ワークショップ:真矛盾主義の周辺

【趣旨】

長い西洋哲学の歴史において、アリストテレスによって定式化された無矛盾律は特別な位置を占めてきた。というのも、ヘーゲルやそれに続くマルクス・エンゲルスらの幾人かの例外を除けば、矛盾は何をもってしてでも避けるべきものとされてきたからであり、それを積極的に扱おうとする立場はいつでも少数派であったからである。

しかし二十世紀以降、無矛盾律という「常識」に挑戦する立場は、嘘つきのパラドックスやラッセルのパラドック等の種々のパラドックスの解決のためのアプローチの一つという新たな装いを得ている。この立場において中心的位置を占めているのはGraham PriestとRichard Routley (後にSylvan)であり、彼らは「幾つかの矛盾は真である」という真矛盾主義 (dialetheism)の擁護によって、アリストテレスと真っ向から対決しているのである。この真矛盾主義の存在は、矛盾許容型論理 (paraconsistent logic)という形式的な後ろ盾も得て、徐々に受け入れられており、さらには東洋哲学の理解においても、無矛盾律に捉われない立場に立つことによって得られる見通しが注目されている。いずれにせよ、真矛盾主義を全くの机上の空論である、という仕方で片付けることはできないといえよう。

本ワークショップでは、様々な立場から真矛盾主義の現在地の検討を通して、真矛盾主義の更なる展開(あるいは反駁!)に際して問題とすべき点を、立場の違いを超えて共有すること(あるいはそのための手掛かりを得ること)を目的とする。

【開催日時・場所】(本ワークショップは科学基礎論学会 2015年度秋の研究例会の一部として企画されたものです)

  • 日時:2015年11月7日 (土) 13:30--15:30
  • 場所:東京大学 駒場キャンパス 12号館 1階 1212教室

【提題者】

  • 小山田圭一 (東京工業大学):「矛盾を認めることの難しさ」 [概要]
  • 藤川直也 (首都大学東京):「Nothingness as the complement of the totality」 (Filippo Casati と共同) [概要]
  • 出口康夫 (京都大学):「Compartmentalized Trivialism; Nishida on Contradictory Self-Identity」 [概要]

【プログラム】

  • 13:30--13:40:導入 [スライド]
  • 13:40--14:05:小山田圭一氏による発表 [スライド]
  • 14:05--14:30:藤川直也氏による発表 [スライド]
  • 14:30--14:55:出口康夫氏による発表 [スライド]
  • 14:55--15:30:質疑応答