年金は破綻するか?

Q.
このままだと年金が破綻するとマスコミが騒いでいるにゃ。少子高齢化で高齢者人口の割合が増え、若者が高齢者の年金を支えきれないというにゃ。そのために消費税増税が必要と言ってるにゃ。あるいは年金は積立方式にすべきだとか言ってる人もいるにゃ。どうなってるのかにゃあ。

A.
そうじゃな。確かに様々な事が言われておるから、なんだかよくわからんのう。しかし、「年金の財源」という本質をしっかり押さえ、そこを出発点として順に考えてゆけば、実はすっきりわかってくるのじゃよ。

Q.
へえ、「年金財源」の本質って何かにゃ?

A.
それは生産力の事じゃ。年金の財源というからおカネの事のように思えるが、実はおカネではない。なぜなら、リタイア後の高齢者はおカネを食べて生活するわけではない。さまざまな生活必需品を消費して生きてゆくのじゃ。それらの商品やサービスは「財」と呼ばれる。我々が生きていくにはおカネが必要なのではなくて、「財」が必要というのが本質じゃ。つまり高齢者も含めて国民の生活を十分に支えるだけの財を生産できるかどうかが問題なんじゃ。じゃから、どれほど高齢化が進んで生産人口(働く人の人口)が減少しても、十分な生産力があれば何も心配することはない。つまり、年金財源を確保するとは、おカネのやりくりを考える以前に、いかに日本の生産力を維持拡大するか、という事に尽きるのじゃ。

Q.
なるほど、生産技術の進歩や機械化で日本の生産力を維持・拡大することが年金財源の本質なのにゃ。だから、おカネの事をかんがえてばかり居ても何も解決しないのにゃ。

A.
そうじゃな。ところで年金は積立方式にすべきという人もおるな。これも同様に無意味じゃ。ところでネコはおカネを貯めるという本質的な意味はなんじゃと思う?

Q.
う~ん、そんな事は考えたことないにゃ。財産を貯めると言う事かにゃ?

A.
そうじゃな、普通はそう考えるじゃろ。じゃが、おカネを貯めても財産にはならん。おカネそのものには何の価値もないからじゃ。おカネを貯めると言う事は、将来において財(商品やサービス)と交換できる、という約束を貯め込んでいる事にすぎん。実際には、いま、ここには存在しないが、将来において作られるであろう財と交換できるという約束じゃ。ということは、将来において交換できる財が存在しなければまったく無意味なのじゃよ。将来において日本の生産力が衰えておれば、おカネの価値も相対的に低下しておる。日本の生産力が衰えれば貯蓄は意味をなさなくなる。じゃからおカネを信用していない中国の人は、むかしから貴金属で蓄財すると聞いたことがある

もし、本当に蓄財したいのであれば、それそのものに価値がある「財」すなわち「商品やサービス」を貯め込むべきじゃな。将来に備えて食料や衣料品を蓄える。これなら本当に蓄財になる。じゃが財と言うのはおカネと違って年月と共に劣化するから、本当の意味での蓄財は現実には成り立たん。じゃから富は「生産力」として保持するのが現実に即しておる。

Q.
でも日本の生産力が弱体化するなら、貯めたおカネを外貨に換えて、途上国に投資するにゃ。すると利息で外貨が増えるにゃ。マスコミは「日本はもうだめだから、アジアの成長を取り込む」とか言ってるにゃ。途上国への投資で生み出される利息を使って、途上国が生産した財を輸入すればいいんじゃないかにゃ。途上国の生産力を利用するから日本の生産力がだめになってもいいという主張する人もいるにゃ。金融立国だそうにゃ。カネの力に頼るのにゃ。

A.
そういう案があるのは知っておる。じゃがそれは途上国に依存する、というか「寄生する」方法じゃ。もしその途上国の経済がおかしくなったらどうする?途上国の経済は不安定じゃ。多くの国に分散投資すると考えるかも知れんが、グローバル化がすすんでしまった現代社会では、経済危機が発生すると不況は全世界に連鎖してしまう。じゃから部分的には「投資」という方法もありかもしれんが、根本的に外国頼みで日本の年金財源(生産力)を設計するのは危険すぎる。たとえば投資した国が中国や韓国のような国だったらどうするのじゃ。投資相手が反日国家ならすべてパアになりかねん。カネの力を借りて外国に寄生して生きる国家など、本当の国家とは言えんじゃろう。それはあくまでも補助的な手段じゃ。

Q.
年金は積立方式にすべしとの声もあるにゃ。積立方式は税方式よりいいのかにゃ?

A.
そうとは限らん。たとえばインフレ率が高い場合、積立方式の年金基金だと、物価上昇を上回る収益をあげられなければ、年金は目減りしてしまうじゃろう。その点、税方式であればインフレになれば税収もそのぶん増えるからカバーできる。物価スライド年金が可能じゃ。しかし、積立方式であろうと税方式であろうと、年金を支える日本の生産力が低下すれば、どれほど「年金の収支」つまり「おカネ=見かけ上の財源」が確保できても、国民は貧しくなる。おカネがあっても、モノがなければ意味がない。マスコミや役人が騒いでいるのはあくまでも「年金の収支」つまり「見かけ上の財源」に過ぎん。

Q.
じゃあマスコミや役人が騒ぐ「年金の収支」はどうでもいいの?

A.
もちろんまったく意味が無いわけではない。じゃが極論を言えば、年金は「通貨発行」でまかなう事も可能なのじゃ。なぜなら、おカネは見かけ上の問題じゃから、日本の生産力(潜在生産力もふくめて)が十分にあるなら、通貨発行で年金を支給しても経済はきちんと回るし、インフレにもならない。すなわち、年金は絶対に破綻することはない。年金問題の真の論点はカネの収支などには無いのじゃよ。

とにかくマスコミや役人が騒ぐ表面的な問題から一日も早く脱却し、本質的な課題である「日本の生産力を高める事」に集中することが年金問題の最優先課題じゃ。そして、生産力と同時に「財の耐久性」を高める努力が必要じゃ。つまり、財(電化製品、車、家財、家)が長持ちして、人々が財を長く使うようになれば、それだけすくない生産力で国民の需要を満たすことができるからじゃ。つまり高齢者を支えるための「必要生産力」を減らすことができる。

Q.
なるほど消費税を増税すれば年金問題が解決するなんで真っ赤なウソにゃ。表面的なおカネの収支を合わせただけでは財務省は喜ぶが、年金問題はまったく解決しないのにゃ。でも、どうすればいいのかにゃ。どうすれば日本の生産力を維持したり、財の耐久性を高めたりできるのかにゃ。

A.
何のために金融緩和でカネをばんばん刷っとるんじゃ?そのカネを使って日本の生産力を底上げするのじゃよ。いま行われておる金融緩和政策は、銀行から企業への貸し付けを増やそうとする政策じゃが、そのカネは実体経済というよりも株や土地などの資産市場に流れ込み、資産バブルを引き起こしつつある。もちろん、それが景気回復を引っ張る起爆剤となる可能性は否定しないが、バブルが膨張するほど世の中の借金も増えるからと金融は不安定化する

それよりも、金融緩和で増やしたおカネを政府の公共事業を通じてインフラ開発や先端技術の研究開発にどんどん投資をすべきじゃ。財源は新規国債の発行によって調達するが、この国債を日銀が直接買い取ることにするのじゃ。これは日銀の国債引き受けという手法じゃ。政府が発行した国債を日銀が買い取る際に現金を発行し(金融緩和)、この現金で国債を買い取ることで現金がそのまま政府に渡る。これを財源とするのじゃ。

Q.
たとえばどんな投資がいいのかにゃ。

A.
そうじゃな、インフラ開発についてはやはり「エネルギー開発」じゃ。どれほどリサイクル技術が進んでもエネルギーだけはリサイクルできん。エネルギーこそが国家の浮沈を決めるのじゃ。原子力も有望じゃったが、あまりにリスクが高すぎる。やはり再生可能エネルギー開発じゃろう。もちろん、民主党がやったように、コストを無視して太陽光発電を大量に作るのは愚作じゃ。おかげで電気料金が値上がりしとる。これでは本末転倒なのじゃ。

再生可能エネルギーはコストダウンのための技術開発がまだまだ不十分じゃ。また再生可能エネルギーは太陽光だけではない。風力もあれば波力、地熱、バイオ、水素など多分野に渡る。こうした多分野の投資を同時に強化することで、多分野の研究開発を同時並行にすすめる。すると、どれか、ずば抜けた技術が生まれてくるかも知れん。最初から太陽光ありきでは始まらん。技術開発投資により十分な低コスト化が可能になった段階で集中的に量産化を図る。そうでなければ意味がないのじゃ。

なぜなら、エネルギーインフラの本当のメリットは「低コスト化と安定供給」にあるからじゃ。エネルギーコストが大幅に低下すると、家計の負担が減って購買力が高まるだけではない。企業の製造コストも低下するから、国際的な価格競争力が高まる。しかもエネルギーが安ければ、海外から日本に工場が進出するケースも起きるじゃろう。また、再生可能エネルギーによりエネルギー自給率を高める事は経済的な安定をもたらす。現在の日本のエネルギー自給率は4%程度だと言われておる。こんな状態では、エネルギー危機が起きれば年金生活など吹っ飛んでしまうじゃろう。

安くて十分なエネルギーを国内で調達することができるようになれば、日本の生産力が安定的に維持できることは間違いないはずじゃ。それが老後の人々を支える生産力のベースになるはずじゃ。日本は火山国じゃ。実用化には莫大な費用と時間がかかるが、「マグマ発電」という究極の地熱エネルギーの開発をしてほしいのう。それこそ技術立国日本のロマンじゃがなあ。

Q.
ロマンねぇ・・・他に何か無いのかにゃ。

A.
そうじゃな、あとは「研究費ばら撒きで無駄遣い」することじゃ。

Q.
無駄遣いは良くないとマスコミが言ってるにゃ。

A.
そうでもないんじゃ。世の中の進歩は、ほとんど暇人間の無駄な研究からスタートしとる。学者なんてものは、そもそも役に立つかどうかわからんような、得体の知れん研究に朝から晩まで没頭しとる。カネになるかどうかなんか関係ない連中じゃ。多くのケースでは何の役にもたたんじゃろう。じゃがそういう変な研究が盛んに行われると、偶然に世紀の発見にぶちあたる可能性がでてくる。確率論なのじゃよ。「成長分野に的確な投資をする」とか役人は間抜けな事を言っとるが、未知の分野において、狙い澄まして成功することはまずあり得ない。カネをばらまいて、変な学者をたくさん集めて、山のように変な事をやらせる。大いなる無駄じゃな。じゃが無駄ではない。そして、こういう馬鹿な無駄遣いができる国家こそ、本当の意味でゆとりがある国家なのじゃ。そういう国家こそ「学問のすそ野が広い」というのじゃ。

Q.
う~ん、話のスケールがでかすぎるにゃ。身近なところでは何か無いのかにゃ。

A.
もちろん、まずは「デフレ脱却」じゃ。デフレということは、使われずにブラブラ遊んでおる余剰生産量すなわち「デフレギャップ」が存在することを意味する。こいつが年間20兆円とも言われておるから、毎年消費税10%分も無駄にしておる事になる。実に無駄じゃ。カネを刷って、遊んでいる労働力や設備を動かせば「財」が生まれる。カネは財を生むための道具に過ぎんと考えるべきじゃ。カネは財を生んでこそ意味がある。おカネを貯め込んでも何も生まれない。

Q.
やっぱりデフレ脱却、デフレギャップの解消が生産力を高める近道なのにゃ。ところで、年金って、支払った金額より受け取る金額が多くなるのが常識だと思うにゃ。でも、どうして増えるのにゃ?

A.
なぜ払った金額より受け取る金額が増えるのか?普通の庶民は「利息だ」と思っとるじゃろう。確かに表面的には利息じゃ。じゃが単に利息だけなら「資産ころがし」でも増やせる。マネーゲームでカネを増やす現代の病んだ経済に慣れてしまった人々は不思議に思わないかも知れんがな。じゃがマネーゲームでおカネを増やしてもインフレになるだけじゃ。受け取る年金が増えても、カネの価値の裏付けである「生産力」が同時に増えなければ、本当の意味で受け取る額が増たことにはならん。カネだけ増えてもだめじゃ。

Q.
じゃあ、生産力を高めるというのは、マスコミが騒いでいる「生産性の向上」ってヤツかにゃ。高齢化社会では生産効率を高めることが必要とか言ってるにゃ。でも、生産効率を高める最高の方法って「解雇」にゃん。人を減らせば企業の生産性は高まるにゃ。どうもおかしいにゃ。

A.
そうじゃな。企業(ミクロ)における生産性や効率の意味することと、社会(マクロ)における生産性や効率の意味することは異なるのじゃ。企業(ミクロ)では人件費の抑制こそが生産性を高める最高の方法じゃ。企業の場合、生産性とは利潤の最大化を目的としとる。じゃからマスコミがさかんに「解雇規制緩和」を唱える。解雇しやくすなれば、コストカットが容易になり、利益率を高める事ができるから、これが「生産性の向上」と言われるのじゃ。じゃから世の中の失業者が増えても逆に企業の生産性は高まる。

しかし、社会全体(マクロ)で見た場合、失業者が居るということは生産性の悪化を意味する。なぜなら稼働率が低下するからじゃ。たとえば100人の労働者のうち、20人が失業して80人しか働かなければ効率が悪くなる。つまり、社会の生産性を高めるためには、失業者を限りなくゼロに近づける必要がある。もちろん、社会の生産性を高めるには一人あたりの生産力を高める事も大切じゃ。

Q.
ふにゃ。ミクロとマクロではまるで正反対にゃ。あやうく騙されるところにゃ。

A.
マスコミは普通の人々が持っておる思い込み、いわゆる「常識(暗示)」を利用して意図的な誤解を仕掛けてくる場合があるので、十分な警戒が必要じゃ。よく考えてみると、資本主義が効率が高いというのは企業レベル(ミクロ)においてのみ正しいことがわかる。社会レベル(マクロ)で見ると、資本主義は失業を増やすし、不況は起こすし、そもそも実質的には何の財も生み出さない広告宣伝や営業活動に莫大な投資が必要なのも、実は非効率的じゃ。つまり、資本主義経済はミクロの生産性は高いが、マクロ的にはむしろ非効率であるとも言える。

ところが、ミクロを極端に信仰するのが「新自由主義」じゃ。グローバル化も規模こそ大きいからマクロなのかと思えるかも知れんが、実際にはミクロ経済を強化するための道具に過ぎず、かえってマクロ・コントロールを不能にする政策じゃ。極めて「バランスが悪い」と言える。ミクロとマクロの調整こそが大切なのじゃよ。

年金を考える場合も、ミクロとマクロの両面からバランスよく考えたいものじゃ。

2015.5.29 修正

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