2016年度 第3回NSP 大坪庸介氏(神戸大学大学院人文学研究科)

2016/09/28 17:03 に 名古屋社会心理学 が投稿   [ 2016/12/18 16:38 に更新しました ]
日時
 2016年12月17日(土)15:00-17:00

場所
 名古屋大学教育学部2F 第3講義室

発表者
 大坪 庸介 氏(神戸大学大学院人文学研究科)

タイトル
和解の社会心理学的理解を目指して

概要

良好な対人関係を維持することは心身両面での健康と関わっています。しかし、どのように親しい間柄でもささいなことが原因で言い争うことがあるでしょう。そのようなときに、相手と和解できなければ、その関係を失ってしまうことになります。では、どのような要因が和解を促進するのでしょうか?

和解に関係する人を大きく2つにわけると、自らが悪かったといって謝罪する加害者と、加害者を赦すかどうか決める被害者がいます。そこで、加害者による謝罪を促す要因は何か、被害者による赦しを促す要因は何かを考えることで和解の理解が可能になると考えられます。

ですが、多くの争い・葛藤ではお互いに相手が悪いと考えていることが多いのではないでしょうか。そうすると、双方を簡単に被害者・加害者とわけることはできないかもしれません。このことから、謝罪と赦しを同時に促す要因があれば、それが和解を促す重要な要因と考えることができます。そのような要因のひとつとして、相手との関係を重視ている程度が和解にとって大事であることを示した一連の研究を紹介します。

開催報告

2016年度第3回NSPでは、「和解(仲直り)」をテーマとして、神戸大学の大坪庸介氏に話題提供いただいた。対人関係の消失は、個人の健康にとって、肥満や飲酒以上に深刻なリスクファクターであり、「個人がいかにして葛藤を乗り越え、対人関係を修復するか」を明らかにすることは重要な社会的要請となっている。大坪氏は、「赦し」と「謝罪」に基づく「和解」こそが対人関係の修復において重要であると捉え、和解がいかにして導かれるのかを実証的に検討してきた。

今回の発表では、「謝罪すれば赦される」という人々の素朴な考えに対して、「単に謝るだけでは赦されにくい」ということ、また単純に謝るだけではなく、「あなたとの関係は、コストを負うほどに価値あるものだ」という誠意を伝えることで赦しが引き出されやすくなることが、シナリオ実験、行動実験の結果に基づいて説明された。さらに、コストのかかる謝罪を受けた人物は、他者の意図推論に関連する脳領域が賦活していることも報告された。また、関係の価値を高く認知する個人ほど、コストのかかる謝罪をしやすいことも明らかとなり、加害者と被害者という両者の視点から、いかに人々が他者と和解するのかが論じられた。

研究会では、和解研究に用いられた概念の定義や集団間葛藤研究への応用可能性など幅広い観点から議論が行われ、敵対関係を解決するということは、「敵を滅ぼすこと」なのではなく「敵を赦し、友となること」かもしれないという結びのもと、盛会のうちに終了した。


参加者:34名
(文責:名古屋大学大学院教育発達科学研究科 五十嵐研究室 博士後期課程 玉井颯一)
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