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Yuji Inagaki

稲垣祐司 博士(理学)/Yuji Inagaki Ph.D
筑波大学大学院生命環境科学研究科構造生物科学専攻(計算科学研究センター勤務) 准教授
Ass. Prof., Center for Computational Sciences, Institute for Biological Sciences, University of Tsukuba

My CV
平成5年  学振特別研究員(DC2)
平成7年    名古屋大学を学位取得後、退学
平成8年     JT生命誌研究館にてPostdoctoral Research Fellowとして勤務
平成10年   カナダ・Dalhousie大学にてPDFとして勤務(H10~12年:学振海外PD)
平成16年   長浜バイオ大に講師として着任
平成17年   筑波大学に助教授(のち准教授)として着任
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My Research
真核生物大系統の推定
 複数遺伝子データを解析することにより、真核生物の主要グループ間の系統関係の解明を目指しています。Patron et al. (2007)によりハプト藻類とクリプト藻類は互いに近縁であることが判明しましたが、この新規系統群の多様性は我々が考えているよりも大きそうです。Burki et al. (2009)での127遺伝子データ解析は、捕食性プロティストであるテロネマ類、有中心粒太陽虫類がハプト藻類、クリプト藻類と近縁であることを示唆しています。我々は、この「ハプト・クリプト生物群」に含まれる、あるいはその可能性のある生物種の解析を行っています。
 さらに、ハプト・クリプト生物群が、ほかの生物群 — たとえば一次植物類やSARグループ — とどのような系統関係にあるかにも重大な興味をもち、解析準備を進めています。

翻訳伸長因子の進化
 翻訳伸長因子(EF)は、タンパク質合成に関わるGTP加水分解タンパク質です。このタンパク質の起源は古く、地球上の3つのドメインの共通祖先細胞で確立し、生物進化の過程で機能の異なるタンパク質スーパーファミリー形成してきたと考えられます。このEFタンパク質の進化に興味を持ち、研究をしています。特に最近ではEF-1α様タンパク質(EFL)の進化に焦点をあてて研究を進めています。
 EFLはEF-1αと相同な機能を持ち、翻訳伸長反応を触媒すると考えられています。ところがEF-1α遺伝子は主に「垂直的」に伝播していると考えられていますが、EFL遺伝子は系統的には慣れた真核生物種間を頻繁に「水平移動」していると提唱されています。このEFL遺伝子の特異な進化様式のため、EF-1αとEFL遺伝子は真核生物系統内でマダラな分布を示します。我々はEF-1α/EFL遺伝子の分布を正確に知るため、各種真核生物系統から遺伝子クローニングを進めています。またEFLタンパク質が真にEF-1αと相同機能を保持しているかを生化学的に検証しています。

オルガネラ進化
 真核生物の進化には、ミトコンドリアや色素体(葉緑体)などのオルガネラの獲得が大きく影響しています。ミトコンドリアゲノムや核コードのミトコンドリア遺伝子を研究しています。
  1. 多くの光合成性渦鞭毛藻類は、クロロフィルacに加えペリディニンという特殊なカロチノイドを含む葉緑体を持っています。この「ペリディニン型」葉緑体は、細胞内共生した紅藻類を起源とすると考えられ、「2次葉緑体」と呼ばれています。ところが、渦鞭毛藻類の中には、ペリディニン型ではない葉緑体をもつ種があります。これらの渦鞭毛藻類は、もともと持っていたペリディニン型葉緑体を、細胞内共生を通してべつの藻類の葉緑体と取り換えたと考えられています。我々は、Lepidodinium属渦鞭毛藻類のクロロフィルabをもつ緑色葉緑体がどのような緑藻類を起源とするのか、葉緑体交換の過程でどのようなゲノム変化が起こったのかを研究しています。
  2. エピテミア科珪藻類には、spheroid body(SB)とよばれる細胞内構造が存在します。これまでの研究により、珪藻細胞内に共生したシアノバクテリアがSBに変化したと考えられ、この構造体は窒素固定を行っていると考えられています。我々はエピテミア科珪藻類のSBの進化的起源と窒素固定能を研究しています。
  3. ハプト・クリプト生物群やストラメノパイルのミトコンドリアゲノムは、これら生物群内の系統関係を解明するためのマーカーになると考え、このグループに含まれる生物種からのゲノムシークエンスを目指しています。
  4. エクスカバータに含まれるフォルニケータ生物群は、酸素呼吸を行うミトコンドリアを持ちませんが、その痕跡器官を保持しています。これはフォルニケータ生物群の祖先細胞が嫌気環境に適応した結果、本来持っていたミトコンドリア機能のほとんどを失い「退化」した姿だと考えられています。我々は、フォルニケータ生物群のミトコンドリア痕跡器官がどのような機能を持つのかを、核コードミトコンドリア遺伝子の網羅的探索から推定しようと試みています。
  5. エクスカバータに含まれるディスコバ生物群は「祖先型」ミトコンドリアゲノムをもっています。例えばディスコバ生物群・ヤコバ類に含まれるReclinomonas americanaのミトコンドリアゲノムの遺伝子数は、これまで知られているどのミトコンドリアゲノムよりも多い事が知られています。我々は、ディスコバ生物群に属する新奇真核微生物を培養しており、このミトコンドリアゲノムの完全配列決定を目指しています。この新奇生物種ミトコンドリアがReclinomonasよりも多くの遺伝子をコードしている場合、真核生物系統樹の「根元」に最も近いと推測できます。

分子系統解析の方法論
分子系統解析では、真の系統関係を反映しない推定結果(アーティファクト)が出力することがあります。最尤法による解析では、解析に使用されている配列進化モデルと実際に起こった配列進化に著しい不整合(モデル不整合)がある場合、アーティファクトを引き起こします。我々は、系統解析でアーティファクトが検出された場合、そのモデル不整合が何に起因するのか、どのような解析を行えばそのアーティファクトを防ぐことが可能かを研究しています。
  1. これまでの方法論的研究は単一遺伝子解析で進んできました。しかし、複数遺伝子解析では、単一遺伝子解析には無い特異なアーティファクトが存在すると考えられます。そこで、複数遺伝子データを解析する際の方法論的研究を進めています。
  2. 最尤法をもちいた系統解析では、通常「発見的樹形探索(HTS)」により最尤系統樹を探索します。我々は、各種HTSの探索効率の検証、探索法ごとの特性とそれに起因するアーティファクトについて研究しています。

Selected Publications (Complete list is here)
  1. Burki F, Inagaki Y, and other 12 authors. Large-scale phylogenomic analyses reveal that two enigmatic protist lineages, Telonemia and Centroheliozoa, are related to photosynthetic chromalveolates. 2009 Genome Biol Evol 1(1):231-238.
  2. Inagaki Y, Nakajima Y, Sato M, Sakaguchi M, Hashimoto T. Gene sampling can bias multi-gene phylogenetic inferences: the relationship between red algae and green plants as the case study. 2009 Mol Biol Evol 26(5):1171-1178.
  3. Kamikawa R, Inagaki Y, Sako Y. Direct phylogenetic evidence for lateral transfer of elongation factor-like gene. 2008 Proc Nat Acad Sci USA 105(19):6965-6969.
  4. Patron NJ, Inagaki Y, Keeling PJ. Multiple gene phylogenies support the monophyly of cryptomonad and haptophyte host lineages. 2007 Curr Biol 17(10):887-891.
  5. Inagaki Y, Susko E, Roger AJ. Recombination between elongation factor 1α genes from distantly related archaeal lineages. 2006 Proc Nat Acad Sci USA 103(12):4528-4533.
  6. Inagaki Y, Simpson AGB, Dacks JB, Roger AJ. Phylogenetic artifacts can be caused by leucine, serine and arginine codon usage heterogeneity: dinoflagellate plastid origins as a case study. Syst Biol 2004 53(4):582-593.
  7. Inagaki Y, Susko E, Fast NM, Roger AJ. Covarion shifts cause a long-branch attraction artifact that unites microsporidia and archaebacteria in EF-1α phylogenies. Mol Biol Evol 2004 21(7):1340-1349.
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yuji{at}ccs.tsukuba.ac.jp

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