3月4日(金)バイオスタートアップ見学

Post date: 2016/03/09 0:14:39

午前中はUCLAで仕事を行うが,その後,午後からはLA滞在中の先輩とLong Beachに行き,バイオスタートアップの会社を訪問した.

バイオスタートアップ見学

このバイオスタートアップの見学は有意義で印象的な体験だったので,ここに紹介したい.この会社には1人だけでは行かなかっただろうから,一緒に連れていってくれた先輩には感謝したい.

会社の業務内容として,メカトロ技術を活用し,単一細胞操作を行う装置の製品開発を行っている.お客さんは,主に大学などの研究機関である.自分は研究分野にいるが,扱っている技術内容と応用先は極めて類似している.自分は研究開発のフェーズにいるが,開発が完了した後,そのデバイスは会社との整合性は高い.

なお我々は車を用意していないので,Long Beachの往復はLyftで行った.

(余談だが,車を乗る回数が少ないので,LyftやUberでも全く問題ないと思っている.)

以下,従業員の少なさと施設の狭さがあるにも関わらず,2-3種類の製品を開発している点には驚いた.その開発は効率は高い.

従業員が2名という少なさ

総従業員は2名と少ない.その2名ともエンジニアである.創業者夫妻を人数にカウントしてないが,その2名も大事な戦力である.なので合計でいえば,4人になるのかな?フルタイムの社員が少ないということは,第一の驚きである.

なぜ少なくてもよいか?ほとんどの部分はアウトソースしていた.例えば人事,法務や会計などである.もしフルタイムでそろえようとすると,10-20名が必要となる.会社が小規模な段階では,その分のリソースを使い切れないのに,人件費が多くなってしまう.なので多くを外部委託している.

海外向けのディストリビュータも外部との契約である.

施設の狭さと設備の少なさ

一般的な研究室よりも狭いというのが驚きである.設備で言えば,実験台が2台,倒立顕微鏡2台,クリーンベンチ1台がメジャーなものである.あとはいくつかの評価装置がある.通常の大学にあるバイオ系の研究室の実験室なら,これよりは広いことが多いであろう.

足りない分析機器などは,借りることで補っている.UCLAのコアファシリティーも借りることができる.これは大学の近くに拠点を設ける利点かもしれない.

2名とこの広さでも会社が成立し,製品も開発・販売し,利益も出ている.やり方を考えてうまくフォーカスすれば,メーカーとしての商売ができるんだなと率直に驚いた.うまく人数を減らせば,コスト面で非常に有利なようである.

もちろん分野は限定されるであろうが,それでも同業他社(Eppendorf社など)に負けない製品を作っているのは凄い.コストと性能を考えたときに,一考される存在になっている.

会社が備えているものの少なさに対して,生み出すものの多さを見ると,自分も工夫の余地が多いことに気付かされる.人数だけで見れば研究室の方が多いし,面積だけで見ても研究室の方が広い.

業務時間の短さと低いストレス

今現時点では,1日4時間勤務だと言っていた.バイオスタートアップを作ったことは,自分の行った選択の中で,一番よかったとも.

創業者は大学でFacultyとして勤務していたのだが,そのときとやることの内容は変わっていない.それと比べると,(自分がトップなので)上司もおらず,ストレスもないそうだ.

収入は聞いてないが,羽振りと身なりからは,正社員で働く人以上にはあるのではないか.

この辺りは,自分が聞く悲惨な独立話とは,全く異なっている.

大学の研究で持っている資産(シーズ技術や経験),研究分野でのニーズ把握は,スタートアップをやる上で武器になる.ということに気付かされた.

業務のコツと補助金制度

業務のコツとしては,いいチームを作り,分業制で切り分ければ,うまくいきやすいという話であった.また起業のやり方や商売の方法(お金の回し方)は,誰かが教えてくれるわけではない.やり方は自分で学ぶ必要がある.

アメリカなのかカリフォルニアなのか分からないが,スタートアップを作ると,補助金が数億円のレベルでもらえると聞いた.ただ申請書を書き,提出して採択されることが必要である.

製品の開発が完了し,市販されるまで,最初はその補助金で乗り切ったらしい.Fundingもうまく活用すれば,最初の実績作りまで,耐えることができる.たしかに数億円もあれば,最初の一波(製品)を作って,それに乗ることが可能になりそうだ.

自分の思い込みの払拭

バイオスタートアップの訪問を通じて,自分のいくつかの思い込みが払拭された.視野を広げる上で有益な大変であった.

  1. 小資本や少人数では,大資本かつ優秀な人材の多い大企業に負けると思っていた.しかし,小規模なスタートアップでも開発が可能であり,十分な勝機がある.
  2. 自分と同じような分野ではマーケットが小さくて,起業できないと思っていた.しかし,十分なマーケットがあり,商業ベースに載せることができる.
  3. 大学勤務後にスタートアップを行うことは,できないか難しいと思っていた.しかし,起業したとしても,実力の面でも問題がない.【ただしPrincipal investigator (PI)のレベルまでは到達していた場合】
  4. スタートアップは,大学の勤務内容とは大きく違うと思っていた.しかし,会社によっては,勤務内容が同じになりうる.
  5. スタートアップはストレスが多く,もっとガツガツしている人がやるのかと思った.しかし,ストレスは少なく,そこまでガツガツはしていなかった.というよりも,とても落ち着いた人であった.

これだから,直接物事を見に行って,感じとらないといけない.