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右利き・左利き・両手利き

楽器の対称性と利き腕

2015-01-31

はじめに

今回は,私が勝手に(?)考えている楽器の「対称性」と,それにからんだ演奏者の「利き腕」について書いてみたいと思います.

楽器の対称/非対称

ここでいう「対
バイオリン
称性」とは,左右対称か否かということです. ただし,楽器の「見かけ」つまり「物理的な構造」の対称性だけをいっているのではありません. 楽器の物理構造が大きく影響してくるのですが,むしろ,それを演奏する人の「演奏動作」の左右対称性に着目しています. もう少し細かくいうと,演奏者の右手と左手がどういう動きをしているか? とういことです. (「楽器の対称性」というより「演奏スタイルの対称性」?)

たとえは,バイオリンやギターを演奏する場合,右手と左手はまったく違った動かし方をしますよね? こうした楽器を「非対称楽器」と呼ぶことにします. いっぽう,たとえば打楽器を考えてみます. ドラムセットの場合,セットの並びは左右非対称でも,右手と左手の動きだけを見ると,基本的に同じような動きをしていますよね? こうした楽器を「対称楽器」と呼ぶことにします. ピアノなどの鍵盤楽器の場合,「右手は高音部の主旋律を弾き,左手は低音部の伴奏を弾く」ということがあるにせよ,バイオリンなどと比べると,右手の指と左手の指は同じような動きを要求されますから,これも「対称楽器」に分類します.

対称楽器を演奏するには両手利き?

ピアノ
さて,なんでこんな話を持ち出したかというと,楽器演奏者には対称楽器に向いた人と,非対称楽器に向いた人の2種類がいるのではないか? と思うからです. ほとんどすべての人には「利き腕」というのがあって,「左右逆で生活して見ろ」といわれると「悲惨なこと (^_^; 」になると思います. ただ「片手利き度合」(あるいはその「逆数」である「両手利き度合)」)というのには個人差があって,なにをするにも「右手でないとだめ」というかたは多いでしょうが,なかには右手ほどうまくはいかないけれど「左手でもぞれなりに箸を使えるよ」というかたもいらっしゃると思います. そして数は非常に少ないでしょうが,「どちらの手でも同じように使えるよ」というかたもいらっしゃるでしょう.

で,私の「意見」ですが,
対称楽器の演奏者は両手利きであることが望ましい
と思っています. 右手も左手も同じような動きを要求されるということは,右手も左手も同じように動かす事ができなければならない,という理屈です.

利き腕でないほうを鍛える

ティンパニー
あるティンパニー奏者のかたが著書の中で,ある指導者から「右手はほっといてもいいからとにかく左手を徹底的に鍛えるように言われた」と書かれていました. このことは,和太鼓をやっている私としてはよく理解できます.

いろいろなかたの和太鼓の演奏を観察していると,うまくたたけないかたの問題点のひとつが,「左右のバランスが悪い」ことです. 見た目からして,右手と左手の形,動きが違っています. 耳で聞いた場合,速いテンポで左右交互に連打してもらったとき,打ち初めは良くても,一定の強さ,一定の間隔を維持し続けることができていません. 左右で強さにばらつきがあったり,音の間隔が均等でなくなってくるのです. 文章では説明しにくいですが,「ダダダダダダダダ……」と同じ強さ,同じ間隔の音が聞こえ続けなければならないのに,極端にいえば「ドコッ,ドコッ,ドコッ,ドコッ,…」と聞こえてくるわけです.

これを解決する究極の方法は,「両手利きになる」ことです.
和太鼓

キーボーディストの両手利き度合

「対称楽器」であるキーボードを演奏するプロの「両手利き度合」で印象に残っているシーンがありました. 30年ほど前,ロック・キーボーディストの難波弘之氏がNHKの教育番組(!)でキーボードの指導をしていたとき,ピアノのトリルを左手の薬指と小指で軽やかにやって見せたのです. これには驚きました. 私なんぞがトリルをやろうとしても,右手の人差し指と中指で「もっさりした」トリルまがいのものをするのが精いっぱいです. プロのキーボーディストというのは,利き腕であろうがなかろうが,人差し指だろうが小指だろうが,滑らかに指を動かせるのだ,とつくづく感心した次第です. ちなみにこの難波さん,いまは東京音楽大学の教授でもいらっしゃるんですね. (やっぱ,そんじょそこらの「ロッカー」ではなかった.(^_^)

「対称性」はスポーツにも

私が話題にしている「対称性」は,音楽だけでなくスポーツの分野にもあります.

たとえば,テニス. このスポーツでは,徹底的に利き腕を酷使します. 右利きならば,つねに右手でラケットを持って打ち返します. バックハンドで打つときに左手を添えることはありますが,基本右手だけを使います. テニスプレーヤーは利き腕とそうでないほうの腕とで大きさが違う,という話を読んだことがあります. あれだけ利き腕を酷使していれば,利き腕だけが発達するのは当然です.

ということで,テニスを続けていると,左右の腕のバランスが崩れてきます. そのアンバランスは,利き腕を酷使するテニスには向いていても,対称楽器を演奏するには好ましくないです. ですから私は,対称楽器を演奏するかたには,非対称スポーツであるテニスはあまり勧めたくないのが本音です. 同じスポーツをするのなら,左右を均等に使う水泳とかジョギング、スキー、各種体操などをお勧めします.

もちろん,楽器をするにしろスポーツをするにしろ,みなさん「好き」でやっているのですから,ピアノをやるかたわらテニスをするのを無理にやめろとは言いません, 自分のやりたい楽器やスポーツを大いに楽しんでいただいて結構です. ただ,テニスを続けていると,ピアノやドラムにおいて利き腕でないほうの動きに物足りなさが出る可能性が高いことは,頭に止めておく必要はあると思っています.

両手利きを目指して…?

私は,キーボードや和太鼓をしているからというより,「脳への刺激(?)」のために利き腕でない左手も使うようにしています. 最初に左手で歯磨きを試し始めたのはもう何十年も前のことですが,いまでは食事のときの箸は左右どちらの手でも使えます. (もちろん,魚の細かい骨を箸で取り除きながら食べる…,ということになると右手のほうが楽ですが,普通に食べる分にはどちらの手でも問題はないです.) みなさんも,「脳への刺激(とぼけ防止?)」のために,利き腕でないほうも使ってみてはいかがですか? 皿洗いのスポンジを左手で持つと,ゴム手袋の右手だけがすぐにだめになることもない,という効果もありますよ (^_^)

左手も使うようにして何年も経ってから和太鼓をやり始めたわけですが,この「両手利き志向の生活」をやっていてよかったとつくづく感じています. 同じ「対称楽器」であっても,キーボードでは右手と左手でそれぞれ異なった旋律を奏でます.つまり左右のバランスの悪さはあまり目立たないのです.しかし和太鼓の場合,基本的には左右交互で単純な打音をだすだけですから,左右の手のバランスが悪いと,非常に目立つのです.

とういわけで左右のバランスをさらに鍛えるために,箸を左手に持ち替えたときのように,和太鼓でも,練習のときにはときどき左右の手の動きを入れ替えて叩いています. なんか,野球の「スイッチヒッター」みたいな感じですね. 和太鼓の場合,叩くのは長胴太鼓一つだけという場合が多いので,右手左手の入れ替えはすぐにできます.

ドラムセット
これがドラムセットの場合ですと,セットの並びを組み直さないと右手・左手を逆にすることはできないので,ちょっと面倒です. 左利きドラマーの場合,セットを通常とは左右逆に並べて(つまり,ハイハットを右,フロアタムを左にして)叩くかたもいます. しかし,ドラムセットは通常右利き用にセットされているので,いちいち並べ替えるのが面倒な場合もあり,左利きであっても,右利きのかたと同じ並びのセットのままで叩くかたが多いみたいです. (左利き用のはさみはありますが,他人のはさみを借りざるを得ないときも多いですから,左利きであっても,圧倒的にたくさんある右利き用のはさみに慣れてしまったほうがなにかと便利,というのと同じ理屈ですね.)

さらにピアノの場合ですと,右手左手を入れ替えようと思っても,鍵盤の並びを逆転させて,右が低音,左が高音にした特殊なピアノを作らない限り,右手左手の切り替えはできません. 「対称楽器」とはいっても,ピアノの場合,左右の入れ替えは不可能です.

つまり,同じ「対称楽器」といっても,対称性の強さは楽器によって違っているのです. 対称性の強い順に並べると, 1個だけの長胴太鼓 > ドラムセット > ピアノ の順になります. そしてこの順序は「両手利き」を要求される強さの順序でもあります. 上にも書きましたが,和太鼓の場合,「片手利き」度合が高いと,それが音に出やすいので,非常に具合が悪いのです.

そうそう,両手をバランスよく鍛えることと脳への刺激(ぼけ防止?)のために数年前からジャグリングも始めてみました. ジャグリングでは,どちらの手でも同じように玉や棒をコントロールしてほうり上げることができないとだめなので,「対称性」があります. つまり,「両手利き」が強く要求されます.

私は非対称楽器に向いていない?

ギター
昔々私はギターをやりかけたのですが,すぐに挫折してしまいました.(ちゃんとしたところに習いに行っていれば,また違った結果になった?)  ピアノもギターも弾けるという具合に,「対称楽器」と「非対称楽器」の双方をこなす「器用な」かたもいらっしゃいます. しかしどうも私は,「非対称楽器や非対称スポーツに向いていないのかな?」と感じています.

でも見方を変えると,完全な両手利きではないにしても,それなりに両手がつかえるのなら,両手を同じように使うことが要求されることをするのがより理に適っていると感じています. なにせ,「片手利き」に比べて,「両手利き」は圧倒的な「希少価値」があるわけですから….

それやこれやで,キーボードはほとんど「独学」(といえば聞こえはいいが「我流」?)で続けています.(さぽっている時期も結構ありますが….)  ピアノを習いに行った期間は全部合わせても「数年」くらいだと思います. 時間やお金もかかるので(という私のいつものセコイくせが出てきて),もっぱら自分で勝手に気の向いたときに弾いています. てなわけで,相変わらずバイエル程度ですが,まぁ,一流ピアニストを目指しているわけでもなし,適当に自分で楽しんでいればいいかと思っています.

キーボーディストはドラムにも向いている?

ちょっと余談になりますが,枚方市民メサイア公演で,第1回からずっとオルガンやチェンバロで出演されているY先生は,私の長男と次男のピアノの先生でもありました. 先生に最初に会ったのは,もう20年以上前の話になります. その後息子たちもY先生のところに通うのはやめてしまって少し疎遠になっていたのですが,何年も経って,私が枚方市民メサイアの第1回に参加したとき,Y先生とひょっこりまた顔を合わした次第です.

そんな私個人の話はともかくとして,Y先生はドラマーでもあることはみなさんご存知でしょうか? 学生時代は,「バンドでドラムを叩いていた」とうかがっています. Yピアノ教室のファミリーコンサート(私もピアノや歌で参加したことがある!)のときに,生徒の演奏にドラムで加わられたこともありました. 枚方市民メサイア関係者の中で,Y先生がキーボードを弾くのではなく,ドラムを叩いているのをご覧になったかたは,限られているんじゃないかと思っています. やっぱり,対称楽器であるピアノをされるかたは,同じ対称楽器であるドラムにも向いているのかもしれません.

そういえば以前,あるコンサ―トを聴きにいったとき,プロの和太鼓奏者の演奏の後に合唱団が登場したのですが,和太鼓奏者のかたがそのまま合唱団のピアノ伴奏もされたのを見てびっくりした記憶があります. (すいません.この演奏者かたの名前は覚えていません!)  そもそも私にしても、ギターはすぐに挫折してしまったけれど,いまは和太鼓を叩くかたわらシンセサイザーを弾いているわけですから,複数の「対称楽器」をこなしていることになります(レベルはさきのお二方とかなり違いますけれど…).

利き腕でないほうも使いましょう!

最後のまとめとして,まず,みなさんがやっている楽器(あるいはスポーツ)の「対称性」を考えて,それに応じて,「利き腕を徹底的に鍛えるのか? 両手をバランスよく鍛えるのか?」を考えることをお勧めします. その上で,「私はもっぱら非対称楽器(非対称スポーツ)しかやらない」というかたであっても,ときおり利き腕でないほうを使うことをお勧めします.

ウィキペディアの「スイッチヒッター」を見ると「スイッチヒッターは左右両方で打撃を行うため、バットスイングによる体のゆがみが悪化しにくくスポーツ障害を起こしにくいと言われている。そのため最近では本来の打席と反対の打席で打撃練習をすることがよく行われるようになっている。」とのことです,「スポーツ障害」を起こすほどの激しいスポーツをしていなくても,普段使わない側の手を使うことで脳への刺激となり,「ボケ防止」にもなります,そして高齢者だけでなく,子育て中のかたにも強くお勧めします,利き腕でない場合に自分がいかに「不器用」なのかが分かれば,小さな子供が手を上手に使えないときに,すぐカッとなってしまうこともなくなるはずです.


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