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「大道芸」はスゴイ!

「ギリヤーク尼ヶ崎」の世界

2014-03-29

前回の雑記帳では,ビジュアル系の若い歌手を紹介しました. そこで今回はぐっと雰囲気を変えて,ご高齢のエンターテイナー,大道芸人のギリヤーク尼ヶ崎さんを紹介いたします.
前回 YOHIO を紹介したからといって,私が「美少年が趣味」と思われてはいけませんからねぇ.(^_^)  私は,「ヴェニスに死す」に登場するアッシェンバッハではありません.(^_~)  「落ち」の分からないかたは,トーマス・マンの小説「ヴェニスに死す」(1912年)をお読みになるか,これを原作としたルキノ・ヴィスコンティ監督の映画「ベニスに死す」(1971年)をご覧ください.
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彼の大道芸は,前衛舞踏です. どんな感じの踊りなのか? それは,彼のファンサイトを運営されているかたが,うまく表現されています. この管理者のかたは,1994年,14歳のときに,大阪ミナミの三角公園で偶然に初めてギリヤーク尼ヶ崎の大道芸を目にします. そしてまず最初に思ったことは,
ホームレスのじじいが狂って暴れ回っている
というものです.

非常に分かりやすい「説明」ですね. まさにその通り. というわけで,人によって好き嫌いも出てくると思います. でも,はまるとはまってしまいます. 私が初めて見たのも20年くらい前ですから,上のファンサイト管理人のかたが最初にご覧になったのとだいたい同じ頃になります. ただ私の場合は,「ギリヤーク尼ヶ崎」という名前を,すでに知っていました(なにせ有名な「大道芸人」のかたですから). それで,一度観てみたいとは思っていたものの,いまほどインターネットの情報網も発達していなかった頃なので,いつどこで演じているのかさっぱり分からず,そのままになっていました. けれども,ある日たまたま新聞でギリヤーク尼ヶ崎の公演を知り,やっと見ることができた次第です. 以来,これまでに4回ほど観ています.

文章の説明はこのくらいにして,いまでは YouTube でギリヤークさんの踊りを見ることができるので,さっそくひとつ紹介いたします. これはこれで,ロリータ・ドレスの YOHIO とはまるで違った意味で,非常にインパクトのあるパフォーマンスであります. 1930年の8月生まれのかたですので,78歳のとき「踊り」です.

警察のお世話にも…

そもそも大道芸という芸は,どこか人が集まりそうなところで勝手にやるものでして,いちいち警察の許可を求めてやるものではないです. (いまは警察なり公園や広場の所有者に,事前に届けているのかな?)  ということで,実はギリヤークさん,大道芸をやっていて警官に制止させられるぐらいはましなほうで,これまでに何十回と警察署にしょっ引かれています. これは,ご本人のトークショウで直接聞いている話です.

有名なエピソードのひとつが,銀座で演じて警官に制止させられたときの話. そのとき観客の中から「表現の自由はどうなるんだ!」(正確な文言は書かれているものによって違いがあります.)と警官に食ったかかったサングラスの男性がいました. その男性が,なんと俳優の近藤正臣んさんだったのです. そのあと,近藤正臣さんは「ギリヤークさん.やるなら京都鴨川の三条河原でやりなさい.あそこなら警官に止められることはないですよ」と言ったそうです. 以来,近藤正臣さんとの親交は続いており,ギリヤークさんの公演場所にいつも掲げられる幟には「贈 近藤正臣」の文字が読み取れます(左写真).

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凱旋門の前でこの格好をするのはやめましょう.
警察に連れていかれます.
(日本でもフツウはそうかな?)
警察からみで,もうひとつエピソードを紹介しておきましょう. ギリヤークさんは海外でも公演されています. パリの凱旋門の見えるところでやってみたい,とかねがね思っていて,やっとそれを実現できたまではよかったのですが,みごとに(?)警察署に連れていかれてしまったとのことです. で,警察署で「あそこで踊ってはいけないのか?」と聞いたら,警察官は「踊るのはいいが,ふんどし姿はダメだ」といわれたそうです.

走り回って,池に飛び込んで…

「ふんどし」といえば,私はおもに京都の円山公園でギリヤークさんの公演を見ているのですが,最後の演目「念仏じょんがら」では,はだけた着物の下から赤ふんどしを見せながら踊り狂い,ついには観客の輪から飛び出し,池に飛び込むというパフォーマンスを見せてくれます. 赤ふんどしの踊り狂ったじいさんが走り回って池に入り,観客もそれを追いかけて走るわけですから,知らない人が見たら「何事?!」と思うくらい,「異常な」ちょっと「アブナイ」光景ですね. まぁ,私は慣れましたが…….

もっとも,ご高齢なので,前回2012年に見た京都円山公園での公演(このときは81歳)の印象では,走り回ったり池に飛び込んだりというパフォーマンスも,以前ほどの激しさはなくなっています.(残念!)  このときの公演では,以前よりも少し演目を減らして,40分くらいで終わったように記憶しています. ただそのあと,何十人ものファンに取り囲まれていろいろ話をしてくださって,そのトークショウ(?)だけで30分はあったのではないかと思います. 毎年4~5月の大型連休の時期に「関西公演」をされているのですが,ことしはどうなのかな? 公演情報は,ギリヤーク尼ヶ崎ファンサイトをご覧ください.

映画にテレビに

「大道芸」にこだわり続けておられるギリヤークさんですが,彼の特異な個性が評価されて映画やテレビ・ドラマにも出演されています. たとえば,「マルサの女」(伊丹十三監督,1987年)や「武蔵」(NHK大河ドラマ,2003年) などがあります.

ギリヤークさんが登場しているテレビのトーク番組の動画を見つけたので,ついでに紹介しておきます.

なにが「スゴイ」のか?

今回の「雑記帳」のタイトルは,「『大道芸』はスゴイ!」となっています. 私が,どんなところに「スゴさ」を感じているのか? そのことをちょっと書きます. たとえば,私たち「枚方市民メサイア公演」の場合,「12月21日(日),枚方市市民会館でメサイアのコンサートがあるので見に来てください.」と事前に宣伝します. あるいは,奇特な(?)かたでしたら,こちらからの宣伝を聞かされる前に自分で調べて,「ことしのメサイアは12月21日だな.予定を空けておいて聴きに行かなくちゃ」と,事前に予定を立ててくださいます. でも,大道芸の場合は,この「事前に」というのがないのです. 予告なしに公園や広場など人が集まる場所で,いきなりパフォーマンスを始めるわけです. その場に居合わせた人たちは,なにもそのパフォーマンスを見るためにそこに来ているわけではありません. たまたまそこを通りかかっただけす. 立ち止まって大道芸を見ることなど,まったく予定していない人たちです. 大道芸人は,そういう「通行人」の足を止めさせて,自分の芸を見てもらい,さらには「おひねり」も出してもらわなければならないのです. これって,なかなか厳しい「試練」ではないでしょうか?

もっともギリヤークさんの場合は,いまはすっかり有名になったので,多くのファンは事前に公演情報を確認して会場に出向いています. 公演の1時間くらい前から,何十人もの人が待っています. カメラを構えて待ちかねているかたも多いです. でも,大道芸を始めた頃は,たいへんだったと思います. ギリヤークさんご自身,「大道芸だけで食えるようになったのは60歳を過ぎてから」と語られています. (でも「大道芸だけで食えていける」ってすごいんじゃないでしょうか? こんなことのできる大道芸人のかたは,ほとんどいらっしゃらないのでは? と思います.)

それはともかくとして,いろいろな芸能人のかたはいらっしゃいますが,いったん有名な人気スターになってしまえば,公演の細かい内容よりも,その「名前」だけで見に来てくれます. 人の集まっているところへ行けば,別に「大道芸」なんかやらなくても,あっという間に人垣に囲まれてしまいます.

ここで「思考実験」です. 一般の人たちに魔法でもかけて,ある人気芸能人のことを忘れさせたとします. このとき,その人気芸能人が,大勢の人がいる広場において,歌でも踊りでもいいですから得意の芸を披露したとき,何人の通行人の足を止めることができるでしょうか?

もちろん,その人のパフォーマンスが本当に好きな人だったら,その人気芸能人のことを忘れ去っていたとしても,そのパフォーマンスに惹かれて立ち止まって見ると思います. でも,「人気」というのは,「個人の嗜好」だけの問題ではなく「社会現象」でもあります. 「有名人だから」とか「みんなが見ている人気の人だから」という流れで,なんとなくつられてその芸能人のファンになった人もいるはずです. そういう人は,「大道芸」の人だかりが大きくなっていたら「何だろう?」と見ることはあっても,自分から率先してわざわざ立ち止ってまでして見ようとはしないのではないでしょうか?

この「実験」って,芸能人に関しては,その本当の魅力を計ることになりますし,見る側に関しては,本当のファンなのか? を計る実験になりますね. 「魔法」をかけるのはきわめて難しいので,実際に行なうのはちょっと無理ですが…….

観客のいない場所でも踊る

ひとの集まる場所で行ない,「通行人の何人の足を止めさせることができるか?」が大道芸の肝心なところなのですが,ギリヤークさんは,観客のほとんどいない場所でもあえて踊られるときがあります. ⇒ギリヤーク尼ヶ崎 / 東日本大震災追悼「祈りの踊り」   群衆の代わりに震災(2011年3月)のあとも生々しいがれきに囲まれての大道芸です.阪神淡路大震災(1995年1月)の被災地でも同様な踊りをされています. ニューヨークの9.11テロ(2001年9月)の跡地でも演じられました. また,JR福知山線の脱線事故(2005年4月)現場でも踊られています. そう彼の踊りは「祈りの踊り」なんですよね. ここまでくると「たかが大道芸されど大道芸」,「奥が深い」です. ことし84歳になるギリヤーク尼ヶ崎さん,いつまで現役で踊り続けていただけるのか? ことし(2014年)も1月には,阪神淡路大震災で全焼した菅原市場付近で演じてくださっています. けれども,体調かもうひとつでこの日演じるかどうが迷っていて,結局,短時間で切り上げられたようです.  ことしの大型連休の関西公演はどうなるのかな?


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