05. 目付字


 
. はじめに 
  このサイトでは、
数学教育の教材として利用できそうな数学ゲーム「目付字(めつけじ)」を紹介します。このマジックは2進法を応用したもので、
 高校生が2進法について学習する際の補助教材として、役に立つのではないかと考えられます。
 
1.  「目付字」 とは・・・
  「目付字」 は、相手にどれか一つの文字を覚えてもらって、その文字を言い当てるゲームです。すでに、室町時代の貴族の遊びであったようで、
江戸時代初期の数学書「塵劫記(じんこうき)」 にも記載されています。そのゲームとその遊び方を次の箇条書き ① ② ③ で説明します。 
 

 

【目付字の遊び方】 

  このゲームとその遊び方を次の箇条書き ①②③で説明します。

 ① はじめに、
   「 さくらぎの/ふみやいづれと/おぼろげも/ はなにありしを/
    かずへてぞうる 」
  という和歌(三十一文字)を相手に見せて、その中の1つの平仮名を
  選んで、記憶してらいます。

 ② 次に、右の示すような絵を相手に見せます。その絵には、第1~
  第5 の番号の付いた5本の枝のそれぞれに16 枚の花びらが付い
  ています。各花びらには①の和歌の異なる平仮名が1字ずつ書いて
  あります。
   そして、①で相手が考えた文字が書かれている枝の番号をすべて
  声に出して教えてもらいます。

 ③ 教えてもらった枝の番号から、相手がどの平仮名を選んだのかを
  ズバリ当てて見せます。

  次に、この「目付字」の遊び方の一例を示します。

  【遊び方の例】 
   相手が ② で 「考えた文字は第1と第3と第5の枝にある」 と教えて
     くれたとしたら、あなたが考えた平仮名は「あ」であると当てて見せます。


  

 
 
  それにしても、相手が勝手に選んだ平仮名をどうして当てることができるのでしょうか。どうやら、上記の①と②で相手に見せた和歌と絵の両方に
 仕掛けがあるようです。次の節で、その仕掛けについて説明します。
 
2. 「目付字」の仕掛け
  「目付字」 には3つの仕掛けが設定されているのです。まず、前節の 「目付字の遊び方」の①で示した和歌が31個のすべて異なる平仮名で書か
 れていることに注目してください。
の31個の平仮名にそれぞれ 1~31までの自然数を次にように付けておきます。これが1番目の仕掛けです。
 
 
 【仕掛け1】     
      さ  く  ら  ぎ の / ふ  み  や  い  づ   れ   と  /  お   ぼ  ろ  げ   も  /  は  な   に   あ   り     し   を  /   か   ず   へ   て    ぞ    う   る
      1  2  3  4  5 / 6   7    8   9  10 11 12 / 13 14 15 16 17 / 18 19  20 21 22  23  24 /  25  26  27 28  29  30  31 
  
 
 
  そして、前節の②で示した、相手に見せた絵の5本の枝にそれぞれ次のように点数を与えておきます。これが2番目の仕掛けです。
 

 【仕掛け2】 

  第1の枝の点数…1点 , 第2の枝の点数…2点 , 第3の枝の点数…4点 , 第4の枝の点数…8点 , 第5の枝の点数…16点 

 
  このように 仕掛け1」と「仕掛け2」を設定しておくと、相手が答えてくれた枝の番号から、前節の①で相手が選んだ平仮名を次のようにして当てる
 ことができるのです。
 
  たとえば、前節の【遊び方の例】では、相手が②で 「覚えた平仮名は第1と第3と第5の枝にある」と教えてくれています。このことから、「仕掛け2」を
 利用して、3つ枝に対応する得点をすべて合計すると 1点+4点+16点=21点 になります。そこで、この点数の合計に対応する平仮名を「仕掛け1」
 で探すと、その平仮名は「あ」です。これが相手が考えた平仮名だと当てるのです。  
 
  ここで、「仕掛け1」 と 「仕掛け2」 を使って、相手が選んだ平仮名を当てる練習をしてみましょう。
 
   問題1  「目付字」 のゲームで、次の (1) と (2) の場合について相手が選んだ平仮名を当ててください。

   (1) 相手が 「考えた平仮名は第2の枝と第4の枝にある」 と教えてくれた場合

   (2) 相手が 「考えた平仮名は第1の枝~第5の枝の全部にある」 と教えてくれた場合 

 

[ 解答]  この 問題1 の解答 をクリックすると、その解答が示されます。 

  
 
  前節の目付字の遊び方」 の②で示した絵の第1~第5の各枝には、①で示した和歌で使われた文字(平仮名)が下のように配置されているのですが、
 なぜ、このようになっているのでしょうか。実はこれがもっとも重要な3番目の仕掛けなのです。 
 
 【仕掛け3】 
 
          
       [第1の枝]
    さ   ら  の   み
    い   れ   お    ろ
    も    な   あ    し
    か   へ   ぞ    る

       [第2の枝]
     く    ら   ふ   み
   ず   れ   ぼ   ろ
   は   な   り    し
    ず   へ   う    る
           
      [第3の枝]
   き   の   ふ   み
  と   お   ぼ   ろ
  に あ   り    し
  て   ぞ   う   る

       [第4の枝] 
    や い づ    れ
   と   お   ぼ   ろ
   を   か   ず   へ
   て   ぞ   う    る

      [第5の枝]
    げ   も   は   な
   に   あ   り    し
   を   か   ず   へ
   て   ぞ   う    る 

 
 上記の「仕掛け3」によって、上記の31個の平仮名に割り当てられている自然数 1~31も、次のように第1~第5の各枝に配置されていることになります。 
 
          
        [第1の枝]
     1    3      5    7
     9 11 13 15 
   17 19 21  23  
   25 27  29   31
          
       [第2の枝]
  2  3  6   7
 10 11 14 15
 18 19 22  23
 26 27 30 31 
           
     [第3の枝]    
   4  5  6   7
 12 13 14 15
 20 21 22 23
 28 29 30  31 
          
        [第4の枝] 
    8  9 10 11
 12  13  14  15
 24 25 26  27
 28 29 30 31  

        [第5の枝]
  16 17 18 19
 20 21 22 23 
 24 25 26 27
 28 29 30 31

 
 
  それにしても、「仕掛け1」で示した31個の平仮名すなわち自然数1~31が上記のように配置されているのは、一体どうしてなのでしょうか。
 その理由は、自然数1~31について、自然数の2進数表示 が利用されているからなのです。このことについては、次節で詳しく説明します。  
   
3. 自然数の2進数表示  
   1~31の範囲の自然数 x を2進法で表わすと、次に示すような5桁の2進数となります。  
      x = a ×16+b ×8+c ×4+d ×2+e ×1  (ただし、a, b, c, d, e = 0  または 1 )  ・・・ ①
 このとき、ここでは簡単な記号を用いて、x = [abcde]  ・・・ ②   のように表示することにします。そして、このような表示の仕方を2進数表示
 いいます。 たとえば、27の2進数表示は 27 = 1×16+1×8+0×4+1×2+1×1 = [11011] となります。
  ここで、2進数表示について、少し練習しておきましょう。

 【問題2】
     2進数表示の計算式①と②を利用して、次の自然数をそれぞれ2進数で表わしなさい。
         (1)  1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8      (2)  15, 16, 17, 18, 19, 20      (3)  28, 29, 30, 31
 
 【解答】 この 問題2の解答 をクリックすると、その解答が示されます。 
 
    
  「仕掛け1」で示した31個の平仮名に対応する自然数1~31のすべての自然数の2進数表示は次のようになります。
  
     1 = [00001] ,    2 = [00010] ,    3 = [00011] ,    4 = [00100] ,    5 = [00101] ,    6 = [00110] ,    7 = [00111] ,    8 = [01000] ,
     9 = [01001] ,  10 = [01010] ,  11 = [01011] ,  12 = [01100] ,  13 = [01101] ,  14 = [01110] ,  15 = [01111] ,  16 = [10000] ,
   17 = [10001] ,  18 = [10010] ,  19 = [10011] ,  20 = [10100] ,  21 = [10101] ,  22 = [10110] ,  23 = [10111] ,  24 = [11000] ,
   25 = [11001] ,  26 = [11010] ,  27 = [11011] ,  28 = [11110] ,  29 = [11101] ,  30 = [11110] ,  31 = [11111]
 
   上記の結果を利用して、[第1の枝]~[第5の枝] の自然数を次のように設定します。
    2進数の1の位の数が1であるものを全部集めて[第1の枝]、2進数の2の位の数が1であるものを全部集めて[第2の枝]、
    2進数の3の位の数が1であるものを全部集めて[第3の枝]、2進数の4の位の数が1であるものを全部集めて[第4の枝]、
    2進数の1の位の数が5であるものを全部集めて[第5の枝]
  そして、1~31の範囲の自然数に対応する平仮名も、それぞれ[第1の枝]~[第5の枝]に配置しておくのです。これが前節で示した平仮名
 の配置なのです。
 
  このように、 [第1の枝]~[第5の枝] にそれぞれ自然数と平仮名を設定しおくことによって、「目付字」で相手が考えた平仮名を当てることが
 できるようになります。 
  たとえば、第1節の 「遊び方の例」で示したように、相手が 「考えた文字は第1と第3と第5の枝にある」 と教えて相手が 「あ」を考えたとして、
 「あ」 は第1の枝と第3の枝と第5の枝にあると教えてくれたとします。そのときは、計算式の ① と ②を利用して
        [10101] =1×16+0×8+1×4+0×2+1×1=16+4+1= 21
 のように計算しています。ここで、最後の計算部分は、各枝の点数を合計していることに注目してください。

  このようにして、相手が選んだ平仮名は 「あ」であると、当てているのです。その他の平仮名についても、まったく同様です。 

 4. おわりに
室町時代の貴族の優雅な遊びであった 「目付字」 に2進法が応用されているなんて実に驚きです。そして、和歌の三十一文字が2進数表示の
 5桁にピッタリ
当てはまるのもうれしい限りです。
  「目付字」と同様に、遊びながら気軽に数学的思考を楽しめるような数学ゲームが他にも多々あるのではないかと思われます。もしもそのよう
 なゲームを
御存じの方がおられましたら当方にお知らせ下さい。
  また、このサイトをご覧になった際の
ご感想やご意見を当方までお寄せいただければ幸いです
 
 【参考にしたサイト
   (1)  「数当てマジック」  : http://homepage3.nifty.com/imura/03math-edu/Guess/Guess.html  
   (2)  「Creative Thoughts」 : http://tosh728.tumblr.com/post/460913263/kml-108
  

 
参考にした文献

   BLUE BACKS 
「数学歴史パズル 数学者も頭をひねった75問 」   藤村幸三郎・田村三郎 著  講談社



 
 

サブページ (2): 問題1の解答 問題2の解答
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