1.失語症

失語症は、脳の言語機能の中枢(言語野)が損傷されることにより、一旦獲得した言語機能(聞く・話す・読む・書く)が障害された状態をいいます。
話し方がぎこちなくなったり、、ものの名前が出てこなかったり、聞き誤ったりしてコミュニケーションが困難となります。

大脳の言語中枢の優位半球(大脳半球の左右いずれか一方のうち優位に働く半球)は、約90%の人が左半球にあるといわれています。これは利き手との関連があり、右利きの人の約95%は左半球に言語中枢があるということになります。また、左利きの人の場合でも70~90%の人が左半球に言語中枢がありますが、左利きの人では両半球に言語中枢がる場合もあるとのことです。このことから、約90%の人が脳の左側になんらかの損傷を生じた時に、失語症を発症すると言えます。

失語症の症状
失語症では、大きく3つの症状があるとされています。発語における誤り、話し言葉の理解障害、物品呼称の障害の3つです。

1. 発語における誤り
脳の中では理解されている言葉なのに、その言葉を口に出して話そうとすると違う言葉になったり、語順が入れ替わったりしてしまう。また、なにかを説明したくても、うまく順序立てて話すことができなかったり、長い文章を話すことができない。
対応・対策
この場合のご家族や周りの方の対応としては、間違えた言葉をいちいち訂正しない方が良いといわれています。訂正されることにより、患者さん自身は自尊心を傷つけられたような気持ちになったり、話すことをやめてしまったりする場合もあるので、家族や周りの方は、間違えた発音でも何を言いたいのか分かった場合には訂正を入れない方が良いと考えられます。

2. 話し言葉の理解障害
話している相手の言っていることを理解できない状態。例えば、短い文章なら理解できるのに、長い文章になると、文脈の前後を入れ替えて誤解してしまったり、会話の中では全く触れられていなかった内容を認知してしまったりする。。
対応・対策
このような場合、話し相手はできるだけ文章を短く端的に話すように心がけましょう。複雑な文章は避けて短い文章で話し、理解していることを確認しながら次の文章をまた短く話していくと、思っているよりもスムーズに会話ができるのではないでしょうか。
また、一度に話す会話量が多いと混乱を招くことが考えられるので、様子を見ながら話すといいと思います。
そのほかには、会話のきりがいいところで今までの流れを確認したり、整理しながら少しずつ会話していくといいと思います。

3. 物品の呼称障害
知っているはずの物の名称が出てこないという障害。
例えば、鉛筆やCD、カルタや時計などを見て、それが何でどのように使うものなのかは分かっているのに、その物の名称が言えない、または言い間違えるような状態。
対応・対策
このような場合は、まず日常的によく使うものから順に物品とその呼称を結びつけながら、何度も発音を繰り返して訓練していくことで、少しずつでも改善していくことがあるので、患者さん本人も、ご家族も諦めず訓練をしていくといいと思います。


■失語症の分類

・ ウェルニッケ失語(感覚性失語)
左大脳半球の上側頭回後部(ウェルニッケ野)周辺の損傷による。特徴は、一般的に流暢な話し方をしてなめらかな発話をするが、内容が乏しく言語理解が不良である。発話では言い間違いが多く、一般的には意味不明な新造語(ジャーゴン)もみられる。急性期では多弁(それも意味の分からない内容)であり、言語障害の自覚が乏しいことが多い。また、復唱障害もみられる。
対応・関わり方
このようなウェルニッケ失語の急性期の方との関わりでは、理解するための手掛かりが得られるような、身近な話題から一語一語ゆっくりと身振り手振りを使って話すことが望ましいです。難聴などがない限り、ことさら大きい声で話す必要はありません。
急性期を脱した方に対しても、聞き取りが難しいという症状があるので、ゆっくりとした発話で会話するよう心がけて下さい。
ウェルニッケ失語の方が『聞き取りが難しいんです。』と話し相手に伝えると、大きな声で対応する方が多いという印象なのですが、決して大きな声で話して欲しいという意味ではなく、ゆっくりと明瞭に話してもらいたいという意味だということを理解して関わっていってほしいです。

・ ブローカ失語(運動性失語)
左大脳半球の下前頭回後部(ブローカ野)周辺の損傷による。特徴は発話量が少なく非流暢であるが、言語理解は比較的良好で、相手の話を理解できている場合が多い。話し方はたどたどしく、努力性発話が見られる。失構音が強く、対側上肢(多くの場合は右手)の麻痺と口部。顔面失行を伴うことが多い。
対応・関わり方
ブローカ失語の方は、構音障害が著しいことから、会話を理解されていないのかと思われる場合もあるかと思いますが、ブローカ失語の方の場合は相手の言っていることはしっかり理解されています。
ゆっくり時間をかけて会話することで、お互い必ず理解できると思いますので、焦らずに穏やかな気持ちで関わっていってもらいたいです。
また、ウェルニッケ失語でもブローカ失語でも言えることですが、維持期に入った患者さんは、自分が言いたいことを言えていないということを分かっています。それゆえに、言いたい言葉が出てこないもどかしさや、伝えたいことが伝わらない悔しさや、相手の話している内容が理解できない悲しみを抱えている場合が多いと思います。
そのことを念頭において関わっていくことが理解への第一歩だと思います。