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IT翻訳入門03:IT翻訳業界のしくみ

発表機会:『通訳・翻訳ジャーナル』(イカロス出版)2000年1月号掲載(雑誌記事)

1999年から一年あまり『通訳翻訳ジャーナル』(イカロス出版)という業界誌に「IT翻訳入門」というタイトルで連載記事を書かせていただく機会がありました。現在同誌は年四回発行ですが当時は月刊誌でした。このホームページの内容は、雑誌向けの原稿に加筆修正し、連載と並行して当時のホームページに公開したものです。『通訳・翻訳ジャーナル』の概要は下記のリンクから参照できます。


利用上の注意:このホームページは執筆当時(1999-2000年)の状況について述べており、すでにかなりの記述が「時代遅れ」となっていますが、原則として当時のままの内容を修正せずに公開しています。ご注意ください。

ローカリゼーションとは何か

ソフトウェア産業は皆さんご存じの通り全体としてはアメリカが進んでおり、アメリカ以外の世界各国はアメリカのソフトを「輸入」して使っているケースが多いようです。おなじみの Windows に世界各国語版があるのは多くの方がご存じのとおりです。

ソフトによってはアメリカよりも他国が最先端を行く場合があります。例えば翻訳支援ツールはドイツが本場ですし、産業工作機械の制御ソフトや半導体関係の製造支援ツールなどでは日本が一番強い場合もあるようです。それらの場合も、ドイツ語や日本語から世界各国語に直接翻訳するよりも、まず英語版を作ってそこから世界各国語版に「輸出」するほうが全体のコストが安くなるという話も聞きます。

ここでは私たちが実際の仕事で触れることの多い、英語版ソフトを日本語にローカライズするケースを考えてみましょう。

この場合、画面の表示やメッセージを英語から日本語に修正する必要があり、またオンラインヘルプやマニュアルも日本語に翻訳する必要があります。後者はほとんどが翻訳ですが、前者の、プログラムを修正する作業は、作業対象のリソース (画面に表示されるメニュー名、コマンド名、メッセージなどを総称してこう呼びます) を翻訳するだけでなくプログラムのコードの修正やソフトウェアの仕様変更までも含む場合があるため、従来の翻訳の範疇に含まれない仕事が発生します。これらをすべてまとめて、ソフトウェアの「現地語化」、すなわち「ローカリゼーション」 localization と呼びます。

たとえば時刻の表示形式のオプションとして、日本語の「何時何分」という表示形式は元の英語版には存在しませんから日本語版のみに追加されるローカル仕様になります。また、英語版のボタン名が [Cancel] とあるのを日本語版で [キャンセル] と訳せば、元のボタンの大きさからはみ出してしまうのでボタンの幅を拡げる必要があるかもしれません。これは、ローカライズに伴うコードの修正になります (といっても最近はリソース エディタがグラフィカルなのでボタンをリサイズするだけのことですが)。

とはいうものの、翻訳者に対して「訳した結果がはみだしたら、ボタンをリサイズしといてね」とは指示できないので、やっぱり翻訳者以外の作業者 (多分プログラマ)を雇わないとローカリゼーションが完結しません。この他、紙のマニュアルがやはり少しは存在しますから、版下を出力して印刷に発注する DTP の担当者や印刷管理の業務、表紙の色校正をチェックするデザイナーっぽい職能の人なども必要です。

これらの異なる職能がローカリゼーション全体にしめるコストの割合については、私は翻訳15%、編集15%、制作10%、印刷20%、ソフト40%くらいなのかなと思っています。補足すると、編集というのは翻訳者がだした原稿に手直しをいれ、表現を統一したり誤訳を直したりする作業です。制作は DTP 管理やページ レイアウトなどの作業です。 

これらの職能には、発注元のソフトウェア会社にしてみると、アウトソーシング(外注)できる作業と、アウトソーシングしたくてもできない作業に分けられます。

ソフトウェアのローカライズは、外注しにくい作業です。なぜなら、ソフトウェアの翻訳をチェックして修正した結果 をプログラマ側が新しいビルドに反映する必要があり、新しいビルドを使って翻訳者がまた UI の翻訳とテストを行う、というふうに、プログラマと翻訳の作業が密接にからみあい、作業効率の面 からも機密保持の面からも、ローカライズの作業環境やベータ版ソフトの途中ビルドを外部に出しにくいためです。

他方、翻訳、編集、制作、印刷はソフトウェア会社にとってはまったくの傍流作業なので、自社の担当社員は最小限に抑えて、可能な限り外注したいところですし、また外注が可能です。この作業を下請けするのが、ローカライザーという下請け業者です。 

ローカライザーは世界各国にグローバル展開しているのが昨今の傾向で、日本にもここ数年で大手のローカライザーが進出を完了し、従来から日本市場で活躍してきた日本の翻訳会社とはげしい競争を繰り広げています。


ローカリゼーションの世界市場

ソフトウェアの大きな流れは「アメリカから世界へ」です。世界といってもソフトウェアのユーザーが多くてパッケージの売上が多いのは、何と言っても欧州と日本が双璧です。中国がいくら未来の巨大市場だといっても経済発展には段階というものがありますから、現在のところは日本のほうが PC ユーザーの購買力が大きいようです。

ちょっと古いデータですが、Byte 誌 96年3月号“Organizing Babylon”には、世界市場の 2000 年における内訳を欧州5割、日本3割、その他の地域が合わせて2割と予測している調査結果 が紹介されています(Copyright 1996 McGraw-Hill Companies, Inc)。

この調査の後に日本経済が金融危機に突入したり景気回復が遅れたりしているので、日本市場のシェアは2割くらいに下方修正されるでしょうが、それでも間違いなくローカリゼーション市場の言語別 シェアでは世界で一、二を争う規模です。裏を返せば先進国なのに英語をしゃべれる人がこれほど少ない国は世界中日本以外にないわけで、残念です。

欧州では、よく言われますが FIGS = French, Italian, German, and Spanish の4言語が大きな市場になっています。欧州はローカリゼーションの先進市場であり、世界を代表する大手の MLV も欧州に集中しています。陸続きの諸国民が複数言語を TPO で使い分けながら操るという欧州独自の環境にあって、ローカリゼーションの分野でも、SLV (単言語ベンダー)よりも MLV が主流という現在のかたちができあがったのでしょう。TRADOS や Transit などの翻訳支援ツールも欧州生まれですし、ローカリゼーション業界の国際的な業界団体 LISA (Localization Industry Standards Association) http://www.lisa.org/の事務局もスイスにあります。

そして、欧州におけるローカリゼーションのメッカと言われているのがアイルランドの首都ダブリンです。アイルランドは国策産業としてローカリゼーションに取り組んでおり、ローカリゼーション企業は税制面 などでさまざまの優遇策が受けられるそうです。このため多くのベンダーがダブリンに大きな事業所を持っていますし、企業間の人材移動も活発なので業界経験者が採用しやすいようです。

欧州の主要ローカライズ言語 FIGS に対して、アジアの主要ローカライズ言語は C2JK = Simplified Chinese, Traditional Chinese, Japanese, and Korean とくくられます。アジアにおいてはまだローカリゼーション市場は発展途上であり、最大市場セグメントの日本においてすら大手 MLV が本格進出したのはここ数年です。主要 MLV 各社は、現在残り3言語 (中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語) の市場におけるプレゼンスを拡大中です。

欧州内での諸国切磋琢磨の末に誕生した列強が19世紀の帝国主義の時代にアジアを含む世界各地に展開し、その歴史の流れのなかで日本が鎖国から脱し、明治維新を経て富国強兵に進むというストーリーは日本人なら誰でも学校で習いますが、なんとなくローカリゼーション産業の展開と似ていておもしろいなと思います。


ローカリゼーション業界の構造

IT 翻訳のおもな市場であるローカリゼーション業界で最初の発注元になるのは、海外のソフトウェア会社の日本法人や代理業者です。一方、最終的な受注先になるのは個人の在宅翻訳者です。両者の間には、ローカライザー、翻訳会社、翻訳エージェントなどと呼ばれる仲介業者が存在します。ここでは発注元のソフトウェア会社と受注先の個人翻訳者の間に存在するすべての中間層を、まとめて「ベンダー」と呼ぶことにします。

ソフトウェア会社の規模が小さい場合、ベンダーを経由せず、翻訳業務を個人翻訳者に直接に発注する場合があります。しかし、ソフトウェア会社の規模がある程度 (社員 50名前後) を超えると、発注する翻訳の分量が増えて多数の個人翻訳者をコントロールする面 倒さが負担になってくるため、翻訳業務を個人翻訳者にではなくベンダーに発注するケースが多くなります。

ちなみに一つのプロジェクトで翻訳対象ワード数は一般的に 15~50 万ワードになりますが、これを 4~6 週間で翻訳する場合、5~15 名の翻訳者が必要になります。ソフトウェア会社の発注担当者がひとりで 3 件の翻訳プロジェクトを担当すると仮定すると、その担当者は 15~45 人の個人翻訳者を自ら直接コントロールすることになり、管理が大変になるのもうなづけます。

一方、個人翻訳者の側にも翻訳会社にマージンを搾取されるのを嫌って直接ソフトウェア会社から仕事を受注するように営業展開する人はいます。が、その場合は営業活動や伝票の発行を自ら行う必要があり、ソフトウェア会社側の頻繁なスケジュール変更に対応したり、自分一人で仕事をこなせないときに翻訳者チームを編成したり、といった翻訳以外の管理業務が増えてきて、実質的には半分翻訳会社みたいな仕事をやることになります。

このような発注側と受注側の双方の需要が、ベンダーを必要とする理由となっています。

ベンダーの形態は、おおざっぱに「ローカライザー(ローカリゼーションベンダー)」、「翻訳会社」、「翻訳者チーム」に分けられるでしょう。

「翻訳者チーム」は、直前に書いたとおり、個人翻訳者が単価アップや受注能力の改善などの目標達成のために、複数の翻訳者を組織する形態です。翻訳業界に昔からある徒弟制度の伝統を継いでいるため、翻訳者にとって分かりやすい就労形態ですし、中間搾取を受けないという理念からも理想的ではありますが、現実には中核となるリーダー翻訳者が、翻訳力、人望、管理能力のいずれかを欠いているとうまく機能せず、翻訳チームが空中分解するケースもあるようです。

「翻訳会社」は、IT 分野以外の産業翻訳にも共通する業態で、社内翻訳者に加えて、営業、コーディネーター、チェッカーを社内に抱えて翻訳を得意先に納品します。従来から IT 以外の分野で仕事してきた多くの翻訳会社はローカライザーとして必要なすべての作業を社内でこなせないため、ローカライザーの下請けとして仕事するか、がんばってローカリゼーション技能を社内に築くか、あきらめて IT 分野から撤退するか、いずれかの道をたどります。ちなみに翻訳会社と名が付く会社は、電話帳などで調べると、ざっくりと東京都内で 1,500-2,000社、それ以外で1,000-1,500社、合計して日本全国で2,500-3,500社程度あるようですが、この中でローカリゼーション業務を一通 りこなせる会社は100社に満たないだろうと思います。

「ローカライザー」は、翻訳者を手配して翻訳を進行させるだけでなく、上がってきた翻訳をチェックして手を入れたり(エディットとか編集とかリライトとか呼ばれます)、ヘルプファイルのコンパイルを始めとして指定納品形式へのコンバートを行ったり、翻訳ファイルを DTP 用に使えるところまでレイアウトを整えたり、マニュアルの印刷を手配したり、表紙の色校正を行ったりと、いろいろな作業を行わねばなりません。さらに、翻訳を超えるソフトウェアのローカライズ(単位 の変更や国情にあわせたソフトウェアの変更)、UI (ユーザー インターフェイス)の翻訳、エラーメッセージの実機テストなど、ソフトウェア開発に準ずる職能と機材を必要とする工程までカバーします。もちろん、社内翻訳者を抱えている会社もあります。

日本国産の代表的なローカライザーは、十印 http://www.to-in.co.jp/、DHC http://www.dhc.co.jp/、富士通ラーニングメディア http://www.flm.co.jp/ などです。

現在ローカライザーとして仕事している企業がどういう分野から進出してきたかをみると、一番目立つのは印刷業です。余談ですが翻訳の仕事というのは最初印刷業者に持ち込まれることが多く、翻訳会社にも印刷会社から発展したことろが多く存在します。特に最近では、MLV (Multiple Language Vendor、多言語ローカライズを行える多国籍企業のローカライザーを指す用語) の活躍が目立ちますが、MLV の雄であるバウン グローバルやライオンブリッジも親会社の原点は印刷業です。

印刷業の他に、出版社から発展したベンダーもよくあります。本を作るという技術が生かせるためでしょう。また、プログラムの開発などをやっていたソフトウェア会社がベンダーに転身するケースもあります。ソフト屋あがりのベンダーは、コードのローカライズや技術チェックは得意ですが、独自に変な?翻訳支援ツールを開発する人が多いのがときどき困りものです^^;。

ローカリゼーション業界が生まれて日も浅い頃(約10年前)には、ベンダーにもいろいろな会社があり、社員が営業ばかりで翻訳原稿に手を加えられないにもかかわらず、50%のマージンを上乗せするという主義の会社に出会ったこともあります。当時私は自分でも翻訳していたのですが、翻訳者が翻訳報酬として1枚1,500円しかもらってないのに、その会社が1枚7,000円でソフトウェア会社に右から左に翻訳を売っていたのを見て、なんとも納得いかない思いでした。

その仕事はベンダーが3階層になっていて、それぞれが問屋のような仕事でマージンを上乗せしてしまうのでこういう事態が起きていたわけですが、この10年間にベンダーの数も増えて状況はかなり改善され、この話のような理不尽な構造は私の周辺では見なくなりました。現状でソフトウェア会社はベンダーに対して1ワード 25~45 円程度を支払っていると思いますが、30 円以上を支払う場合は翻訳以外の編集や DTP なども含めたパッケージ価格であることが多く、ベンダーの社内での状況などを見ても、現状の仕事のやり方を前提とした限りでは、そこそこ妥当な価格帯になっているように思います。ただし、一部の MLV では、間接部門の増加が単価に上乗せされるために割高な翻訳単価を提示する業者もあるようなので、発注側は必ず複数業者から見積もりをとる必要があります。


これまでの翻訳会社

さて、前回はローカリゼーション業界の構造について書きましたが、今回はちょっと道草して、ローカライザーではない従来の翻訳会社のイメージを描いてみましょう。

まず翻訳会社の規模についてですが、社団法人日本翻訳連盟が 1995 年 8 月に実施したアンケートによると、社員 6 名以下の会社が 60%を占めています。他方には社員数 30 名以上の翻訳会社というのもありますが、そういう大きな会社の多くは翻訳だけでなく DTP、印刷、通訳などの翻訳以外の業務との複合的業態の会社が多いようです。

小さな翻訳会社の多くは、個人で翻訳をやっていた人が節税上法人形態にしたり、内弟子またはアシスタントを雇っているうちに会社になったという経緯を経ています。ボスの翻訳者としての評判が高くてしかもボスにグループ翻訳の元締めをやる意欲と資質がある場合は、社内にコーディネーター的な人を雇ったりして、弟子の翻訳者も数名使って仕事を進めるようになりますが、ある程度以上の規模になると内紛が生じます。

これはお約束のパターンですが、翻訳者の名簿をもって営業が独立しただのコーディネーターが独立しただのという話はこの業界ではごくありふれています。これを "翻訳会社の細胞分裂" と呼びます。機械や資産が必要な業種でもないので、人脈力をある程度つけた担当者がボスを見限れば独立するのも当然。その意味で細胞分裂はごく自然な現象です。社員5名を越えると分裂する場合が多いようです。

このような細胞分裂を繰り返す結果、日本には翻訳会社が数千社も存在するわけですが、その多くは年商が 5000 万円以下です。そういうたくさんの翻訳会社が、個人翻訳者に準じる存在として日本の翻訳業界の主たる戦力として働いています。

このテキストの読者の方にとって、そういう従来型の小規模翻訳会社とかかわりが生じる可能性があるのは、おもにこの業界でのキャリアをスタートするときでしょう。新たに産業翻訳者になろうとする場合、徒弟制度の弟子から入るのがたぶん一番簡単ですが、徒弟先の多くは年商3億円以下の零細企業/小企業です。

修行ですから働きながら勉強になり、数年修行したあと独立 (のれん分け) への道が見えていることが重要なわけですが、ボスの多くは、優秀な社員であればあるほど {重要な戦力なので自分の手元に置きたい|商売敵になっては困るので独立させたくない|独立するものとは最初から認識していない} ため、独立したい社員側と独立させたくないボス側が心情的にこじれた場合にかなりのストレスが生じます。たいていは話がこじれます。特効薬的な予防策がないので、事前にあまり悩んでも仕方ありません。こればかりは、当たってくだけろ、です。

そうは言うものの、こじれ方の重いor軽いはボスの人柄に左右されるので、ボスをこれから選ぶ人は、翻訳の師としての側面 に加えて、巣立ちを許してくれるかどうかという人物的な側面からも評価したほうがいいでしょう。一つの目安は、自分の前任者がどういう退職のしかたをしたか、調べることだと思います (トム・クルーズ主演の映画『ザ・ファーム』のように前任者が暗殺されている場合は、あなたもトム・クルーズになれるか、さもなきゃあの世行きです)。


MLV の台頭

日本の IT 翻訳市場ではここ数年、従来活躍してきた翻訳会社に代わって MLV (Multiple Language Vendor) が急速に台頭してきました。MLV とは、日本語に限定せず欧州&アジアの複数言語のローカリゼーションを並行して処理する能力をもったベンダーのことです。もともとアジアより欧州のほうがこの産業では進んでおり、欧州では過去10年ほどに何社かの大手の MLV が誕生しました。欧州で誕生した MLV が、ここ数年で日本市場へ参入したことにより、IT 翻訳の市場構造が大きく変化しつつあります。

MLV と日本の翻訳会社との一番の違いは規模です。MLV の売上は、世界全体で 50~300億円に達します。一方、日本の翻訳会社は最大手でも売上 10 億円前後にとどまるようです。桁違いの規模です。

規模にも関係しますが、MLV の第二の特徴は投入できる資本が大きいことでしょう。大手の MLV は、印刷会社やソフトウェア関連企業が親会社としてバックに控えているケースが多く、それらの親会社はほとんど公開企業です。アメリカの株式市場はいまだに好況を維持していますから、MLV は株式市場に手を突っ込んではキャッシュを取り出し、それをここ数年、アジア市場に投入しているわけです。

具体的には、日本で従来からあったローカル ベンダーを買収して日本市場に参入するというのが一つのパターンで、この方法で日本市場に参入した MLV としては、バウン グローバル http://www.bowneglobal.com/、ライオンブリッジ http://lionbridge.com/ が有名です。 別のアプローチとしてゼロから日本支社を立ち上げた MLV もあり、代表例として ITP ジャパン http://www.itp.ie/、L&Hメンデス http://www.lhsl.com/jp/services/localization/ があります。また、近い将来日本市場に本格進出すると思われる大手 MLV として、インターナショナル コミュニケーションズ http://www.intl.com/ が挙げられます。逆に、昔から日本で営業してきた MLV である ベルリッツ トランスレーション サービス http://www.berlitz.com/、アルプネット http://www.alpnet.com/ については、次の一手が注目されます。


以下、各社について少し紹介します。(以下のデータは97年秋にウェブで調査したもので、かなり古くなっています。最新データは各社のサイトをご確認ください。)

Bowne Global Solutions

Bowne&Co.,Inc….1775年設立、財務印刷業界の会社

97/5-7 四半期売上 $182,672,000- (前期比 36%成長)

多角化の一環としてローカリゼーション サービスに進出

1996/11 に IDOC(米) を買収した後、1997/3 に GECAP(独), I&G COM(仏), ME&TA(スペイン), Pacifitech(日) の買収を発表

買収した5社を合計して $50 million in ‘96

LioNBRIDGE Technologies

1980 オランダで INK Group として創業

1993 アイルランドの翻訳会社と合併,R.R.Donnelley傘下へ

1995 ドネリーを離れ Corporate Software と合併

Stream International を形成>その後社名を変更

アメリカに加えてダブリン、アムステルダム、パリ、ソフィア、ソウル、台北、北京、東京などに支店あり

L&H Mendez

1971年にベルギーのローカライザーとして創設

今日では世界のトップ10翻訳会社のひとつに成長

Lernout & Hauspie Speech Products (自然言語処理装置の開発メーカー) のローカリゼーション部門

親会社の L&H は95/12 に NASDAQ に株式公開

L&H の 1996/1-12 年間売上は$31million(400%成長)

Berlitz Translation Services

1878年 Maximilian D.Berlitz 氏が創設。ドイツ生まれでアメリカに移住し、欧州8言語を教える先生だった。

この経験から語学教育における Berlitz Method を開発

現在はニューヨーク株式市場に株式公開。

1997/4-6四半期売上 $95.0 million(前年比4%成長)

このうち翻訳部門は $20.7 million (前年比 19.3%成長)

ALPNET

1996年売上 $32.3 million (前年比20%成長)

13ヶ国、33都市に展開(97年6月発行社報による)

社員数 375人(97年6月発行社報による)

96年1月に日本支社を設立


ローカリゼーション市場の近未来

グローバル ベンダーが順調に成長した場合、ローカリゼーション市場の顔ぶれはだいぶ整理されることでしょう。今回は、私なりにかなり独断的に近未来のローカリゼーション市場を予測してみたいと思います。

MLV (Multiple Language Vendor=多言語のローカリゼーションを取り扱う多国籍企業) 台頭の話題と対になって、「SLV (Single Language Vendor=単一言語のローカリゼーションを取り扱う MLV よりも小規模の企業) は滅びるのか?」というテーマがよく議論されます。結論を先に書くと私は、体制の整った SLV は少なくとも日本語に関しては当面生き残ると思います。

ある大手ソフトウェアメーカーでは、日本語だけローカライズする大型のプロダクトがいくつもあり、そういうプロダクトでは MLV を SLV より優先する必然性が低いため、条件次第で SLV にもある程度の仕事を出す余地があるようです。また、MLV によっては間接費が増大したために翻訳単価が上がり、価格競争力を失うケースも出てきているようです。

というわけで 1999-2000 年は、MLV、SLV、その他のレガシー?ベンダーの3つのカテゴリーが混在したままに成長する市場を分け合う状況が続き、2001 年以後は体制の整わないレガシーベンダーが仕事を受けられずに脱落して、体制の整った MLV と SLV で市場を分け合うような状況になるのではないでしょうか。

TRADOS の本格導入は翻訳メモリを組み込んだ新しいビジネスモデルを実現する可能性もあり、TRADOS を必要数だけ購入できない/しないベンダーや、ドングルだけ大量購入しても上手に運用できるだけの社内体制&優秀人材のないベンダーは淘汰されていくのが今後の大きな方向だろうと思います。

逆に言えば、規模が小さくてもカッチリした TRADOS 運用ノウハウを蓄積して仕事をこなせるベンダーであれば、規模的には小さくても MLV や SLV が下請けとして好んで使いたがるでしょうから生き残るでしょう。そういうベンダーは、小規模でも体制の整った SLV としてカウントすべきだろうと思います。

しかし、最近私は、そのような議論は実はもっと大きな議論の前にかすんでしまう可能性があるように思っています。つまり、ソフトウェア産業のプロセスや意味そのものをも変革してしまうようなインターネットの台頭です。考えてみれば、現在のローカリゼーション産業は、マイクロソフトが確立したバージョンアップ型のビジネスモデルを前提とした下請け産業です。しかし、インターネット革命は、このようなソフトウェア配布方式そのものを変革する可能性があります。

オラクルのラリー・エリソン社長が好んで予測するように、ソフトウェアはオンデマンドでサーバーから配信されるものとなったとき、定期的なバージョンアップのたびに改版でお金をもらうようなローカリゼーション産業もまた、形をかえることを余儀なくされるのではないでしょうか。Linux 文化のような方法論がマニュアル業界をゆさぶるかもしれません。また、今後はソフトウェアマニュアルの翻訳よりもウェブサイトのローカライズこそが市場として大きくなっていくのはほぼ確実です。ウェブサイトのローカリゼーションのプロセスは、ソフトウェアのそれとはかなり違うはずで、そうなると、新しいプロセスに最適化された、新しいベンダーが台頭してくる可能性もたぶんにあります。

なにが起こるか一寸先は闇の IT 業界ですから、現在覇者のように見える MLV が明日の覇者とは、必ずしも限らないように思います。

(1999年10月20日執筆)


利用上の注意:このホームページは執筆当時(1999-2000年)の状況について述べており、すでにかなりの記述が「時代遅れ」となっていますが、原則として当時のままの内容を修正せずに公開しています。ご注意ください。