鉄蓋(マンホールなどの蓋)

下水道や電線共同溝などのマンホール蓋、雨水枡、制水弁、その他いろんな路上の鉄蓋に関する研究ノートです。

よく、「マンホールってどれも同じじゃないの?」と聞かれます。身の回りで普段見る蓋は、確かに大体同じかもしれません。しかし、地域ごと、自治体ごと、種類ごとに様々な違いがあるということを話すと、多くの方が驚かれます。デザインされたマンホール蓋には、「路上の芸術」と例えられるようにアート作品と言っても言い過ぎではないほどの美麗なものまであります。また、一見面白みのない規格品のような蓋も、歴史的な経緯や地域性の違いなどを秘めています。そのメッセージを読み解くことができる人に対しては、鉄蓋は朴訥と、しかししっかりした言葉で語ってくれるのです。

路上の鉄蓋は、いわゆる「近代化遺産」あるいは「産業遺産」になり得る価値が十分にあると考えます。近代化遺産や産業遺産は一般に建築・土木構造物を指しますが、構造物を含めたシステムの総体として近代化遺産を捉えるならば、例えばかつての上水道システムの遺構であり、かつ現在も利用され続けている古い制水弇などを、産業考古学的観点から近代化遺産の範疇に含めるのは無理がないと考えます。

しかし、滑ると危険である等の理由から、古くなり現用に耐えないとされた鉄蓋は問答無用で更新・廃棄されてしまいます。そこで、ここではそうした古い蓋を含めた身の回りにあるごくありふれた鉄蓋たちに付随した、特別ではない日常の歴史の保存を試みます。特に、ローカルな地域の生活誌として、特別にデザインされたものではない規格品の鉄蓋のヴァリアントに着目・蒐集することにより、静的な規格のなかの動的な差異、あるいは工業品の歴史的変容をあぶり出します。具体的には、私が居住している北海道岩見沢市を中心とした道央地域の鉄蓋をクローズアップします。