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合唱見栄講座

格好だけでも,うまく見せる!?

2015-03-07

歌のうまさは顔に出る?

コーラスをやっていらっしゃるみなさんでしたら,当然ながら,ほかの合唱団の公演にも足を運ぶことがおありと思います. 私ももちろん,合唱を聴きに行くことがあります. このとき,ステージで歌われているかたがたを観ていてふと気づいたのですが,歌っていらっしゃるかたがた個人個人の声をはっきりと聞き分けられなくても,歌っている姿,とくに口の動きや表情,視線の方向などを見ているだけで,「あっ,この人は歌がうまそうだな」とか,「この人の歌はちょっと……」と何となく分かってしまうときがあります. みなさんもそういうことがおありではないでしょうか?

歌がうまそうに見えるかたは,口はしっかりと動いているし,顔も上がっています. ちょっと抽象的ないいかたになってしまいますが,「表情」もいいです. いっぽう,この人はもうひとつだな,と見えてしまうかたは,口はそれなりに動いているものの,なんとなく「ボソボソ」といった感じ. 顔もうつむいてばかりで,楽譜を目で追うのに精一杯,という雰囲気です. 表情はもうひとつ「精気(生気?)」がない.というかはっきりいえば,表情が「死んで」います.

もちろん,声の良さをきちんと判断するには,声そのものをしっかりと聴かないと分かりません. ですから中には,「すごくうまそうに見えるけれども実際の歌はひどい音痴」とか,「ボソボソした感じに見えるけれど聴いてみると素晴らしい歌声!」というかたもいらっしゃるかもしれません(それはそれで「スゴイ!」). でも一般的には,「見かけ」からの判断でも,実際の歌声とそれほどずれていないのではないでしょうか?

表情の使い分け

歌っているときの表情といえば,枚方市民メサイアのアルト・ソリストとしてすっかりおなじみの郷家暁子先生の,ある日の合唱指導を思い出します. いまは何かとお忙しくて,枚方市民メサイアの合唱指導をされることはないですが,この合唱団ができた当初は,たびたび合唱指導をしてくださっていました.

で,ある日の合唱指導のとき,キリスト誕生の喜びの歌である For unto us a child born だったでしょうか?(はっきり覚えていないので間違っているかもしれません) 合唱団員の歌声に明るさがないし表情がもうひとつよくなかったので,模範として顔を輝かせながら明るい歌声を聞かせてくださいました. そのすぐあと,比較として,どの曲だったかは忘れたのですが悲しい曲を少しばかり歌ってくださいました. この悲しい曲を歌い始められた途端,直前の歌での明るい表情とはまったく違った悲しい表情にパッと切り替わったのにはびっくりしました. プロのソリストというのは,楽しい曲,悲しい曲で,声質だけなく表情もパッと切り替わるのだ,とつくづく感心させられた次第です. 私なんぞは,メサイアのいろいろな曲想のどの曲を歌っても,同じような声,同じような顔になっているのではないか? と反省させられました. コーラスのイラスト1

歌がダメなら見かけだけでも?

さあ,ここからが「見栄講座」です. どうせ歌うなら,「観客から見て,うまそうに見えるように歌おう!」というのが「見栄講座」の目標です. 歌そのものがうまかろうがへただろうが,自分の声がはっきりと観客に届くわけではないのだから,とにかく「見かけだけでもかっこよくしよう」という,「合唱外道の教え」です.

歌がうまい人は,歌っているときの表情も違う,ということはおわかりいただけると思います. で,私も自分の歌唱力に限界を感じていることだし,せめて歌う恰好だけでもよくすれば,観客席から見ている人たちが私を見て,「おっ,あの人歌がうまそう」と思ってもらえる,と不届きなことを思いついたわけです. メサイアほぼ全曲を歌うのは疲れるので,声を出すのはほどほどにしておいて,うまそうに歌っている「演技」だけはキープし続ける. こうすれば,私のモットーである「楽(らく)して楽(たの)しくかっこよく」を実践できるわけです.

「外道」ではない?

とまぁずいぶん「外道(邪道?)」の話になってきたのですが,もう少し深く考えてみると,これはなにも「外道」ではなく,「本道」ではないのか? と思えてきました. 歌はのどや声帯だけで歌っているのではありません. 体全体,とくに頭蓋や鼻腔が「共鳴胴」になっているわけです. (もっといえば,コンサートホールそのものも「共鳴胴」なわけですが,そこまでの話はここでのテーマから飛び出してしまうのでやめておきます.) 口やその周辺の動き,鼻腔の広がり,そして「楽器」としての体の動き,そうしたものにさらに歌に込めた気持ちが加わって「表情」が出るわけです.

だから,自分の歌唱力の進歩に限界を感じたら,これまでどういう心がけで練習してきたかにもよりますが,ちょっと観点を変えて,まず,歌のうまい人を外から見たときの様子を徹底的に真似する,という「演技力」の訓練も,まんざら悪い練習ではないと感じています.

スポーツだって,上手な人の動きを真似するじゃないですか,歌だって,スポーツほど体を激しく動かしはしないですが,上手なかたの動きをまねることは,歌唱力上達のひとつの方法じゃないかと思います. (しかも「歌がうまそうに見える!」というメリットもあります.)

もちろん,見かけだけをまねすることに「はまりすぎて」,その外観の特徴を強調してしまうと,コロッケ風「形態模写」になってしまうので,それは避けたほうがよいでしょう.(^_^) まぁともかく,他の歌唱練習とうまく組み合わせて練習すれば,「見かけを真似する」訓練も,そんなに捨てた練習方法ではないと思っています.

「自分の声を録音」の次は「自分の顔を録画」

少し話はそれますが,かなり以前から合唱の練習の場にICレコーダーを持ち込んで,自分の歌声を録音して聞き直すようにしています. 最初に自分の声を聴いた頃(その時は携帯カセットレコーダーだった)は,「え゛っ,こんな声で歌っているの?!」と,なにかすごく照れくさい気がしたものです. でも,それよりもなりよりも,自分の声を客観的に聞き直してみて,まずいところがよく分かりました. 要するにがんばって声を張り上げすぎているのです. 本人は気持ちよく声を出しているつもりなのですが,力が入りすぎていて,かえって音程が不安定になっていました. 以後は,気をつけて丁寧に歌うようにしたので,だいぶましになったと思います.

このように,自分の声を録音することで,自分の歌の悪いところがよくわかったのと同様に,自分の歌っている姿を録画すれば,悪いところがよく分かるのではないでしょうか? 口の動きや表情を客観的にチェックできて,歌唱力の向上にもつながるように思えます. で,昨年(2014年)の公演の BD(ブルーレイ・ディスク)を買って,自分の歌っている姿を見ているところです. でも本番ステージの BD では私はちらちらとしか映っていません. ほんとうは,合唱練習中の自分の顔を自分撮りしたら良いのですが,録音に比べて大げさになってしまうので,ちょっと無理かな? と思っています.

見栄を張るにも努力は必要

うまく歌っている「フリ」をするにも,それなりの努力は必要です. なんの努力もしないで「見栄を張る」ことはできません.

まず,しっかりと顔を上げておかないといけませんから,基本「暗譜」です. 楽譜を見ながらチラチラ指揮者をみるのではなく,指揮者を見ながらチラチラ楽譜を確認するくらいの状態に持って行かないといけません. ただし,「見かけ」にこだわるだけですから,音程は重要ではありません. しかし,正しいタイミングで正しい歌詞を歌っている格好をしないといけないので,少なくとも「リズム読み」は正確にできている必要があります. 周りの人と違うタイミングで口が動いていたり,他の人たちが「ア」と歌っているのに,自分が「イ」と歌ってしまうと,口の形の違いが丸見えなので,このようなことがあってはダメです.

「暗譜しろ」だの「リズム読みは完璧に」などと書いたので,「見栄を張るのは少しも楽じゃないじゃん」と言われそうです. そう,繰り返しますが,「見栄を張るのも楽ではない」です. しかし,体内部の動きとか,発声方法,音程に関しては厳しくしていないので,その分は「楽」です. 難しい曲をいきなり「正確な音程とリズムと発声方法で歌おうとする」よりは,ぐっと敷居が低くなっていると思います.

そうなんですよ. この「見栄講座」,歌唱上達に向けてのひとつのアプローチ方法なのです. もっとも,私は合唱で歌った経験はあっても指導者としての経験はないので,このやり方がどの程度適切なのか不適切なのかは,知りません みなさんのご判断で,試してみるなり,無視するなりしてください. この練習方法を試してみて「効果」がなくても,当方は責任を負いかねますので,その点はご了承ください.

せめて顔の向きだけでも

こんな記事を書きながら,去年,2014年のコンサートの BD を見ていて,感じました. とくにうつむき加減で歌っている「あなた」! 「私はうまく歌えていません」というのが「見え見え」ですよ! どうしても「うつむいてしまう」というのなら,少なくとも顔(体?)の「左右の向き」は指揮者のほうに向けておきましょう! つまり,「視線を少し上げればそこに指揮者がいる」という姿勢を取るわけです. そうしておかないと,ほかの人がチラチラであっても視線を指揮者のほうに向けているのに,あなただけはあらぬ方向ばかりを向いている.つまりほかの人たちと全然違う方向にうつむきっぱなしで楽譜ばかりを見ている,というのが「まる分かり」になってしまいます. 悪い意味で「目立ってしまう」ので気を付けたほうがよいです.

最後に コーラスのイラスト2

見栄講座の実践順序がごちゃごちゃになっているので,まとめなおします. 
ステップ1 - 顔の左右の向き
うつむいて楽譜ばかりを見てしまうのは,初期ステップでは「諦める」としても,少なくとも顔の「左右の向き」は指揮者に向けましょう.
そうしないと,あなりの顔を向きだけが,周りの人と違うので,「楽譜ばかり見ている」のが目立ってしまいます.
ステップ2 - 暗譜
正確な音程はともかく,リズムを正確に「暗譜」して,顔を上げた状態で「バクバク」がきちんとできるようにしましょう.
ステップ3 - アーティキュレーション
単に歌詞を正確なリズムでたどるだけでなく,強弱などに応じた口などの動きを行なえるようにしましょう.
ステップ4 - 表情
楽しい曲,悲しい曲など,曲想に応じた「演技」ができるようにする.つまり,曲想に応じた表情で歌う,ということです.
以上,見かけ重視,音程無視の「見栄講座」ですが,上のステップ4にまでたどりついたかたは,単に「うまそうに見える」だけでなく,おそらく音程や発声法なども,それなりのレベルに達しているのではないかと,思います.

というわけで,みなさん! せめて格好だけでも(!?)うまく歌っているフリをしましょう! 案外それで,歌がうまく歌えるようになるかもしれませんよ.


Signature of Grotle