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このHPは研究活動を紹介するページです。(最終更新: 2017年06月26日)


【自己紹介】
清家 泰介 (Seike Taisuke)
京都府出身

【連絡先】
国立遺伝学研究所 系統生物研究センター
原核生物遺伝研究室 (仁木研究室)

411-8540 静岡県三島市谷田1111
E-mail: tseike(at)nig.ac.jp
連絡は上のメールアドレスまでお願いします。


↑ 学会でイギリスに行った時のホテルでの1枚。何気に気に入っています。

酵母菌を用いて、フェロモン系が生殖隔離を引き起こすメカニズムを研究中。
接合時の配偶者選択や細胞極性にも興味あり。


NEWS
2017年06月24日  FEMS Yeast Res誌に論文が出版されました
2017年06月17日  FEMS Yeast Res誌に論文が受理されました
2017年06月01日  NIG retreat 2017でポスター発表しました。
2017年05月18日  9th Fission Yeast Meetingでポスター発表しました。
2017年04月01日  科学研究費助成事業 (若手研究(B)) (代表)が採択されました。
2017年04月01日  学振PD採用第3年度が始まりました。
2017年03月16日  酵母研究若手の会第三回研究会で口頭発表しました。
2017年03月02日  第11回日本ゲノム微生物学会年会で口頭発表 / ポスター発表しました。
2017年02月03日  第33回井上研究奨励賞を受賞しました。

2016年10月06日  住友財団2016年度基礎科学研究助成に採択されました。
2016年09月12日  
14th International Congress on Yeasts (ICY2016)でポスター発表しました。
2016年09月09日  酵母遺伝学フォーラム第49回研究報告会で口頭発表しました。
2016年09月08日  日本遺伝学会第88回大会で口頭発表しました。
2016年07月01日  The 8th NIG Poster Workshopでポスター発表しました
2016年04月01日  学振PD採用第2年度が始まりました。
2016年03月25日  特許を出願しました (出願番号: 特願2016-62838)。
2016年03月17日  酵母研究若手の会第二回研究会で口頭発表しました。

2015年11月05日  Cell Biology of Yeasts 2015で口頭発表しました。
2015年10月23日  大阪市立大学理学研究科ニュースレター2015に研究成果が紹介されました。
2015年10月20日  第23回DNA複製・組換え・修復ワークショップでポスター発表しました。

2015年09月09日  総合研究大学院大学でセミナーをしました。
2015年09月02日  第48回酵母遺伝学フォーラム研究報告会で口頭発表しました。
2015年08月18日  月刊化学9月号の化学掲示板に研究成果が取り上げられ、今月の1枚に写真が掲載されました。
2015年07月02日  朝日新聞の朝刊科学欄に研究成果が取り上げられました。
2015年07月01日  The Scientist Magazineに私たちの研究成果が紹介されました。
2015年06月28日  第8回Evo-devo青年の会で口頭発表しました。
2015年06月25日  8th Fission Yeast Meetingで口頭発表しました。
2015年04月28日  
Faculty of 1000 (F1000)にPNASの論文が推薦されました (Exceptional=特別注目すべき論文)
2015年04月24日  特別研究員奨励費の交付内定が行われました。
2015年04月01日  国立遺伝学研究所で学振PDとして働き始めました。



【これまでの研究成果】
 種分化の原因の一つに、同じ場所に棲む複数の生物種がお互いに交配できなくなる「生殖隔離」が存在します。これまで特に昆虫類や両生類などで、性フェロモンと受容体の遺伝子が変化して新しい種ができるという仮説が提唱されていますが、未だ明確な結論は出ていません。その主な理由として、これらの生物ではフェロモンが複雑な化学物質であったり、
受容体の遺伝子が同定されていない種が多いことが挙げられます。また実験室での研究 (遺伝子操作による人為的改変など)が容易でないことが、この証明をさらに難しくしています。そこで私たちは遺伝子操作の容易なモデル生物である分裂酵母Schizosaccharomyces pombeに注目し、生殖隔離するように遺伝子操作をした酵母を試験管内で種分化させる!という、一見無謀な(?)、でも非常に面白いチャレンジングな研究を進めてきました。

分裂酵母にも動物と同じく2つの性があり、P (プラス)接合型とM (マイナス)接合型と呼ばれています。
2つの接合型細胞は外見からは見分けることができませんが、それぞれが異なる性フェロモンを分泌し、異性細胞間でのそれらの情報伝達が、接合に必須あることが分かっています。
P型細胞から分泌される性フェロモンP-factorは23アミノ酸からなる単純ペプチドで、M型細胞の細胞膜に発現する受容体Mam2 (7回膜貫通型受容体GPCR)に結合します。一方、M型細胞から分泌される性フェロモンM-factorは9アミノ酸からなる化学修飾を受けた脂質ペプチドで、同様にP型細胞の細胞膜に発現する受容体Map3 (GPCR)に結合します。これらのフェロモン刺激は片方でも欠損すると、完全に接合能欠損になることから、お互いの性フェロモンの受け取りが有性生殖に必須です。



分裂酵母のフェロモン、受容体、およびシグナル経路に関する遺伝子は全て同定されているので、私たちはまずフェロモンと受容体のこれらの遺伝子に突然変異を導入し、野生型細胞とは接合できないが、変異型細胞同士では接合できるような'新規接合型細胞'を人為的に作製することができれば、生殖隔離を実験室で実現できるのではないかと考えました。その戦略について、以下の図で詳しく説明します。

まず戦略として遺伝子操作のしやすさを考え、M型細胞から分泌される性フェロモンM-factorとその受容体Map3の経路に注目し、改変することにしました。
※ここでは単にM-factor・Map3をフェロモン・受容体と呼んでいます。


1) 第1段階
フェロモンペプチドに網羅的に突然変異を導入し、野生型受容体に認識されなくなる変異型フェロモンを多く作製する。

2) 第2段階
次に受容体にランダムに突然変異を導入し、変異型フェロモンのいずれかを認識するが、野生型フェロモンは認識しないような変異型受容体を発見する。

こうしてできた変異型細胞 (M'型細胞×P'型細胞)が、新規接合型細胞です。



〔第1段階: フェロモンへの網羅的突然変異導入〕
 まずできるだけ多くの活性のない変異型フェロモンを得るため、まず必須であるC末のシステイン残基を除く8アミノ酸残基の一つを別の19のアミノ酸に網羅的に置換し、8×19=152種の変異型フェロモンを作製しました。それぞれの変異型フェロモンを生産する変異型M型細胞が、野生型P型細胞と接合するかを丁寧に調べる事で、変異型フェロモンの影響を調べました。

 その結果、35種の変異型M型細胞が野生型P型細胞と接合できないことを明らかにしました。非常に興味深いことに、フェロモンのC末半分のアミノ酸残基が置換された場合のみ、接合能欠損となりました。

そこでN末半分のアミノ酸残基の重要性を確かめるため、N側から順番に1アミノ酸ずつ欠失させた変異型フェロモンを作製して、活性を測定したところ、3番目のプロリン残基までを欠失させても野生型に匹敵する活性を持つことが分かりました。つまり、分裂酵母S. pombeのフェロモンはC末のたった6アミノ酸だけで機能するということです。

また活性のない35種の変異型フェロモンのいくつかは細胞外に分泌されていることが明らかになったため、これらの接合能欠損の多くは、受容体との認識に問題があるからであると結論づけました (Genetics, 2012)



〔第2段階: 受容体へのランダム変異導入〕
受容体は365アミノ酸からなる7回膜貫通型のGPCRです。フェロモンの結合部位などの情報はこれまでに報告はなかったため、エラープローンPCRを使って全長にランダムに突然変異を導入しました。
 それらの変異型受容体と第1段階で取得された変異型フェロモンとを組み合わせ、約65万通りを対象とした大規模なスクリーニングの結果、接合能が回復した3つの変異型細胞を発見しました。顕微鏡観察では接合によって生じた胞子が正常にできており、またこれらの変異型細胞は野生型細胞とは接合子を形成しませんでした。変異型受容体は、第6番目の膜貫通ドメイン内にある204番目, 214番目のフェニルアラニン残基が置換されており、これらの2つのアミノ酸残基がフェロモンとの結合特異性に非常に重要であることが示唆されました。

最後に野生型細胞と新規接合型細胞間で遺伝子のやりとりが行われないことを確認するため、それぞれの細胞の染色体に異なる薬剤耐性遺伝子を組み込み、"同一フラスコ内で"混合培養しました。

野生型M型細胞 ... bleMX6マーカー (Ble; phleomycin耐性)
野生型P型細胞 ... natMX6マーカー (Nat; nourseothricin耐性)
変異型M'型細胞 ... kanMX6マーカー (Kan; geneticin耐性)
変異型P'型細胞 ... hphMX6マーカー (Hyg; hygromycin耐性)

上記の4種の細胞を混合し接合を誘導させた後、細胞懸濁液を薬剤の入ったプレートにまきました。2つの細胞が接合するならば、遺伝子の交換が生じ、2重耐性クローンが生じるはずです。一方、2つの細胞が接合しないのならば、遺伝子の交換が生じず、2重耐性クローンは決して生じません。このような実験の結果、野生型細胞同士、新規接合型同士ではクローンが出現するが、それ以外では全く出現せず、新規接合型細胞は野生型細胞とは遺伝子のやりとりを行っていないことが明らかになりました。

こうして私たちは、フェロモンと受容体の遺伝的な変化が生殖隔離を引き起こす、ことを分裂酵母を用いて証明することに成功しました。また遺伝子交換をしない2つの生殖群は、生物学上「異なる種」と見なされることから、野生型細胞から生殖隔離されたこの新規接合型細胞は、人工的に創出された新種であると考えることができます (Proc Natl Acad Sci U S A, 2015)。この成功で性フェロモンなど雌雄の識別に関係している機構の遺伝的な変化が自然界でも生殖隔離を引き起こし、種分化の原因になっていることが強く示唆されました。




【これからの研究】
自然界ではフェロモン/受容体の遺伝的な変化はどのように生じるのでしょうか?フェロモンもしくは受容体への変異は通常、交配能力の低下を引き起こすため、フェロモンと受容体の2つの遺伝子が同時に変化する (=共進化する)必要があります。この遺伝学的な変化が生殖隔離、そして種分化の原因になってることは自然界でも十分考えられるシナリオではありますが、その証明は難しく未だ解明されていません。そこで私は現在、Schizosaccharomyces属の4種の分裂酵母のゲノムが全て解読されていることに注目し、ゲノム比較からフェロモン/受容体を中心とした種の分岐を探っています。
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