです。

この課題演習では「コンセプト」を軸としてこれらの問題を考え、マーケティング戦略の審美眼を養っていきたいと考えています。

授業計画

次のプロセスを繰り返します。

第1に、本を深く読みこんで、コンセプトを言語化するトレーニングを行います。第2に、現実の企業のマーケティング問題を扱った「ケース」を用いて、マーケティング戦略の提案と討論を行います。

このプロセスをだいたい3週間で1サイクルとして繰り返すことによって、複数の企業のマーケティング戦略事例を深く知るだけでなく、その読み解き方を理解してもらうつもりです。

テキスト・参考文献等

三品和広・三品ゼミ (2013)、『リ・インベンション―概念(コンセプト)のブレークスルーをどう生み出すか』、東洋経済新報社。

三品和広+センサー研究会 (2016)、『モノ造りでもインターネットでも勝てない日本が、再び世界を驚かせる方法』、東洋経済新報社。

Ariely, Dan (2008), Predictably Irrational: The Hidden Forces that Shape Our Decisions, Harper Collins, 熊谷淳子訳 (2013)、『予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』、早川書房。

沼上幹 (2008)、『わかりやすいマーケティング戦略(新版)』、有斐閣。

スケジュール

第1回:4/14

  • ガイダンス
  • 沼上 (2008)、理解度確認試験

第2回:4/21

  • 三品和広・三品ゼミ (2013)、第1章:宇野・粟野・名塚
  • 三品和広・三品ゼミ (2013)、第2章:吉埜

第3回:4/28

  • 企業研究所公開研究会聴講

第4回:5/5

  • 三品和広・三品ゼミ (2013)、第3章:大関
  • 三品和広・三品ゼミ (2013)、第4章:伊藤

企業訪問:5/11

  • 日本経済新聞社、リコー、リコージャパン

第5回:5/12

  • 代休

第6回:5/19

  • 三品和広・三品ゼミ (2013)、第5章
  • 三品和広・三品ゼミ (2013)、第6章

第7回:5/26

  • 三品和広・三品ゼミ (2013)、第7章
  • 三品和広・三品ゼミ (2013)、第8章

第8回:6/2

  • 三品和広・三品ゼミ (2013)、第9章

第9回:6/9

  • 休講

第10回:6/16

  • ケース・ディスカッション『ジェイアイエヌ』

第11回:6/23

  • 三品和広+センサー研究会 (2016)、まえがき
  • 三品和広+センサー研究会 (2016)、第1章

第12回:6/30

  • 三品和広+センサー研究会 (2016)、第2章

補講:7/2(土)3/4限

  • 三品和広+センサー研究会 (2016)、第3章
  • 三品和広+センサー研究会 (2016)、第4章

第13回:7/7

  • 休講

第14回:7/14

  • 三品和広+センサー研究会 (2016)、第5章

第15回:7/21

  • 休講

第16回:9/22

  • 休講

第17回:9/29

  • Ariely (2008), はじめに。

第18回:10/6

  • 「大学での知的トレーニング」

第19回:10/13

  • Ariely (2008), 第1章。

第20回:10/20

  • Ariely (2008), 第2章。

第21回:10/27

  • Ariely (2008), 第3章。

第22回:11/10

  • Ariely (2008), 第4章。

第23回:11/17

  • Ariely (2008), 第5章。

第24回:11/24

  • Ariely (2008), 第6章。

第25回:12/1

  • 休講。

第26回:12/8

  • Ariely (2008), 第7章。

第27回:12/15

  • Ariely (2008), 第8章。

第28回:12/22

  • Ariely (2008), 第9章。

第29回:1/12

  • Ariely (2008), 第10章。

第30回:1/19

  • Ariely (2008), 第11章。