home‎ > ‎

IT翻訳入門【TRADOS編】01:製品概要とインストール

発表機会:『通訳・翻訳ジャーナル』(イカロス出版)2000年(おそらく)8月号[翻訳支援ツール特集掲載(雑誌記事)

1999年から一年あまり『通訳翻訳ジャーナル』(イカロス出版)という業界誌に「IT翻訳入門」というタイトルで連載記事を書かせていただく機会がありました。現在同誌は年四回発行ですが当時は月刊誌でした。このホームページの内容は、雑誌向けの原稿に加筆修正し、連載と並行して当時のホームページに公開したものです。『通訳・翻訳ジャーナル』の概要は下記のリンクから参照できます。


利用上の注意:このホームページは執筆当時(1999-2000年)の状況について述べており、すでにかなりの記述が「時代遅れ」となっていますが、原則として当時のままの内容を修正せずに公開しています。ご注意ください。

TRADOS Translation Solution でガイドする翻訳支援ツールの操作法

この記事では、翻訳メモリ (TM) を利用する翻訳支援ツールのごく基本的な操作方法についてご紹介します。とりあげるツールは、現在日本においてもっともポピュラーな翻訳支援ツールである TRADOS 社の Translation Solution です。

翻訳者の皆さんの中には、TRADOS Translator's Workbench (以下TWB) の評判を聞いて一度ためしてみようとデモ版を入手してインストールはしてみたものの、何となく使い方が直感的に理解できずにそのままになっている方もおられるのではないでしょうか?これはひとつには、「翻訳メモリ」というものがまだ目新しいために最初イメージがわきにくいのが原因かと思います。「翻訳メモリ」のイメージさえいったん得られれば、TWB の操作を理解することはかなり簡単です。一通りの操作方法についても、おそらく 2 時間もあれば一通りなぞることができ、基本操作を使った翻訳をその日のうちにも開始できるでしょう (ただし、実務で本格的に使い始めると、細かい使い勝手に慣れるためにある程度時間が必要ですが...)。

TRADOS は翻訳支援ツールとしてももちろん役立ちますが、筆者の私見では翻訳メモリを使わない仕事でも、いわゆる「TRADOS 形式」のファイルに加工して翻訳することによって訳抜けがなくなるとともに翻訳後のレビュー効率が上がりますし、後日、簡単に翻訳メモリを作成できます。そして、無料でウェブサイトからダウンロードできるデモ版でも、 TRADOS 形式ファイルへの加工は可能ですので、デモ版でもそれなりに役立ちますから、まだ TWB を使ったことのない方やインストールしたまま忘れていた方も、ぜひこの機会にお試しください。

この記事で紹介した操作は、特に断り書きをしていない限り、すべてデモ版で実行できます。また、この記事を作成するにあたって取材にご協力いただいたトラドス・ジャパン株式会社の川本さん、今林さんにこの場を借りて感謝いたします。

TRADOS 製品の簡単な紹介

TRADOS 社の翻訳支援ツールは TWB を中心とする複数の製品群から構成されています。その中核となるとが TWB = Translator's WorkBench で、2000年4月に Edition 3 にアップグレードされたばかりです。

翻訳メモリはデータベースの一種ですから、TRADOS を理解するためにはデータベース製品の説明でよく使われる「三層構造」を考えるといいでしょう。データベース製品では中核にデータベース サーバーがあり、その上の中間階層にデータベースを利用するためのアプリケーション サーバーがあり、そのアプリケーションを利用するユーザー側に、最上階層であるブラウザなどがあったりしますが、TRADOS 社の現在の製品構成をこの構造にあてはめてみると、 中核となるデータベースは、過去に翻訳した文章のデータベースと翻訳中に参照すべき訳語のデータベースの 2 つがあります。そして、訳文データベースのデータベース サーバー兼アプリケーション サーバーとなるのが TWB であり、訳語データベースのデータベース サーバー兼アプリケーション サーバーとなるのが MultiTerm です。

データベースの三層構造では最上階層はクライアント側のブラウザなどでしたが、翻訳メモリの場合、編集対象が文書なので、最上階層はワープロやエディタになります。すなわち、TRADOS の場合はワープロから翻訳メモリにアクセスする手段として Microsoft Word 上の「TRADOS コマンド」をテンプレート (TWB に含まれます) として提供するとともに、エディタから翻訳メモリにアクセスする手段として TagEditor を提供しています。

この他、マニュアルでよく翻訳対象となる FrameMaker のファイルについて、TRADOS は対象ファイルを Word で編集できるファイルに変換して翻訳を行い、翻訳完了後にまた FrameMaker に戻す、というアプローチで対応しています。この、FrameMaker と Word の間のファイル変換を行うツールが S-Tagger です。また、過去に TWB を使わずに翻訳した原文ファイルと訳文ファイルが大量に存在するという場合に、それらの過去の蓄積文書からリサイクル可能な翻訳メモリを半自動的に生成するツールとして WinAlign が用意されています。最後に、プレゼン資料の定番である Microsoft Powerpoint ファイルの翻訳において TWB を利用するためのフロントエンドとなる T-Window を加えた 6 製品 (Workbench、TagEditor、WinAlign、MultiTerm、T-Window、S-Tagger) をまとめて、TRADOS 社では TRADOS Translation Solution と呼んでいます。長い名前なのでこの記事では以下「TRADOS ツール」と呼ぶことにしましょう。

Translation Solution に含まれる 6 製品は、個別に購入する必要はなくひとまとまりのパッケージになっています。なお、パッケージとしてはすべての機能が利用できる Team Edition と一部機能が制限されていて価格の安い Freelance Edition の 2 種類が用意されています。無料で TRADOS 社のウェブサイトからダウンロードできる Demo 版にも 6 製品はすべて含まれていますが、機能はより限定されています。

以下、この記事での解説はすべて Edition 3 (TWB/TagEditor は Build 133、MultiTerm は Version 1.52) に基づいています。バージョンが異なると説明と異なる場合がありますのでご注意ください。

TRADOSの必要環境

操作方法の説明に入る前に、準備する必要があるパソコン環境を確認します。まず、TRADOS ツールは Windows しか提供されていませんので、Mac ユーザーの方は Windows マシンをどこかで調達してください。また、Windows パソコンの仕様ですが、私の個人的な経験では、TRADOS ツールを仕事で利用する場合にはメモリが最低 256MB、CPU は Celeron 466MHz 程度あったほうがよいと思います。ですが、デモ版を試しに使うだけであれば、64 MB のメモリの Pentium マシンであれば一応動作はします。

OS についても、仕事で使うなら NT または Windows 2000 での利用をお勧めしますが、デモだけ見てみたい場合は Windows 95, 98 でも問題ありません。なお、TRADOS 社は Windows NT および Window 2000 での利用を推奨しています。

この他、多くの場合に Microsoft Word (バージョン 95、97、98、2000 のいずれか) が必要です。「多くの場合に」と書いたのは、もしもあなたが翻訳する対象が HTML/SGML/XML に限定されていれば、すべての翻訳を TagEditor 上で行い、Word を使わないということも一応可能だからです。ただ、旧版の TagEditor Ver1.x では不具合などが原因で作業環境として Word と比べて見劣りするところがありました。Edition 3 でこの点はかなり改良されたようですが、使い込んでみないと判断できない部分もありますので、やはり当面は、Word もあったほうが無難だろうと思います。ちなみに HTML ファイルは TagEditor を使わずに TWB でも翻訳できます。その場合は添付の Filter Pack というツールを使って HTML ファイルを Word の RTF ファイルに変換して翻訳します。

TRADOSの入手方法

TRADOS ツールのデモ版は今月号の『通訳翻訳ジャーナル』の付録 CD からインストールできますし、ウェブサイトから最新のデモ版を入手することも可能です。TRADOS 社のウェブサイトは英語版が http://www.trados.com/、日本語版が http://www.trados.co.jp/ です。2000/5/30 現在、日本語サイトでデモ版をダウンロードできるページの URL は http://www.trados.co.jp/products/download_demo.asp です。

このページにアクセスするといくつものツールのデモ版が提供されていることが分かりますが、Edition 3 のデモ版は一番最初に表示されています。なお、デモ版のソフト自体の他に、チュートリアルやユーザーズ ガイドもダウンロードできるようになっています。チュートリアルはクリックすると紙芝居上に操作を説明してくれますが説明が英語です (5/30 時点)。ユーザーズガイドは TWB/TagEditor のものと MultiTerm のものがあり、前者は日本語版がありますが後者は英語版のみです(5/30時点)。

なお、以下の説明では TWB/TagEditor および MultiTerm を両方インストールして利用します。説明の内容を自分でも確認したいという方は、少なくとも「Translator's Workbench と TagEditor」の最新版と「MultiTerm」の最新版の 2 つをダウンロードしてください。

TRADOS 社は比較的頻繁に自社のソフトウェア製品をバージョンアップします。そのたびにビルド番号が上がっていきますので、本格的に TRADOS ツールを利用するのであれば、今後は同社のウェブサイトの定期的チェックが欠かせません。なお、英語版のサイトと日本語版のサイトではダウンロードできる内容が多少異なっていたり、日本語版のサイトの更新が遅れてダウンロードできるビルド番号に多少差がつく場合もありますから、チェックするときは英語版と日本語版の両方のサイトを調べることをお勧めします。

TRADOSのインストール

ここでは TRADOS の基本機能を一通り試すことが目的ですので、TWB/TagEditor と MultiTerm の 2 つの製品をインストールします。TRADOS ツールのインストール方法はいたって素直で、パソコンの操作に慣れた方ならあまり問題はないと思います。

TWB/TagEditor のインストール中に利用言語を選択するダイアログが表示されます。自分が利用する言語を最大で 3 言語まで選択できますので、多くの方は English と Japanese、そして縁起をかつぐ方であれば第三言語に German を選ぶとよいでしょう。なお、TWB/TagEditor のインストール後はマシンの再起動が必要です。


MultiTerm のインストール中に画面用語を選択するダイアログが表示されます。この図でも分かるように、MultiTerm のユーザー インターフェイス (UI) は日本語化されていませんので、お好きな言語をお選びください^^;。

サンプルファイルの確認

この説明では、翻訳対象ファイルとして TRADOS ツールのインストールと同時にインストールされるサンプル ファイルを使うことにします。インストール先のフォルダをデフォルト値から変更していない限り、デモ版のサンプル ファイルは C:\Program Files\TRADOS\Demo-3\Samples の下にあるはずです。

サンプル ファイルの内容は以下のとおりです。

  • MTerm ...MultiTerm のサンプル訳語集
  • TagEditor...TagEditor の翻訳対象サンプルとなる HTML ファイル
  • TW4Win...独語、仏語、日本語の翻訳メモリのサンプル
  • Word...TWB の翻訳対象サンプルとなる Word ファイル

なお、TRADOS ツールのユーザーズ ガイドでも、これらのサンプル ファイルを使って説明が書かれています。

(2000年5月30日執筆)


利用上の注意:このホームページは執筆当時(1999-2000年)の状況について述べており、すでにかなりの記述が「時代遅れ」となっていますが、原則として当時のままの内容を修正せずに公開しています。ご注意ください。