モノイダル圏において、群の準同型写像に対応する概念は、モノイダル関手と呼ばれるものです。
このモノイダル関手には実は3種類(lax, colax, strong)存在します。
表現論や結び目理論ではstrongなモノイダル関手が特に重要ですが、
計算機科学や論理学の意味論においてはlaxやcolaxといった構造も登場します。
普通の数学の中にもlaxなモノイダル関手は数多く存在します(S.マックレーン「圏論の基礎」第7章モノイドより)
アーベル群の圏から集合の圏への忘却関手
R-加群の圏からアーベル群の圏への忘却関手
それぞれ次のような事実に拠っています。
アーベル群A,Bのテンソル積は、基底集合の直積A×B上の自由アーベル群の商である。
R-加群A,Bのテンソル積は、Zテンソル積上の商である。
これはテンソル積の具体的な構成そのままです。
一方で次のように説明することもできます。
忘却関手の左随伴すなわち自由構成がcolaxもしくはstrongなモノイダル関手となっている。
直感的にはわかりにくいですが、自由構成がcolaxもしくはstrongモノイダルの時、その随伴のcounitを使って上記の商を復元することができます。
一般に左(右)随伴がstrongモノイダルならばその右(左)随伴はlax(colax)モノイダルになることが知られています(Max Kelly, 1974)。
さらにその随伴のunit, counitがモノイダルになります(モノイダル随伴)。
本講義の内容:
モノイダル関手とモノイダル自然変換
ちいさなモノイダル圏たちが2-圏となること
モノイダル随伴とその必要十分条件(Max Kelly, 1974)
時間が許せば、線形論理の圏論的意味論とその指数がlaxモノイダルになることを紹介したいと思います。