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IT翻訳入門【TRADOS編】04:Workbenchの基本操作

発表機会:『通訳・翻訳ジャーナル』(イカロス出版)2000年(おそらく)8月号[翻訳支援ツール特集掲載(雑誌記事)

1999年から一年あまり『通訳翻訳ジャーナル』(イカロス出版)という業界誌に「IT翻訳入門」というタイトルで連載記事を書かせていただく機会がありました。現在同誌は年四回発行ですが当時は月刊誌でした。このホームページの内容は、雑誌向けの原稿に加筆修正し、連載と並行して当時のホームページに公開したものです。『通訳・翻訳ジャーナル』の概要は下記のリンクから参照できます。


利用上の注意:このホームページは執筆当時(1999-2000年)の状況について述べており、すでにかなりの記述が「時代遅れ」となっていますが、原則として当時のままの内容を修正せずに公開しています。ご注意ください。

Wordファイルを翻訳する

TWB を使って実際に Microsoft Word のファイルを翻訳してみましょう。冒頭にも書きましたが、翻訳メモリを使った翻訳作業というのは翻訳メモリと訳語集という 2 つのデータベースにデータを追加したり、以前登録したデータを参照したり、参照したデータを編集して更新したり、といった、いわば「データベースの編集」をやっているのと同じことです。ですから翻訳メモリを利用した翻訳作業においては、従来から利用してきたワープロやエディタに加えて、翻訳メモリおよび訳語集のデータベースにアクセスするためのツールを起動しておくことになります。TRADOS ツールの場合、翻訳メモリにアクセスするツールが TWB であり、訳語集にアクセスするツールが MultiTerm ですから、TRADOS ツールを使う翻訳では、作業環境としての Word または TagEditor に加えて、TWB および MultiTerm を起動して翻訳を行います。

すでに解説した手順にしたがって TWB と MultiTerm をまず起動します。ここでもこれまで同様、TWB のサンプル ファイルを使ってみます。TWB と MultiTerm の両方で、説明のときに開いたサンプル ファイルを開きます。ちなみに TWB も MultiTerm も、開いたデータベースを閉じないままで終了すると次回にソフトを起動したときに同じデータベースが自動的に選択された状態で立ち上がります。起動した 2 つの TRADOS ツールのうち、MultiTerm については TWB から参照できるので画面を最小化しておきます。また、TWB については MultiTerm との連動機能を利用するために MultiTerm の検索結果を表示するボックスを、[オプション] メニューの [用語認識] コマンドを使って開きます。TWB の画面は Word 画面とならべて表示しておきたいので、最小化はしません。


ここまで用意ができたところで Word を起動します。TWB のインストールが正常に行われていれば、例えば次のような画面が表示されます。この画面で分かるように、以前にはなかったツールバーが追加されています。このツールバーが、TRADOS のためのものです。


TRADOS ツールをすでに利用している方は、TWB というとこの Word の画面 (のツールバー) を連想する方も多いと思います。このツールバーから利用できる TWB の機能はいずれも (Word よりも前に起動させた) TWB 側で実現されており、Word からは TWB の API を呼んでいるに過ぎませんが、Word 上にこのようなユーザー インターフェイスが提供されたことによって、翻訳者は使い慣れた Word の環境を離れずに、そのまま翻訳メモリが利用できるようになるという大きなメリットがあります。TRADOS ツールの優れた特徴のひとつが、この Word との連携の良さなのです。

ちなみにこの TRADOS ツールのツールバーとコマンド メニューは Word のテンプレートを使って実現されており、[ツール] - [テンプレートとアドイン] コマンドでテンプレート (TW4Win2k.dot) のチェックボックスを外すと TRADOS ツールバーも表示されなくなります。


では、Word のサンプル ファイルを C:\Program Files\TRADOS\Demo-3\Sample\Word\Sample.doc から開いてみましょう。


この状態で、先頭の行をメモリ翻訳してみます。文書の先頭にカーソルをおいた状態で、TRADOS ツールバーの左端から 2 番目の [開いて取得] ボタンをクリックすると、画面が次のように変化します。


ここで新しく色付きで表示された箇所が、1 個の翻訳単位の原文と訳文の対応を示します。TRADOS の翻訳では一度に1個だけの翻訳単位を開くことになっていて、 翻訳単位を開いた状態でもカーソルは移動できますが、複数の翻訳単位 を同時に開くことはできません。

ちなみにこの翻訳単位の前後に隠し文字で TWB によって隠し文字の記号が挿入されています。前後の {0> と <0} は翻訳単位の開始と終了をそれぞれ表す隠し文字、<}100{> は流用率を表す隠し文字です。この翻訳単位ではたまたま (というかサンプル ファイルなので) 登録済みの翻訳メモリ内に 100% 一致する翻訳単位があったので流用率が 100% として表示されています。


100%一致する翻訳が過去の翻訳のなかにあったとしても、それが今回の文脈の中でそのまま再利用できるとは限りません。流用されてきた訳文の内容をチェックし、必要に応じて修正を加えて上でこれを保存して翻訳メモリを更新します。更新のときには、TRADOS ツールバーの [登録して閉じる] ボタンをクリックします。これで 1 個の翻訳単位の翻訳が完了です。

この状態で再び [開いて取得] ボタンをクリックすると次の翻訳単位が開かれます。この文についても翻訳メモリから流用できる文が表示されましたが、今回は 100%の流用ではありません (流用率 88%)。

これは、今回の英文と完全に一致する翻訳メモリがみつからなかったので、一番似ているものを持ってきたということなのですが、では一体どこが一致しなかったのがわからないと訳文を修正すべき個所がよく分かりません。そのため、一番似ていた翻訳単位のほうは TWB に表示される仕組みになっています。

上には今回の翻訳対象英文、下にはこれに一番近い翻訳メモリ内の翻訳単位が表示されています。上下の英文を比べてみると、今回は National という言葉が追加されていることがわかりました。そこで、訳文を例えば「学校>国立学校」のように修正すればよいわけです。

これで 2 個目の翻訳単位の翻訳ができあがったので、また [登録して閉じる] ボタンで翻訳単位を閉じてもいいのですが、今度はその代わりに [登録して閉じる/開いて取得] ボタンをクリックすることにします。このコマンドだと、[登録して閉じる] ボタンと [開いて取得] ボタンの操作を一度に実行できるので、続けて翻訳していくときは便利です。

このように次々にセンテンス単位で翻訳単位を開いていくときに、翻訳完了した部分をちょっとみてみましょう。

さきほど説明した TWB が挿入する隠し文字の他に、元の英文も隠し文字になって訳文の直前に埋め込まれていることがこれを見て分かります。これらの隠し文字が表示されているのは現在 [編集記号の表示/非表示] ボタンが押し下げられているからで、このボタンを再度クリックすると隠し文字は表示されなくなります。すなわち、TRADOS ツールが挿入した記号も英文も見えなくなり、納品するときの訳文だけのイメージになります。

TRADOS ツールを使って翻訳したファイルを納品する際には、後ほど説明する [訳文の生成] 処理を行って TRADOS が挿入したこれらの隠し文字をすべて自動的に削除しますが、それまではこれらの隠し文字は誤って削除したりすると TRADOS ツールによる正しい処理が行えなくなってしまいますので、翻訳者がこれを破損しないように十分注意する必要があります。破損しないためには画面上に表示されている必要がありますから、TWB を使った Word 上での翻訳作業では、常に「編集記号 (隠し文字) を表示してファイルを編集すること」が暗黙の了解事項となっています。

訳文を生成する

翻訳単位ごとの翻訳作業が最後まで完了したとすると、次に行うのは訳文の生成です。すでに述べたとおり TRADOS ツールでは翻訳メモリとの情報の対応上、翻訳単位ごとに隠し文字の記号や英文が挿入されていますから、最後にこれをすべて一括削除するとともに翻訳した内容を翻訳メモリに反映し、メモリを更新したりします。

TWB において [ツール] メニューの [訳文の生成] コマンドを選ぶと [ファイルの訳文の生成] ダイアログが表示されるので、[追加] ボタンをクリックしてさきほど翻訳したファイルを追加してやります (翻訳が最後まで完了していなくても訳文は生成できます)。


この状態で [訳文の生成] ボタンをクリックすると、隠し文字を取り除いた納品可能なファイルが自動生成されます。

参考情報:[Trados] メニューのコマンド一覧

Word から利用できる TWB の機能をてっとりばやく一覧するには、[Trados] メニューのコマンドを一覧してみるとよいでしょう。コマンド名というよりも、機能一覧みたいでわかりやすいでしょ?

(2000年5月30日執筆)

利用上の注意:このホームページは執筆当時(1999-2000年)の状況について述べており、すでにかなりの記述が「時代遅れ」となっていますが、原則として当時のままの内容を修正せずに公開しています。ご注意ください。