【重要記事】週刊新潮 2012年8月30日号

このエントリーをはてなブックマークに追加    

みなさまのNHK「詐欺的受信料徴収」を告発する
 週刊新潮 2012年8月30日 号 
今年2月、佐賀県に住む山本剛さん(仮名・29)のもとに一通の配達証明郵便が送られてきた。差出人は『NHK福岡放送局受信料特別対策センター』。いったい何のことやらと封を開けると、そこには平成15年11月から現在まで、およそ9年間にわたって約14万円の受信料を滞納しており、これを即刻に支払うよう記されていた。さらに、もしこれを払わない場合、裁判を起こすとまで。要するに、督促状である。
誰かと人違いではないかと文面を何度も読み返す山本さん。なぜなら、彼は平成15年3月にテレビを廃棄したのをきっかけに放送受信契約を解約しており、以降まったく受信契約など結んでいないのだーー。

そのおよそ3ヶ月後の5月10日、NHKは平成23年度の受信料収入が予算を45億円上回る6725億円となる見通しであることを明らかにした。受信料支払い率も悪くなく、経営計画(平成21~23年度)の目標値75%を達成して75.2%となった。 その理由について、松本正之会長は「未収対策などのに取り組んだ」ことを挙げたが、たしかに最近のNHKは未収対策になみなみならぬ意欲をみせている。

この見通しを公表した日、東京地裁では前例のない裁判の口頭弁論があった。NHKが放送受信契約を結んでいない男性を被告として、契約締結と6年前までさかのぼった受信料の支払いを求めたのである。 これまで契約を結んでいない世帯や事業所に対して、NHKは過去にさかのぼって請求をしたことはなかった。だが今回は、この男性が平成18年3月にBS放送の画面の指示に従ってNHKに連絡し、契約の意思を示していた記録が見つかったとして、この時点からの受信料、総額16万8720円を支払うように求めたのだ。
このような“未収対策”に力が入れられて受信料収入が増えていく一方で、「NHK名義でまったく身に覚えのないカネが請求されている」という被害の声が多数あることをご存知だろうか。

冒頭に紹介した山本さんもそんなひとりだ。
9年も昔のことなのだから勘違いしていて、実はどこかでNHKと受信契約を結んでいたのでは、と思うかもしれないが、そうではない。彼は非常に几帳面な性格で、当時の手帳や郵便貯金の通帳を保存しており、そこにも解約後、新たに契約をしたという事実は一切なかったのである。
それらを見ると、平成15年1月、20歳になったばかりの山本さんはNHKと初めて放送受信契約を結んでいる。口座振替にしたので2月と3月の2ヶ月分2690円が引き落とされたが、ほどなくテレビを廃棄することになったので解約を申し込んだ。それがみとめられて4ヶ月分1345円(1ヶ月分)が返金されている。これを最後に、NHKとのつきあいは一切なくなったはずだった。

が、『受信料特別対策センター』に問い合わせをすると、驚くようなことを言われる。なんと解約をした2ヶ月後の5月、山本さん本人が再び放送受信契約を結んでおり、6ヶ月分料金7650円を払込用紙を用いて郵便局で支払った記録が残っているというのだ。
通帳や手帳にはそんな記録はない。記憶にもない。そこで山本さんは再契約をした時の契約書を見せてほしいとNHK側に申し入れた。するとしばらくして職員が自宅を訪れ、契約書を山本さんに差し出した。といっても、クリアケースに入れたまま、わずか10秒ほどチラつかせ、すぐに引っ込めただけである。
チラッと見た契約書には、確かに山本さん名義のサインがあったが、不審なことがあった。“乱れた殴り書き”だったのである。 契約書などの重要な書類にはいつもきちんと署名することを心掛けている山本さんには、それが自分の書いたものだとは信じ難かったという。
もしこれがアカの他人の署名なら、いったい誰が何の目的でしたのか。そしてどうすればこの身に覚えのない督促から逃れることができるのかーー。

そんな相談を山本さんからされていた、元NHK職員のジャーナリスト・立花孝志氏はいう。 「これは、受信料の集金を担当しているNHKの委託職員が、契約書を偽造した可能性が高い。名前と住所を端末に打ち込んで、あとは三文判さえあれば、放送受信契約書は簡単につくれるんですよ。」

契約切り替えの手口
ご存じの方も多いと思うが、NHKの放送受信料を徴収しているのは本体の職員ではない。『地域スタッフ』と言われる人々で、NHKと業務委託契約を結んでいる彼らの報酬は完全歩合制。成績が悪い場合は「特別指導」というペナルティーがあり、最悪、3年間の契約を更新されることなくクビになってしまう。このような厳しいノルマから、契約書の偽造に手を染めてしまう者がいるという。

では、実際どんな偽造があるのか。立花氏によると、まず、多いのは、『新規契約』を偽るものだという。 「委託職員は新規の受信契約を結ぶと5000円が入りますから、どんな手を使っても新規をとりたがる。たとえば、契約者が引っ越しをした場合、放送法に則ると住所変更手続きをしなくてはいけないのですが、ほとんどの委託職員は新住所で新しい契約を結ばせる。その方が儲かるからです。私がかつて相談を受けた、あるご夫婦の場合、ダンナさんがすでに契約をしているのにさらに奥さん名義で新規の受信契約をさせていた。その委託職員は、“契約するだけで(受信料料は)払わなくてもいい”と言って奥さんを説得したそうです」
こういう風潮の中ならば、山本さんの新規契約書が偽造された可能性は高いだろう。偽造が発覚しないように6ヶ月分前払いをしても、新規契約の5000円があるので、実際は2650円の持ち出しですむ。これで契約がとれるなら安いものなのかもしれない。

まさしく“カラ契約”ともいうべきものだが、もうひとつポピュラーな契約書偽造が『衛星放送受信契約への切り替え』だ。 NHKの契約には『放送受信契約』と『衛星放送受信契約』の2種類がある。前者は地上デジタルで、後者はBS。日本放送協会放送受信規約にあるように、〈衛星系によるテレビジョンン放送を受信できるテレビジョン受信機を設置した者は衛星契約を締結しなければならない〉のだが、なんと、BSチューナーがない視聴者の契約をこっそり『衛星放送受信契約』へ切り替えてしまう手口である。

そんなデタラメなことをするわけがないと思うかもしれないが、現実にすでに事件化しているのだ。 今年5月、NHK鹿児島放送局が受信料の契約業務などを委託している会社の男性契約社員が、放送受信契約を結んでいる男性(70)の名義で、同姓の三文判を押して契約書を偽造し、『衛星放送受信契約』に切り替えていたことが明らかになった。発覚のきっかけは、“不正引き落とし”である。

放送受信契約は、6ヶ月前払いで7650円。かたや衛星放送受信契約は1万3090円と割高になっているため、この差額の5440円が男性の口座から勝手に引き落とされたことを親族が怪しく思い、「NHKの名義で身に覚えのない引き落としがある」とNHKのコールセンターに問い合わせをして明らかになったのだ。というのも、NHKホームページの受信料の窓口には、衛星契約の変更にともなう差額の請求について〈事前に郵便などでおしらせしておりません。ご了承下さい〉とある。つまり、勝手に契約を切り替えられても、視聴者はそれを引き落としでしか知る術がないのだ。「衛星契約への切り替え問題は私のところにもかなり寄せられています。つい最近相談のあった人などは、まさしく典型的な偽造パターンでしょう」(立花氏)

「国民の義務ですから」
たとえば、阿部茂さん(仮名・30代)のケース。今年6月、NHKから銀行口座の残高が足りず受信料の引き落としができないという通知がきた阿部さんは、それを読んで思わず目を疑った。なんとそこには『衛星契約』と記されていたのだ。 阿部さんは衛星チューナーもパラボラアンテナも持っていない。住んでいるのもかなり築年数をヘた木造アパートで、住人が各自でアンテナを窓に設置していることはあっても、共同アンテナなどの設備はない。
すぐさまNHKにクレームを入れたところ、平成19年4月、阿部さん本人が地上契約から衛星契約にたしかに切り替えていると言う返答がきた。だったらのそ「変更届」を確認させろと詰め寄ったが、担当者は「5年を超えた契約書は保管していない」とうそぶいた。
いずれにせよ、阿部さんはこの5年2ヶ月間で5万8590円も余計に受信料を払い続けてきたことになる。そこで、“過払い金”を返還せよとNHK側に求めたが、「放送法ではどうにもならない」の一点張り。だったらもう解約すると言ったら、ではテレビを棄てたことにして解約届を出してくれという。

NHKの対応にまったく誠意を感じられなかった阿部さんは、このまま泣き寝入りをしたくない、ということで立花氏に相談を寄せた。
「最近、この種の相談が非常に多くなってきています。鹿児島のケースはたまたま親族が気づきましたが、ひとり暮らしの老人だと、契約が切り替わったことなどまず気づきません。振り込め詐欺同様、高齢者を狙った非常に悪質な犯罪と言えるでしょう。発覚しているのは氷山の一角であって、被害者は全国で数万人規模だと考えています」(立花氏)

立花氏がそのように推察するには理由がある。NHKの1間の新規受信契約(地上波契約と衛星契約の合計)は目標の40万件増を下回る35.4万件にとどまっているが、衛星契約は目標の75万件増を3.9万件上回って78.9万件もあるのだ。こも好調さの裏には、地上契約からの“契約変更”がかなり貢献しているということが容易に想像できる。
つまり、それらのなかには、先の鹿児島の70歳男性や阿部さんのように、本人が知らぬ間に契約書を偽造されているケースが多いのではないか。 “みなさまのNHK”を毎日楽しみに観ている視聴者からすると、その番組づくりを支える受信料が、このような卑劣な犯罪の温床になっているなど俄に信じることはできないかもしれない。しかし、そう思わざるをえないほど、NHKの放送受信契約に対する姿勢は杜撰なのだ。

最もわかりやすいのは、宮崎県の吉田光夫さん(仮名・21)のケースだ。恋人(20)とレオパレスで同棲をしていた吉田さんのもとにNHKの委託職員がやってきたのは、今年6月28日のこと。家にはテレビはなく、パソコンも携帯もワンセグチュナーはついていなかったので断ろうとしたところ、その職員はこんなことを言い出した。「契約をするのは国民の義務ですから」 。
なるほどそんなものかと放送受信契約を結んだが、知人に聞いたところ、税金ではないのでデタラメだという。そこで吉田さんは契約を取り消してもらうため、マンションの契約書を持参してNHK宮崎放送局へと向かった。対応した同局の職員はテレビがないことは理解したものの、「取り消しはできない」の一点張り。後日、電話で問い合わせをしたところ、別の女性職員は、手続き上6月分の請求書を送るが実際は払わなくてもよい、というようなことを匂わせて、さらに耳を疑うようなことを言い始める。 ー「すでに解約をしました」ー。 
吉田さんが求めていたのは契約そのものを無効とすることだ。「解約」とは、契約をしたという事実を認めることになる。しかも、自分は解約の意思すらみせていないという。自分の名義を使って好き勝手に手続きをしておきながら、謝罪どころかまったく悪びれもしないNHKに対し、怒りを抑えきれない吉田さんは現在、都筑簡易裁判所に調停を申し立てている。

消費者金融とダブる姿
さらに、関東某所では、もはや変質者によるものとしか言いようのないこんな“犯罪”も報告されている。 20代のひとり暮らしの女性の家に、やはり、20代でかなりコワモテの委託職員が突然、押しかけた。
女性は今時の若者らしくテレビを見ない。ワンセグチューナーのついていないスマートフォンでネットを楽しむだけにもかかわらず、その委託職員は部屋の中まで上がりこみ、こんなことを言い出した。「契約をするまで帰らない。」身の危険を感じた彼女は渋々、放送受信契約にサインをしてしまう。そして。自宅住所や連絡先まで握られている委託職員からの報復を恐れて、被害を訴えることもできず、今も払い続けているのだ。テレビを持っていないのに・・・・・。

このようになりふりかまわずに受信料を徴収する体質は、なにも委託職員だけではなく、NHK本体もまったく同様だ。
さる7月27日、NHKは東京都と大分県のホテル事業者3社に対して、契約の締結や受信料の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こしている。このような提訴はよくあることではあるが、今回のケースがちょっと違うのは、その額だ。NHK側が請求している受信料は、なんと約7億3700万円に上っている。 というのも、NHKは、それらのホテルに対して部屋ごとに受信料を支払うように求めているのだ。
たとえば、未契約の都内のホテルに対しては今年1月~7月分の3万3767部屋分の約5億5210万円。もうひとつのホテルには約7694万円。大分のホテルの場合、契約は締結しているが未払い分として約1億788万円を求めている。

テレビがある以上は払うもんはキッチリとはらってもらおうじゃないか、という強硬姿勢は、かつての消費者金融とダブって見える。「借りたもんは返すのが当たり前だろ」と債務者に迫って隆盛を極めた消費者金融が、違法な取り立てなどから社会的なバッシングを受け、それが法規制や過払い返還請求につながり、そして武富士をはじめとした大手業者の倒産に繋がったことはよく知られている。

もし「契約書の偽造」という“違法な取り立て”が職員の間で日常化しているのであれば、これはNHKを崩壊させる“爆弾”になりうるのではないか。
「このような“詐欺行為”を続けているNHKには、近い将来、“受信料返還請求”の嵐がくると思います。そうなったら、もうもたないでしょうね」(立花氏)

こうした受信料徴収の実態について、NHKに事実確認、および見解と対応をただす質問書を送ったが、締め切りまでに回答はなかった。

BSなど見ていないというのに、気づかないうちに衛星放送の受信料が引き落とされているーーー。 あなたも、自分の契約内容を一度確認した方がいいかもしれない。


サブページ (1): 週刊ポスト記事20120911