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20周年記念JTF翻訳祭の企画意図

https://www.jtf.jp/jp/festival/bk/festival_2010.html発表機会:2010年11月1日 『翻訳通信』(発行:山岡洋一氏)2010年11月号(投稿)

翻訳者の山岡洋一さんが発行する月刊誌『翻訳通信』2010年11月号に掲載していただきました。『翻訳通信』の概要は下記のリンクから参照できます。


投稿した原稿をこのページに添付しました。下記の[添付ファイル]からダウンロードできます。

20周年記念JTF翻訳祭の企画意図

生まれ変わったJTF翻訳祭

諸事情により日本には翻訳関係の団体がいくつもあります。それらの団体のひとつである社団法人日本翻訳連盟(以下JTF)は、経済産業省許可の公益法人という位置付けを活かして、翻訳者・翻訳会社・翻訳発注元のいずれの立場からも参加できるところにその特色があると私は思っています。

JTFは毎年秋に「JTF翻訳祭」というイベントを主催してきました。著名な講演者を招待しての基調講演をメインに据え、翻訳者・翻訳会社・翻訳発注元が議論するパネルディスカッション、講演、交流パーティという構成で20年近く継続してきた恒例行事ですが、今年は従来の構成を大きく変更してカンファレンス形式で開催されます。筆者はこの行事の企画運営を担当する翻訳祭企画実行委員のひとりとして、一人でも多くの方にぜひ生まれ変わったJTF翻訳祭へ足を運んでいただきたく、この場を借りて本年度翻訳祭の企画意図をご紹介します。

翻訳業界の「いま」を知る機会として

筆者はIT関係の翻訳(ローカリゼーション翻訳)に従事しているためにソフトウェア業界のカンファレンスに参加する機会がありますが、一日の参加でいろいろな講師の話を自分で自由に選んで聞くことができ、なかなかよいイベントだと感じてきました。ひるがえって自分の本業である翻訳業界をみわたすと、世界のレベルではLocalization WorldやLISAなどの行事でカンファレンスが定着しており、日本でも日本翻訳者協会(JAT)が早々にこの形式での行事(IJET)を提供して今日に至りますが、IJETは日英のネイティブ翻訳者を主たる対象とするイベントであり、自分のように英日翻訳に従事する翻訳者・翻訳業界人のためのイベントが日本にはないなあという不満をここ数年感じてきました。

それぞれの日常の仕事においては、翻訳業界人の誰もが手馴れた翻訳の一分野または一工程にかかわって仕事をこなしているわけですが、一年に一度くらいは自分が生活の糧を得ている「翻訳業」という業界の全体がいまどんなことになっていて、明日どんなことが起きそうか、それを自分の目と耳で確かめられる(あるいはそんな気分が味わえる)イベントがあってもいいのではないか。そんな思いを昨年度のJTF翻訳祭でアンケートに記入して提出したところ、アンケートを読んだJTF翻訳祭企画実行委員会の皆さんが寛容にも提案を受け入れてくださり、今年度の委員として企画運営に直接携わる機会を得ることができました。

その後の準備では数え切れないほど多くの方がいろいろな側面から知恵と力を貸してくださり、12月には新しいカタチのJTF翻訳祭が実現するところまでこぎつけました。企画の趣旨をご理解くださりご協力くださったすべての方に心から感謝します。

ツールの知識を更新する機会として

私はIT翻訳という仕事がら、翻訳支援ツール(特に近年は機械翻訳の関連ツール)の動向には仕事上も個人的にも大きな関心を持っています。多くの翻訳業界人にとって翻訳支援ツールの動向を掌握するうえでの泣き所は、ここ数年で以前とは比較にならないほど翻訳支援ツールの種類も数も増えてしまい、メルマガをたまに読むくらいではとても最新のツール事情に追いついていけない状況になってきたことでしょう。

かくなる上はそれぞれが一人で思いつめて勉強するより皆で教えあって知識を分かち合うのが誰にとってもよいことだろうというわけで、今年度のJTF翻訳祭ではセッションの約半数を翻訳支援ツールとその技術に関連する内容に設定しました。今後も毎年このカンファレンスを継続して「年に一度JTF翻訳祭に参加すれば翻訳支援ツールに関する自分の知識も時代遅れにならずにすむ」と皆さんから言われるイベントに育てることが私の夢です。

知らない<他者>と知り合う機会として

ツイッターやFacebookに代表されるSNSの普及もあって、ますます人のつながりにネットが介在する時代になってきましたが、やはりなんらかの形で生身の他者と出会うことが人間にとって大きな喜びの(ときには苦しみの)源泉であることは誰もが経験から知っているとおりです。

翻訳業界においても仲間内の勉強会や講演会などを通じてリアルに人と会う機会がいろいろあると思いますが、翻訳者であれ翻訳会社の社員であれ日常の人間関係は翻訳業界内のごく狭い範囲内に限られる場合が多いかと思います。一年に一度くらいは、今まで翻訳業界の中にいて自分が知らなかった<他者>と出会う機会があってもいいのではないでしょうか?

ここで<他者>というのは人格に限らず、別分野の翻訳や、翻訳に関連する学問や、専門外の書籍かもしれません。たとえばアカデミックな側面だけをとりあげても翻訳は翻訳学・言語学・自然言語処理などの互いに独立した学問領域と深いかかわりがあり、日常業務をこなすだけならとりあえず必要ないと考えていた学問領域に日常の問題を解決するヒントが隠されていることもあったりするのが言葉の世界の奥深さかと思います。多様な立場からの参加者・講演者を受け入れるJTF翻訳祭を介して、これまでは知らなかった<他者>と出会っていただければさいわいです。

翻訳業界に自分や自社をPRする機会として

今年は聴衆の立場で参加してくださった方の中から、来年度以降のJTF翻訳祭の講演者が現れることを期待しています。JTF翻訳祭のカンファレンスで講師として発表することが翻訳業界全体にあなたの存在をアピールする好機になります。

また、新しいカタチのJTF翻訳祭が今後業界イベントとして発展していくことは翻訳業界における展示会としてのイベント価値が増すことにつながり、翻訳支援ツールの開発企業や翻訳会社で営業や採用を担当しておられる方にとっては市場にアクセスして自社のサービスや製品をPRする好機となります。

ここまで充実した内容で6,500円

基調講演は日本における翻訳学の草分けの一人である水野的さん(日本通訳翻訳学会副会長)にお願いしました。この講演が翻訳業界と翻訳学会が今後お互いをより深く知っていくよい契機となることを願っています。

パネルディスカッション1では、社会言語学者の鈴木義里さん(大正大学准教授)をナビゲーターに迎えて「英語公用語化」をテーマに取り上げます。今年は有名企業の社内公用語として英語が採用されたことが話題になりましたが、これまで受注産業として自ら市場を創造することがなかった翻訳業界にとって英語公用語化は市場創造の契機になり得るという前向きの問題提起を含む意欲的な企画です。

パネルディスカッション2は、例年の翻訳祭でも人気のある定番企画として各分野で実績のある翻訳者の方たちの座談会を用意しました。なんといっても翻訳業界の主役である翻訳者という職種のベストプラクティスとして参考にしていただければと思います。

トラック1&2「翻訳業界分科会」は、産業翻訳の各分野における新たな需要の動向とその開拓方法を、翻訳会社と翻訳発注元が対話する形式で提示するというコンセプトに基づいて企画しました。自社の顧客を他社の目前に紹介するのは翻訳会社にとって慎重な判断を必要とすることですが、企画の趣旨に賛同して顧客企業とともにご登壇くださる翻訳会社の皆様には感謝と敬意を表させていただきます。

トラック3&4「支援ツール分科会」は、前述したとおり発展の早いこの分野の最新状況を眺めて知識をアップデートしていただく企画ですが、市場の動向をふまえて機械翻訳に関連するセッションを4つ用意しています。
企業が製品などを展示する「翻訳プラザ」も過去最多の出展数になりました。制限言語ツールや統計的機械翻訳ツールなど今年初めて登場するソリューションもあり、過去最高の充実度です。

以上駆け足で今年度のJTF翻訳祭の内容をご紹介しましたが、いずれのセッションも単発でセミナーとして成立するような濃い内容を一同に集めて一度に話が聴けて6,500円(JTF会員は5,000円)とは間違いなく「お買い得」であると自負しています。

ご参加をお待ちしています

今年JTF翻訳祭は20周年企画ということで未知の事業であるカンファレンス形式での開催に挑戦しました。今年度のJTF翻訳祭が事業としてもしも赤字になれば来年度以降はカンファレンス形式での開催が難しくなる可能性もあります。カンファレンス形式のJTF翻訳祭を定着させるためにも、今年度の参加者数が目標数を上回りイベントとして採算がとれることを実証する必要があります。生まれ変わったJTF翻訳祭にぜひお越しください。皆様のご参加を心からお待ちしています。

謝辞

最後になりましたが、翻訳祭企画実行委員会の東郁男さん(㈱翻訳センター代表取締役社長、JTF会長)、川村みどりさん(㈱川村インターナショナル代表取締役、JTF理事)のご理解とご協力、寺田大輔さんをはじめとするJTF事務局スタッフの皆さんのご尽力に深く感謝します。翻訳者の山岡洋一さんからは企画上の重要事項を左右する貴重なアドバイスを頂きました。あわせてお礼申し上げます。

なお、この記事の内容はすべて筆者の個人的見解であり社団法人日本翻訳連盟を代表するものではないことをおことわりします。

【参考情報】20周年記念JTF翻訳祭の概要


主催者あいさつ
来る12月13日(月)、東京のアルカディア市ヶ谷(私学会館)を会場として恒例の「JTF翻訳祭」を開催いたします。今年で20周年を迎えることになり、経済産業省はじめ各関連団体より後援をいただいて、講演・パネルディスカッション・展示会・交流パーティーなどの催し物を用意しております。翻訳祭は翻訳者、翻訳会社、クライアント、翻訳支援ツールメーカーなど業界関係者が一堂に会するイベントです。参加者の皆様が翻訳祭を通して新たな人脈を形成するとともにビジネスの機会を得ていただくことを願っております。
ご多忙中お手数とは存じますが、是非ともご出席賜りますようよろしくお願い申し上げます。

ホームページ
日時
2010年12月13日(月)10:00~20:00(開場9:30)

場所
「アルカディア市ヶ谷(私学会館)」
〒102-0073 東京都千代田区九段北4-2-25 TEL:03-3261-9921
※JR・地下鉄「市ケ谷駅」より徒歩2分

参加料金
講演・パネルディスカッション:JTF会員5,000円 非会員6,500円
交流パーティー:6,000円
・参加料のみで交流パーティーを除くすべてのトラックの講演・パネル・セッションに参加できます。

お申し込み

申込締切
2010年12月6日(月)まで
・定員になり次第、受付を終了致しますので、お早めにお申し込みされることをお勧め致します。
・当日参加の受付も致しますが、満席の場合はご参加いただけない場合もございますので、予めご了承ください。

主催
社団法人日本翻訳連盟  〒104-0031 東京都中央区京橋3-9-2 宝国ビル7F(tel 03-6228-6607, info@jtf.jp)

後援
経済産業省/アジア太平洋機械翻訳協会/STC 東京支部/中国翻訳協会
一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会/社団法人電子情報技術産業協会
公益社団法人日本工業英語協会/日本翻訳者協会(JAT)

企画運営
20周年記念JTF翻訳祭企画実行委員会

プログラム詳細


メイン会場

トラック1

トラック2

トラック3

トラック4

基調講演他

翻訳業界分科会1

翻訳業界分科会2

支援ツール分科会1

支援ツール分科会2

基調講演「翻訳研究(Translation Studies)と実務の接点」





パネルディスカッション1
「英語公用語化と翻訳の未来」

メディカル「翻訳プロセスはプロレスだ!:新薬開発の現場から」

金融「法定開示文書の英訳 ~ニッチな市場の確かな需要に応える~」

「オープンAPI とクラウドによる翻訳管理システム XTM

「翻訳者だからできる!世界に向けたアプリの開発と販売」

特許「企業と知的財産 ~特許海外展開と翻訳~」

多言語「多言語翻訳ベンダーの現状と成長戦略」

「個人も使える!業界で共有する翻訳メモリー TDA
~進化していく翻訳メモリー~」

No.1フリー翻訳支援ツール OmegaT 入門」

パネルディスカッション2
「強い翻訳者から学ぶ ~いかにしてお客様の満足を得るか~」

自動車「TTDCにおける自動車技術翻訳」

出版「出版翻訳の現状と動向」

「ローカリゼーション・ソリューション模擬コンペティション」
SDL
ジャパン㈱
ライオンブリッジジャパン㈱
Welocalize Japan

「統計的機械翻訳の理論と実装」

Native・日英翻訳「簡潔かつ明確なビジネス英訳 ~英語ネイティブの観点とアドバイス~」

映像「エンタメ翻訳における新たなマーケットとしてのゲーム翻訳」

「平均時速650語の翻訳支援技術
機械翻訳を活かして効率と高品質を両立する秘密」


法律「未来につなげる翻訳力
~法律翻訳の動向と契約書翻訳ワンポイントアドバイス~」

IT・ローカリ「海外発、ローカリゼーションのゆくえ」

「機械翻訳時代に翻訳者の生きる道」

「ポストエディット入門2010