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「#」はシャープ記号ではありません!

2014-02-22

「#」の形をよく見ると……

コンピューターのキーボードを見ると,「3」キーのキートップに「3」の文字と並んで「#」が刻印されていますよね? みなさん,この#記号をどう呼んでいらっしいますか? 「シャープ」と呼ばれているかたが多いのではないでしょうか? (「井桁(いげた)」と呼ぶ場合もありますが…….)

確かに音楽で使うシャープ記号に見えますし,周りを見てもそう呼んでいるかたは多いです. しかし,このページを読まれているかたは,多少なりとも音楽に関心がおありのはず. ですから,観察力の鋭いかたはすでに気づかれていると思います. そう,「#」の形はシャープ記号のそれではありません. 「えっ?」と思われるかたは,次の楽譜上のシャープ記号とよく見比べてください.

楽譜の中のシャープ記号の図

シャープ記号は,「縦線は垂直で,横線はやや右上がり」になっています. しかしキーボードにある#記号は,「縦線がやや右に傾いていて,横線は水平」になっています. こんな形の#記号を楽譜で使うと,記号の横線と五線の横線が平行なので場合によっては横線同士が重り合ってしまい,見にくく(醜くく)なってしまいます.

要するに,「#」はシャープ記号ではないのです. 第一,コンピューターにおいては,別々の文字コードが割り当てられた「#」と「♯」の2種類の文字があります. もちろん,後者が「シャープ記号」です.

「#」はいったい何?

では「#」は,いったい何なのでしょうか? キーボード上の「#」は,コンピューター以前のタイプライターからあった記号で,「番号記号(number sign)」というのが正式な呼び方(JIS X 0201)です. 「No.1」,「No.2」と番号付けするのと同じように,「#1」,「#2」といった感じで使います.

この記号,JIS などの工業規格による厳密な名称はともかく,国によってもいろいろ呼ばれています. Wikipedia などによりますと,カナダでは「number sign」という呼び方がポピュラーなものの,アメリカ合衆国では「pound sign」,北米以外の英語圏では「hash」と呼ばれているとのことです. もともとイギリスのタイプライターでは,「#」の位置に「£(ポンド,イギリスの通貨記号)」が割り当てられていました. (日本語では「ポンド」とカナ表記しますが,実際の発音を考えると「パウンド」としたほうがいい?) 「£」と同じキー位置にあるので「pound sign」になったのでしょうが,「#」を「pound sign」と呼ぶのは,イギリスではなくてアメリカ合衆国であるのが不思議なところです. まぁ,イギリス人にしてみれば,「だってポンド記号じゃないじゃん!」ということになるのでしょうか? なお,アメリカ合衆国では,通貨の pound としてではなく重さの pound として使うみたいです.

そんなこんなでネットをさまよっていると,あるイギリスのサイトで次のような文章に出会いました.
アメリカ人は#記号を「ポンド」と間違って呼んでいるのに対し,ほかのすべて人々は「ハッシュ」と呼ぶべきだ思っている(ただしブリティッシュ・テレコミュニケーションズ社を除く.この会社のオペレーターは,電話機の「square」キーと言い張っている).
http://www.theregister.co.uk/2002/07/04/why_microsoft_makes_a_complete/
上のページには,#記号にまつわる話がいろいろ書かれているのですが,長くなるのでこれ以上の引用はやめておきます. それはそうと,「square」とこれまた違った呼び方が出てきましたね. 日本だと,電話の自動音声に従って何かの操作をさせられるときに,よく「シャープキーを押してください」という指示を聞かされますが,イギリスではこれが「square key」となるみたいです.

ついでに書きますと,電話機の「#」キーは,番号記号としてではなくパソコンの「Enter」キーのような使われ方になっています. もっとも,「#(シャープ)」や「*(星印,アスタリスク)」と聞かされても分かりにくい場合を想定している(?)のか,「はい」の場合には「1」を押させるなど,すべての操作を数字キーだけで済ませる場合も多いです.

代用表記としての「#」

私がここで書いているように,「#」と「♯」とはちゃんと区別して書くことができます. しかし,半角キーしか使わない(使えない)とき,言い換えればキーボード上に刻印されている文字しか使わない(使えない)ときに,「シー・シャープ」を「C#」(シー,番号記号),「シー・フラット」を「Cb」(シー,小文字のビー)を「代用表記」する場合があります. たとえば私の持っている音楽ソフトでは,コード名を入力する箇所では半角文字しか使えないので,そうなっています. でもこれは,あくまで「代用表記」でしかありません. また,マイクロソフトが開発したプログラミング言語の中に「C♯」(シー シャープ)というのがあります.これについては「C#」と「代用表記」されている場合がとても多い気がします.

余談ながら,Wikipedia の見出しでは記号類は使えないので,「#」や「♯」といった見出しはなく,この記号で検索すると(検索文字としては使える)「番号記号」や「シャープ(記号)」という見出しに転送されます.

最後に

「#」と「♯」とで混乱されているかたは結構いらっしゃるみたいで,私がここで書いているように「『#』と『♯』とは違う文字です」といった話題に触れた WEB ページはいろいろとあります. 興味のあるかたは検索してみてください.

最後に,私は,#記号の「俗称」として「シャープ」を使うことまで否定するつもりはありません. でも,あなたが「音楽愛好家」であるなら,ワープロなどで音楽関連の文章を書くときに,「♯」という文字があるのを知らずにシャープ記号として「#」を使うことがないよう,くれぐれもご注意をお願いいたします.



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