低線量域長期被ばくのがんリスクの研究活動に関するブログ

 このブログはNV研究所のウェブ(NV研究所に記載の低線量域長期被ばくのがんリスク研究活動の詳細を公開するものです。

特別研究顧問
川上 博人

 福島事故の原子力におけるリスクガバナンスの失敗について改めて考えさせられ、原子力安全文化再構築のために、リスクガバナンスの在り方とこの科学的リスクの原点について、若い技術者に見直しを呼び掛けるものである。

 リスクガバナンスにおいては、科学的リスクと不安の2種類のリスクを対象にしているが、これらは決して別箇に存在するものではない。種々のステークホルダの不安は、科学的リスクとその不確かさを出発点とし、それぞれが置かれた状況に応じて幾多の連鎖でステークホルダ独自のリスクが発生する。従って、最終的にはリスクコミニュケーションに基づいてステークホルダ個別のリスク管理が求められるが、原点は科学的リスクである。この科学的リスク、特にその不確かさが大きければ大きいほど、個別のステークホルダの不安も広がり、科学的リスクの確度を高め、その不確かさの幅を縮めて行かなければ、不安の解消には決して結び付かない。

 科学的リスクにおける被ばく線量と死亡率の換算には、国際放射線防護委員会(ICRP)の閾値なしの線形モデル(LNT)が、これを否定するだけの十分な科学的知見がないという理由で、保守性の観点から国際的に広く用いられてきたが、福島事故以降多くの研究者からLNTの再考が叫ばれている。これは大規模事故のリスクを過少評価したことや、放射能を過度に恐れる余り、事故時に避難を強いられた特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの高齢者の災害関連死を多数発生され、リスクの判断を見誤ったことにひとつの原因がある。
 放射線リスクに対するリスクガバナンスは、リスクに応じて資源配分を行い、全体のリスクを最小化することが出発点である。このためには、全線量域における放射線リスクを正しく理解する必要があるが、低線量域におけるがんリスクの科学的解明が必須であり、閾値なしの線形モデル(LNT)と低線量域では影響無しのリスク体系では、リスクガバナンスにおいて、注力すべき分野が異なり全体戦略で計り知れぬ差異が生じる。

 筆者はLNT再考を促す立場から、これまで公開されているコホート調査研究の成果をレビューし、これまで用いられている統計的手法では、累積線量のように線量と年齢に強い相関関係があるような場合には、低線量域の極めて小さな放射線によるがんリスクについては年齢の影響を明確に区分できず、正しい解が得られないことを明らかにし、これに対処する試案を検討してきた。
 このブロクはこの研究活動について述べたものである。累積線量のがんのリスクに対する影響について正しく認識することが、原子力安全文化、延いては科学的合理性に基づく原子力安全確保の出発点と思われ、多くの原子力研究者に積極的研究を呼び掛けるものである。


 詳細は研究活動報告のページをご覧下さい。


KEYWORDS:放射線影響、低線量、線量率、疫学、がんリスク、コホート調査研究、LNTの概念、過剰相対リスク、モデル調整、交絡因子
radiation effect, dose rate, database, radiation epidemiology , carcinogenesis , cohort study, LNT, excess relative risk(ERR), model adjustment, confounding factor.

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