2.モビール・タイプの紹介

モビールタイプを用意する

 
前回は、サンキャッチャーを採り入れたライフスタイルのメリットについて紹介しました。壁や家具の上をランダムに揺れ動く虹色の陰影を眺めていると、気付かないうちに適度な目の運動になっているらしく、目の疲れが取れて癒されるようです。私の場合は、パソコンの作業で目が疲れる前に、自然に虹の乱舞に視線を向けて目の緊張を取り除く生活習慣が身に付いていました。適度なタイミングで目を遊ばせるようになってからは、以前よりも長時間、楽にパソコンの画面を見続けることができるようになりました。

この優れた快適なライフスタイルを実現するには、揺れ動く虹を作り出せる、モビール型のサンキャッチャーを準備する必要があります。他のページで詳説しますが、サンキャッチャーを吊るしているステンレスのワイヤーに、透かしモチーフをクリップで挿んで取り付ける方法ならば、サンキャッチャーを作った経験のない人でも、簡単に実現できます。
 

風モビール型のサンキャッチャー

 
ほとんどレタッチはしないのですが、これは右側の一部を修正
サンキャッチャーを手にすると、七色の影(光)が揺れ動くことに感動して、誰もが一度は、クルクル回転させたり、揺れ動かしてみたくなるものです。それを自動的にやってくれるのが、モビール・タイプのサンキャッチャーです。

風を受けて回転する左の写真のようなサンキャッチャーは、投影される虹が走馬灯のように乱舞します。止まっているときとまったく異なる幻想的な雰囲気が生まれるため、世界観が変わるとまでいう人もいるほどです。

太陽電池でモーターを動かすものもありますが、私がお奨めするのは、風モビール・タイプです。モーターでただ一定の速度で回転運動するだけのものでは、動きが単調になりがちで、すぐに目が飽きてしまいます。また、この種の市販されているものは、吸盤で窓ガラスに取り付けるようになっているため、重量のあるものを吊るすと落下して割れる可能性が出てきます。無数の虹の乱舞と言える量の陰影を作り出すのに必要なサンキャッチャーを吊るすのは、太陽電池モーター式の市販品では心許ないと思います。

その点、風モビール・タイプならば、上記二つの問題点をうまく解決できます。扇風機が作り出す1/fゆらぎの風が、自然なランダムさを生み出してくれるため、目が飽きることがありません。私が作る風モビール型のサンキャッチャーは、40ミリぐらいの大きなパーツを複数用いた物が多く、それなりに重さがあります。左の写真の一番大きい作品になると150g程度あります。吸盤で窓ガラスに吊るしたり、安価なプラスチックのギアを組み合わせた玩具の?モーターで回転させるには、無理があります。しかし、適切な強度のワイヤーを選んで風で動かすようにすれば問題ないようです。もちろん絶対ということはありえないため、落下の可能性に十分考慮した対策が必要になります。万が一にも、開け放たれた高層マンションの窓から勢い余ってベランダに落下して、割れた欠片が地上まで落ちていったら、鋭利なガラスの破片が人の頭に刺さるような非常に危険な状況を招くことも考えられます。
 

風モビール型に関する安全上の留意点

 
風モビール型のサンキャッチャーは、誰でも簡単に作ることができます。が、制作の説明に入る前に、このページでは幾つか留意したい安全上の事柄に触れておきたいと思います。

私が好んで作るモビール型の特徴は、吊るしているステンレスワイヤーがねじりバネトーション・スプリング)のように機能して、左右に繰り返し回転することです。捩じられていく過程で、回転速度が自然に速くなったり遅くなったりするため、生まれる虹の影達は一定の速度で動かず、見飽きることのない虹の乱舞を生みだしてくれるメリットがあります。しかし、このことは、吊っているワイヤーに捩じる力を繰り返し与え続けることを意味します。ステンレスは合金のなかでもかなり丈夫な部類に入ります。が、金属というものは、繰り返し力が加わっていくうちに疲労していき、最後には破断する性質を持っています。これを金属疲労と言います。近年になって、原子配列レベルの微細な損傷を自己修復(自己組織化)する散逸構造生成の特性を備えたハイテク新素材も登場しているようです。が、2013年現在、普及には至っていません。以下は、現時点で私達が一般的に入手できるワイヤー類に、ほぼ例外なく当てはまる事柄だと思ってください。「左右に繰り返し捩じられるワイヤーは金属疲労を起こしていき、いつか破断する運命にあります。」したがって、モビール型のサンキャッチャーには、十分な強度と長寿命を備えたワイヤーを、しっかり吟味して用いる必要があります。容易に壊れないように「十分」な強度を取ることを、安全率を確保する」と言います。また、ワイヤーが傷んだ状態で吊るすのは問題がありますから、傷み具合に応じて交換等のメンテナンスをする必要も出てきます。

サンキャッチャーを商品として制作・販売しているメーカー(作家)は、製造物責任を負っています。安全率を無視したサンキャッチャーの制作は社会的(法的)に許されないことです。高層マンションの日当たりの良い窓辺に、窓を解放した状態で吊るす使い方が想定されるインテリアです。突風を受けたり地震のときに、振り子のように大きく揺れ動く可能性も考えられます。落下して人に当たったり、地上に落ちて割れて鋭利な破片が飛び散るなど、危険な状況を招くことも考えられます。光の透過率が高い重量のある(比重が重い)クリスタルガラス鉛ガラス)が用いられている製品がほとんどなので、一定の配慮が必要でしょう。ところが現実には、ワイヤーで吊ったサンキャッチャーが何事もないのに自然に落下して壊れるケースをときどき耳にします。バラバラになってしまったため直してほしいと、私のところに持ち込まれたものが、今まで10個ぐらいはあったでしょうか。原因はいくつか考えられますが、残念ながら強度不足の作品が商品としてかなり出回っている状況にあるようです。ワイヤーをカシメて止める基本的な方法を知らないまま制作されている、問題を感じるケースも目につきます。
 

傾向と対策

 
通称ロケット型の全体
日本で普及しているサンキャッチャーの多くは、積極的に風の力で動かすことを考えて作られていません。多少風に吹かれて揺れることは想定されていても、揺らすことを前提としたものは少数派です。海外では、木の板と組み合わせて吊るすことで、風で揺れ動くように仕立てられた、ウッドモビール・タイプのものがかなり出回っているようです。強い風を受けると木の板が速く回転することで、バリアーのようになって、ある程度ガラスのパーツを守ってくれる仕組みです。ところがこの形状のものは、数多くのガラスパーツを連ねて付けることが出来ない欠点を持っています。そのため地味になりがちで、日本ではあまり人気がないようです。風対策の配慮が欠けていたり強度不足の作品が、日本で多く見受けられる理由は、どうやらこのあたりにありそうです。風で揺れすぎると、周囲の物にぶつかったり、吊っている不安定なガラスパーツ同士がお互いにぶつかりあって欠けたり、ガラス窓を叩き割る危険性が出てきます。構成されているパーツはシャープ(鋭利)なカッティングが施された硬くて脆いクリスタルガラスです。ちょっとした衝撃を受けても欠けやすく、鋭利な形状に割れて飛び散りやすい性質を持っています。普段、陽光を求めて窓辺を移動して吊るす取扱いのときにも、十分な注意が必要です。移動させたときに何かにぶつけたのか、傷付いて欠けたパーツが混ざっているサンキャッチャーを目にすることがよくあります。基本的に当たれば傷付くものと考えて、お互いにぶつけないように取り扱う、日頃からの配慮が必要と思います。

以上の事柄に配慮して、なかには、高層マンションの窓を開けたときに吹き込む突風の影響などを、大きく受けないように考えて作られているものもあるようです。木枠を付けて出窓やテーブルの上でブランコのように揺れることを想定した、移動させやすい据え置きタイプなどは、安全性の高いものだと思います。また、吊り下げタイプを複数吊る場合は、振子のように揺れ動くサンキャッチャー同士がぶつかり合わないように、お互いを吊る高さを変える工夫をしている方もいます。また、万が一地震や突風などで大きく振り子のように揺れてしまい、窓ガラスを強打して叩き割る可能性を考慮して、ガラスに保護フィルムを貼ったり、防犯にも有効な合わせガラスにしたり、鉄線入りのガラスを用いておられるケースもあります。※これらの工夫の紹介は、ページを改めてしていきたいと思います。

今回使うワイヤーはソフトフレックス社製です。普通のワイヤーとは造りが違うため、癖が付きにくく、11キロの荷重に耐えられる丈夫なものです。以上の観察から明らかですが、サンキャッチャーの一般的な使われ方から考えて、十分な安全率を考慮したワイヤーを選択して用いる必要があります。風の力で揺れ動くことを想定しているモビール型の場合は金属疲労していくことが考えられるため、なおさら配慮が必要になります。知人が持っていたサンキャッチャーの落下事故の話を聞いて、壊れた現物を幾つか観察して原因を推理した結果、私が最近好んで用い始めたのは、ソフトフレックス(Soft Flex)社製の丈夫なナイロンコートされたステンレスワイヤーです。上の写真の『ロケット型』のような、大きい40ミリのパーツを複数用いて連ねたサンキャッチャーは、総重量が150g程度になります。ガラスの塊としてはそこそこ重さがあります。私がこれを吊るのに使っているワイヤーは、メーカーが11Kgまで耐えられると謳っているもので、それを二重にしています。十分な安全マージンを確保していると考えられるので、繰り返し回転運動させても、容易に捩じ切れたりしないと思います。一般に出回っている普通のステンレスのワイヤーは、多くの場合柔軟性を欠いていて、従来のサンキャッチャーに使われてきた一般的なワイヤーのなかには、一度大きく曲げると癖がついてしまい、真っ直ぐに戻らなくなるものもかなりあります。この現象は、ワイヤーに無理な力を掛けてしまい、永久変形が起こっていることを意味します。金属疲労は永久変形が繰り返されることで発生するため、金属疲労の兆候と判断できる、好ましくない現象です。そのような使い方をして繰り返し無理をさせていると、いつかは破断する可能性が出てきます。その点、ソフトフレックス社製のワイヤーはかなり高価ですが、価格に見合う性能の、紐と同じように扱っても問題ない柔軟性と強度を備えた、破断しにくいラインナップがあります。安全率を念頭に置いて、十分な強度を備えたワイヤーを選択する重要性は、以上の説明で理解して頂けたと思います。

ワイヤーガード
一般にワイヤーは、極端に鋭角で折り曲げるようなことをすると切れやすくなります。硬くて細い安物のワイヤーで8の字結びをしておくと、使っているうちに簡単に切れてしまうことからも、この性質は経験的に見て取れます。この現象を回避するには、ワイヤーを折り返す箇所に、ワイヤーガードと呼ばれるU字型のパーツを使う方法があります。右の写真のようにしておけば、ワイヤーが鋭角で折れ曲がるのを防いで、無理な力が一点に集中して破断する状況を回避できるようです。 

金属の強度を増す手法として、最初から応力を加える目的で、テンションを掛けたり、捩じった状態で組み立てる工夫もあるようです。これをプレストレスと呼ぶようです。たとえば、自転車のホイールのスポークは、かなり力を加えて強く張ることで強度を持たせてあります。そのため、使い込んだ自転車のスポークは金属疲労して折れることがあります。一流の自転車屋さんは、スポークをまるでハープの弦のように弾いて音を聞くことで、正しい力で正常に張れているか確認できるようです。ワイヤーで物を吊るのはなんでもない簡単なことのように見えますが、意外に奥が深い世界らしく、私もまだまだ勉強中です。

カシメ玉
落下事故を観察していると、ステンレスワイヤーを止めるカシメ玉の使い方が悪い、右の写真のようなケースも目に付きます。(画像をクリックすると拡大できます)球形のカシメ玉を初心者が下手に潰すと、斜めに変形して締め付ける形になることが多々あります。右の写真のケースでは、カシメ玉が斜めに傾いているだけでなく、柔軟性のないワイヤーも捩じれた結果、ビーズが曲がって並んでしまっています。作品が真っ直ぐになっていないため、なにかすっきりしない印象を受けます。ただし、この作品のデザインそのものは悪くないと思います。まるで瑠璃ガラスのような色合いのオーロラの輝きを見せるコーティングが美しいので気に入っています。そこで、後日分解してワイヤーを交換し、再組立てする予定です。

左の写真のように斜めに潰れたかしめ玉は、まるで鋭利な刃物のようにワイヤーの一点に力を加えてしまうことがあります。ワイヤーを破断させやすい形状になっていることが、見て取れます。この作品の場合は、さほど重いパーツを用いているわけではありません。金属疲労が発生するような力が繰り返し加わる部位でもありません。したがって、これが原因でワイヤーが切れてサンキャッチャーがバラバラになってパーツが落下し、周囲に飛散する悲惨な結末に至る可能性は低いと思います。(しまった。私としたことが、こんなところで気付かないうちにくだらない親父ギャグを書いている!)しかし、もしも『ロケット型』を吊っているワイヤー部分で、このようなカシメ玉の使い方をしていると、応力が繰り返し集中するため、破断して落下する原因になる可能性があります。日本で普及している一般的なサンキャッチャーと違って、モビール・タイプの作品を制作するときには、それだけ慎重さが求められるわけです。出来れば点や線ではなく、面でワイヤーを締め付けるほうが望ましいのです。ワイヤーを傷める原因を作りやすい、球形のカシメ玉は避けて、円筒形のものを用いるべきでしょう。
※ただし、マジック・クリンプ・プライヤーなどを用いて、もとは円筒形だった専用のクリンプチューブ(カシメ玉)を綺麗に球形に潰して仕上げることで、高級感を演出している場合には、なんら問題はないと思います。
 

モビール型の特徴を紹介する筈が……

 
私は重要なことから先に書く癖があるため、風モビール型のサンキャッチャーの紹介というよりも、注意点の解説に重点を置く結果になったようです。避けて通れない重要な事柄なので、先に書くのも選択肢の一つでしょう。上の説明を読んでいるうちに、「風モビールタイプのサンキャッチャーは難しい」と感じて、しり込みする気持ちになった人もいると思います。が、十分な安全率を確保したパーツを用いさえすれば、難易度は高くありません。サンキャッチャーを吊るワイヤーに、透かしモチーフをクリップで取り付ける方法なら、誰でも簡単に実現できます。ただ、簡単に出来るからといって、安易に考えてもらうと、トラブルが発生する可能性があることを、予め知っておく必要があるわけです。知人達のサンキャッチャーが壊れてパーツが飛散するケースに何度か出会っているので、他人事ではないと認識しています。

あらためて書きたかったことを列挙してみると、
  • 複雑に揺れ動く多くの虹の乱舞を目で追うことで、目の緊張をほぐす運動になっているらしく、リラックスできる。
  • 扇風機やエアコンや自然界の風が生み出す、1/fゆらぎのランダムな動きを自然に目が追うことで、自然調和した状態が得られているのかもしれない。このライフスタイルは良いのものだと思うから、紹介して普及させたい。
  • 瞬きの回数が増えている?ような気がする。これっていいんじゃないだろうか?
  • ドライアイ対策になるかもしれない。(誰か研究してくれる人は現れないかなぁ)
 といったところです。
 
けっきょく、自己満足のために書いています。こういった趣味のサイトはそういうものです(笑)。各種の風モビール・タイプのサンキャッチャーについては、ページを改めて紹介していきたいと思います。