オースティン・ヒーレー スプライト マーク1 1958
GSIクレオス 1/24
Austin Healey Sprite Mk.1 1958
GSI Cleos 1/24

 我が国では「カニ目」、英国では「フロッグアイ」の愛称で知られるオースティン・ヒーレー・スプライト・マーク1は、レーシング・ドライバーにしてスポーツカー・デザイナーとしても名高いドナルド・ヒーレーによって開発され、1958年のモナコ・グランプリ・プレス・デイにおいて発表されました。実用車のコンポーネンツを上手に組み合わせて、本格的なスポーツカーを安価に仕立てるヒーレーの手腕により、スプライトは大成功を収めました。
 モノコック・ボディのフロントに搭載されたエンジンは、オースティンA40から流用されたBMC・Aタイプで、945ccで46PSという慎ましいスペックですが、車重640kgときわめて軽量なため、最高速度は130km/hに達しました。サスペンションは前ダブルウィッシュボーン/後リーフ・リジッド、ブレーキは前後ともドラムでした。


 特徴的なヘッドライトのデザインは、当初はリトラクタブルになる予定でしたが、構造が複雑になって重量がかさむのと、作動の不確実性からキャンセルされ、ポップアップした状態の後方にカウルを加えて、このカタチになりました。言わば苦肉の作ですが、これが外観上最大のチャームポイントになりました。
 しかし、1961年にはBMCグループ内の車種整理によってMGミジェットとボディが統合されてしまったので、「カニ目」スタイルでの生産は僅か3年と、意外な短命に終わりました。



 英国の軽量級スポーツカーとしては最もポピュラーな「カニ目」ですが、1/24のマトモなプラモデルは、このGSIクレオス(旧グンゼ)製が唯一です。
 もともとこのキットは1980年代初頭に、金属やゴム風軟質プラなどを多用する「ハイテック・モデル」としてリリースされましたが、高度なスキルを持ったモデラーでないと組み立てられなかったため、後にほとんどのパーツをプラに置き換えた簡略版が再リリースされました。インテリアなど一部に「ハイテック」時代のゴム風プラ・パーツが残っていますが、全体としてはシンプルな内容で、作り易いキットです。本作もその簡略版を組んだものです。


 ただ、キットのボディ形状にはちょっと癖があります。実物のカニ目のプロポーションは、真横から見るとフェンダーのトップラインはスクリーンの根元付近が最も高く、そこから前方は緩やかな弧を描いて下がっていき、フロント・エンドの丸みに滑らかに繋がります。ところが、キットのボディは前ホイールアーチ頂点の真上付近の方が盛り上がっていて、スクリーン根元付近より高いので、フェンダーのトップラインは逆反りのカーブになっているのです。
 そのため、横から見るとボディ全体が海老反って見え、実車とはかなりイメージが違います。フェンダーの峰にはパネル接合部のフランジがあり、フロント周りの造型も複雑ですから、表面を削り込んで形状を修正するのは非常に困難です。


 そこで本作では、エンジン・フードのスジ彫りの所でボディを切断し、フード側の合わせ目を1.5mmほどカットして、ノーズを下げて接着し直しました。上面のスカットル付近には角度がついてしまうので、面が滑らかに繋がるようにパテ埋めして仕上げてあります。前ホイールアーチ付近の盛り上がりは残っていますが、全体としては海老反った感じはかなり目立たなくなりました。
 この修正手術を行った結果、ノーズ全体が下がってシャシーを取付けるダボの位置もズレたので、ボディとシャシーの位置関係が変わってしまい、車体姿勢やインパネの取付け位置にも影響が出ましたが、上下合体の際には大きな加工は必要なく、あちこち微調整した程度で収まりました。


 インテリアはほぼキットのままですが、軟質プラ製のドア内張りはプラ板でそっくり作り直しました。シートも同じ材質ですが、こちらはメタル・プライマーを吹いて普通に塗装しました。曲げたりしなければ、簡単に塗装が剥がれることはありません。


 ボディカラーは、Mr.カラーのデイトナグリーンをベースに、インディブルーを混ぜて少し青みを出し、隠し味にガルグレーを少々入れてトーンを落としました。小型スポーツカーならではの華やかさと、英国的な渋みの両方を表現したつもりです。フロントとリアのエンブレムのデカールは劣化していて使えなかったので、版下を手書きで起こしてデカールを自作しました。
 箱を開けた時のパッと見の印象はあまり良くないものの、出来上がると意外に雰囲気の良いモデルが出来上がるのは、このメーカーの製品に共通する美点です。最近はあまり作られていないようで、店頭で見かける機会が少なくなってきましたが、こういう自動車史的に重要な車種のキットは、定番品として安定的に供給してもらいたいものです。

(2003年製作)