CTによる被曝について

日本は、CT保有台数としては、人口百万人当たりの台数は92.6台で、二位のオーストラリア56.0台、三位米国の34.3台(OECD Health Data 2009調査)で、CTをダントツに利用している分、CT被ばく大国とまで言われており、これは否めない事実だと思います。筆者も、2000年初頭のマルチスライスCTブームの間、多くの学会などで、被ばくの低減処置が必要だとCT製造メーカや医療スタッフへ訴え続けていますが、10年以上経った今でも、日本の医療提供側の正当化(後ほど説明)のコメントばかりが目立つ。

内閣府で行われた原子力委員会の2010年のCTに関する被ばくについてのコメントは、資料が古く、CTによる医療被爆の現状について、参考にし難い。(2000年以前のマルチスライスCTが日本に導入される前の資料を出している。日本でのマルチスライスCTが爆発的に普及したこの10年間のCTの被ばくに関する公の論拠のある調査資料がないか、もしくは、出せない理由があるのかと捉えてしまう。

被ばくによる晩発的影響は、10年以上かかるでしょ?と説明する人もで出てくると思うが、論点のすり替えで、それで納得する人はいないでしょう。)

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2010/siryo11/index.htm

いくつかの放射線検査のプロシジャーごとのバックグランド放射線被曝との実効線量の比較は次のとおりです:

平成22年3月2日の第11回原子力委員会定例会議の配布資料から抜粋。(CTに関して、マルチスライスCT導入前の2000年の報告書を持ち出して、CTの実施件数が少ないと・・・。10年以上の前の資料ですよ・・・)

被験者を不安にさせないという努力は評価したい。しかし、CTの被ばくについて、欧米がCTの過剰被ばくについて科学的論拠を述べれば、それに対抗して正当化できる論文ばかりを拾ってきて、「調査団体も、現在、調べている」いった評論家達の苦しい回答は、誰が読んでもスッキリしない。

ここで重要なのは、日本の医療被ばくに関するコメンテータ達は、正当化ばかりを強調するより、まず第一に、欧米の論文と論拠に対して素直に耳を傾け、全国の医療施設に対してCT被ばくを低減する努力を国を挙げて取り組むことが最優先事項であろう。医療の提供側の正当化による保身的反論よりも、患者の不安に迅速かつ直接の応えて、まずは、CTの被ばくをあらゆる検査に対して被ばく線量を低くするように努力するべきです。患者にとって難しい科学的な説明は、その後でもよいと思います。

ちなみに、2010年後半からの米国などのジャーナルが取り扱った報道の図の1部では、さすがにきちんと2007年までの統計データを示しています。

今までに受けた実効線量(患者被ばく線量)は、調べることが可能か?

実は、CT検査におけるX線量などの情報は、CT画像のヘッダ情報の中に残っています。よって、過去、被験者がどのくらいの実効線量(ミリシーベル)の被ばくを受けたがわかります。

リジット社(http://www.lisit.jp/qcservice.html)では、本来、厚生省などの指示の元で開発すべき実効線量計算ソフトウェアをオリジナル開発し、普及を目指しております。CT画像のDICOMヘッダから被ばく線量を計算するソフトウェアです。このタイプ(DICOMヘッダ参照型)のソフトウェアは、世界の中でも唯一、リジット社だけが開発し、販売しているものです。

医療施設では、実効線量ではなく、CT装置に表示される線量インデックスである「ミリグレイ:mGy」で、検査の際の参考値を元に、ちゃんとCTスキャンしているから大丈夫ですよ。という、説明したいところですが、患者様にとっては、個々に、性別、年齢、多臓器に渡るCTスキャンなどを考慮しないミリグレイでの説明は、先般の説明のとおり、不十分であると考えています。よって、個々の患者様の受けた被ばく線量(実効線量)による説明を勧めます。

(本ソフトウェアは、開発の際に快くデータ提供と開発に関してご協力を頂きましたGEヘルスケア社(本社:米国)のご協力にて、同社が製造するCT装置で検査した施設はこのソフトウェアで実効線量の計算が可能です。)

Reference citedNewYork Times

After Stroke Scans, Patients Face Serious Health Risks

By WALT BOGDANICH

Published: July 31, 2010

http://nyti.ms/h8V3wk

DICOMヘッダ参照ベースの実効線量計算ソフトウェア

本ソフトウェアの論文はこちら。

Yamamoto S (LISIT,Inc) , Horiuchi T (GE Healthcare), Sekiguchi J (GE Healthcare), et.al, "Design of a DICOM image-based program for estimating patient exposure dose in computed tomography",Volume 15, Number 2/2007, Technology and Health Care, 0928-7329 (Print) 1878-7401 (Online),2007

WSJ.com - Radiation Risks Prompt Push to Curb CT Scans

http://on.wsj.com/ar7m5o

WSJ.com - CT Scans Linked to Cancer

http://on.wsj.com/6Ypkla

センセーショナルな、大規模臨床試験の結果について

下記は、米国放射線学会が2010年11月2日に報じた内容ですが、「肺がんスクリーニングは、低線量CTの臨床的意義が大いにあることを報じていいます。

こういう「まず、CT検査の被ばくを最適化に基づいて可能な限り減ずる努力が重要」ということを積極的に論説してほしい。

警告しなければならないことは、前述の説明のとおり、この臨床試験と論文の結果をうけて、CT検査全体をどんどん増やす方向と検査の正当化へ誘導しないようにしてほしい。(もちろん、CT検査内容に対して、医師によってよく熟考され、最適化の論拠がある検査は、これだけに言及するものではない)

ちなみに、これは、最適化の努力であって、日本でも、肺がんの低線量CTのスクリーニングの実施と臨床での対応は早く、国際論文でも、その臨床意義について述べたものが多くみられる。ここには、日本医学放射線学会、放射線科医師達の弛まぬ努力と研究の成果が現れています。

ACRが、Radiologyの論文について2010年11月2日に報じた。

The National Lung Screening Trial: Overview and Study Design” by the NLST research team, was published yesterday by the journal Radiology and is openly available at http://radiology.rsna.org/cgi/content/abstract/radiol.10091808.

低線量CTでの肺癌の高リスクの人々のスクリーニングは、大幅に肺癌死亡を低減させる

November 4, 2010

米国の大規模な無作為のNational Lung Screening Trial(NLST)は、低線量のヘリカルCTによるヘビースモーカーのスクリーニングが、胸部の単純X線のスクリーニングと比べると、顕著に肺がんによる死亡を減ずるという8年間の結果を示し、試験を終えました。

上記の試験には、日本の放射線科医師の研究成果も参照されており、画像診断医師の国際的な貢献が高いことがわかる。

  1. Sone S, Li F, Yang ZG, et al. Results of three-year mass screening programme for lung cancer using mobile low-dose spiral computed tomography scanner. Br J Cancer 2001;84(1):25–32. CrossRefMedlineWeb of Science
    1. Nawa T, Nakagawa T, Kusano S, Kawasaki Y, Sugawara Y, Nakata H. Lung cancer screening using low-dose spiral CT: results of baseline and 1-year follow-up studies. Chest 2002;122(1):15–20. Abstract/FREE Full Text
  2. Sobue T, Moriyama N, Kaneko M, et al. Screening for lung cancer with low-dose helical computed tomography: anti-lung cancer association project. J Clin Oncol 2002;20(4):911–920.

さて、

このような風潮を受けて、CTの被ばく調査や品質管理に関しては、日本語でもCTガイドラインと称した書物は、見かけるのですが、厚生労働省が発刊するものではなく、医療被ばくに関する国際的委員会などとも協調したものでもなく、日本独自で調査を進める研究会や任意団体が発刊するものばかりです。欧米の調査論文に対抗するような英文もなければ、国際的なピアレビューも少なく、医療被ばくの最適化より正当化に関する説明と、啓蒙活動を繰り返している状況です。

(ということを、このサイトに記載する筆者のほうが、バッシング対象で藪蛇ということでしょうが・・・。少なくとも、被ばくに関する参考資料は、米国食品医薬品局(FDA)資料やICRP資料などを中心に述べる:ちなみに、筆者は、国際放射線防護委員会ICRP Publication 87, Managing Patient Dose in Computed Tomography (Annals of the ICRP, Vol.30, No.4 2000)の翻訳者の1人なので、多少のCTの被ばくに関する知識と知恵はあります。ご安心を・・・)

ここでは、少し視点を換え、インターネットメディアを通じて、できるかぎり、検査を受診する国民側に情報を提供し、医療被ばくについて、国民のほうが、認識が甘い施設を厳しく取り締まるほうが、医療施設や医療機器メーカが、より「締まる」と考えています。

特に、CTにおける被ばく低減の対策について消極的な医師や放射線技師ほど、CT検査の「正当化」に甘んじる傾向があります。被験者がこれから施行されようとする検査について、実効線量(mSv: ミリシーベルト)がどのくらいであるか、数値で示すことのできない施設は、CT検査に関して、医療倫理観の欠けている施設と判断せざるをえません。

医療スタッフ側による被ばくに関する考え方として、「正当化」というのがあり、CT検査(CTだけではないが・・)のベネフィットが被曝のリスクを上回っていることをいいます。また、「最適化」は、目的(例えば病気の診断)が合理的に達成される(診断に必要な画質が確保できる)範囲で、CT検査に伴う被曝量をできるだけ減らすことを意味します。

(CTの被ばく線量が無意味に高い施設が、存在すると指摘されている中で、正当化の説明が先で、最適化の説明が後という日本のCT被ばく解説者は、真に患者側に立つ科学者とは言えないと思います。)

大丈夫ですよという、「正当化」だけを説明して、被験者へ、これから受ける検査のX線被ばく線量の数値についてのリスクをわかりやすい説明もせずに誤魔化すような施設は、国民目線から、厳しく医療施設に対して注意するべきと考えます。

本サイトの目的は、CT検査の行為やCTの技術開発を妨げるものではなく、医療提供側が、科学的根拠を示して、患者様が納得する被ばく低減の説明を支援する目的で記載するものです。

CT製造メーカと医療施設の被ばく関する違いについて

本項は、あくまで私見です(本サイトへの異論やクレームは受け付けません)が、現在、CT製造メーカは、被ばくに考慮するために、1つの検査(CTプロトコル)で、どのくらいX線量を照射したか?という1つの指標である”CTDI-vol (Computed Tomography Dose Index-volume)”をCT装置に表示する対策をしております。ただし、これは、あくまでCT製造メーカとして、「射出したX線量(厳密には、線量計測用のアクリルに照射したときの吸収線量)は表示しますが、患者様への医療被ばくは、あくまで、医療施設で管理するものですよ」というような表明に見えます(これは、コンプライアンスや会社防衛上、無知な医療施設によって高いX線量が子供など当たるような事故があった場合の、会社として当然の防衛対策だと思います)。

このCTDI(mGy:ミリグレイ)は、あくまで、装置上のX線量のインデックスであり、患者様の体の中で、放射線の感度が高い眼の水晶体や生殖器にX線が照射された場合の臓器や組織のリスクは考慮しておりません。よって、医療施設の医師や放射線技師は、患者様の受けた検査が、どの臓器に照射され、その臓器にX線が暴露されたときにリスク(危険度)も、考慮して、患者に説明しなければなりません。このときに使用されるCTの患者被ばくのインデックスが、「実効線量(ミリシーベルト)」です。

よって、医療施設のスタッフが、実効線量の単位としてミリシーベルトで話をしてくれるところが、親切だといえます。医療スタッフすらも、CT製造メーカと同じように、ミリグレイ単位で、装置が射出したCTのX線量でしか、患者様に話をしないようであれば、それは、医療スタッフとしては、再教育が必要だと思います。(端的にいうと、医療提供側で、CTDIと実効線量の違いが説明できないということが、患者様への質問にお答えするうえで問題があるということです)。

また、自分の施設のCTの検査の実効線量は、説明せずに、誰かが書いたCTの検査の実効線量の参考値を、あたかも、自分の施設も、同じ実効線量のように説明する施設も要注意です。

まえがきは、ともかく、少し、被ばくついて説明します。引用元は、ACR(米国放射線学会)とRSNA(北米放射線会議)が共同で説明しているサイトを参考にしました。

http://www.radiologyinfo.org/en/safety/index.cfm?pg=sfty_xray

論拠については、後ほど、リファレンス論文を列挙することにします。

X線とは?

X線は、光やラジオ波のように放射エネルギーの1種です。

光とは異なり、X線は、体を貫通し、放射線科医師(画像診断医師)が説明するような体の内部構造の映像を生成できることが大きな特徴です。

内部構造は、X線を使用することによって写真フィルム、TVモニターまたは、コンピュータモニタ上で可視化することができます。

X線検査は健康に関して高い価値の情報を提供し、精度の高い診断を行う医師を支援するのに重要な役割を担っています。

いくつかのケースでは、X線は、いくつかの治療法の手順の中で、体内にあるチューブまたは他のデバイスを交換するのに役に立っています。

測定放射線量について

放射線量の測定のための科学単位は、一般的には実効線量で言及される、ミリシーベルト(mSv)です。他の線量測定単位として、ラド、レム、レントゲン、シーベルト、グレイを含みます。

異なる組織と臓器は、放射線被ばくに対して感度が変化するため、X線プロシジャーからの体の異なる部位に対する実際の放射線照射によるリスクも変化します。

実効線量の用語は、身体全体にわたる平均化された放射線リスクを参照したときに使用されます。

実効線量は、曝露された異なる組織の相対的な感度を考慮します。

さらに重要なことは、リスクの定量化と自然バックグランド放射線から医療放射線プロシジャーまでの範囲において、より馴染みのある曝露源との比較ができるということがあります。

自然に生ずるバックグランドの放射線被ばくについて

私達は、いつも自然ソースからの放射線に曝露されています。

日本人は、放射性物質や外部から宇宙線から年間、約1.4ミリシーベルト(1988年10月推定値)との実効線量を受けています。

これらの自然の"バックグランド"線量は、国によって異なります。

コロラド高原またはニューメキシコに住む人々は、海の近くに住んでいる人達よりも年間、1.5mSv 以上の放射量を受けています。商用飛行機の中での海岸と海岸と渡るフライトには、宇宙線かの付加線量は、0.03mSv付加されます。高度は、大きな役割を果たしていますが、バックグランド放射源の最大の線源は、私達の家庭の中にあるラドンガス(年間約2mSv)によるものといわれています。バックグランド放射線の他の線源のように、ラドンの曝露も、ある国の一部から別の国まで広く変化しています。

それをシンプルな用語で説明するために、米国(年間3mSvの自然バックグランド被ばく線量)では、1回の胸部X線検査が、10日間、自然環境から受ける経験値としての総被ばく線量と等しいということを比較しながら説明します。