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書籍)拝金主義グローバリズム


書籍紹介)
時代遅れの常識を疑え!
拝金主義グローバリズム
カネに支配された多文化共生は幻想だ

著者:のらねこま

媒体:電子書籍
電子書籍へのリンク>Amazon Kindle

 今日、テクノロジーの進化は目覚しいものがあります。そしてテクノロジーは着実に社会の生産能力を向上させると同時に、労働力を必要としなくなりつつあります。それはディープラーニングと呼ばれる人工知能の学習アルゴリズムの登場によって加速しています。近い将来にすべての自動車は人工知能が運転し、事務職も人工知能が行い、多くのサービス業務や医師の診断にいたるまで人工知能が担うようになります。そして人工知能は人間を超えるとされます。人間の労働が担ってきた仕事はことごとくロボットに置き換わるのです。それはロボットが人間の代わりに労働することで、労働資源が供給過剰になることを意味します。これが今までの常識では考えられない事態を社会に引き起こすことは間違いありません。

 ところがグローバリズムの考え方が一般化したのは、およそ40年も前の前世紀であり、その当時に人工知能が人間を凌駕し、ロボットが人間の仕事を奪い、労働市場が供給過剰になるなどと誰が想像したでしょうか?当時のグローバリズムはあくまでも労働資源が希少であることを前提として、労働資源の最適配分を考慮した考えでした。まさに自由貿易主義とは労働資源の利用に関わるからです。しかし、もうそんな時代ではないのです。古いグローバリズムの考え方は通用しません。歴史において、テクノロジーの進化は常に社会や経済に大きな影響を与えてきました。テクノロジーの進化は社会に変革を求めるのです。ですから、グローバリズムもまた、テクノロジーの進化に合わせて必然的に変化せざるを得ないと思うのです。

 すなわち、今日的な意味でのグローバリズムはすでに時代遅れであり、新たなグローバリズムの視点が求められる時代へと移り変わりつつある。古いグローバリズムの常識にしがみ付く世界の指導者やマスコミに対して、未来的な視点からNOを突きつけるべき時です。

<目次>

第1章 世界に広がる「グローバリズムへの疑念」
(1)イギリスのEU離脱とマスコミ報道
  イギリスのEU離脱
  偏向する日本のマスコミ報道
(2)ヒトラーの極右思想とプロパガンダ
  ①極右思想とその目的
  ②プロパガンダ手法
(3)今日の反グローバリズム運動
  躍進する各国の反グローバリズム政党
  反グローバリズム運動の特徴
(4)新聞ポピュリズムの台頭
  エリート支配政治を美化するマスコミ
  反グローバリズム政党の重要性
(5)イギリスのEU離脱が意味するもの
  イギリスEU離脱が示唆するグローバリズムの問題

第2章 拝金主義グローバリズムの破局
(1)グローバリズムとは何か
  グローバリズムは一つの概念ではない
  グローバリズムを分類してみる
(2)グローバリズムの歴史的変貌と諸問題
  侵略と略奪のグローバリズム
  資源搾取のグローバリズム
  自由貿易と国際分業
  生産過剰と貿易戦争の時代へ
  グローバリズムと産業空洞化
  通貨統合の悲惨な結果
(3)金融グローバリズムとマネーゲーム
  マネーゲームが主導する世界経済
  経済の金融依存と経済危機の連鎖
(4)移民とグローバリズム
  移民は失業と格差の温床となる
  人口が増えても国民は豊かにならない
  移民政策がもたらす重大リスク
  移民にとって幸せな選択とは?
(5)拝金主義グローバリズムは持続可能か?
  地球を破壊しつつあるグローバリズム
  グローバリズムの未来像は破局

第3章 正しいグローバリズムの道を求めて
(1)持続可能な未来のグローバリズム
  拝金主義グローバリズムは時代遅れ
  持続可能なグローバリズムのビジョン
(2)調和主義グローバリズムへの道
  調和主義への道のり
  調和主義グローバリズムの政策方針


<本書より冒頭部分の抜粋>

第1章 世界に広がる「グローバリズムへの疑念」
(1)イギリスのEU離脱とマスコミ報道
イギリスのEU離脱

 2016年6月23日、自国がEU(欧州連合)から離脱するか留まるかの是非を決める国民投票が、イギリスにおいて実施されました。事前のマスコミや民間調査会社などの予測によれば、EU残留派がやや優勢と伝えられ、市場もイギリスのEU残留を織り込んで動いていました。しかし結果は大方の予想とはまったく異なるものでした。6月24日の投票結果発表の内容は、残留16,141,241票(48.11%)に対して離脱17,410,742票(51.89%)となり、イギリスのEU離脱が国民投票により決定されました。予想を覆す展開に市場は大混乱、日本市場では安全資産と考えられている円が為替で大きく値上がりする展開となり、24日には一時1ドル99円台を付け、日経平均は大きく値下がりして1,286円安、1年8カ月ぶりに終値14,952円にまで落ち込みました。欧州株も軒並み下落して8%安、ポンドも下落。各国中央銀行は市場の過剰な反応に備えて、「協調して流動性を確保する」と発表するなど物々しい雰囲気に包まれました。

 世界の金融市場のプレイヤーは、自らの損を回避しつつ一円でも多くの利益を他者から抜き取ろうと、市場では過敏に反応する傾向があります。今回の市場の激しい反応もその例であって、時間の経過と共に為替市場や株式市場の混乱は収束し、2016年9月15日現在における円相場は1ドル102円台、株価も16,000円を超える水準にまで回復しています。もちろん、イギリスのEU離脱がこれから長期的にどのような影響を世界経済に及ぼすか注目されるところです。ところで、世界的に大騒動を引き起こした今回のイギリスEU離脱の国民投票は、どのような経緯で行われることになったのでしょうか。

 イギリスがEUの前身であるEEC(欧州経済共同体)に加盟したのは1973年です。EECはその後EC(欧州共同体)となり、1993年に現在のEU(欧州連合)になりました。EUは欧州の経済的、政治的な統合を目指そうとするもので、EUは域内の単一市場化を目的の一つとしており、そのための様々な取り決めがされています。たとえば関税においては、域内における関税の廃止、域外に対する共通関税があります。また、域内における共通の競争ルール導入(規制撤廃や国内企業への支援制限)、シェンゲン協定(労働力の移動を自由にする)などが決められ、一部では通貨統合(ユーロ)も実行に移されました。こうした動きは「欧州の統合」であるわけですが、国家統合とは裏を返せば「国家主権の放棄」を意味するため、それぞれの人々の価値観によって統合の是非に関する立場は異なるのが当然です。また、他国との統合は社会における多くの諸問題を引き起こす原因になる場合もあります。そうしたなか、イギリスはEUに加盟しつつも、通貨統合ユーロには参加せず、シェンゲン協定に加盟することもなく、EUの核となるドイツやフランスとの統合とは距離を置いてきたのです。

 とはいえEUに加盟している以上、当然ながらイギリスは欧州からの影響を大きく受けることになりました。その最たるものが移民です。移民の影響が決定的に大きくなったのは2004年に新たな10か国がEUに加盟して以降です。イギリスがシェンゲン協定に加盟していなくても移民は入ってきます。その10か国とは旧共産圏の東ヨーロッパを中心とした、経済的にはやや貧しい国々であり、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーなどの国々です。こうした国々から多くの移民が英国へ流れ込むようになり、こうした人々が英国のあちこちの職場で働き始めます。とはいえ、英国はそれ以前から海外の移民を数多く受け入れてきました。第二次世界大戦後、旧植民地だったインドやアフリカ、カリブ海の地域から多くの移民が労働力としてイギリスに渡りました。しかし2004年以降は旧共産圏の東ヨーロッパからの移民が急増したため、イギリス全体としての移民流入量が以前に増して急激に増加しているのです。問題は移民そのものではなく移民の大きさです。1990年までは年間5万人程度であった移民は、いまや年間30万人を超える勢いで増加しており、英国内における海外生まれの外国人の人口は2014年に828万人(人口比13%)に達しています。こうした移民の多くは比較的単純な労働に従事する人々が多く、しかも低賃金で労働することから、移民の急激な増加が英国内における低所得者層の賃金水準の低下と失業を増加させるのではないかと予測されます。

 それでも、アメリカのサブプライムローン・バブルが全盛の頃は、EU諸国もその流れを受けて経済は絶好調であり、移民の流入はむしろイギリスの経済成長や人々の生活向上にとってプラスの要素の方が大きかったわけです。しかし複雑に絡み合った金融取引のネットワークを介して、アメリカのバブル崩壊の悪影響は欧州経済に連鎖し、欧州における金融危機や、ギリシャ、スペイン、イタリアなどの政府債務デフォルト問題を引き起こし、財政再建のために緊縮財政に踏み切ったEU各国の経済は長期的な停滞を迎えることになります。イギリスもバブル崩壊の余波を避けることができず、増税と緊縮政策に踏み切ります。こうした経済の低迷と緊縮政策により、失業者が増加しました。これがイギリスの移民政策に対する国民の意識に大きな影響を与えることになります。そんな中でEUからの離脱を主張するイギリス独立党(UKIP)が徐々に支持を伸ばし始めました。イギリス独立党は移民政策を見直して移民の流入を抑制するだけでなく、その他の経済政策についてもEUからの干渉を排してイギリスの主権(自主性)を取り戻すことを主張しています。

 そうしたなか、2014年に欧州議会議員選挙が行われました。これはEUの議会である欧州議会の議員を決める選挙で、イギリスには欧州議会で73の議席が割り当てられており、この議員を英国内の選挙で決めます。この欧州議会議員選挙で、EUからの離脱を主張するイギリス独立党(UKIP)が72議席中24議席を占めて第一党になりました。労働党は20議席、保守党は19議席となり、イギリスの世論がEUからの独立へと大きく変化し始めたことが明白になったわけです。EU残留派である当時の与党、保守党のキャメロン首相はこの事態に危機感を覚えたのでしょう。そこでキャメロン首相は一つの賭けに出ます。2015年の英国議会選挙のマニフェストとして「保守党が政権を取ったらEU離脱の是非を問う国民投票を2017年末までに行う」と発表したのです。これはEUに懐疑的な国民の支持を受けて勢力を伸ばしつつあったイギリス独立党の支持者を保守党に取り込み、EU離脱派勢力の弱体化を狙ったのではないかと言われています。そしてそれが功を奏したのか保守党は英国議会選挙で大勝利を収め、キャメロン首相率いる保守党の政権基盤が安定することになったのです。しかしマニフェストに明記した以上、キャメロン首相はEU離脱の是非を問う国民投票を実施する必要性に迫られることになります。

 そこでEUへの残留を希望するキャメロン首相はアクションを起こします。イギリス国内においてEUへ懐疑的な世論が高まっている事実を利用し、EUの場におけるドイツやフランスなどとの交渉の際にこうした世論動向を持ち出すことで揺さぶりをかけ、EUから有利な条件を引き出すよう努力した結果、難民受け入れの条件に例外を認めさせるなどの成果を得ました。これは大きな収穫でした。キャメロン首相はこれによってイギリス国民の気持ちを繋ぎとめ、EU残留が可能と考えたわけです。にもかかわらず、極めて僅差とはいえイギリス国民は離脱を選択することになりました。この結果については、国民がEU離脱の意味を十分に理解していなかったため、成り行きで決まった、といった風な評価もマスコミから出されましたが、仮にそうだったとしても非常に多くの国民がEU離脱の意志を持っていたことに間違いはなかったわけです。

本書に続く