extra life 0+1

 
 
extra life  ~あぁ俺、生きてる実感ないっす。~
 
 
 

●悪ノリ 0:悪から悪。

 

「……。」

 

今日も全てを奪い切った。高価な物とはやけにこじんまりとしていて、実に数を稼ぎやすい。後はこれを闇のディーラーに流せば、俺の懐は豊かになる。

 

〝飽きたな…。潮時か。〟

 

以前までは死ぬほど金が欲しかった。兄弟のいない俺は、親に想定外の子供と言われ、言葉を教わる事以外、人間らしい生活を与えられなかった。学校にも行けなかった反動か、自分より少しでも恵まれてる奴を見ると追い込みたくなる。だが人道を外れて十数年。様々な欲求を満たしてきたが、有り余るほどの物を手にした今は、虚しくて仕方がない。

 

〝見方を変えてみるか。〟

 

俺の実家は山のふもとにあった。満足に食い物も与えられなかった為、遊びも兼ねてよく山の中に入り、幾度と無く死にかけながらも生きる知恵を身に着けて行った。しかしそれが下界に降りて通用するわけも無く、俺は生まれながらに日陰の人間だという事を知った。

 

「……。」

 

その頃から金は稼ぐものではなく、奪う物だとの認識しか持ち合わせておらず、俺は次々に手を汚してきた。それから数日後、目先を変えるべく新たな獲物を物色しようと、夜の街に繰り出した。

 

 

●悪ノリ 1つ目:肩慣らし。

 

〝……。〟

 

ある場所に腰を下ろし、行き交う人々をじっと見つめていた。ほとんどの人間が俺に見向きもしない。すると3人ほどの野郎どもが俺の元へ寄ってきた。

 

「てめぇ何してんだ?じろじろじろじろ見やがって…。立てよコラ!」

 

だっせーストリート系の服装をしたガタイの良い兄ちゃん達は、俺を取り囲むように立っている。その中の一人が俺の服を掴み強引に立たせた。

 

「待ち合わせしてんすよ。別にあんたらを見てたわけじゃないですって。」

 

俺は両手を上げ、降参のポーズをとった。その際野郎3人を見定めすると、香水ばかり臭く、贋作の物ばかり身に着けてやがる。しかし今夜は趣向が違う。せっかく向こうから来てくれたんだし、俺はこいつらをターゲットに決めた。

 

ドスッ…ゴスッ…バキッ…

 

顔を近づけ、威嚇してくる三人を順々にKOした。その後、睡眠薬を含ませた布をそれぞれの鼻元・口元にかけ、背後に止めて置いた自分の車に3人ともを押し込んだ。ガタイが良いだけになかなか軽くはこなせなかった上に、ましてや辺りの目なんて引きまくった。それでも幸い邪魔してくる物はおらず、俺は顔を隠す事も無く、平然と微笑みながら運転席に移動した。

 

―同日深夜。

 

俺は事前に見つけていた、人里離れた納屋にそいつらを連れ込んだ。もちろんここは住処ではない。この計画を思いついてから、実家を彷彿とさせる建物を自然と探しており、ここは格好の場所だ。事を行う為のモチベーションを高める為にも申し分ない。

 

〝さて…。〟

 

建物自体はそんなに広くないが、連れてきた輩共をそれぞれが見えない位置に繋ぎ止め、のんびり意識が戻るのを待った。今日も弁当屋の弁当が美味い。

 

「うっ…ぐっふっ…。」

 

たまたま目の前にいた一人が目を覚ました。それを確認し他の二人を見に行ったが、どうやら意識が戻ったのはこいつだけのようだ。

 

「よぅ。」

 

奴の片手だけは自由にしている。その手が届くか届かないか位の場所に椅子を置き、そこに座った。

 

「てめぇは…。」

 

野郎は動く手で、まだ痛むのか頭を抱えた。それを見た俺は、笑みが絶えそうもない。

 

「ばーか。」

 

俺は言いつつ、すぐに縄を切ってやった。すると奴は驚いたようだが、すぐに俺に食って掛かった。だがあっさり返り討ちにし、マウントポジションを取った。

 

「ぐっ…くそ…がぁ…。」

 

明らかに体重は俺の方が軽い。だが奴は跳ね返せないようだ。

 

「威勢いいねぇ~…。」

 

俺はこ奴の顔の部品を、強弱をつけてつねったりとひとしきり楽しんだ。

 

「もう…勘弁してくれ…。あいつらはどうしたんだ…。」

 

思ったより早くこいつは音を上げてきた。少し物足りないがこれはこれで気持ち良く、さらなる高揚感を求めて、俺は先のとがった物ばかりを集めた工具入れを取り出した。

 

「これからさ、黙りたくても声出ちゃうだろうから、もう余計な事は喋んなよ。」

 

この建物の床は木でできており、これもここを選んだ要因であった。俺は奴の頭の形に沿って、力任せに色々な物を突き立てた。その都度、短い悲鳴がこだまする。

 

「あぁいいね。これだな。今まで足りなかったものは。」

 

これまでいろんな奴を騙し、時にはそれの大事な物を盗んでは売りさばいて来たが、それに対するリアクションは見てこなかった。人が地団太を踏む姿や、心底悔しがる姿…。方法こそ違うが、思い描いた結果につながっている現状に、ほくそ笑んだ。

 

「ふっ…ぐっ…や…。」

 

玩具と化した野郎は、声にならない恐怖感を次々に表しだした。表情と言い小刻みな震えっぷりといい、癖になりそうだ。

 

「おまえ坊主頭なんだよなぁ…。つまんねぇな。あのさ、どれぐらい突き刺したら血ってビュービュー出んだろうな。知ってる?パッと見、長髪みたいにしてみたいんだけど。」

 

俺は未だ数多く残る凶器を手に持ち、素振りを始めた。

 

「し、知らねぇよっ!ぅぅぅ…蒲田っ!端谷(たんたに)っ!!」

 

玩具の顔は次第に涙と鼻水で、なかなかの見栄えに変わって行った。

 

「あっちでまだまだ元気にやってるよ。その二人なら。心配しなくても合わせてやっから。」

 

俺はそういうと、その場から立ち上がり、奴を元の状態に再度縛り上げた。そして残りの二人も順々に同じ目に合わせ、最終的に同じ場所で、3人並んだ状態で壁に括りつけた。本当にこの建物を選んでよかった。順調に事が運ぶ。

 

「あぁいいねぇ…。最初(はなっ)から上回ったよ。」

 

恍惚とした感情が五体の隅まで、行き届いている。俺は思わず3人に拍手を送った。しかし3人ともが重力に一切逆らわず、頭を垂れている。そんな姿も俺の心をくすぐった。

 

「な…んでこんな事すんだよ…。」

 

随分前から手の平を返している玩具は、声を絞り出した。

 

「俺さぁ…いろいろやり尽くしちゃって…。元々生まれたから生きてただけなんだけど、とうとう底をついちゃったみたいなんだ。これの為に生きてる!!って奴が一向に見つからないのさ。そこで俺にたてついたり、俺の障害になる奴を、追い詰めるだけ追いつめてみようと考え付いた。その第一号がおまえらだ。よかったな。」

 

「そんな…事の為に…。」

 

もう玩具は頭も上げる気力も無いようだ。

 

「重要だろ?ただ生きてみたり、その為に不必要な物をないがしろにしたり…。それぞれの境遇に生まれ、生きたいように生きるのはいいんだけどさ…。これまで微々たるものでもそんなバカの身勝手が、降りかかってくるのはよろしくなかったしな。ほんのちょっと前もそうだった。だからそういうのは順々に排除する。やってみたらたまんねぇな。おまえらどこか俺と似た様なもんの気がするけど、人を殺すまではやったことないだろ?俺もそうだった。」

 

俺は凶器をダーツの様に投げた。4,5本投げたが、いずれもヒットしなかった。

 

「まぁこんなもんか。それにしても…おまえらみたいな奴って実際は脆いんだな。ちょっとがっかりだ。」

 

俺にはわざと殴らせる趣味は無い。その事で調子に乗らせ、さらに叩くのもよさそうだと思いついたが、今回は控えた。

 

「うぅぅ…。はぁ…はぁ…。」

 

この辺で玩具の呼吸が荒くなってきた。

 

「そろそろかな。」

 

この建物の近くには何のためかわからない大きな穴が開いている。おそらく深さは10m程で直径は25mくらいはあろうか。自然の物では無いそれの側面は傾斜になっており、落ちても五体満足であれば登ってはこれそうだった。俺はさるぐつわをして、二人だけをそこに落とす事に決めた。

 

「足だけは自由にしてやる。」

 

俺はゆっくり時間をかけて、一人ずつ穴の縁まで運んだ。そして二人そろった所で底に向けて転がした。

 

「…ッ……ッッ…」

 

玩具は転がり落ちながら、悲鳴を上げた。だが隙間の無いさるぐつわのせいで、思い通りには叫べないようだ。

 

「ん~…。いまいちだな。次に期待するか。」

 

俺は二つの玩具を捨て置き、残りの一つの元へ向かった。

 

「おーい?生きてるかぁ?」

 

結構な時間ほったらかしたせいか、ピクリとも動かない。

 

〝寝てやがる。〟

 

脈を確認した所、鼓動に加えて、寝息が聞こえた。

 

〝ふぅ…なんか冷めちった。〟

 

残りは山中に捨てる事にし、運んだ後、腰と大木をひもでつないだ。その間に目を覚ました玩具は、俺に対し思いつくがままに色々ほざいてきていたが、一切相手にせず姿を消すとそれは泣き言に変わった。多少唾がかかったのが、不快の何物でもなかったが、それを発散出来る玩具はまだ残っている。

 

「お。」

 

そして少し足早に穴へと戻ると、玩具のうちの一人が今か今かと坂を上りきろうとしていた。

 

「もうちょっとじゃん。…はい、もっかい。」

 

俺は手を使って散々煽った後、もう一歩の所でけり落としてやった。すると、遅れて登ってきていたもう一つを巻き込み、再度奈落へと落ちて行った。

 

〝結構あっさりじゃん。〟

 

俺は穴から一歩二歩と後ずさった。玩具はなかなか頑丈な上、諦めが悪く、俺の姿が見えなくなるとまたも坂を登ってきた。今度は登りきるまで姿を見せず、二人が登りきって、地上で寝っころがりつつ息を切らしてる所で近寄った。俺は玩具が縁から頭を出せば、見える位置に腰を下ろしていたが、二人にそんな余裕は無かったようだ。

 

「!!? ムームームー!」

 

玩具は俺の姿を捉えると、慌てふためいて自ら穴に落ちそうになった。が、俺は腕をつかんでそれを阻止した。

 

「苦しそうだな。」

 

そう言いながら、俺は玩具の一つを平然とぶっ壊した。

 

「ムムーーー!!!」

 

残りの玩具はそれを見て、地に伏した状態で悲鳴を上げた。

 

〝もうピークは過ぎたな。〟

 

人を殺したことについてはとても淡白な物だった。やはり祭りの後という物は、楽しければ楽しかったほど脱力させられる。

 

「……。」

 

俺は後片付けとばかりに、残りの奴のさるぐつわを外してやり片足を折った。鈍い音と鼻につく悲鳴もそこそこに、三度穴底へ落とした。どうやら片足だけではさすがに登ってこれないようだ。みじめに穴の下で泣き叫んでいる。それを見届けた後、建物に火を放ち、俺は乗ってきた車でその場を離れた。

 

 

 

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