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ボーカロイド

2012-03-23


 このサイトにアクセスしている方々はクラシック音楽ファンが多く,コンピューター・ミュージックには関心のないかたが多いかもしれませんが,「ボーカロイド(Vocaloid)ウィキペディア」についてお聞きになったことはございますでしょうか? ボーカロイドとはヤマハが開発した音声合成技術,あるいはそれを利用したソフトウェアのことで,人間が自然な感じで歌う歌声をコンピューターで合成するためのものです。現在,いろいろな会社からボーカロイドのソフトウェアが発売されており(1万円台からあります),パソコンをお持ちでしたら合成の声で歌を歌わせることができます。

 このボーカロイド・ソフトウェアを有名にしたのは,日本のクリプトン・フューチャー・メディア社が2007年に発売した「初音ミク」の大ブレークの影響が大きいです(約1年間で4万本以上出荷したITmediaとのことです)。単にソフトウェア・パッケージを売るのではなく,16歳の女の子というキャラクターとうまく結びつけたのがヒットの要因と思われます。もともと「ボーカロイド」といえば,音声合成技術,あるいはそれを利用したソフトウェアのことだったのですが,いまや「ボーカロイド」,いや短く「ボカロ」とえば,「初音ミク」などのボーカロイド・キャラクターのことを指す場合が多くなっています。

 「キャラクターと結びつける」といっても,メーカー側でキャラクターの設定をガチガチに決めてしまうのではなく,ユーザーが自由に作り上げていける形にしたことが非常によかったです。二次著作物の作成がかなり自由なおかげで,アマチュア,プロを問わず,いろいろな人たちが,単にボカロの歌を発表するだけでなく,イラスト,アニメ(手書き,CG)の膨大な数の作品を発表しています。現在の初音ミクなどのボカロ・キャラのイメージは,ボカロ・ソフトを使って音楽作品を作った人たち,ボカロ・キャラの絵(静止画,動画)を描いた人たち,そしてこうした作品を聞いた/見た人たちが作り上げた,といってよいと思います。昨今なにかと「著作権」がうるさくいわれ,「著作権」に関して厳しく取り締まることばかりが話題になりがちな中,このボカロのやり方は非常に興味深いですね。「著作権」というのは,そもそもクリエーティブな創作活動を推進するためのものであって,創作活動に直接タッチしない立場の人間・組織の「既得権」を守るためのものではないはずですから…。二次著作物の自由度を生かして,曲作りの得意な人,作詞の得意な人,イラスト,CGの得意な人など,多くの人たちがネット上で協力し合いながらPIAPROいろいろな作品を作り上げる,というのがボカロの文化であります。

 ところで,「初音ミク」の声は声優の声を元にしています。当初はプロ歌手の協力が得にくかったので,声優の声を使ったとのことです。もっとも,サンプル音を採るには単純になにか歌ったらよいというものではなく,基準となるいろいろな発声パターンを発音する必要があるので,声優のほうがこうした作業に向いている,ということもあるみたいです。しかし,その後プロ歌手の中にも,ボーカロイドに自分の声を使ってもらうことで自分自身の宣伝にもなる,という考えかたも広がってきたようです。

 なお,ミクは16歳のアイドル歌手の声なので,クラシック音楽を歌うには向いていませんが,クラシック音楽を歌わせるのなら,女声なら「Prima」(ZERO-G社,2008年 イギリス),男声なら「Tonio」(同じく 2010年)というのがあります。こちらは,プロのオペラ歌手の声を元にしています。昨今,クラシック音楽のコーラス練習のために,パート別の MIDI,MP3 などのデータをインターネットからダウンロードすることがありますが,そのうち,コーラスの練習用にボーカロイドの歌を使うことも出てくるのでしょうね。

 ボーカロイドの歌声を聞いたことのない方はどんな「声」なのか気になると思います。以下にいくつかリンクを張っていますので,聞いて(かつ見て)みてください。(そのうち,リンク切れになるのがあるかも。とはいっても,検索すればいっぱいヒットするはずです。) ディープなファンのかたからは,「なんであのキャラ,あの曲を紹介しないのか?」と文句が出るかもしれませんが,解説が長くなりすぎますし,そもそもこちらとしても,たくさんのボカロ・キャラや膨大な数のボカロ曲を十分把握しているわけはありませんのでご了承ください。

初音ミク
・ Ballade (デモ)Crypton
・ Melt(live)

Hatsune Miku - MELT ‎[Live]‎ 1080HD

・ MIKUNOPOLIS in ANIME EXPO 2011, Los Angeles (live digest)

【初音ミク】MIKUNOPOLISダイジェスト映像公開!【Project DIVA】

ボカロといえば,まずミクというくらいの有名キャラですね。
設定は16歳の女の子,いわゆるアイドル系です。
2007年デビューですけれど,デビュー以来歳をとっていません (^_^;。
「デモ」では,いろいろなかたの描いたミクのイラストを見ることができます。
ライブでは(後述の巡音ルカのも),観客も大いに盛り上がっていますねぇ。
Image of Hatsune Miku ⇒ Image of Hachune Miku
上の左のイラストは,ソフト・パッケージなどに使われているイラスト。いっぼう右は,二次著作物の名作「はちゅねミク」です。アイテムの「長ネギ」も含めて,二次著作物の「傑作」です。

巡音(めぐりね)ルカ
・ 音のしずく (デモ)Crpton
・ Depression of Cybernetics

Megurine Luka - Depression of Cybernetics ‎‎(Project Diva Arcade)‎‎

・ Double Lariat (live)

[Eng Sub] Double Lariat - Vocaloid - Hatsune Miku 39's Giving Day Concert

初音ミクと同じくクリプトン・フューチャー・メディア「所属」。
2009年デビュー。
設定は20歳となっていて,ミクより大人っぽい声になっています(見た目もだいぶ色っぽい!)。
ミク同様,声優の声を元にしています。
ミクの場合と同様,「デモ」では,いろいろなかたの描いたルカのイラストを見ることができます。
Image of Megurine Luka ⇒ Luka
上の左のイラストはソフト・パッケージなどに使われているイラスト。右の写真は最近発売予定のフィギュアです。みんなで育てたイメージのおかげ(?)なのかどうかは知りませんが,いやぁ,ルカさん,デビュー当時の「堅さ」も取れて,生き生きと魅力的になりましたねぇ。顔色も良くなったし…。(^_^) 実は,当初のイラストの顔色が悪い(白い)のはあえてそうしたためです。ミクと違って「大人」の女性を意識して,大きな胸とセクシーなロングスカートにしたまではいいけれど,「アダルト作品」のキャラとして使われるリスクを考えて,「肌を真っ白にすることで、生命力が弱いような印象や冷たい印象を作り、エロティックな要素と本人の状態をできるだけ切り離したいと考えたITmedia」とのことです。その後,本来あるべきルカのイメージが十分広まってきたので,安心してのびのびとこうしたポーズも取れるようになった,ということでしょうか?
Image of Prima package
Prima
・ Voi Che Sapete (Mozart)prima-vocaloid.com
・ Orinoco Flow (Enya)

Vocaloid Prima - Orinoco Flow (ENYA)

Voi Che Sapete は全曲ではないし,ミクやルカのような踊りもないけど,ボカロ・ソフトの編集画面が映っています。
ボカロ・ソフトは基本的にこのような画面で編集します。
プロのソプラノ歌手の声をもとにして作られたボーカロイドですが,さて,声にうるさいクラシック音楽ファンのみなさんのご意見は?
そのうち,わが枚方市民メサイア公演でも,ボーカロイドにソリストをやってもらいましょうか? 超絶コロラトゥーラ技巧もなんなくこなしてくれますよぉ。(^_^)
Image of Tonio package
Tonio
・ Tonio Vocaloid ZERO-G demo

TONIO Vocaloid ZERO-G demo

・ Yesterday (the Beatles)

VOCALOID Tonio sings "Yesterday"

こちらもPrima同様,プロのオペラ歌手の声をもとにして作成されたボーカロイドです。
ZERO-G社自身のデモに比べると,Yesterday のほうはちょっと気になるところもありますが,実は、ボカロといえども,プロ並みの歌い方にさせようとすると細かい調整が必要で結構手間がかかるのです(どこかのサイトで読んだ話では,「慣れている人でも3分の歌で8時間くらいかかる」とか)。まぁ,MIDI シーケンサーで曲作りをしてたときときでも,より自然な演奏にさせようと凝り始めると,どんどん手間が増えてくるのですから,それと同じですね。

 YouTubeなどでボカロのCG動画を見て思うに,CGとの相性がいいですね。もともとコンピューターで合成した声ですし,そのままコンピューター合成映像と合体させればよいわけでしょうから。ボカロは,激しく踊っても息が切れないので(!)存分に踊りまわることができ,結果的にCGですてきな踊りも披露してくれることとなります(CG動画で見ていたときは,あまり感じなかったのですが,歌の振りを人がまねしているYouTube映像を見て,「こりゃとても踊りながら歌えない!」と思ってしまう曲もあります。) そもそも「息切れしない」どころか,息継ぎなしでいつまででも声を出せるわけですからすごい(?)です(1分間息継ぎなしで歌えたという伝説のあるカストラートウィキペディア歌手ファリネッリも真っ青?)。

Image of Yuzuki Yukari package

 まぁ,人間離れした歌と踊りの超絶技巧も可能なボーカロイドですが,あまり極端なことをするとかえって不自然よくないです(お遊びとしてはおもしろいけど…)。それから,ボーカロイドは歌うのは得意ですが,残念ながら普通のおしゃべりは苦手です(般若心経(!)を唱えるミクを見たことはありますが,お経の棒読みみたいなおしゃべりなら簡単です)。おしゃべりをさせたいかたは,VOCALOIDではなくVOICEROIDというソフトをお使いください。「結月(ゆづき)ゆかり」のように,同じキャラでVOCALOID版AH-SoftwareとVOICEROID版AH-Softwareとが発売されているものものあります。セリフつきの歌とか,ラップなんかを歌わすのにはいいじゃないでしょうか? ゆかりの場合は,ボカロとしては後発な分だけ,他社との差別化を考えていて,より人間らしさ,息づかいの再現が重視されているとか(ブレス音も入れられるみたい)。

 ここで紹介した以外にもいろいろな会社からいろいろなボーカロイド・ソフトウェアが発売されているのですが,具体例を上げていくときりがないので,このくらいでやめておきます。

 そのうちカストラートウィキペディアのボーカロイドも発売されるかな? なんて思ったりもしています。すでに声のサンプリングはできているので,技術的にはいつでも可能なはずで,あとは商品として売れるかどうかの判断だと思います。「サンプリングができている」と書いたのは,BBCのテレビ・ドキュメンタリー番組BBCで,ボーイソプラノの声を元にカストラートの歌を合成してゆく場面があるからです。このとき,ボーイソプラノの声をそのままサンプリングしたのでは,ボーイソプラノのボーカロイドができあがるだけです。そこでのど当てマイクを使って,声帯の振動そのものをサンプリングしています。その声帯の振動を,大人サイズお体の各部分(鼻腔など)に共鳴させた場合の響きをコンピューターでシミュレートさせて,カストラートの歌声を得ています。この合成カストラートの歌声,SPレコードでわずかに残っている(CDにもなっている)実際のカストラートの声と比較してみても,いい線いっていると思うのですが…。

 ボカロのライブ・コンサートはあれだけ盛り上がっているわけですし,オリコンで1位も取るくらいなのですから,「そのうち紅白歌合戦にボカロが登場することもあるかな?」と思っているのは私だけでしょうか?


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