2017年度 第1回NSP 柳澤邦昭氏(京都大学こころの未来研究センター)

2017/05/17 21:07 に 名古屋社会心理学 が投稿   [ 2017/07/10 18:36 に更新しました ]
日時
2017年7月8日(土)15:00-17:00

場所
名古屋大学教育学部2F E・F演習室

発表者
柳澤 邦昭 氏(京都大学こころの未来研究センター特定助教)

タイトル
モノとコト消費を期待する脳

概要

新しい商品を所有したり(物質的消費 or モノ消費)、特別な体験や経験をすること(経験的消費 or コト消費)で、私たちはさまざまな喜びや幸せを感じます。この幸せな気分は、それらの消費行動を頭に思い描き、消費の到来を期待しているときにも得られると言います。近年では期待の認知・情動処理がストレス低減や精神的健康の高まりと関連する可能性も指摘されています。では、このような消費の期待は(1)どのような脳のメカニズムによって実現されているのでしょうか?(2)モノ消費とコト消費の期待ではそれぞれどの脳領域が関わっているのでしょうか?(3)これらにどのような個人差要因が関わってくるのでしょうか?本発表では、最近行った2つのMRI実験の結果に基づき、上記の問いに対する現段階の回答を提示しようと思います。さらに、消費心理の研究に神経科学的アプローチを持ち込むことにどのようなメリットがあるのか、皆さまと議論したいと思います。

開催報告

柳澤氏は、モノ消費・コト消費への期待がもたらす心理的効果やその神経メカニズム、そして幸福感に影響を及ぼす消費期待の個人差について、MRI実験や行動実験、Web調査を組み合わせた多面的なアプローチで検討を行っている。

今回の発表では、消費期待、特にコト消費の神経基盤に関する2つのMRI実験の結果が報告された。先行研究では、コト消費はモノ消費よりも自己との関連が強くみられ、幸福感の増大にもつながりやすいことが示されてきた。柳澤氏の研究では、モノ消費・コト消費への期待が報酬系を活性化させて幸福感を増大させること,特にコト消費において吻側前部帯状回,後部帯状回/楔前部,両側海馬といった、主に記憶に関連する領域がネットワーク的に結合して相互に活性化していることが示された。このことは、過去のコト消費がいわば「楽しい思い出」として記憶されており、将来のコト消費への期待を高めるというプロセスの存在を示唆する点で非常に興味深い。

フロアとのディスカッションでは、モノ消費とコト消費を区別する要素や、コト消費を想起する際に社会性の側面が重要となる可能性、物質主義傾向(マテリアリズム)との関連など、さまざまな観点から活発に議論が行われた。

(文責:名古屋大学大学院教育発達科学研究科心理発達科学専攻研究員 加藤仁
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