04.黄色の宝石

パトリネ.30 曇りのち晴れ

今日も今日とて市場を行く。ただし、今度は連れが一人居る。困ったもので、この保護した少年――エレクと言うのだが何かとすぐ人の物に手を出すのだ。
放っておくと旅の荷物にまで手を伸ばすので、こうして近くで目を光らせていなくてはいけない。飛んだ困り者を助けてしまったものだ。
てっきり何の関連性もなく奴隷として売り出されたのかと思いきや、今までどこで何をしていたのかを聞けば花街の住人だと言う。
なんだ、それでは例の一件はある意味自業自得ではないか、と心底呆れた。『これ』を後々帰国した後にきちんと管理が出来るのか、非常に不安である。

とりあえず、腹が減ったと喚く彼にキュルトゥシュとバクラヴァを与えると急に静かになった。
なるほど、こうやって『管理』すれば良いのか。


この山市場で野菜や果物、肉類と同様に店先に所狭しと並んでいる物をもうひとつ見掛けた。
鉱物だ。
四方を山に囲まれたこのエルネタリア公国では鉱山資源が豊富だ。掘り出され原石のまま、もしくはカット、研磨された実に様々な『石』が市場には溢れている。
中には魔力を持った物さえあると言うのだから、驚きだ。

今や伝説的存在とも言えるルキフェニアの錬金術師、そのお眼鏡に敵うかどうかは分からないが必要なものがあれば滞在している間に本国へ幾つか送った方が良いだろう。

少年にエルネタリアの『石』にはどんなものがある? と聞いた。「なんでもある」と返ってきた。



エト.1 晴れ

石の種類
・装飾、鑑賞、加工用宝石
・火薬製造用
・金属、貴金属類
・顔料
・魔術補佐

エルネタリアの持つ石についてまとめる事にした。後で首都ルメルグラッドにある国立の蔵書庫(謀反時に焼き払われて居なければ良いのだが)にも赴く予定だが、その事前準備とする。

何でもエルネタリアの住民たちが言うには、竜の加護を受けた魔石は魔導の知識がなくともその恩恵にあやかれるのだそうだ。
光を齎し、水を寄せ、風を巻き起こし、炎を呼ぶ。あらゆる魔導現象の代替となり得る便利な、そして危険な物資だ。そしてこれは、前王政時には決して明るみには出ない門外不出の情報のはずだった。支配者が代わり、この国の事情は大きく方向を転換したと言える。
その存在がまことしやかに噂されているのを聞いたことはあったのだが、現物を見るのはこれが初めて。

試しにひとつ、石を買った。ちょうど暖炉がもたらす温度と同じくらいの『熱』を持つ石。ずっと手にしていると熱くて火傷をしそうだが、布にくるんで持ち歩けば、冷えた身体を暖めるのに良い道具となるだろう。



エト.2 曇りのち雨

今日は1日出歩かないと決めた。
本国に送る報告書をまとめる。
だが、エレクがいちいち邪魔をする。煩わしい。



エト.3 雨

ルキフェニアからの使者が到着した。
青年の身柄を引渡し、妻への手紙を使者に託す。
黄色の宝石とも、これでお別れだ。

ようやく、エルネタリア市街へと向かうことが出来る。



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