Research

生物学は実に広い分野を対象にしています。微視的には遺伝子、タンパク質、代謝化合物といった生体分子を対象とし、巨視的には生物たちのつながりや環境との関わりといった生態系を対象としています。これらの対象はそれぞれの分野(生命の階層)で個別に議論されることがしばしばです。計測技術の発展から、階層ごとの全体像が見え始めてきました。しかしながら、生命の各階層は複雑にからみあっています。生命を真に理解・応用するためには、このような生命の階層のつながりを明らかにし、その階層を横断すること(広い意味での、統合生物学)が重要です。

本研究室では、計算科学、特につながりを科学する学術分野であるネットワーク科学、の観点から、生命システムや生態系のシームレスな理解を目指しています。とりわけ、代謝ネットワークに注目しています。代謝は微視的スケールと巨視的スケールの中間にあるからです。具体的に、生物は代謝システムを変化させることで環境に適応し、生態系を構成しています。そのような代謝機能や設計原理を明らかにすることは、生物・生態系の評価、そして設計や制御において重要です。大量に得られるようになった生物・環境データを用いて生命システムや生態系を分析する新たな理論的枠組みを確立し、環境・医療分野に応用します。

特に最近は、環境ゲノムから生物群集の代謝機能、生物—環境相互作用、そして動態をシームレスに分析するための手法開発と環境影響評価への応用に注力しています。例えば、自然環境や生体内環境における(微)生物関係の(未知の相互作用を含めた)抽出、その群集における動態の解明、環境変動に対する影響評価、目的の代謝機能(例えば、有害物質の分解性)を実現するための(微)生物群集のデザイン、などが挙げられます。

また、生物学や生態学における様々なシステムを対象にネットワーク科学を展開しています。具体的に、タンパク質立体構造、植物—有用化合物関係、化合物—タンパク質間相互作用(例えば、薬剤標的タンパク質)、がんシグナルネットワーク、脳ネットワーク、生態系ネットワークなどの分析から、それら生命システムや生態系の機能評価や推定を行い、統合的な理解と応用に努めています。