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TBSテレビでの報道

#1 テレビ「総力報道!The News」のニュース特集「ブランド野菜から違法農薬のワケ」(2009年7月7日放送)の中で私が指摘したことの真意(2009年7月13日)


佐賀県のアグリコマース株式会社が中国から輸入・販売していた「ニームオイル」からアバメクチンが検出されたという私達の研究に対し、農水省は検出されなかったという発表をした(2009年2月25日)。

この問題は元々、鹿児島県の特栽に認定されているピーマンから生協の分析で農薬登録のない殺虫協力剤ピペロニルブトキシド(pbo)が検出された、という記事が南日本新聞(2008年1月20日)に掲載されたことから始まったものである。現地の園芸振興会(136農家から構成)では原因が解明されるまで自主的な出荷停止措置をとり、1億円もの被害を被ったと言われている。



当時現地から回収された「ニームオイル」8本が私のところに持ち込まれ、分析をした結果、8本全部からpbo以外にアバメクチンが984ppm~2,160ppmの範囲(平均は1,650ppm)で検出された。定量はHPLCを用い、検出限界2ppm、添加回収率104%という条件で行い、LC/MS/MSでも同定に間違いがないことを確認した。これらの結果は、日本農業新聞(2009年1月10日)に報道され、第53回日本応用動物昆虫学会大会(2009年3月28日~30日、札幌)で口頭発表するとともに、詳細は日本環境動物昆虫学会誌20(1):1-8(2009)に、「土壌活性剤とラベル表示されたニームオイル製剤の殺虫活性と有効成分」という原著論文として印刷公表した。

農水省の発表との相違点については、両方から取材をした農業協同組合新聞(2009年3月30日)に詳しく経緯が説明されている。農水省(が委託した分析機関)が採用した方法の詳細は開示されていないので、何故検出されなかったのかは想像するしかないが、その分析条件では検出されなかったということは事実の筈だ。しかし、そのことと、アバメクチンが存在しなかったということと必ずしも同じではない。

アバメクチンを植物抽出物が混在している製剤から機器分析だけで検出することがかなり困難なことは、私達が一昨年農植物保護液「アグリクール」にアバメクチン1,700ppmが混入されていることを明らかにした時
(朝日新聞2007年11月22日)に、ある計量証明事業所がLC/MS/MSを使って定量下限値0.01ppmでも検出できなかったという事実からも明らかである。

ここで私が指摘をしておきたいことは、残念ながら農水省にはこれ以上事実を解明しようという姿勢が見られないということだ。私達はこういう疑義資材(いわゆる自然農薬)を扱う時は、先ずどういう生物活性があるかということの検定から始める。ニーム油もその中の主要殺虫成分のアザジラクチンも魚毒性はA類で、昆虫に対しては即効的な致死効果ではなく遅効的なIGR活性を示すということが知られているが、私達が供試した「ニームオイル」のヒメダカに対する24h後のLC50は72,890倍希釈液、コナガ幼虫に対する24h後のLC50は6,665倍希釈液という著しく高い活性を示した。一方、農水省の分析で検出されたpbo濃度(最高10,000ppm=1%)は、希釈して散布すれば防除活性は期待できない程度の低い濃度なので、法的な取締りの対象にはならないという説明がされた。

実際に魚毒性や殺虫活性を検定してみれば、活性があるかどうかはすぐわかる筈だが、という取材記者の提案に対しては、分析でpbo以外の農薬成分は検出されていないのだからその必要はないと答えている。また、農水省が収集し分析に供した4本の「ニームオイル」を私に提供するなり、他の分析機関に再分析をさせたらという取材記者の提案に対しても、その必要はないと答えている。

さらに看過できないことは、鹿児島県の園芸振興会の
農家が多大の被害を被って苦しんでいることに対して、勝手に出荷停止をしたのだから農水省には関係(責任)がないと言っていることだ。農薬取締法に従ってこのようなまがいもの農薬(疑義資材)の取締りを担当している筈の農産安全管理課・農薬対策室の責任者の言葉とは思えない。また、当該「ニームオイル」はすでに回収され問題は解決しているのだから、これ以上農水省がこの問題に関わる必要はないという発言も、農家の痛みを全く感じていない、何のための農水省かと疑わせる発言だ。こういう責任逃れの不作為の姿勢では、今後も農家に同様な犠牲者がでないか心配である。

現地の農家は、農水省の「ニームオイル」には法的な問題はないという発表によって、被った甚大な被害の責任の追及先がなくなり、泣き寝入りの状態である。ちなみに今回混入されていたアバメクチンは、日本では登録のない毒物相当のマクロライド系(抗生物質)殺虫剤で魚毒性も著しく高い。そういうことを知らずに使えば、農家だけでなく消費者や環境にも悪影響を及ぼす可能性もある。

私達が10種類の植物抽出液と宣伝されて全国の有機農業や無農薬管理ゴルフ場で使用されていた「夢草」という資材には、合成ピレスロイド殺虫剤のシペルメトリンが混入されていることを初めて明らかにしたのは
1994年(第19回日本農薬学会大会、札幌)
関連文献1, 関連文献2)だから、あれから15年以上も経っているのに、いまだにこのような資材が横行し続けているということは、現行の農薬取締法か農薬管理制度には欠陥があると言わざるを得ない。それが、7月7日に放送されたTBSテレビ「総力報道!The News」のニュース特集「ブランド野菜から違法農薬のワケ」の中で私が指摘したことの真意である。