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車いすで出演すると……

バリアフリーじゃないので,ちょっとたいへん
新しいホールが待ち遠しい!

2016-05-21

はじめに

昨年(2015年)12月の枚方市市民会館大ホールにおける枚方市民メサイア公演をごらんになったかたはお気づきと思いますが,この公演では車いすの合唱団員のかたが2名いらっしゃいました(おふたりともアルト). ということで,ひょっとしてほかにも「車いすなんだけれどメサイアを歌ってみたい!」というかたがいらっしゃるかもしれないので,車いすでの参加について書いてみたいと思います.
(というか,そもそも,もっと早くに完全バリアフリーの新しい大ホールが完成していればこんな記事を書くことはなかったのです.しかし残念ながら,まだしばらくは古い大ホールを使い続けざるを得ないので,ひとこと(?)書いておくことにいたします.

2015年公演ステージ
昨年(2015年)のメサイア公演ステージ 2015-12-20(日)
画面右下に車いすのかたがおふたりいらっしゃいます.
(それぞれに介助のかたも.)

車いす「観客」なら,まぁ問題なし

枚方市民会館大ホールでのコンサートに「観客」として車いすで行くならば,それなりの「設備」はあります.

1971年に完成した枚方市市民会館大ホールは,現在の感覚からするとバリアフリーにはほど遠いものです.つまり,段差が多い上にエレベーターもありません. とはいえ,その後の改装で,正面玄関入ってすぐのロビーの片隅に車いす用のトイレが作られていますし,ロビーから入った観客席最後尾に車いす用のスペースが設けられています. つまり,1階の最後尾席になりますが,「観客」としてなら車いすでも利用ができます.

車いす「出演者」だと,ちょっとたいへん

ところが,「出演者」としての車いすだと,ちょっとばかり(かなり?)面倒なことになります.

舞台の上に行くには地階に降りないといけないのですが,エレベーターはありません. 実は,舞台上手袖の端に,荷物搬入用のエレベーターはあります. しかし,荷物搬送用であり,車いすのかたが利用するものではありません. そもそも,エレベーターにつながる1階搬入口は,トラックからの搬入がやりやすいようにトラックの荷台と同じ高さになっているので,健常者であってもこの「搬入口」から入ってエレベーターに乗るのはやっかいです. それにエレベーターは荷物用ですから,部分的に簡単な手すりがあるだけの数メートル四方の「床板」だけのものです. 周りを囲む壁などありません.(そんなものがあれば,荷物の上げ下ろしにかえってじゃま.) つまりエレベーターの端から足を踏み外すと,簡単に下に転落します. というわけで,とても車いすのかたに利用してもらえるものではありません.

ならば,車いすをかついでロビー脇の階段を降りる? しかし,階段は,車いすを担いで行くには傾斜がかなり急で危険です.
車いすでステージへ移動するルート
車いすでステージへ移動するルート
赤矢印線のルートで移動しました.

ということで実際に使った方法は,階段は使わず,観客席内の通路の段を舞台に向かって降りて行くやりかたです. これだと,通常の階段よりも傾斜がずっと緩やかですし,個々の段差も低いので,車いすを降ろすのはだいぶ楽です. (といっても複数の介助のかたは必要ですが…….) そして,1階観客席を前部と後部に分ける横向きの通路まで降りてしまえば,あとは段差なしです. この通路を横に進んで扉から観客席の外に出て,ステージまでたどり着けます. (右図参照)

本番当日の昼食と発声練習

本番当日,合唱団員は14:00からの公演に備えて,午前中は舞台上でゲネプロ(総合練習)を行ないます. 12:00ころにゲネプロが終わったあと,合唱団員は大ホールの隣の建物である市民会館の本館にある控え室に行き,そこで昼食を食べて本番衣装に着替えます. (大ホール舞台の後ろに「楽屋」はありますが,こちらはソリストや指揮者のかたがたの控室となり,160名ほどいる合唱団員は本館の大部屋(?)が控え室となります.) そして開演の40分ほど前になると,まず大ホールの建物の地階にある小ホールに行き発声練習をしたあと,大ホールの舞台袖に行き,出演に備えます.

しかし,車いすのかたがたは,段の上がり降りが大変なので,ほかの団員のように市民会館本館の控え室に行って食事や着替えをすることも,小ホールで直前の発声練習をすることもなく,この日は朝から公演終了までを,舞台袖と舞台で過ごされています.食事は舞台袖で済まされていますし,同じ「地階」とはいうものの,移動に段差がある小ホールでの発声練習にも参加されていません.ちょっとお気の毒だったのですが,バリアフリーではない市民会館ではどうしようもなかったです.

通常の練習のときは…

「公演当日」のときの車いすの話を中心に書いてきましたが,それまでの普段の練習についても書いておきます.

まず,メセナひらかた会館ですが,こちらは大ホールよりずっとあとにできた施設なので,車いすでの利用も楽です. 段差のない通路とエレベーターを使って,練習の部屋までたどりつけます. そういえば,メセナひらかた会館でのある練習のとき,車いすのかたが「きょうはひとりで来ました」なんて話しているのを,ちらりと小耳にはさんだこともあります. とはいえ,障害の程度にもよるでしょうが,介助のかたが付き添われたほうが,本人としてもなにかと楽ではあると思います.
大ホールでの練習風景
大ホールでの練習風景 2015-11-28(日)
一階席の横通路まで降りてきて歌われています.
(左:介助者,右:車いす)

で,問題の枚方市市民会館大ホールでの練習はどうなのか? 舞台のひな壇ができ上がった後の本番前日の通し稽古や当日のゲネプロは,本番と同じ舞台配置で行ないます. しかし,ひな壇が作られていないそれまでの大ホールでの練習では,オーケストラと指揮者は舞台の上ですが,合唱団員は客席になります. このとき,全員,体の向きが本番とは前後逆になります. こういう配置なので,車いすの場合,1階客席最後尾の車いす用エリアでほかの団員と離れて歌うか,あるいは,介助のかたや合唱団員が車いすを担いで1階席中央の横通路まで降りてきて歌うかになります.(写真参照)

「基本的に」介助体制は自前で……

運営委員会としては,基本として「車いすのかたはご自身で介助のかたの手配をしていただく」という形をとりました.実際のところは,運営委員やその他の団員がいろいろお手伝いすることはありました.しかし,事故があったときの責任問題とかもありますので,ボランティアで活動しているわれわれとしては,「車いすでも合唱団が全面的にサポートします」とは言えないので,そのあたりはご了承ください.

私は本番当日の車いす移動のお手伝いの役を仰せつかって,ほかの数人のものと待機していたのですが,ご自身が介助のかたがたといっしょだったので,私どもの作業としては当初予想していたほどの「作業量」にはなりませんでした. (とはいえ,複数の介助のかたがいないとどうにもならないことは,確かです.)

あと,大ホールでの練習のときに,客席最後尾の車いすエリアだとほかのひとたちと離れすぎてしまって歌いにくいので,そばについて歌ってあげたりとか,本番当日の昼食時,ほかの団員のかたと離れて舞台そでにずっととどまっておられた車いすのかたに,一緒に付き添ってあげたりとか,その場の判断で動いてくださったかたもいらっしゃったので感謝しています.このほかにも,気の利かない私が気づいていないだけで,いろいろ気を使ったいただいたかたがいらっしゃると思いますが,ここに具体的にご紹介できなくて申し訳ありませんm(._.)m

最後に

まぁ,いろいろ面倒なこともあったのですが,今回2名の車いすのかたの出演を実現できたわけですし,運営委員会としても要領が分かりました. ですから「車いす」ということで,合唱出演をあきらめているかたがたも,参加をご検討いただければと思います. 運営委員はいろいろな雑務に追われており,基本は車いすのかたの側で介助体制を整えていただかざるを得ないと思いますが,できる範囲での協力はいたしますので,参加を考えていらっしゃるかたは,一度運営委員会にご相談ください.

おっと,この「雑記帳」掲載時点で,実は筆者は「運営委員」ではないんですね.なにかと忙しくて,私は,「2016年は WEB サイトの管理の『お手伝い』をするだけで,枚方市民メサイアは不参加」としました. そういう意味では,いささか「無責任」なことを書いていますねぇ~(^_^;. まぁ,固いことは抜きにして読み流して(?)ください.

結局,突き詰めていえば,「バリアフリーの新しいホールができるのが待ち遠しい!」ということになります. そうすれば介助者が車いすをかついで段差を上り下りする必要もなくなり,車いすのかたがたがぐっと参加しやすくなり,本番の日には,ほかのみんなと一緒の場所で食事をしたり,一緒に発声練習もできるはずですから…….



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