聴覚障害と英語
義務教育における英語教育
筆記試験がメインでディスカッションもあまりしない日本の場合、聴覚障害者は幸か不幸か問題なく義務教育を終えられる。ただし、会話重視であろう「小学校の英語教育」では、何らかの対策が必要だろう。
日本での英会話取得方法(先輩たちの経験)
日常会話はフレーズを丸暗記する
聴覚障害者は、頭に入っている単語しか聞こえないので、決まり文句は覚えていたほうが連想しやすい。例えば『とっさのひとこと』を覚えると、かなりスムースな挨拶ができる。例えば、お店で聞かれるMay I help you?など。
日本に来ている留学生たちをつかまえる
難聴者に限らないけれども、日常的に英語に触れているほうが上達することは確かである。健聴者のようにラジオ英会話やリスニングソフトを使えない難聴者の場合は、根気よく付き合ってくれるであろう留学生を見つけてお茶する。
マンツーマンの英語教室に通う
大手の英会話教室でも交渉次第でマンツーマンをしてくれることもある。私は、下町の小さな英会話教室(だけど先生は著書多数)でマンツーマンレッスンを受けた。日本人の感覚で、単語末尾の「s」をあまり気にせずに適当に発音するよりも、発音苦手でも「s」と言おうとしているんだ、くらいの意識は必要だと思った。「s」をつけようとしているのか、していないのか、でリズム(拍)も異なってくるので。
留意することは、難聴者の場合、口の形が重要であるので、自分がこれから関わるであろう国の出身者に教えてもらうこと。さもないと、かなり口の形が異なってくるらしい。例えば、北米に留学する予定だったら、オーストラリア人の先生は避ける、など。実際、私の経験では、日本で育っていない人の日本語は口が読みにくい。
英文を大量に読みこなす
英字新聞や雑誌で時事ネタ、研究論文で研究内容の会話、ブログで日常会話、への対策をする。
発音よりもイントネーションやリズム
聴覚障害のある私たちがきれいに「s」を発音する、というのはかなり無理がある。よく使うけれども注意して言うべきなのは「FAX」ではないだろうか。最後の「s」が発音できていないと、笑われる可能性が大きい。健聴の友人も、この単語は危険なのでfacsimileと略さずに言っているそうだ。健聴者も言っているけれども、英語は正確な発音よりも、リズムがよいとけっこう通じるらしい。先述したように、「s」をきれいに発音するというよりも、「s」を言おうとしている、という方が通じるかもしれない。
時間があったら、短期語学留学
よく健聴者が1ヶ月や2ヶ月ほど(もしくは1年とか)行く語学留学は、難聴であると効果が得られないかもしれないと躊躇する。経験者によれば、それは語学学校の先生次第らしい。事情を話し、柔軟な先生にあたれば、複数人の健聴者にまじった授業でもとりわけ留意して教えてくれることもある。金額も高いし、かなりの賭けだと思うけれども、現地に知り合いがいて、もともと遊びに行くような土地ならば挑戦するのもいいかもしれない。チャンスがあるのならば、行っておいて損はない、と思う。
英語の資格試験
英検
私も、英検を受けようとしたことがあり、事務局にリスニングはどうなるのか問い合わせたことがある(1990年代)。当時は、どうもなりませんと、ナシのつぶてなお返事だった。現在は、秋山なみさんの努力によって英検のリスニングと面接の字幕化が実現しているので、英検事務局に問い合わせれば対応してくれると思う。
TOEFL/TOEIC
TOEFLは留学のページ参照。私はTOEICの経験はないが、後輩によれば、私の「適当TOEFL」と同じように「適当TOEIC」をしたらしい。
アメリカ手話取得方法(私の経験)
教室に通う
日本にもいくつかASL教室はある。私が通ったのは東京・飯田橋にある日本ASL協会(JASS)、東京ではこのほか中野にThe Sign Language Intersection (SLI)がある。全国的には、単発的に大学や自治体でも講座が開かれることがあるほか(私の経験では熊本市でも講座があった)、米軍基地周辺では教会でASLを教えている場合がある(友人の経験では佐世保にある)。
時間があったら、夏季留学
有名なのはギャローデット大学(Gallaudet University)のサマープログラム(Summer and Enrichment Programs)。2週間単位で6月下旬から8月上旬まで。海外からの参加者でギャローデットに入学しない場合、入寮して全食事つきの2週間で20~30万円くらい。このほか、全米、どこでも大学かコミュニティカレッジでASL講座があるが、夏もやっているケースは少ない。ギャローデットにしろ、コミュニティカレッジにしろ、ビザを取得する必要がある。
語彙
ミシガン州立大学のASL Browserが辞書としてつかえる。アメリカ手話の本だけで学ぶのは、動きがわからないのでかなり難しい。忘れてしまった手話を思い出すために使うぶんには有効かと思う。DVDもいくつかあり、通販で入手できるが、リージョンコードに注意する必要がある。上記サイトにしろ、本にしろ、方言や新旧の手話など1つの単語に複数の表し方があっても、1つしか表してない。
指文字練習サイト
ここのサイトで練習できる。大学院では、専門用語を「指文字の嵐」で切り抜けるので、指文字の練習は重要かもしれない。このほか、DVD "fingerspelling, expressive & receptive fluency" by Joyce Linden Groode(DVDだとリージョン1)でも練習できる。指文字の読み取りは、知っている英単語の量がものを言うので、英単語の語彙を増やすことが先決かもしれない。
滞米先のDeafコミュニティ
短期間でもアメリカに滞在する場合なら、現地のDeafコミュニティがASL dinnerとかASL cafeとか開催している場合があり、これに参加する手もある。また、各種教会で「ASLクラス」や「移民のための英会話クラス」がある場合も多い。