はみ出し吸血鬼 1

 
 
はみ出しちゃった吸血鬼。 ~血は吸いたい。けど怖い。~ 




「またふられたー。せっかく色々な耐性持って生まれてきたのに、このまんまじゃ餓死じゃねーか!」 


俺はある日、薄暗い部屋の中で、天を仰ぎながら駄々をこねていた。 


「もうそれ聞き飽きたって。てめぇはどっちにしろ血を見ただけで卒倒すんだから、今まで通り、狩りに出られなくなったジジ用に開発したカプセルでも飲んどけ!」 


友人は、カプセルの入った小箱を俺にぶつけてきた。 


「あー…やだー…だめだー俺なんかー。」 


俺は足の力が抜け、その場に座り込んだ。いや、倒れこんだ。飛んできた物体も、当たった所はちょっと痛かったが、もうそれどころではない。 


「うぅるせぇなっ!毎度毎度ガキかてめぇはっっ!!その口縫い付けて、なんなら今すぐ灰にしてやろうか?」 


友人は木製のテーブルに並んでいたであろう木の杭を、手に取って止めるそぶりを見せた。 


「なー、リヒトー。おまえ研究者だろー?なんとかしてくれよー。あのカプセルだけじゃ俺、栄養失調になっちまうよ…。」 


俺はあぐらで肩を落とした体勢のまま、一切重力に逆らわず、儚げな声を発した。 


「何をいまさら…。ありゃ純度が底辺で若者にとっちゃ物足りない所じゃねぇ代物だからな。ハハハ、もうどうにもなんねぇよ。そのままのたれ死ね。」 


リヒトは軽薄な笑いをし、部屋を出て行こうとした。 


「なんでこんなもんまで生まれ持っちゃったんだよ…。致命的じゃん。だれのいたずらだよ。」 


俺は指で床に「の」の字を書き続けた。さっきも言われたが、ここの所こんなのが続いている。 


「隔世遺伝な訳ねぇしな。お前の実態が分かった時はお祭り騒ぎだったけど、結局つまはじきだもんな。」 


リヒトは俺を哀れむように振り返り、部屋の外に出るのを止めた。その表情がすこぶるむかつく。 


「そりゃ種族としてはみ出しちゃったからな…。それでも皆優しくしてくれるけど。」 


俺は大きなため息を一つはいた。 


「ん…まぁそうだといいけどな。」 


リヒトは口の端で笑っている。 


「どういう意味だよ。」 


俺は顔を上げた。 


「わかんだろ。哀れんでんだよ。本当の所は。」 


リヒトは文字通り俺を見下した。何でこんな奴に人間の女どもはひょいひょいついていくんだ! 


「おまえさっきから俺が持って生まれたくも無かった部分を散々に言ってきやがるけど、なんとかしろよ!!」 


俺は叫ぶ様に言いながら立ち上がり、リヒトに向けて息巻いた。 


「何、俺が今までひとっつも策を講じなかったみたいな言い方してんの。それをするにはお前を実験台にするしかないつってんだろ!前例がないんだからそれしかやりようがねぇのっ!!」 


リヒトは呆れた様な表情で、鼻から一息吐いた。 


「うっ…ぐっ……。じゃあせめて俺の目の前で食事すんの止めろよな!!わざわざ呼び出しやがって…。」 


俺はぐうの音も出なかったが、引き下がる事も出来ない。 


「妬んじゃってまぁ…。人目に付く所でやったら殺人事件に発展して次がしにくくなんだろ?だから森の中まで…あぁそうだハウイー、お前まだ経験なかったな。すまんすまん。まぁだからってお前の言う通り、目の前でする必要はないんだけどな。けど呼べばのこのこ出てくるし、図らずとも溢れた血を見て卒倒しやがるし…。くくく…。人の楽しみ奪って何になんだ?」 


リヒトは再度冷徹な目で見下し、さらにふふんと鼻を鳴らした。 


「こんの性悪…。殺す!」 


俺はリヒトに飛び込み、左腕を伸ばした。 


「弱ったお前なんぞ敵じゃねぇな。」 


拳をリヒトにぶちこむ前に、浮いていた俺の体は2,3回後転宙返りするぐらいの強さで蹴り上げられ、結果地面に突っ伏した。 


「あーもーやべー。まじでやべー。」 


色々な意味で追い詰められ、その後数十分にわたり、俺はいじけていた。その間にリヒトは音も無く立ち去っていた。 

 


ここはある森の中にある洞窟。俺はここで数百人の仲間達と和やかに暮らしている。

年は人間で言うと二十歳。吸血鬼で言うと、あまり数えても意味が無いのでわからない。仲間の中には不意を打ち、獲物をしとめたりする奴もいるが、そう言った節操のないヤリたがりは昼間日光にさらされるなり、胸に杭を打たれるなりして粛清(灰と化す)される。主流はまず惚れさせてから血を吸う事が多く、その方が美味くて感慨深いそうだ。

だが俺はそんな話ばかりを聞かされはするが、先程罵られた通り、適齢期を過ぎてもまだ経験すらしていない。




 

 

 

はみ出し吸血鬼 2

 

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