プレグゼリーや潤滑ゼリーなどにおける精子運動の比較

膣内環境と精子、顕微鏡撮影の概略:

膣内は通常、雑菌の繁殖を抑えるために酸性に保たれています。これは精子の生存に適さない環境です。
精子はいちはやく子宮口まで辿り着かなければ生存できません。膣は長さにして6〜8cm程度あり、ヒダ状になっているため精子にとっては広大な空間といえます。
性交時に流れる頸管粘液によって膣内の酸性環境が緩和されるとはいえ、精子のswim upにとって過酷な環境であることには違いありません。

当サイトでは、潤滑ゼリーやプレグゼリーにおける顕微鏡動画を掲載しました。
プレグゼリーは、精子をできるだけ多く子宮口まで届けることを目的として、精子に好適な環境を追求した膣内湿潤液です。PH環境を含めた様々な条件が調整されています。

精子はとても繊細な細胞です。PH環境や粘性、その他の環境に影響を受けている様子をご覧ください。

使用しているのは、オリンパス生物顕微鏡BHC型。倍率は100倍、iPhoneの光学ズームを併用。LED光源使用のため画面がやや青白いです。

動画では、体液とゼリーの壁を通り抜ける精子、あるいは通り抜けたあとの精子をin vitroでご覧いただけます。
人体のなか(in vivo)では、精子が子宮口に入りはじめるまでの時間は30分以内だといわれます。

プレグゼリー 顕微鏡動画:
粘度の低い、ローションのような形状のため、体液とのゼリーの境目はあまりはっきりとしません。プレグゼリーは体液と混ざっていく傾向にあります。動画で精子の運動をご覧ください。最初の1分間と、30:45~32:30あたりをご覧いただければ十分かと思います。スタートから30分間は、境目を撮影していますが、画面左側もすでに体液とゼリーが混ざっている部分だったようです。30分後くらいから、撮影箇所を移動して、より体液の濃い部分とゼリーの境目を撮影しています。下記チェックポイントを参考になさってください。
  • ゼリーと体液との境目が精子運動の壁になっていないか
  • ゼリーに入っていく精子の数は多いか
  • ゼリーに入っていった精子の動きは活発か
  • ゼリーに入っていった精子はゼリーの中を泳いでいくか
  • ゼリーに入っていった精子は時間の経過とともに動きが鈍らないか。
Amazon.co.jp:プレグゼリー 妊娠活動もサポートする湿潤液

潤滑ゼリー 顕微鏡動画:

主として更年期や閉経後の女性を対象として普及して いる潤滑ゼリーのひとつを入手して精子運動に及ぼす影響を撮影 しました。このゼリーは、女性の性交痛を和らげるために、潤滑させる商品であり、精子運動に与える影響がいかなるものであったとしても、その商品の価値を 減じるものではないことを申し添えます。繰り返しになりますが、潤滑目的の優れた商品です。
※ 左側が体液、右側が潤滑ゼリーです。

キャノーラオイル 顕微鏡動画:

キャノーラオイル(菜種油)は精子運動を阻害しない、という研究が海外にみられます。実際のところはどうなのかを撮影しました。スーパーマーケットでよく売られている食用油(キャノーラオイル100%)を使いました。たしかに菜種油に入ったかに見える精子は元気に動いていましたが、体液と菜種油との間にはっきりとした壁ができており、その壁を完全通過した精子は多くはありませんでした。

キャノーラオイルを潤滑ローションとして使った場合に、精子の移動をブロッキングしてしまう可能性がないか、更なる検証が必要と思われます。





海外事情・特許情報

海外ではFertility-Friendlyをうたったゼリーが既に普及しており、アメリカではWalmartやAmazon.com、あるいはドラッグストアでも売られています。
特許情報例1特許情報例2
このほかにもあります。いずれも米国のものですが、同様の特許は日本でも取得されています。


不妊治療分野における参考論文

Fertil Steril(欧州)は、生殖医療で権威ある専門誌です。

In vitro effects of coital lubricants and synthetic and natural oils on sperm motility
Sandhu RS, Wong TH, Kling CA, Chohan KR
Fertil Steril. 2014 Apr;101(4):941-4. doi: 10.1016/j.fertnstert.2013.12.024. Epub 2014 Jan 23.
Pre-Seed、KY、Astroglide、キャノーラオイル、オリーブオイル、ごま油などが精子運動に与える影響について検証されています。この論文については、日本の生殖医療専門医・医学博士がブログで言及しておられます。

Ashok Agarwal,Helena Malvezzi,Rakesh Sharma
Fertil Steril. 2013 May;99(6):1581-6. doi: 10.1016/j.fertnstert.2013.01.116. Epub 2013 Mar 15.
等張潤滑剤を用いて採精した場合の影響について検証されています。

自然妊娠の可能性を高めるために

自然妊娠の可能性を高めるためには、精子の通り道の問題以外では、何と言ってもタイミングが重要です。排卵日2日前が最も妊娠しやすいといわれています。前日が良いという意見もあります。排卵日は事前にわかりづらいので、その近辺では毎日のように妊活するのが最も実践的ではないでしょうか。毎日ですと精子の数が減るのではという疑問がでるようですが、実はそれほど変わず、減っているのは精液の量です。

ほかに、少しでも自然妊娠の可能性を高める方策として、喫煙、深酒、睡眠不足、偏った食事などの不摂生を避ける、男女とも亜鉛やマルチビタミンミネラルなどのサプリをとることが挙げられます。女性の葉酸摂取も、無脳児のリスクを減らすとされています。

あとは、精子が泳ぐ距離を減らすために、できるだけ奥深くに精子を残してくることと、事後30分くらい女性は仰向け腰枕で休まれることをお勧めします。


弱酸性ピンクゼリータイプについて

プレグゼリーには、通常のタイプと数量限定で生産された弱酸性ピンクゼリータイプがあります。通常のタイプはほぼ中性であるのに対して、弱酸性ピンクゼリータイプはPH値を調整して弱酸性にしたものです。

○ピンクゼリータイプの実測値はPH5.0でした。

参考値:関連PH値を記載します(個人差があります)。

○膣内通常:PH 3.8~4.5
○精漿  :PH 7.2~7.8
○頸管粘液:PH 7.0~8.5
○血液  :PH 7.3~7.4

通常のプレグゼリーは頸管粘液のPH値の範囲にあるのに対して、弱酸性ピンクゼリータイプは若干酸性ではあるものの、膣内通常のPH値ほどには酸性になっていない(弱酸性)ことがわかります。

X精子(=女の子になる)は酸性に強く、Y精子(=男の子になる)はそうでもない、という性質を産み分けに応用する試みが国内外の一部の研究者や医師から提唱されて実践されています。新生児の男女比は通常105:100といわれますが、膣内環境を酸性に傾けることで、この比率がどれだけ女の子に傾くか、傾かないかの統計や明確なエビデンスの存在は確認できておりません。

弱酸性ピンクゼリータイプにおける精子運動も撮影しましたので、下欄ご参考ください。
下欄動画をみますとたしかに、ゼリーに泳いで入った精子のなかで、活発なものと、動きが鈍るものに分かれてはいます。しかしながら、どれがXでどれがYかがわからない以上、結論を得ることは困難です。

※ちなみに上記とは反対に、男の子が生まれやすい環境として、カルシウム濃度などとの関連を示唆する研究もあります(日産婦関東連合会報第45号・一般講演68など)。
※何らかの事情により確率の高い産み分けを希望されるならば、海外での着床前診断など、より大掛かりな方法になるかと思われます。
※赤ちゃんができるまでは「両方の性別を育ててみたい」などと思うことがあるかもしれませんが、実際に産まれた赤ちゃんをみれば、そのような思いは吹き飛んで、愛情が溢れるものだと思います。