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IT翻訳入門【TRADOS編】06:PageMakerファイルの翻訳

発表機会:『通訳・翻訳ジャーナル』(イカロス出版)2000年12月号および2001年1月号掲載(雑誌記事)

1999年から一年あまり『通訳翻訳ジャーナル』(イカロス出版)という業界誌に「IT翻訳入門」というタイトルで連載記事を書かせていただく機会がありました。現在同誌は年四回発行ですが当時は月刊誌でした。このホームページの内容は、雑誌向けの原稿に加筆修正し、連載と並行して当時のホームページに公開したものです。『通訳・翻訳ジャーナル』の概要は下記のリンクから参照できます。


利用上の注意:このホームページは執筆当時(1999-2000年)の状況について述べており、すでにかなりの記述が「時代遅れ」となっていますが、原則として当時のままの内容を修正せずに公開しています。ご注意ください。

PageMaker ファイルの翻訳

TRADOS というと翻訳メモリによる過去訳のリサイクル機能だけが注目されがちですが、諸形式のファイルをタグ付きテキスト ファイル (または RTF ファイル) に書式統一する機能もかなり重要です。

TRADOS 社が提供するファイル コンバータを利用することによって、HTML、SGML、XML はもちろん、FrameMaker、Interleaf、PageMaker、QuarkXPress、Ventura、PowerPoint の各書式のファイルを変換し、統一された環境で翻訳できるようになります。私の場合、HTML、FrameMaker、PowerPoint、PageMaker の 4 形式で、受注業務の 95% はカバーされると思います。FrameMaker や PageMaker のファイルを上書き翻訳するとなると、翻訳者の人数分だけパッケージを購入する必要がありますし、翻訳者側でもいろいろなツールの操作方法を覚えるのに貴重な時間が浪費されてしまいます。書式の統一によってそれらの苦労から解放されることのメリットはかなり大きいと思います。

コンバータを使うデメリットとしては、いろいろな書式がタグ付きテキストになってしまう結果、複雑にタグが挿入されたテキスト ファイルを翻訳することになり、いったい今自分が翻訳しているのが何なのか、文書の中のどのあたりなのか分からなくなるという点があります。これについては、翻訳会社がたとえば PDF に落としたレイアウト イメージを翻訳者に提供することによって、欠落した情報を補うべきでしょう。

PageMaker ファイルの翻訳ワークフロー

PageMaker ファイルを TRADOS を使って翻訳しようとする場合、ファイルの変換のために Story Collector と Filter Pack の 2 つのツールを使う必要があります。処理の流れとしては、PageMaker ファイル (拡張子.p65) から Story Collector でタグ付きテキスト (拡張子 .txt) をエクスポートし、そのタグ付きテキストを Filter Pack でマークアップ処理して RTF ファイル (拡張子 .rtf) に変換し、その RTF ファイルを TRADOS Translator's Workbench (以下 Workbench) でバッチ翻訳した後、翻訳者が翻訳を行うことになります。


翻訳者による翻訳が完了した RTF ファイルは、Filter Pack で逆変換してテキスト ファイルに戻します (事前に Workbench で訳文を生成する必要はありません)。このテキスト ファイルを Story Collector を通じて元の PageMaker ファイルにインポートしてやると、翻訳されたテキストが PageMaker ファイルのテキスト ブロックに読み込まれます。

Story Collector の入手方法

StoryCollector はトラドス社のウェブサイトから無償で入手できます。10/2現在でトラドス本社サイトに公開されている最新版は、8 月下旬のタイプスタンプの付いた Edition 3, Build 3です。日本語版はありませんが、Build 3 から正式に日本語版 PageMaker 6.5 に対応していますので、すでに旧版を利用中の方も最新版 (Build 3) への更新をおすすめします。日本支社のサイトではツールのバージョンが旧い場合があるので注意してください。最新版は下記の URL から入手できます。

http://www.trados.com/products/download_demo.asp

Story Collector についてはデモ版とフリーランス版/チーム版の違いはありません。なお、ユーザー ガイドも同じ 8 月下旬に 2.0 版 (19ページ) に改訂され、新たに日本語処理に関する注釈などが追加されています。

Story Collector のインストール

Story Collector は PageMaker 6.5 のプラグインであり、Story Collector のインストールに先立って PageMaker 6.5 をインストールしておく必要があります。PageMaker 6.0以前のバージョンには対応していません。

Story Collector のインストールはあっという間にすんでしまいます。デフォルト設定ではインストール先はC:\Program Files\TRADOS\TRADOS Story Collector になります。インストール後、このフォルダに作られる Trados Story Collector.add ファイルを PageMaker プラグイン用のフォルダにコピーします。PageMaker をデフォルト設定でインストールしている場合、コピー先のフォルダは C:\PM65J\RSRC\JAPANESE\PLUGINS です。なお、プラグインをコピーするときに、拡張子が .cnt と .hlp のヘルプ ファイルもいっしょにコピーします。

コピーした後で PageMaker を起動すると、[オプション] - [プラグイン] - [TRADOS Story Collector] プラグインが表示されるようになります。ファイルを開いていない状態では薄い色で表示されます。

PageMaker ファイルを開く

実際の作業の流れにそって手順を説明します。説明の素材として、Story Collector に含まれているサンプル ファイルを使います。サンプル ファイルは、Story Collector をインストールしたフォルダに sample.p65 といるファイル名で保存されているはずです。これを PageMaker で開きます。


翻訳に先立って、PageMaker を使う機会などあまりないと思われる翻訳者向けに PageMaker の最小限の予備知識を 3 点だけ説明します。

第一に、PageMaker には「テキスト編集」と「レイアウト編集」の 2 種類の画面があり、[編集] メニューにあるコマンドで画面を相互に切り替えられます。sample.p65 ファイルを最初に開いたときはレイアウト編集画面が表示されます。

第二に、レイアウト表示においてはページの表示倍率を [表示] メニューで変更できます。全体のレイアウト イメージを確認したいときは [全体表示] を選び、細かい部分を見たいときは [実寸表示] を選びます。

第三に、ツール パレットで現在選択されているツールに注意します。ツール パレットにはたくさんのツールが並んでいますが、翻訳者は原則的に新規のフレームやグラフィックを挿入する立場にありませんから、既存のテキストの編集に関係がある「ポインタ ツール」と「テキスト ツール」だけ知っていれば最低限の編集は可能です。ポインタ ツールを選択するとポインタは矢印型になり、この矢印型ポインタでテキストを選択すると後で説明するフレームまたはブロックを選択できます。一方、テキスト ツールを選択するとポインタは I 字型になり、この I 字型ポインタでテキストを選択するとテキストを文字単位で編集できます。


テキスト フレームとテキスト ブロック

Word も PageMaker もおおざっぱに言えば同じ「文書作成ツール」ですが、Word を使い慣れている翻訳者が初めて PageMaker を使うと、おそらくテキストの取り扱い方の違いに戸惑うと思います。これは、ワープロ ソフトと DTP ソフトの機能の違いからくるもので、一言で言えば Word のようなワープロ ソフトで「まず文章を書いて後でレイアウトを考える」のと逆に、PageMaker のような DTP ソフトでは「まずレイアウトを決めて、その枠に文章を流し込む」段取りになります。この違いが分かれば、PageMaker におけるテキストの取り扱い方をすんなり理解できるでしょう。

どんな文書であってもレイアウト上に配置するものはテキストかグラフィックのどちらかですが、翻訳者に直接関係があるのはほぼテキストのみですから、ここでは話をテキストに絞ります。PageMaker ではレイアウト上にテキストを配置するために「テキスト フレーム」と「テキスト ブロック」の 2 通りの方法が用意されており、どんなテキストもいずれかの方法で画面上に配置されています。あるテキストがフレームとブロックのどちらなのか知りたければ、[ウィンドウ] - [コントロール パレットの表示] コマンドを選んでコントロール パレットを表示した状態でポインタ ツールを選び、矢印型ポインタでそのテキストを選択します。テキスト フレームの場合はコントロール パレットにフレームのアイコンが表示され、テキスト ブロックの場合はTの文字のアイコンが表示されます。どちらの場合も、選択したテキストの上下の端に「ブラインド ハンドル」と呼ばれる記号が表示されます。

雑な言い方をすれば、テキスト フレームは文字数が固定されたテキスト入力領域であり、テキスト ブロックは文字数が固定されていないテキスト入力領域です。テキスト フレームは、まだテキストの中身が何もないうちに場所を確保する目的で (いわゆるプレースホルダーとして) レイアウト上に配置でき、テキストの長さに関係なく最初に決めた形が保持されるため、レイアウトを先に決定する場合に便利です。一方、テキスト ブロックは何か中身となるテキストがないと挿入できません。既存のテキスト ブロックのテキストを全文削除すると、そのテキスト ブロックは消滅します。逆に、たとえば外部の文章をテキスト ブロックに流し込んだときに自動的にブロックを生成させることもできます。

テキストが 1 個のフレームまたはブロックに収まりきれない場合、複数のフレームまたはブロックに連続して表示されるように設定でき、そのように設定された複数のフレームまたはブロックのつながりを「ストーリー」と呼びます。ただしフレームとブロックが連結されることはありません。

タグ付きテキストのエクスポート

PageMaker 文書を TRADOS Workbench で翻訳するためには、テキスト フレームおよびテキスト ブロックをタグ付きテキストとして PageMaker ファイルから抽出する必要があります。ここで Story Collector を使います。

[オプション] - [プラグイン] - [TRADOS Story Collector] を選択すると、Story Collector のダイアログボックスが表示されます。ダイアログボックスの上の方に並んだ Set Story Order、Export Stories、Import Stories の 3 つがそのまま Story Collector の機能を表しています。


すでに説明したとおり PageMaker ファイル内のテキストは複数のフレームまたはブロックに分かれています。部分的にはストーリーが成立している箇所もありますが、1 個の PageMaker ファイルを 1 個のタグ付きテキスト ファイルに書き出す、すなわちエクスポートするには、そのファイルのすべてのテキスト フレームとテキスト ブロックを順番に並べる必要があります。Story Collector では、このテキストのエクスポート順序を指定することができますが、その機能が Set Story Order です。

sample.p65 を開いた状態で Story Collector ダイアログボックスを開いて [Story Order] ボタンをクリックすると、そのページの Story Order ダイアログボックスが表示されます。


Story Collector によって自動抽出されたストーリーの順序が気に入らないときは、このダイアログボックス上で順序を変更できます。各ストーリーは、ここで指定した順序にしたがってエクスポート先のタグ付きテキスト ファイルに並んで書き出されます。翻訳者はタグ付きファイルを先頭から翻訳してゆきますから、ストーリーの順序は翻訳者が文書の内容をできるだけ理解しやすいように並べるのが望ましいでしょう。

Story Order を決定したら、次にタグ付きテキスト ファイルをエクスポートします。Story Collector ダイアログボックスの [Export] ボタンをクリックすると、タグ付きテキスト ファイルの保存箇所を指定するダイアログボックスが開くので適切なフォルダとファイル名を指定し、[保存] ボタンをクリックすると Results ボックスにログを表示しながらエクスポート処理が実行されます。「FINISHED PROCESSING」と表示されたら処理は完了で、タグ付きテキスト ファイルが生成されています。Build 2 ではログの中の日本語が文字化けしていましたが Build 3 では正しく表示されるように改良されています。


エクスポート後にファイルを保存する

実際の仕事で支給された PageMaker ファイルを開く場合には、そこで使われているフォントが手元のコンピュータにインストールされていないことがしばしばあります。この場合、ファイルを開いたときに [PANOSEフォント置換結果] ダイアログボックスが表示されます。

翻訳後の PageMaker ファイルでどのフォントを使うかは得意先から DTP への要求仕様として指定されているはずですが、翻訳者に対してまで使用フォントが指定されることは普通ありません。現状では、翻訳の工程では PageMaker ファイルを TRADOS 翻訳してまた PageMaker ファイルに戻せればそれでよしとして、フォントの設定については後工程の DTP 担当者が行う場合が多いようです。得意先からフォントの指定を受けていない限り、フォント置換のダイアログボックスが表示されたら、翻訳者としては [OK] ボタンをクリックして先に進むしかないでしょう。

このフォント置換の例のように、何らかの要因で保存されたファイルがそのまま開けない場合、PageMaker で開いたファイルの名前は「名称未設定-n」 (nは数字) になるようです。名称未設定のファイルのまま、Story Collector を起動してタグ付きテキスト ファイルをエクスポートできます。 エクスポートが済んだらそのままファイルを閉じてしまいがちですが、タグ付きファイルをエクスポートするのに使った「名称未設定」ファイルは、元のファイルとは別の名前を付けて保存しておいてください。そのファイルが、翻訳完了後にタグ付きテキストを戻すときのベース ファイルになります。

元の PageMaker ファイルをベース ファイルに使えばよいような気もしますが、筆者の経験した範囲では、実際にタグ付きテキストのエクスポートに使ったファイルを使わないと、翻訳後のインポート時に問題が生じる場合があるようです。Story Collector のマニュアルにも、エクスポート後のファイルを保存しておくように指示されていますので (11ページ) 指示に従ったほうが無難だろうと思います。

(このあと後半が続きますが、データを紛失してホームページ化できないため、このページに当時の誌面コピーを添付しました。そちらをご覧ください。)

(2000年10月4日執筆)

利用上の注意:このホームページは執筆当時(1999-2000年)の状況について述べており、すでにかなりの記述が「時代遅れ」となっていますが、原則として当時のままの内容を修正せずに公開しています。ご注意ください。
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Hiroki Kawano,
2010/12/02 8:40