要 望 書
平成23年6月 日
NO!放射能・世田谷こども守る会 世田谷区深沢 菊地ひろこ 瀬田 美樹 世田谷区玉川 堀 智子
放射能の被曝から子どもたちの命と健康を守るための方策について
2011年3月11日に発生した福島第一原発事故により大量の放射性物質が放出され、東北・関東地方の水、農畜産物、および海産物の放射能汚染が懸念されています。5月初旬に文部科学省が公開したWSPEEDIのヨウ素131表面沈着量積算予測値によれば、3月25日までの時点で、福島と茨城の一部で100万ベクレル/㎡以上の超高濃度、その他の関東地域の多くで10万ベクレル/㎡以上の高濃度の汚染が推定されています※1。このデータからセシウム137の地表堆積量を推定すると、世田谷区をはじめ東京とないでも最大で7.7万ベクレル/㎡になるとの試算もあります※2。また、千葉県千葉市においても4月14日の時点で、5.3万ベクレル/㎡のセシウム137が土壌から検出されています※3。これらはチェルノブイリ原発事故後の放射線管理区域 (1~5キュリー/K㎡)に匹敵する汚染であり、ベラルーシではこのレベルの汚染地域に暮らしていた人々の中で20年以内にガンや白血病が増加しました※4。5月には東京三鷹市の女性の母乳から4.8ベクレル/Kgのセシウム137が検出されました※5。さらにヨウ素やセシウム以外にも、群馬県高崎市のCTBT観測所でキセノン、テルル、プロメチウムが※6、グアム、ハワイ、カリフォルニアの米国環境保護局ではウラン、プルトニウム※7がそれぞれ検出されています。
こうした深刻な放射能汚染が事実として広がっているにも拘らず、政府は私たちに必要な情報を示す代わりに根拠もなく「安全だ」とばかり言い続けてきました。原発事故で最も大きな被害をもたらすものは、原発周辺地域を除けば、空間放射線による外部被曝ではなく、呼吸や食物によって放射性物質が体内に入り身体の中から細胞組織を破壊される内部被曝です。体内の器官に付着した放射性物質からの被曝量は局部的に非常に大きな物となりますし、体外に排出されずに留まる物質もあります。チェルノブイリ事故後には数千キロ離れたヨーロッパ諸国でも、当時子供だった人たちの中でガン発症率が増加しました。子供が外部・内部合算で年間20ミリシーベルトの被曝をした場合は25人に1人、年間1ミリシーベルトの被曝ですら500人に1人が将来ガン死すると言われており※8、また、年齢が若いほど放射能の影響を受けやすく、低線量でも長期間にわたって内部被曝すれば危険性が高まります※9。被曝量と疾病との関係について諸説あるのは事実ですが、重要なことは、放射能にこれ以上なら絶対に安全であるという「しきい値」など存在しないということです。国際放射線防護委員会(ICRP)のリスクモデルは、内部被曝や長期低線量被曝の適切な理解に基づくものではないとして欧州放射線リスク委員会(ECRR)などから批判されてきました※10。米国科学アカデミーBEIR委員会がBEIR-VII報告(2005年)において、どんな低線量でも被曝量に比例してがん発症率が増加するという結論に至って以来、「しきい値なしモデル」が世界的なコンセンサスです※11。そうしたことからも、原発周辺地域から離れた世田谷区においては、せめて国の法律で定められた年間1ミリシーベルトの値が継続して適用されるべきなのです。
3月17日に厚生労働省が新たに示した食品の暫定基準値は、子どもへの悪影響を極力なくすという観点からすれば十分ではありません。例えば現在、食品の放射性ヨウ素の暫定基準値は2000Bq/Kgとされていますが、コーデックス委員会では放射性要素を含む5種類の放射性核種の合計は100Bq/Kgまでとしており※12、また、セシウムの暫定基準値500Bq/Kgについても、ドイツ放射線防護協会は子ども・青少年には4Bq/Kgを基準とするよう提唱しています※13。米国の水の基準値であるヨウ素0.1Bq/Kg、セシウム7.4Bq/Kg ※14に対する日本の暫定基準値は、ヨウ素300Bq/Kg、セシウム200Bq/Kgです。このような緩すぎる暫定基準値に従っていれば、飲料水と食品の摂取だけで年間で最大17ミリシーベルトもの被曝になると、厚生労働省も認めています※15。
学校給食について、教育委員会は一貫して「国の出荷体制に基づき、市場に流通している農畜産物は安全」と主張していますが、これは現実を無視した暴論です。現在、圧倒的な検査機器と人員の不足のため、食品等の検査は十分にできておらず、大多数の品が未検査のまま市場に出回っています※16。更に、根菜・イモ類は検査対象外とされており、11都道府県で146もの市区町村が5月中旬までに検査を一度も実施していないことが明らかになっています※17。飲料・食品の安全を確保するには、まずはしっかりとした検査・管理体制を整える必要があります。また、セシウム137の半減期が30年(微量になるまでには約10倍)であることを考えれば、大規模な検査は一時的なものではなく持続的に行っていくべきです。
子供たちの健康と未来を考える時、未知の事象について、我々はより慎重でなくてはなりません。世田谷区が人命優先の立場で全国の自治体のモデルとなるような思い切った政策を打ち出すことを切に願います。
先に述べた事柄を踏まえ、以下を強く要望いたします。
1. 学校給食に含まれる人工放射能を出来うる限りゼロに近づけるために、次のことを実施すること。 (a) 学校給食の放射能対策を専門にになうスタッフの確保 (b) 全ての品目で放射能が「不検出」または相対的に最も放射能汚染度が低い地域の産物を使う。水域不明な海産物は決して使用しない。 (c) 海産物(出汁含む)は、東北から紀伊半島沿岸までを避ける。 (d) 牛肉、牛乳(乳製品含む)及び卵は、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉県産を避ける。また、産地偽装には十分に注意する。 (e) 国の暫定基準値に関らず、区、学校、父母の協議で独自に判断する。また、父母が給食の内容についての情報開示を求める時には、常に隠さずに対応する。
2. 飲料・食品等の検査体制を大幅に拡充し、未検査品を最大限減らす努力をすること。また、それらを持続的かつ厳格に実施するために保健所の検査機材ならびに人員を十分確保できるよう必要な措置を講じること。
当要望書に対し、世田谷区の文書での回答を求めます。
参考資料 ※1 www.mext.go.jp/component/a_menu/other/detail/__icsFiles/afieldfile/2011/05/10/1305799_0325.pdf ※2 http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-49.html ※3 http://www.jcac.or.jp/lib/senryo_lib/tikuseki.pdf ※4 「終わりなき人体汚染:チェルノブイリ原発事故から10年」NHKスペシャル・1996年、「汚された大地で:チェルノブイリ20年後の真実」NHKスペシャル・2006年 ※5 http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1055 ※6 http://www.cpdnp.jp/pdf/110427Takasaki_report_Apr23.pdf ※7 「太平洋を越えたプルトニウムの謎」『サンデー毎日』2011年6月12日号・p19-21。 ※8 小出裕章・京都大学原子炉実験所助教による試算 http://chikyuza.net/n/archives/9063 ※9 ジャネット・シェルマン博士対談「チェルノブイリ:百万人の犠牲者」より http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/ ※10 http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_chap1_5.pdf
※11 米National Academy of Siences HP Nihttp://www.nap.edu/openbook.php?record_id=11340&page=6 ※12 http://www.codexalimentarius.net/download/standards/17/CXS_193e.pdf ※13 http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/04/blog-post.html ※14 http://water.epa.gov/drink/contaminants/basicinformation/radionuclides.cfm ※15 http://www.jca.apc.org/mihama/fukushima/mhlw_kosho110328.htm ※16 「じわじわ広がる土壌・海水汚染:食品安全検査は機材も人も足りずにお手上げ」『週刊朝日』(2011年6月10日号) ※17 http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110520dde041040007000c.html |
