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企画 「圏論への招待」 世話人 竹内耕太

主旨:

圏論の考え方を理解したいと思いませんか?

それはあなたに新しい数学的見方を教えてくれるかもしれません。

第一回

『圏論Ⅰ〜圏論の基礎〜』

講演者: 佐藤 桂 (京都大学大学院理学研究科)

日時: 2011年7月30日-8月1日 各16時-19時

場所: 筑波大学自然系学系棟D棟509 (注 変更になりました。変更前:D棟814)

キャンパスマッップはこちら(わかりにくい)

もしくは

google maps で 36.107499,140.101004 を検索。緑の矢印の建物。

アクセス:TXつくば駅から「大学循環右回り」もしくは「大学中央行き」のバスに乗車。「第一エリア前」下車。

駅から大学まで多少時間がかかりますので注意してください。

あぶすとらくと:

“category”がアリストテレスやカントの哲学から取られた用語であることは『圏論の基礎』にも述べられている通りで、

その訳語はといえば口(くにがまえ)の中に巻くと書いて“圏”。なんともイカメしい命名と訳語!

そして圏論の本を手にとってみれば、なんだか占星術や錬金術の魔方陣を思わせる図式(=ダイアグラム)で埋め尽くされている…。

しかし、圏論自体の定義と遊び方はいたってカンタン。一定のルールにしたがって矢印(=射)を描いていき図式を作り上げていく。

そこには一般的なボードゲーム、例えばオセロと同じように、①手を限定するルール(石は石を裏返せるところに置け)、②盤面を発展させるルール(挟まれた石は自動的に裏返る)の2つがある。

①圏で遊ぶためのルール:矢印は図式を可換にするように置け

②圏で遊ぶためのルール:ある図式は可換になると新たな矢印(=カノニカル射)が自動的に付け加えられる

このルールにしたがって図式をを描き続ければ、案外、必要な図式は自然に作れてしまうことが多い。

(ゲームの進行を把握するために可換になった口(四角図式)の中に巻いた矢印マークを書き入れるのがオツな遊び方である。)

とはいっても、もちろん図式遊びだけが圏論ではない。圏論がムズカしいといわれている原因は、その独特のメタ化にあるからだと思う。

始めのあたりは「ふむふむ」と読んでいても、“ほむほむ”(=Hom((Hom,…),…))、射の射、一種のメタ化)してきたあたりで図式の迷路に迷い込んでしまう。

でもここがイチバン圏論のオモシロいところであり、ここが理解できたなら、このとき口(くち)の中に巻かれるものがあるはずである!(オチ)

内容:

第一回はマックレーンの『圏論の基礎』を元にした圏論超入門です。

1日目「圏,関手,自然変換」(目標:米田の補題)

圏論の私的な歴史観を無責任につぶやいた後、 基本概念をおおざっぱに定義し、図式遊び(ダイアグラム・チェイス)に明け暮れる。

“自然性”と“双対性”をキーワードに『圏論の基礎』 の第Ⅰ章、第Ⅱ章を紹介します。

古典的(=集合論的)図式遊びと現代的(=圏論的)図式遊びの違い、要素によって写像が特徴づけられた集合論と、対象が射によって特徴づけられる圏論の違いを見ます。

圏論における“双対性原理”によって前者では異なって見える手法・概念が後者の中で統一されることがわかります。

また、“自然性”を利用して「対象が射によって特徴づけられること」(米田の補題ver.1)の証明を紹介します。

2日目「随伴,極限,普遍性」(目標:随伴関手定理)

圏論に存在する三大概念を定義し、「ふむふむ」した後で、これらの概念が然るべきメタ化“ほむほむ”によって同化することを見る。

“普遍性”をキーワードに、“随伴は至るところに存在する”をスローガンに『圏論の基礎』 の第Ⅲ章、第Ⅳ章、第Ⅴ章を紹介します。

まず、圏論において普遍性は始対象、終対象、普遍射、普遍要素、表現可能、という5つの姿で登場すること、また、それらが互いに等価な概念であることを確認します。

そして、その中の普遍射を核にして、残る二大概念、極限と随伴を定義し、極限が随伴から創られること、逆に随伴が極限から創られること(随伴関手定理)を見ます。

また、“普遍性”を利用して「集合の圏への関手がほむほむによって特徴づけられること」(米田の補題ver.2)の証明を紹介します。

3日目「関手圏」(目標:圏の完備化)

図式の中に矢印(可換マーク)を巻かなくても大丈夫なほど図式に慣れてきたとき、次に待ち構えているのが圏の圏、関手の圏という高い視点での考察である。

“すべての概念はカン拡張である”をスローガンに『圏論の基礎』 の第Ⅹ章、第ⅩⅡ章を紹介します。

その言葉通り、これまでの概念を1つの概念で定式化できることを見ます。

また、この観点によって「ある圏から集合の圏への関手の圏はその圏の完備化とみなせること」(米田の補題ver.3)を紹介します。

(この“ある圏から集合の圏への関手の圏”は“前層”と呼ばれ、このセミナーの第二回で主題にしようと目論んでいるトポス理論(もしくは層の理論)の軽い“前奏”になればと思っています。)

備考:

どなたでもご自由に参加していただけます。

必須ではありませんが、ある程度の人数を把握するため、参加申し込みにご協力ください。